テーマ: 『 能の魅力 =ワークショップ開催= 』
日 時:平成27年9月3日(木) 12時00分〜14時00分
場 所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
参加者:31名 |
スピーカー:
久田 勘(ひさだ かんおう)氏
観世流シテ方能楽師
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久田 三津子(ひさだ みつこ)氏
観世流シテ方能楽師
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ご紹介者:
柴田 雄次(しばた ゆうじ)氏
特定非営利活動法人名古屋能楽振興協会 代表理事 理事長 |
当日は、ホテルの会場内に特設舞台を設け、能の解説、能面・装束の紹介、ミニ上演会を開催した。
■ 能楽について
能楽は、観阿弥・世阿弥親子が活躍した室町時代に、現在のスタイルがほぼ確立された。日本の伝統芸能として重要無形文化財に指定され、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている。また、歌舞劇は「能」、滑稽物真似は「狂言」と呼ばれ分類されている。
能楽には5流派あるが、観世流は観阿弥・世阿弥の流れを汲む最大流派である。豊麗で洗練された味わいが特色とされる。
能楽師には、シテ方、ワキ方、狂言方、囃子方(笛方・小鼓方・大鼓方・太鼓方)という職掌がある。シテ方は能の主役であり、人間に限らず神・亡霊・天狗などの万物を演じる。対するワキ方は、僧侶・旅人といった生きた男性のみを演じ、シテ方の引きたて役となる。
■ 謡(うたい)
能における声楽部分が謡である。発声法、言葉、アクセント等に独特のパターンがあり、誰もが聞いたことがあり特徴的なのでご存知だろう。
はじめに、久田 勘先生からお手本をご披露頂いた。次は実戦編とばかりに、参加者全員で「老松」の練習会だ。「はっきり、ゆっくり、大きな声」が基本であるとの励ましを受ける。最後は、会場の皆が能楽師となり、木曜グループ版「老松」を完成させることができた。
(写真左:「老松」の紙、写真右:「老松」練習中)
■ 能面
様々なユニークな能面をご披露頂いた。(1)般若(はんにゃ)=嫉妬に狂った鬼のような形相になった女性、(2)蛙(かわず)= 水死人、(3)獅子口(ししぐち)=口を大きく開ききばをむき出す獅子、(4)増女(ぞうおんな)=清澄な神女 などである。
また、全員が能面をつけ、どの程度視野が狭くなるのか、それにより舞台で演じることがいかに大変なのかを体験した。
能面(レプリカ)を装着中
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視野が極端に狭くなるため、 立ち上がって歩くことも難しい
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■ 装束
演題「殺生石」でシテ方が演じる「キツネの妖怪」の装束を、ご指名された丹羽鐵株式会社森 俊彦社長に試着して頂いた。派手で豪華な衣装だが、サイズが大きく作られているため、何重にも重ねて衣装を身に着ける。これだけでも重労働であることがよく分かった。
森様には報酬として「矢で射られたため殺され、最後は石になる」という役柄を、アドリブで見事に演じて頂きました。
■ 仕舞(しまい)=上演会
久田 勘氏と久田三津子氏による仕舞のミニ上演会を行った。演題は「老松」「羽衣」「八島」「高砂」の4つ。産業懇談会の特権をフルに活かした、超至近距離での観劇である。
美しい型の連続からなる優雅な所作に感銘を受けるとともに、圧倒的な存在感・迫力を体感することができた。
■ 最後に
能は「武士のたしなみ」とされ、信長や秀吉も自ら演じていた。鑑賞の楽しみも然ることながら、自ら演じるという楽しみ方もとてもお勧めだ。
ご興味のある方は、是非日本の伝統文化を代表する能の鑑賞、お稽古を体験されてみては如何だろうか。
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テーマ: 『 無人飛行ロボット(通称ドローン)の開発最前線
−技術は無事故を願い、法は無事件を願う− 』
日 時:平成27年9月8日(火) 12時00分〜14時00分
場 所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
参加者:39名 |
スピーカー:
富田 茂(とみた しげる)氏
キャリオ技研(株) 代表取締役 |
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当日は(1)トレーニング用、(2)趣味用(首相官邸墜落機同型)、(3)事業用(火災消火作業)、(4)事業用(探査作業)の、4機のマルチコプタ(ドローンの一種)が展示された。大きさ・性能の異なる様々なドローンを興味深く間近で観察する参加者の姿が印象的であった。
■ 弊社との関わり
弊社の関わりは2005年頃に遡る。当時、中部経済産業局より自動車産業の次は、航空産業だという時代背景で、自社の若者に飛行機の構造を教えようと模型飛行機で遊ぶことから始まった。飛行機がどのように飛び、また右や左に旋回するのか、失速したらどうなるか等を体験させることが、模型飛行機であればできるからだ。リーマンショックを契機に、官需による開発プロジェクトとして、無人飛行機の開発を委託されてから、いくつもの実績が重なり、ドローンも取り扱う現在に至っている。
■ ドローンの利活用例
元々は無人偵察機として軍事用に開発されたが、民用に転用されてきている。
無人機としては、「プレデター」「Tホーク」「グローバルホーク」などが知られている。
ドローンの基本的なしくみは、GPSと地図情報により自らの位置を特定し、搭載されたカメラの映像から現場の状況を確認する。現在、プロが使用する商業用のものでは、最高時速100km程度、飛行時間は25分以上のものもある。但し、これは搭載するバッテリーとカメラの重さで大きく変わってくる。
■ 首相官邸ドローン落下事件
2015年4月に、市販ドローンが首相官邸に落下し大きな注目を集めた。本日、それと全く同型のドローンを持ってきたので、後でご覧になって頂きたい。ちなみにこのドローンは15万円前後でネット経由購入できるものである。
演者の私見によると、落下原因は、(1)電池切れ、(2)整備不良、(3)操縦ミス、(4)突風、(5)着陸ミスなどがあげられる。いずれにしても、何か目立ったことをやりたかったというのが動機ではないか。この他、いくつかの事故・事件の例が動画で紹介された。
(1)繁華街に墜落(名古屋TV塔周辺) (2)ビルに衝突 (3)人間に衝突 (4)飛行機に衝突
■ ドローンの運用可能性
世界各国でのドローンに期待される主な運用例が、動画を用いて紹介された。
(1)災害時の被害状況の把握 (2)災害時の要救助者の発見 (3)医療(AEDの搬送)(4)スポーツ中継 (5)商品の配送(amazon)(6)インターネット(Wi-Fi搭載)の中継基地 (7)農場での作物育成管理 (8)測量 (9)建築現場の施工管理 (10)トンネル・橋梁の点検 (11)生態調査 (12)消火作業。
■ ドローン発達の背景
ドローンがここまで身近に利用され注目されてきた背景を分析すると次の通りである。
<技術的背景>
・ジャイロセンサー、GPS、リチウムポリマー電池、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の発達と低価格化、ブラシレスモータの発達
<社会的背景>
・自分撮り文化とYou tubeの発達
<文明的背景>
・そもそも人は飛びたい
■ 技術は無事故を願い、法は無事件を願う
技術者は新しい技術に挑戦し、無事故にすることが最高の望みである。一方で法律の事務方は、法律や規制によって無事件にすることを望んでいる。技術発展と規制のバランスが重要。法律や規制は、遵守する気持ちがある人には有効である。つまり、テロや事件は技術では防げない。一方、人の進化には技術開発が必須で、技術に携わる者として、安易ないたずら(少し前は3Dプリンタの悪用が世間を騒がした。今後は監視カメラ画像認識が問題になるかも!)、安易な規制、技術の悪用などによって、技術開発が阻害されることがないことを願っている。夢を追っているようであるが、技術開発は将来の子孫のために今始めなければならない。現在の社会利便は、先代の技術開発の苦労の賜物である。
最後に質疑応答の時間が設けられ、「業界推進団体・協議会などを上手く機能させて、規制への対応をしてゆくことが良い」とのアドバイスや、ドローンについての技術的な質問等が投げかけられた。
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