1. 名古屋の都市形成の歴史
名古屋の都市づくりは、徳川義直の「清須越」に始まる。1612年に名古屋城が築城され、清須から都市が移ってきた。その際、名古屋城の南側に碁盤の目状に街割りが造られた。これは現在まで引き継がれており、大変優れた都市計画であったと評価されている。
国鉄名古屋駅は明治19年開業で、今の笹島交差点あたりに駅ができた。昭和12年に名古屋駅は現在の位置に移転。その頃から、今の名駅の周りが徐々に発展してきた。その後、戦災で焼け野原になったが、土地区画整備事業によりインフラの充実を図ることに成功し、見事に復興を遂げた。昭和32年、地下鉄東山線の開業と同時に造られた名古屋駅地下街は、日本で最初の試みであった。この後、高度成長期を経て、東海道新幹線が開通した。
2. 新旧「大名古屋ビルヂング」について
昭和40年に「大名古屋経済圏の御用を務める」との壮大なコンセプトのもと、「大名古屋ビルヂング」が完成した。当時から三菱グループ企業各社が、この東海地方に大きな製造拠点を持っていたため、名古屋駅前にオフィスを構えるという役割もあった。そして、当時日本のビルは、高さ最大31mの規制があったが、このビルは特別許可が下り、日本で最高水準である41mのビルとして、名古屋の象徴となった。
もう一つの特徴は、「大名古屋ビルヂング」という名称である。まず、「大名古屋」の「大」は、躍進していく都市圏という意味で「グレーター名古屋」の「大」である。そして、「ビルヂング」の「ヂ」は、東京丸ビルに合わせ、旧仮名遣いの「ヂ」を使用した。ちなみに「ヂ」を使ったこの名称は、新ビルになっても使用されることが新聞発表されている。
現在「大名古屋ビルヂング」は建替中で、2015年10月末に竣工予定である。地上34階、地下4階、高さ約180mで、延床面積は旧ビルの約2倍となる。7階〜33階がオフィスゾーン、5階がコンビニや貸会議室を備えたビジネスサポートゾーン、4階が銀行街、B1階〜3階が商業ゾーン、B4階が地域冷暖房施設となっている。
このうち、地域冷暖房施設は、JRセントラルタワーなどにも設置されており、全部で4つのプラントがつながって、その地域のエネルギーを連携して供給する。これに加え、高性能の外装やLED照明の採用により、既存のビルの20%ほどの省エネ効果が得られる。
3. リニアインパクト
リニア中央新幹線の建設工事着工は来年で、13年後の2027年に開通予定である。当面、東京・名古屋間がリニアで結ばれると、東海圏及び名古屋が持つ地力の上に、次のようなインパクトが発生する。(1)両都市間に静岡・山梨・長野などが位置するため、東京から40分圏内に約5000万人の経済圏が誕生する。(2)リニアは、世界最高水準の技術で、しかもこの地方だけにしか走らないため、リニアそのものが資源として評価される。(3)従来の新幹線とダブルネットワークを組み、災害時に緊急対応ができるため、BCPがきっちり確定する。
今後解決していかなければならない課題は多いが、リニア開通により、この地方は東京のストロー都市になることもなく、(1)最高水準の高付加価値産業集積(モビリティ、物流、環境技術、etc)地域、(2)国際交流拠点の地域、(3)憧れのライフワークバランス(ゆとり、多様な働き方、教育・文化、低炭素都市、観光、etc)地域になっていくだろう。
4. 目指す都市機能再編
「まちづくり構想懇談会」という組織が、本年3月に「名古屋市街づくり構想(素案)」を発表した。メンバーは、行政、有識者、地元商店会、地元街協、鉄道事業者等に加え、当社も分科会を通じて議論に参加した。そして、(1)国際的・広域的な役割を担う圏域の拠点・顔を目指す、(2)誰にも使いやすい国際レベルのターミナル駅を造る、(3)都心における多彩な魅力を持った街を造り、繋いでいく、(4)リニア開業を見据え、行政と民間が一体となって、着実に構想を実現する、以上4つの基本方針を決定した。
具体的なイメージとして、欧州のアムステルダムやベルリンの事例を参考に、有識者の方々が中心となって、名古屋の街やターミナルがどうあるべきかを考えながら、今後上記懇談会の中で議論を進め、具体的なものに造り込んで行くことになる。
5. デベロッパーとしてお手伝いすること
名駅前が今後充実していくことを想定し、今後駅前の開発にどのような機能を持たせるべきか、我々デベロッパーはどのように関わっていくのか考えている。例えば、(1)都心部でのショールーム展開や産学連携の拠点作りなど、高付加価値産業技術を世界に発信していく、(2)情報発信企業や最先端医療企業を誘致し、サービス業の充実を図る、(3)都心住居や都心リゾートの建設など居住機能の多様化に対応する、(4)アウトレットモールなどの商業施設の充実を図る等である。
個別ビルの建替が大規模開発の場合、公共空間の整備や運用に関する協力など、地域貢献への寄与が求められる。今後、利害関係者が多い名駅周辺の機能をどのように整備し、スペースを見出したり、都市機能を円滑にするかが課題となるだろう。その課題は関係者全員で大いに議論し、解決を図らなければならない。私共もそれに加わり、名古屋の都市機能再編に関わって行きたい。 |