活動方針

活動テーマ: 構想力と共創力で拓く中部の未来

代表幹事

代表幹事
大同特殊鋼(株)
取締役会長
嶋尾 正

1.呻吟する日本

 我が国は、かつて「戦後の奇跡」あるいは「JAPAN as No.1」と呼ばれるほどの発展を遂げ、米国に次ぐ世界第2位の経済大国へと上り詰めた。しかしながら、「失われた30年」を過ごすうちに我が国は多くの課題、即ち…人口減少・少子高齢化、社会保障費の増大による国家・地方財政の危機、中間層崩壊による経済格差の拡大などを背負うことになった。同時に経済はグローバル化と情報革命が進む中で大変革期を迎えている。
 これからの持続可能な社会・経済システムの構築は、次世代への責任として我々が果たすべき役割であり、その着実な実現に向けて行動に移すべきである。

2.未来社会に向けた課題解決の指針― SDGs

 全ての国連加盟国193の国々・地域の元首が同意し署名したSDGsは、2030年までに人類が達成すべき17の分野・169のターゲットを明示している。
 この「持続可能な開発目標」は現時点で考え得る人類の英知の産物であり、我が国の抱える克服しなければならない多くの課題や、中部経済の抱える多くの課題をも包含しているのである。しかもSDGsではあえて解決の担い手を特定しておらず、実現に向けた手法も明確にはしていない。すなわち、課題解決に貢献し得る全ての主体が分野横断的に連携し、それぞれの創意工夫により対応することが求められている。我々中部の経済人は、SDGsを揺らぐことのない指針と認識し、諸課題の解決に向けてその一翼を担うべきと考える。

3.中部のポテンシャル― リアルな知

 それでは諸課題の解決に向けて、我々はどのように対応すべきであろうか。それは、我々中部の強みである“リアルな知” を最大限に活用することではないだろうか。
 “リアルな知” とは、科学する現場、開発する現場、作る現場など、手に触れることのできるリアルな現場で培い、積み上げてきた知である。古くからのものづくりの集積地である当地には、圧倒的に豊かな“リアルな知” が存在する。
 グローバル情報プラットフォームの開発などサイバー圏での競争では大きく後れを取った我が国ではあるが、既に主戦場はサイバー単独の世界からサイバーとリアルとが融合する領域へと移りつつある。このため、自動車産業や航空機産業、素材産業など、厚みのある“リアルな知” を有する当地は、世界の諸課題解決という新たな価値創造において世界をリードし得るポテンシャルを有している。

4.中部の課題とその克服に向けて

 中部には、多種・大量なデータと多種・多様な知とが長い間蓄積され続けている。いくつかの星が輝いているのも事実である。しかしながら、今後新たな付加価値を生み出すためには無数の輝いて見えない星を重ねたり、線で結んで星座にしたり、大星雲を作ったり、見えない壁を越えて結びつきあう、そのような動きが求められているのではないか。

(課題1)構想力と共創力の涵養

 新たな価値創造にとって重要なことは、未来への道筋を描く“構想力”であり、個々の企業や組織で解決できない課題に対し、垣根を越えて連携し創造する“共創力”ではないだろうか。個々の企業や組織の壁を越え、解決すべき共通の課題を具体化し、連携の中で新たな価値を生み出す共創のプラットフォームとして当地が生まれ変われるか、今我々は問われているのではないだろうか。当地が目指すべきプラットフォームは、トライ&エラーを積み重ねる社会実験の場である。その中からワクワク感・ドキドキ感を発信し、世界の知能と共振することができれば、世界から叡知を惹きつけることにもつながっていく。

(課題2)リアルな知と情報技術の融合(情報技術のビジネス実装)

 もう一つ重要なのが、いかにいち早くAIやIoTなどの革新的情報技術を我々のリアルの知と融合(実装)させていくかということだ。リアルな知は無数のデータとして個々の現場に埋もれているが、データは課題解決の価値の源泉としてますます重要度を高めるだろう。その際、カギを握るのは、データの幅と厚みである。埋もれていたデータを企業の垣根を越えて、協調領域で、場合によっては競争領域に一歩踏み込んで利活用することは、共創の重要なツールとして大きな価値を生み出し得るであろうし、また、実装する情報技術の更なる強化や深化へと繋がり、ひいては我が国における情報技術の社会実装をいち早く推し進める原動力ともなる。

(課題3)中部の若者の力を引き出す

 共創のプレーヤーとして、とりわけ若者に期待するところが大きい。当地でも大学発スタートアップの萌芽が見えはじめたものの、地元学生がチャレンジし、起業する気質やそうしたチャレンジを応援する風土はまだまだ弱い。チャレンジングな若者は地域に熱量を生み出し、それが更なる人材を呼び込み地域に活力をもたらす。若者がチャレンジしやすい環境、失敗を許容し再チャレンジを後押しする環境を当地に涵養することは、我々経済界が果たすべき喫緊の課題ではないだろうか。

5.結び

 平成30年度の海外視察では、アジアのイノベーションを牽引する深圳とシンガポールを訪問した。
両都市は経緯や手法は違うもののビジョンを明確に打ち出し、共感した外国人を含む学生や起業家、そして彼らとの連携を模索するグローバル企業を引き寄せ、多様な主体による交流の中でイノベーションに向け町ぐるみでチャレンジしていた。そしてそのイノベーティブな交流とチャレンジする風土が更なる人材を呼び込み、ひいてはそれが都市の活力の大きな源となっていることを強く感じた。
 力強い経済圏である一方で、ともすれば閉鎖的とも面白味に欠けるとも評されてきた当地ではあるが、今一度、多様なヒト・モノ・情報が垣根を越え、国境を越えて大いに行き交う、活力と魅力あふれる地域とするために、そして我が国経済を一層力強く牽引する地域とするために、我々経済界としていかに対応すべきか、会員各位の積極的な参加を得て、その道筋を検討してまいりたい。

<活動の進め方、定例活動について>

(1)委員会

①「企画委員会」(特設委員会)を設置する。
 今年度活動方針における課題のうち、特に「リアルな知と情報技術の融合」に関し調査・検討のうえ活動成果のとりまとめを行う企画委員会を設置する。
 調査にあたっては、テーマに関する先進事例等の視察も実施する。

②「SDGs 経営委員会」を新設する。
 資源環境委員会と企業経営委員会の取組みを継承する形で「SDGs経営委員会」を発足する。今年度活動方針にもあるSDGsの指針をいかにダイナミックに実際の企業経営へ取り込み、社会の持続可能性と企業の持続的成長の両立をはかっていくのか、具体的な事例研究も交えながら議論を行う。

③財政・金融問題委員会を改称し「金融の役割と未来を考える委員会」を設置する。
 社会構造や産業構造の変化に伴い、金融が果たすべき役割や機能は拡大している。そこで、変革の時代における新たな金融像にフォーカスし議論を行う。

④上記の新設・改称委員会も含め13委員会体制とする。
 昨年度からの継続テーマを持つ委員会も含め、各委員会とも本年度中核テーマを意識しながら調査・検討を進めるとともに、積極的な発信に務めるものとする。

(2)産業懇談会

 産業懇談会は異業種交流の場、会員相互の研鑽・交流の場として、引き続き本会の活性化を支えて頂きたい。

(3)地域懇談会

 三遠地区地域懇談会については、更なる広域連携の場の形成を目指し、「三遠南信地区地域懇談会」へ改称する。
 三重地区地域懇談会とともに、地域会員同士の研鑽・交流の場として、更なる活性化を期待したい。