1. 設立経緯と概要
平成19年に名古屋市から金城埠頭地区にて「モノづくり文化交流拠点構想」への参加要請があり、平成23年3月にオープンした。東日本大震災直後であり、延期も検討したが、黙祷を捧げての開館となった。開館後、1年7ヵ月で164万人のお客様に、国内外を問わずお越しいただいている。海外メディアにも取り上げられ、例えばタイ航空では名古屋の名所として、名古屋城などと並んで紹介されている。
コンセプトは3点である。(1)東海道新幹線を中心に、在来線から次世代の超電導リニアまでの展示を通じて「高速鉄道技術の進歩」を紹介。(2)鉄道が社会に与えた影響を、経済、文化および生活などの切り口で学習する場を提供。(3)模型やシミュレータ等を活用し、子供から大人まで楽しく学べる空間。
2. 五感で楽しめる展示
(1)触覚(ふれる)・・・直接触れて感じることのできる展示
世界最速を記録した高速鉄道の車両がシンボルとして展示されている。シンボル車両の3両は、C62蒸気機関車(1954年に狭軌鉄道の蒸気機関車として時速129km)、300X新幹線(新幹線試験電車・1996年に京都〜米原間で時速443km)、超電導リニア(2003年に山梨リニア実験線にて鉄道の世界最高速度581km)である。このほか、新幹線・在来線の運転や在来線の車掌を体験できるシミュレータ、体験学習室、歴史展示室などがある。
(2)視覚(みる)・・・実物や模型を見て学べる展示
高速鉄道の技術を実物・模型で紹介している。例えば、パンタグラフの進歩や地震発生時に列車を止めるしくみ、レール交換作業などを見ることができる。車両展示として、19両の車両が年代順に並んでおり、収蔵車両エリアには往年の名車13両が揃っている。また、映像シアター室もあり、鉄道や鉄道を支えるプロフェッショナルに関する上映を行っている。
(3)聴覚(きく)・・・迫力あるサラウンドでリアルな体験ができる展示
超電導リニア展示では、シアター方式で時速500kmを体験できる。その際の走行音や振動などは実際のものに限りなく近い再現をしている。鉄道ジオラマは横33mあり、大きさのみならず精密さにもこだわっており、鉄道と生活が密着していることを知っていただける。また、当館では案内用に8ヵ国対応のオーディオガイドを備えている。
(4)嗅覚(かぐ)・・・懐かしの匂いを体感できる展示
木製電車(モハ1形式電車)を復元し、昭和初期の状態で展示している。木製のため、復元には宮大工に尽力いただいた。車内は木ならではのよい香りがする。
(5)味覚(あじわう)・・・駅弁で鉄道の旅気分を満喫
当館にはレストランはなく、駅弁を販売している。昭和39年当時のお弁当も復刻して販売している。お弁当の持ち込みもOKで、屋外には車内での飲食が可能な車両を展示している。ミュージアムショップでは、リニアロングバームクーヘンが人気である。
3. 鉄道技術の進化
東海道新幹線は、日本の「叡智」の結晶といわれている。運輸・営業、車両、施設、電気といった技術力の結晶である。止まる技術があるから、速度を出せるのである。
電車については、明治時代から大正末期まで木製で、昭和から半鋼製となった。1951年の桜木町火災事故(天井のベニヤ板が炎上)の発生により、全鋼製となり、今は軽量性やメンテナンス性に優れたアルミニウムやステンレスとなっている。線路については、双頭レールという上下同じ形のものから、安定性のある平底レールとなった。線路幅は日本では4種類あり、JR在来線が1067mm、新幹線が1435mmである。新幹線は、ポンペイ遺跡や馬車の轍とほぼ同じ幅である。
超電導リニアは、1962年に研究を開始し、65年の歳月を経て、2027年に東京―名古屋間で開通予定である。摩擦力に頼る鉄輪方式では時速400km程度が限界であるため、超電導技術を採用、十分な浮上高さ(10cm)を確保して高速走行を可能とした。
高速鉄道は、先人の築き上げた「叡智の結晶」により進化してきた。リニア・鉄道館は、「夢と想い出」を語りあっていただくとともに、「モノづくり」への憧れ・夢を持っていただく場として活用いただければと思う。 |