コラム1 【保健師からの健康だより】 No.129
株式会社 スズケン
保健師 鳥巣 妃佳里
『 冬にも水分補給を 』
師走に入り、皆さまお忙しくお過ごしのことと思います。毎年、夏は『熱中症予防』のために意識して水分補給を行う人が多いのですが、冬は『寒いし、トイレも近くなるし』と、意識して控える人が多いようです。けれど冬は夏とは違った意味で水分補給が大切です。冬は気温が低く、空気も乾燥しています。室内では暖房を使うため、より乾燥した状態になりやすいので、夏のように汗をかいて水分が失われた自覚がなくても、皮膚や粘膜から少しずつ身体の水分が失われています。冬は季節的に以下のような理由で水分補給が重要になってきます。
(1)風邪やインフルエンザなどの罹患と悪化の予防
インフルエンザなどの感染症の原因となるウイルスは、空気が乾燥していると活発に活動します。そして粘膜が乾燥すると、ウイルスが身体に入るのを防ぐ防御機能も低下します。感染の予防にはマスクや加湿器を使用して鼻やのどの粘膜を潤しておくことが言われますが、同時に、意識してうがいや水分摂取をすることも、鼻やのどの粘膜に着いたウイルスを鼻水や痰などで身体の外に出すことの助けになります。また、風邪やインフルエンザなどにかかってしまった時にも、熱や食欲低下、嘔吐、下痢などにより身体の水分が失われていきますので、水分摂取は脱水や症状悪化の予防のために重要です。
(2)心筋梗塞や脳梗塞の予防
心筋梗塞や脳梗塞の発生頻度をみると、時間帯では午前中、季節では冬場に発症率が高くなるという傾向があります。これは室内外など気温の変化の激しい環境で交感神経が働いて血管が収縮し、血圧が上がりやすいことも要因の一つですが、午前中や冬場は、水分が失われても喉の渇きを自覚しにくいために、水分摂取が不足して血液の粘度が高く(ドロドロに)なり、血管が詰まりやすくなることも理由の一つです。朝起きたときや食事と食事の間、口の中がネバネバする時などには、意識して水分を摂ると脱水やこれらの疾患の予防に役立ちます。
(3)乾燥による皮膚や粘膜障害の予防
空気が乾燥していると皮膚や粘膜の表面からの水分が失われていきますので、皮膚は傷つきやすくかゆみなどを起こしやすくなります。粘膜障害はウイルス感染への防御力がさがるだけでなく、出血なども起こしやすくなります。予防のためにはこまめな水分摂取の他、呼吸は口ではなく鼻でする、皮膚の露出を避ける、加湿器や保湿クリームなどを使用するなどの対策が大切です。
(4)飲酒の機会が増えることによる脱水症の予防
冬は忘年会や新年会など、飲酒する機会が増えますし、寒さ対策で飲酒をする人もいます。お酒は飲み物なので、水分を摂っていると思う人は多いようですが、アルコールには利尿作用があるので、身体は脱水気味になります。実際に、お酒を飲んで喉が渇く経験をされたことがある人も多いと思います。また酔い方は、アルコールが体内に吸収される時の濃度と身体のアルコールの分解能力によって決まります。飲んでいる最中に水分を摂ると、身体に吸収される時のアルコール濃度を低くすることができるので、脱水だけでなく二日酔いや悪酔いの予防にもなります。
具体的な方法としては、湿度計や加湿器の使用(湿度を50〜60%に保つ)、こまめな水分摂取(特に早朝と食事の間、飲酒時など)、鼻呼吸、外出時のマスク使用、ウォームビズを心がける、などがあります。水分摂取を暖かいもの(白湯など)で行えば、身体を温めることにも役立ちます。身体に必要な水分をしっかり摂って、この冬も元気に過ごしましょう。
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