1. 更生保護の現状と課題
(1)更生保護の最重点課題
更生保護の最重点課題は「刑務所出所者等の再犯をいかに減らすか」であり、再犯を防止するためには「住む所」と「働く場所」の確保が重要である。刑務所の年間出所者は約3万人で、そのうち帰る所のない者が7500人いる。受刑者の高齢化も進んでおり、入所者の15%が60歳以上の高齢者となっている。そして、出所者のうち、4割が5年以内に再犯し、再入所となっている。
(2)「住む所」「働く所」の確保方策
住む所の確保として、民間の施設である「更生保護施設」(県内6カ所)、福祉サービスが必要な高齢・障害受刑者を受け入れる「地域生活定着支援センター」(愛知県平成22.4開所)、NPO法人等の施設に宿泊保護を委託する「自立準備ホーム」などがある。
働く場所の確保として、職業安定所との連携、協力雇用主への協力依頼、協力雇用主へのサポート体制の整備をしている。昨今の経済情勢から、ハローワークを通じての職探しは難しく、実際に職に就くのは県内約600社に登録いただいている協力雇用主となる。協力雇用主は、建設・土木業が8割を占めるため、今後はこれ以外の職種を拡大する必要がある。また、対象者の雇用リスクを軽減するため、このサポートとして身元保証制度(最高100万円の被害弁償可能)、愛知県就労支援事業者機構による雇用奨励金などを行っている。
(3)身近な援助者
「住む所」と「働く場所」に加えて、「本人の身近に相談できる人がいる」ということが再犯防止には鍵となる。その中で大きな役割を果たすのが保護司である。愛知県の保護司充足率は93.8%と全国91.8%より高い水準であるが、年々低下傾向にある。新任保護司の発掘が課題であり、これまでは保護司を年齢等の理由で辞める人が次の人を見つけることで対応してきたが、最近この手法では難しくなっており、保護司候補者検討協議会を開催し、地元の適任者を幅広い分野から選出してもらうなどしている。また、保護司の活動を支援するために、自宅以外で面接等を実施できる活動拠点(更生保護サポートセンター、県内4カ所)を設けている。
2. 愛知県就労支援事業者機構
再犯の防止のためには犯罪者の就労の支援が必要である。無職者による再犯の割合は、有職者による再犯の割合の約5倍である。愛知県就労支援事業者機構は、愛知県内の経済界の協力を得て、雇用事業者の立場から就労を支援し、そのことによって地域社会の治安の改善のために貢献するものである。過去に犯罪をした対象者を採用するのは難しいという場合は、当機構の会員となって支援いただきたい。
3. 愛知県更生保護協会
更生保護とは、犯罪をした人や非行をした人が同じ過ちを繰り返さないよう、社会内において必要な指導や支援等を行い、その円滑な社会復帰を助けて再犯を防止する制度である。愛知県更生保護協会は、犯罪前歴のある人たちの更生を助けるために必要な金品を給与又は貸与、更生保護施設・保護司活動などへの助成、犯罪予防の啓発活動などを行っている。近年の犯罪や非行の複雑化・多様化などにより、更生保護には一層の充実が要請されている。様々な形での皆様の支援をお願いしたい。 |