今回の産業懇談会視察会では、パナソニック(株)アプライアンス社を見学した。
8時45分に名古屋商工会議所に集合し、バスで目的地であるパナソニック(株)アプライアンス社(以下「アプライアンス社」)に向けて出発し、予定通り10時30分に到着した。
◆アプライアンス社概要説明(説明者:アプライアンス社社長 見和徳)
アプライアンス社は、パナソニックの社内分社として2012年1月に大型の空調設備などに強みを持つ三洋電機、理美容などに強みを持つ松下電工と合併して設立された。「アプライアンスNo.1の環境革新企業」の実現を目指し、家事・調理・冷暖房・給湯・美容・健康など幅広い分野の製品を生産している。
従業員数は国内約9千人、海外約32千人であり、海外工場は47拠点、国内は9拠点である。一番遠い拠点はブラジルサンパウロで、冷蔵庫を作っている。中国には23拠点があり、海外拠点の多くはアジア地域である。国内から海外へのシフトが進んでおり、インド、ベトナム、ブラジルへの展開が終わると、次はアフリカだと考えている。また、ミャンマーも自由化が進むと大きな市場となると見込んでいる。
グローバル化していくには、人材が重要である。人材育成のために、50人採用すれば10人ずつ5グループでそれぞれ外国語を会社の支援のもとで1年間学んでもらい、語学力を習得してもらってはどうかと考えている。グローバル化には言葉の壁があるので、通訳を通してではなく自身でコミュニケーションを取れる人材をつくることが肝要である。
◆パナソニックの環境経営(説明者:専門店グループGM 一色毅)
爆発的な人口増加、資源の枯渇、新興国の成長など、世界は転換期を迎えている。弊社の国別環境行動調査によると、先進国では節電、新興国では節水に対する意識が高い。日本では、震災により、電力安定供給神話が崩壊し、新たなニーズ市場が誕生している。当社は、世界中の次世代の人たちのためにくらしからのグリーン革命を先導していく。
創業100周年ビジョンとして、全事業活動の基軸に「環境」を置きイノベーションを起こすという意味で「アプライアンスNo.1の環境革新企業」を掲げ、環境貢献と事業成長を一体化し両指標を同時に追求している。また、グリーン指標の達成をするためのアクションプランとして「グリーンプラン2018」を定め、環境課題への取組みを実施している。
◆アプライアンス社の環境経営(説明者:環境推進グループ グループマネージャー 脇浩史)
2011年10月「エコアイデア宣言」を発表し、CO2±0(ゼロ)のくらしの実現、「循環型ものづくり」で資源を限りなく活用、地域環境保全活動を推進している。取組みにあたっては、CO2削減など環境パフォーマンスを業績評価のポイントとしている。
CO2削減の4つのコア技術として、エネルギーを効率的に制御する「インバーター技術」、エネルギーを有効に使う「ヒートポンプ技術」、エネルギーの無駄を抑える「断熱技術」、そしてエネルギーを創り出す「創エネ技術」があり、省エネ商品の開発を行っている。
循環型ものづくりとして、使用済みブラウン管から真空断熱材へと循環させ、冷蔵庫などの商品に活用することで、モノづくり時のエネルギー抑制にも配慮している。
◆ショールーム&エコナビハウス、冷蔵庫製造工程視察
ショールームでは、エアコン、洗濯機、冷蔵庫などの最新エコ商品を見学した。また、海外展開している製品も展示してあり、欧米向けの冷蔵庫は、扉を開けた後に引き出しも開けるなど手間のかかる仕様となっていたが、手間よりもシンプルなデザインが重視されるとの説明があった。
エコナビハウスでは、「自分でできる省エネ」と「エコナビにできる省エネ」についての説明があった。自分でできる省エネとして、エアコンでは設定温度を控える、室外機の通気口付近に物を置かない、冷蔵庫では冷蔵室は冷気が流れるようにすっきり、冷凍庫はぎっしり物を入れる、熱いものは冷ましてから冷気が上から下へ流れるので一番下に置くなどの具体的な取組みの紹介があった。エコナビにできる省エネとして、エアコンは人のいるところだけ冷やす、冷蔵庫では使用者の生活リズムから開閉を行わない時間帯の電気使用を減らす、洗濯機では汚れの量に応じて水の量を変えるなど、事細かな節電機能が紹介され、環境技術の高さを体感した。
冷蔵庫工場では、冷蔵庫の生産の一連の流れを見学した。普段見ることのない、冷蔵庫の裏側や中身を具に見ることができ、またパナソニックの安全や品質に関する意識の高さが作業員や職場から見てとれた。
◆太陽光発電システム(説明者:エナジー&ライフソリューショングループGM 内田義人)
全国の住宅用太陽光発電設置数は2011年に累計100万件を突破した。2009年に余剰電力の固定買取制度ができ、06年に打ち切られた補助金が08年に再開されていたこともあり、大きく実績が伸びた。なお、愛知県は補助金の支給額が全国で1位である。
オール電化と太陽光発電の組み合わせは効果的である。その理由は、オール電化の料金体系が、昼間の電気代が高く、夜間が安いためだ。家庭においては朝と夜の炊事の時間帯に多くの電気を使い、昼間はあまり使わない。太陽光発電は昼に多くの電気を発電する。電気代の高い昼間は自家発電で賄え、余剰分は売電するため、電気代がお得となる。
パナソニックの太陽光パネル(HIT)の特徴として、(1)発電時のロスを削減し高変換効率と高出力を可能、(2)夏場の高温時にも高出力で業界最高水準の発電量、(3)ウォータードレインコーナー採用で汚れ防止性UPとなっている。また、HITの強みは、ソーラーカーレース(2011World Solar Car Challenge)で優勝という結果をもって実証された。
3.11以降、停電時に生活に必要な電力を供給するという「もしもに備える」という意識が高まり、太陽電池と蓄電池との連携も進んでいる。また、弊社と藤沢市などとの共同で、世界に先駆け、太陽光パネルや家庭用蓄電池を大規模に全戸導入したスマートタウン構想(FUJISAWAサスティナブルスマートタウン)を推進している。
視察終了後、記念撮影を行い、パナソニックの多くの社員が青い自社の旗を振って見送ってくれた。お客様を大事にするというパナソニックの社風を目の当たりにし、感激しながら帰路に就いた。
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