本年は新美代表幹事による代表幹事講話が開催された。要旨は以下のとおり。
■ 人材育成
「私が今、思うこと」は2つある。1つは少子高齢化が進行するので「生産性改善」の重要性。もう1つは今日お話しする「人材育成」だ。
私の42年間のトヨタ自動車での経験と、トヨタの先人の言葉から、どのように人を育てるべきかについてお話したい。
■ 豊田綱領
トヨタグループには、創始者 豊田佐吉氏の考え方をまとめた「豊田綱領」がある。これは、トヨタグループ各社に受け継がれ、全従業員の行動指針として今でも人材育成の基礎になっている。
一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を拳ぐべし
一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし
一、華美を戒め、質実剛健たるべし
一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし
一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為すべし
■ トヨタ生産方式
トヨタ生産方式は「自働化」と「ジャスト・イン・タイム」が2本柱となっている。
「自働化」とは、異常があれば機械が止まりラインを止める仕組みであり、不良品が生産されない。この「見える化」によって異常の真因が突き止められ、取り除かれるのだ。これは創業者、豊田佐吉が発明した豊田G型自動織機が源流になっている。
もう1つは、徹底したムダの排除の思想から生まれた、トヨタ生産方式の代名詞「ジャスト・イン・タイム」である。
■ 人材こそ経営の要
「ジャスト・イン・タイム」は頭では分かっていても実行するのが難しい。なぜなら、この「かんばん方式」を成り立たせるには、多くの工程に渡って、小ロット生産、段取り、標準化などが必要とされるからだ。結局のところ、これを実現させるのは「人」であり、「人の知恵」が必要なのである。
人(従業員)の大半は、仕事を単なる作業と見るか、その先にある目的まで見据えるかで、まるで仕事への姿勢・やる気が違ってくる。
人材育成で大切なのは、仕事の意義・価値観を共有させて、仕事への「動機づけ」を行うことである。
如何に燃える人材を増やすかである。
■ 考えること
ここで重要なのは、従業員一人一人が「考えること」である。上司は部下に問題点を見つけさせ、その答えを考えさせることが重要だ。上司は敢えて答えを言わない。
なぜなら、人は苦しい状況に置かれ、とことん困って考え抜くことで、本当の知恵が生み出されるからだ。
本気で考えていれば、助けてくれる人も現れ、大抵のことは出来る。
このように全員が考え、挑戦し、知恵を出すことで良い仕事・品物が生み出されるのである。
どの職場にも「マニュアル」が存在するが、これには気をつけるべきだ。「マニュアル」作業をこなしているだけでは、思考が停止してしまう。マニュアルとは、自分で考えて作ることに意味があるのだ。
■ 苦難を楽しみながら挑戦する
もう一つは「苦難を楽しみながら挑戦する姿勢」である。これは哲学者 Tom Morris氏の言葉“Capacity to enjoy the process along the way”(苦難を楽しむことができる能力)に代表される。
失敗を恐れずに挑戦し、成功するまでめげずに頑張り続けるのである。そうして積み重ねられた成功が自信となり将来への糧となるのである。
■ トヨタ 先人の言葉(抜粋)
神谷 正太郎氏
・一にユーザー、二にディーラー、三にメーカー。
豊田 佐吉氏
・営業的試験を為し、その成績充分にあらざる間は、決して販売すべきものに非ず。
・出来ないと言う前にまずやってみろ。
豊田 喜一郎氏
・我々はより良いものを作っていこうということで、一日一日改良している
豊田 英二氏
・よい品、よい考
・機械的に考えるのではない。乾いたタオルでも、知恵を出せば水がでる。
大野 耐一氏
・先入観を持たず、白紙になって生産現場を観察せよ。対象に対して五回の「なぜ」を 繰り返せ。
・「原因」より「真因」。原因の向こう側に真因が隠れている。
・仕事は部下との知恵比べ
奥田 碩氏
・何も変えないことが最も悪いこと。