1. 自己紹介
ざるそばと味噌煮込みでご愛顧戴いているサガミチェーンの鎌田です。
イスラエルに行くと、好きになる人と嫌いになる人の両方がいる。私はイスラエルが好きなので今日の話はイスラエル寄りとなる。従って割り引いてお聞き戴きたい。また、イスラエルやユダヤの世界は非常に奥が深く、私はごく限られたことしか知らないことを最初にお断りさせて戴く。
私は大学時代に休学して、2年間の予定でドイツのアイセック企業研修を受けた。しかし、中東で起きていた戦争のことを知り、イスラエルに行ってキブツで1年農業体験をした。大学を卒業するのに都合7年掛かったことになる。1974年に伊藤忠商事に入社し、1994〜2001年には初代のテルアビブ事務所長を務めた。これは全商社でも最初だった。帰国後も年に1度はイスラエルに行っているが、イスラエル好きが嵩じて2005年5月から日本イスラエル商工会議所の理事を続けている。2007年3月にサガミチェーンに出向し、2011年1月からは社長を務めている。
2. イスラエルの概況
イスラエルの面積は2.2万km2でほぼ四国と同じくらいであり、人口は約800万人である。首都はエルサレムとしているが、国際的には認められておらず、ほとんどの国の大使館はテルアビブに置かれている。民族はユダヤ人が約75%と多く、それ以外はアラブ人などである。主要産業は、情報通信、ハイテク、医療・光学機器、化学、ダイヤモンド加工、繊維、金融などであるが、最近は地中海での天然ガス開発も進んでいる。2012年のGDPは2,097億ドルだが、一人当たりでは27,357ドルであり、周辺諸国と比較してかなり高い。2012年の輸出額は631億ドル、輸入額は731億ドルである。
イスラエルは砂漠の中にあるイメージだが、実際は“土漠”と言うほうが相応しい。しかし、水利が発達していて北部には穀倉地帯もある。3大陸が接するところに位置するため、動植物の種類が多いのが特色で、シクラメンやチューリップの原産地でもある。ブドウ畑も全土に広がっており、ワインの産地になっている。ユダヤ教徒は金曜日の夜に赤ワインを飲む習慣があるが、イスラエルのワインの品質はもともと良くなかった。しかし、最近は、ブティックワイナリーと呼ばれる、生産量が少なく非常に品質の高いワイナリーが幾つも出てきている。
イスラエルとヨルダンの間にある塩湖の死海は有名である。浮遊体験や化粧品が知られているが、日本の豆腐を作るときのニガリは、ここで採られているものが多い。死海に流れ込むのはヨルダン川だけであり、淡水であるヨルダン川からの取水によって、湖面の水位は年々低下している。また、この一帯は海抜マイナス400mを超す海抜下である。
3. イスラエルの神話
イスラエルは歴史が古く、ユダヤ暦は旧約聖書の天地創造から数えているので今年は5774年である。聖書考古学という学問もあるが、旧約・新約聖書の聖地であり、まつわる史跡が多い土地である。テルアビブのすぐ南にあるジャッファの町の港にはギリシャ神話の舞台となった「アンドロメダの岩」もある。エチオピア王ケーペウスとカシオペアとの間に大変な美貌の持ち主であるアンドロメダという娘がいた。カシオペアがそれを自慢したことに対して、娘を比較された海神が怒り、エチオピアの海岸を大波によって荒らした。やむなくアンドロメダを岩に縛って人身御供にするが、そこにメドゥーサの首を持った ペルセウスが通りかかり、首の威力で海獣を石にして退治し、アンドロメダと結婚した。
また、イスラエルには常勝、不敗の神話もある。イスラエルが強いのには理由がある。具体的には、一度でも負けると「国家が滅亡する」危機感、アメリカとの強固な関係、強力なロビー活動、ハイテク開発力、独自の兵器産業、卓越した情報収集力である。
4. イスラエルのビジネス
ユダヤ人は世界人口の約0.2%に過ぎないが、ノーベル賞受賞者の約20%はユダヤ人であり、それだけ発想力が豊かな人たちと言える。ユダヤ人の本拠地たるイスラエルには世界的に成功したベンチャーが多々ある。カプセル内視鏡、フラッシュメモリー、スマホ用カーナビアプリ、ICQ、パネル用アクティブペン、無接点充電機器、ファイヤー・ウォール、ボイスメール、脳を活性化する機能性食品などなど、枚挙に暇がない。小粒でも光る会社が多く、NASDAQ上場企業数は米国に次いで2位であり、海外から高値で買収される例も非常に多い。所長が5代目となった伊藤忠を含め、イスラエルには25社の日本企業が進出しているとされるが、取引だけなら多くの日本企業がしている。しかし、それでもまだまだイスラエルを縁遠い国と考えている日本企業が多いように思われる。日本経済復活を 神話に終わらせない為の方策の一つにイスラエルのハイテク活用があるのかも知れない。
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