産業懇談会【メールマガジン 産懇宅配便】  第107号 2011.4.25発行

 メールマガジン■産懇宅配便■

平成23年4月度(第107号) 目次
【23年4月度産業懇談会(水曜第2G)模様】 4月6日(水) 12時00分〜14時00分
【23年4月度産業懇談会(木曜G)模様】 4月7日(木) 12時00分〜14時00分
【23年4月度産業懇談会(火曜G)模様】 4月12日(火) 12時00分〜14時00分
【名古屋いちばん物語】 No.13
【名古屋いちばん物語】 No.14
【新会員自己紹介】
伊藤 彰彦氏

東海旅客鉄道株式会社 秘書部長

吉田 治伸氏 コニックス株式会社 代表取締役社長
【5月度産業懇談会開催日程】
【6月度産業懇談会開催日程】
【お知らせ】
【コラム】
コラム1 【保健師からの健康だより】 No.85
コラム2 【「ほん」のひとこと】 No.30
コラム3 【苗字随想】 No.107
【23年4月度産業懇談会(水曜第2G)模様】

テーマ『素晴らしい経営の実現をめざす実践学習会に参加して』

日  時:平成23年4月6日(水) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 楠の間
参加者:23名

スピーカー:
中林 直子(なかばやし なおこ
有限会社東海維持管理興業 専務取締役

中林 直子氏

1.自己紹介
 我社は、創業10年、本社は半田市、支店は名古屋市、社員25名、20〜30代中心の若い会社である。経営理念は、「守」であり、(1)生活基盤としてのライフラインを守る、(2)快適な住まい空間を守る、(3)仕事に対する信念と誇りを守る、(4)地域社会の水環境を守る、(5)全社員の幸福を守る、(6)高水準・高品質を守る、である。創業当時、会社に勤めながら名古屋市立大学大学院にて国際比較教育学を専攻し日本と韓国の幼児教育の比較研究をしていた。また、社員旅行は、年1回海外に行くことにしており、社員が毎月積み立て、この旅行のために1年頑張るという者もいる。業務は3Kではなく、4Kで「きつい、汚い、危険、臭い」の職場である。ボランティアで休みを返上して、社員と一緒に幼稚園を訪問している。普段は下水管にもぐったりロボットを操作する仕事で、外部の人と接する機会が少ないため、子供たちと遊んだり女性ばかりの幼稚園の力仕事を手伝ったり、良い経験となっている。

2.会社の事業案内
1)下水道事業:【管渠(かんきょ)更生技術 オールライナー工法】下水道の先進国、ドイツのカナルミュラー社により開発された管渠更生技術である。現在、都心部ではさまざまな管が地下に埋設されており、老朽化した下水管を掘り出して取り替えることができない。そのため、掘り出さずに下水管の修繕・改築を行う技術である。材料の樹脂を熱で硬化させるためのボイラーを積んだ車がある。当社は半田市と防災協定を結んでおり、このボイラー車も登録されている。湯を提供できるため、今回の大震災の被災地である仙台市に行き、お風呂に供給している。下水管の中に破損等ができた場合、材料の樹脂を管の中に押し込み、ボイラー車からの温水で固めて管にはりつけ、きれいな下水管としている。このままでは家庭からの管をふさいでしまうため、マンホールから下水管に自走式の穿孔ロボットを挿入し、遠隔操作のTVカメラを見ながら取付管に穴をあけていく。また、これにより下水管に突き出した取付管を削る作業もある。【管渠(かんきょ)内面補修工(部分補修)】現場で樹脂を撹拌し補修材料に塗りつけていく。そして、その材料をスリーブという機械に巻きつけて、下水管の中に入れ、光を当てて補修材料を固めていく。【管内清掃工】大口径管という人が入れる大きな管に、泥が溜まった場合、作業員が管内に入りスコップでかき出し、バキュームで吸い取り、高圧洗浄で完了する。【管内TVカメラ調査工】TVカメラ車で遠隔操作を行ない、自走式のカメラロボットを下水管に挿入し状態を調査する。
2)土木事業:下水管を設置する仕事や側溝に堆積した土砂を取り除く仕事を行っている。しかし、当社が土砂を取り除いた後、他の業者が側溝を整備する側溝工事を行う際、再び土砂が堆積してしまっていた。そこで、当社が土砂を取り除く作業を行ない、直後に側溝作業を当社が行なえるよう市役所に提案した。その他に、造成工事や舗装工事も行なっている。
3)清掃事業:公園の清掃では、噴水や水遊び用の人工池がある公園で、高圧洗浄で藻や水蘚を取り除く作業を行なっている。側溝はバキューム車と高圧洗浄車で清掃を行なっている。現在、大震災により液状化した千葉県へ派遣し災害復旧に努めている。
4)メンテナンス事業:ビルの地下にある排水層や排水ピットの清掃、及び排水管のつまりを取り除き、清掃も行なっている。

3.実践学習会
 1年かけて6社を訪問し勉強した。実践学習会への参加のきっかけは、私も社員も、会社が好きで仕事も面白くなれる、月曜日の出社が楽しみになれる会社にしたいということであった。学習会のコンセプトは、(1)素晴らしい企業を訪問し、感動経営を「自ら体感」する、(2)「手法を学ぶ」ではなく「気づきを高める」、(3)自ら実践し、「気づき」を高める。「伊那食品工業、ネッツトヨタ南国、バグジー、沖縄教育出版」の4社が手本である。私が一番印象の残った会社は、伊那食品工業であった。長野県伊那市にあり、2010年に年商171億円、経常利益16億円、従業員400名で、創業以来、増収増益を続けていた。驚きの連続であった。毎朝、朝礼の後、全社員が掃除し、道具の保管倉庫があったが、掃除の会社でもある弊社よりもりっぱな掃除道具と倉庫であった。社是は「いい会社をつくりましょう、たくましくそしてやさしく」で、いい会社とは、日常会話の中で「会社を取り巻く全ての人が「いい会社だね」と言って下さる会社である。さらに、会社の考え方の基本は、二宮尊徳翁のことば「遠きをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す」である。このような考え方など会社の全ての言葉について、社員が正しく理解できるよう1つ1つの言葉を定義していた。例えば、経営理念は、(1)「道を知る、すなわち経営者と社員は労使でなく同志」、(2)「りっぱな社会人になる」:人に迷惑をかけない、(3)「凡時継続」: 樹木のための前向き駐車、朝礼、掃除、駐車場は遠くに止める、(4)「年功序列」、(5)「終身雇用」:末広がりの自然体経営で、人は年齢とともに経験を積み、判断や知恵は経験に左右される。
 また、計6社を訪問し印象に残ったことが4つある。(1)会社の中に入った時の雰囲気の良さ、(2)働く人が生き生きと会社・個人の目標を持ち、期間を決めて達成度を確認、(3)社員が家族と同じく、コミュニケーションが大変良く、互いに助け合っていた、(4)利益を上げること。以上のとおり、
 この学習会に参加して思ったことは、自分が変わらないと会社は変わらない、と気づいた。決意したことは、「社員の話を聞くこと」であり、それを元に会社の方向を見つめ、改革のステップとしたい。

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【23年4月度産業懇談会(木曜G)模様】

テーマ『 やきものの魅力 』

日  時:平成23年4月7日(木) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 伊吹の間
参加者:15名

スピーカー:
加藤 悟(かとう さとる
中村土地(株) 代表取締役

加藤 悟氏

1.やきものを巡る初めての旅
 やきものはよくわからないと言う人が多いが、私も20年前までは同様であった。20年経過し、やきものが好きになった理由を紹介すれば、焼き物の魅力をご理解いただけると思う。平成3年4月、トルコへ出張する機会があり、休日にイスタンブールの世界遺産であるトプカプ宮殿に行き、15〜18世紀の東洋陶磁の膨大な数のコレクションに出会った。
 その後、英国のトヨタ工場があるダービー州に行き、ロイヤルクラウンダービー社の洋食器の工場見学を行なった。「OLD IMARI」のブランドが現在も生産されているが、ルーツは日本の伊万里焼であった。この時、同行いただいた陶芸家 加藤五山先生との出会いが、自分の運命を大きく変えた。帰国後、先生の人柄に魅かれ、陶房を訪問するようになったのが、やきものの世界に入るきっかけとなった。

2.やきものの定義・分類
 3種類あるが、(1)「土器」は、焼成温度が750℃前後で低いため強度が弱く、吸水性は大きく透光性はない(縄文、弥生土器等)、(2)「陶器」は、焼成温度が1,000℃前後で高いため強度が強く、吸水性は小さく透光性はない(志野、織部、常滑等)、(3)「磁器」は、焼成温度が1,350℃前後で高いため強度が強く、吸水性はなく透光性はある(伊万里、九谷、瀬戸等)。

3.やきものの日中の歴史
 日本で最初に7世紀の飛鳥時代に、奈良にて須恵器、中国で9世紀の唐時代に、唐三彩が作られ日本に伝わって奈良三彩が作られた。平安初期に猿投窯、中国の宋時代に白磁、青磁、元の時代に染付磁器が作られた。さらに、室町時代半ば足利義政の頃に、茶の湯の文化がほぼでき上がったと言われている。同時に、織田信長の力により茶陶の価値が飛躍的に向上した。千利休により楽焼が作られ、志野・織部・黄瀬戸などの陶器が作られた。また、秀吉の時代の唐津、萩、薩摩、京焼の陶器、並びに酒井田柿右衛門の有田、伊万里、九谷の磁器が作られた。東インド会社は、中国の明から買い付けていたが政情不安により、日本から有田焼など初めて買い付け、欧州で販売し、大変好評を得た。江戸時代末期に瀬戸の磁器、明治時代には工業製品として磁器が大量に生産された。昭和時代の荒川豊蔵、加藤唐九郎が桃山時代の陶器を再現した。

4.地元のやきものの変遷
 平安時代に初めて猿投窯が作られ、その技術が東山、渥美、常滑に伝わった。さらに、東山から瀬戸に伝わり、中国の磁器の写しや黒っぽい施釉陶器を作っていた。室町、桃山時代に美濃に伝わった。1806年に加藤民吉が初めて磁器をつくり、1900年代初めに磁器生産日本一となった。美濃では人間国宝の荒川豊蔵、加藤唐九郎を輩出し、陶器では最も盛んである。

5.茶の湯の文化とやきもの
 茶の湯の文化は、16世紀の足利義政以降、大名、上流階級の社交の場などで奨励され、桃山時代に大きく花開いた。千利休は、わび茶の精神を茶碗に具現化する形で、長次郎に「黒楽茶碗」を作らせた。それは、何かを表現するのではなく、表現しないための技術である。表現を殺していくと色は「黒」となり、ろくろで作った人工的な形ではなく、手で作ったいびつな形こそが自然のままの技術と言われている。長次郎、光悦の楽焼や仁清、乾山の京焼が当時の一流ブランドと言える。

6.やきもの作り
 焼成、土、細工の3つがあるが、焼成が製品の出来栄えに最も大きな影響を与える。酸化焼成と還元焼成がある。愛知県が陶器、磁器で栄えた理由は木節など最高の土に恵まれたことである。中国では磁器が長く作られ、日本では陶器が長く作られたが、その理由はそれらに適した良い土がたくさん取れたということである。

7.やきものの魅力
 (1)無から有を創る:形のない土から形のある器ができる技術、言い換えれば「生命のない土に生命を与える技術」、(2)1000年超の歴史を持つ技法:数多くの陶工、陶芸家の試行錯誤により確立された伝統技法(日本の文化)、(3)用の美:色彩、造形の美に加え、器の機能としての「用の美」を併せ持つ(質感)、(4)手作り: 炎と土と人の手により制作され、全く同じものは2つと存在しない、(5)古い時代へのロマン:昔の多くの人が触れ、使ったものを今自分が手にするわくわく感と希少価値。

8.もうひとつの魅力―陶房
 自然の雰囲気の中にあり、いろいろな分野の有名人とも会うことができ、楽しいやきものの会話ができる。穴窯は現在コストや環境問題の関係で年1回焚くだけである。皆が作り貯めた作品を毎年11月に3日3晩かけて数千個焼いている。

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【23年4月度産業懇談会(火曜G)模様】

テーマ『 日本のマンション あれこれ 』

日  時:平成23年4月12日(火) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 伊吹の間
参加者:33名

三井住友建設(株) 常務執行役員 中部支店長
河野 秀木氏のご紹介

スピーカー:
藤井 圭介(ふじい けいすけ
三井住友建設(株) 中部支店 設計部長

藤井 圭介氏

0.はじめに
 弊社は土木事業が約1/3、建築事業が約2/3の比率である。土木事業では特に大規模なコンクリート橋に注力し、建築事業では住宅がその約1/2を占める。住宅はマンションが主流であり、本日は弊社が得意とする「超高層マンションの建設」にテーマを絞ってお話したい。

1.日本の超高層マンション
 超高層マンションの定義は、高さ60mを超える建築物であり、国土交通大臣の認定が必要である。日本初の超高層マンションは、約35年前に建設された埼玉県の与野ハウス1号棟21階建である。日本初の100m超のマンションは、約25年前に建設された大阪市都島のベルパークシティG棟36階建である。日本初の40階建のマンションは、約22年前に建設された東京都中央区の大川端リバーシティ21リバーポイントタワーであり、弊社が施工した。現在、日本で一番高いマンションは、大阪府北浜タワー54階209mである。

2.住みやすい・使いやすいプラン
 マンションのアクセス形式には、建物の片方に廊下がある「片廊下型」(最も一般的)、建物の真ん中を廊下が横切る「中廊下型」、2〜3戸の住戸毎に階段、エレベーターを共有して作る「階段室型」がある。また、超高層マンションの場合、真中が吹き抜けになっている「ボイド型」、真ん中にエレベーターや階段を集約する「センターコア型」がある。間取りは3LDKをベースに、南面2室の「田の字型」、「南面LD型」、「南面3室型」がある。最近はお客様からいろいろな要望がある。「キッズスペース充実型」はキッズルーム専用のバルコニーやキッズクローゼットを設け、「Wリビング・アイランドキッチン型」はパブリック・プライベート用のリビングを設け、キッチンからどの方向へも目が行き届くプランを提案している。また、戸建ての「庭」に近い感覚で遊び場に使える大きなバルコニーも提案している。

3.マンションの防災・地震対策
 火災発生時の対策として、(1)スプリンクラー、消防ポンプ車から水を供給する連結送水管、消火器等の「消火設備」、(2)防火区画を設けた「延焼防止」、(3)2方向以上の階段への避難を選べる2方向避難、バルコニーに避難用のはしごを設置する「避難動線の確保」、(4)非常用エレベーター、避難階段等の「避難設備」がある。また、耐震性は建築基準法により、(1)中地震に対して損傷を生じないこと(財産の保護)、(2)大地震に対して倒壊、崩壊しないこと(人命の保護)が定められている。超高層マンションは、通常の建物よりも固有周期が長くなっており、周期の長い地震動に対して「共振」してしまい、通常以上に揺れが大きくなる。一般的には10秒程度の周期を長周期と呼ぶことが多く、建築物においては2〜6秒に1回揺れる周期をさす。昨年12月に国土交通省から長周期地震動への対策の試案が出された。2000年以降に建設された超高層マンションはこの試案に示された内容が加味されているため長周期地震動に対して問題ないと考えられている。制震構造、免震構造を取り入れた建築物も有効な対策といわれている。制震構造とは、振動エネルギーを吸収する制震装置により建物の揺れを制御することをいう。制震装置には、最上階の水槽の水や振り子で振動を抑えるアクアダンパー、ハイブリッドマスダンパー、また柔らかい柱や壁が壊れることにより地震力を吸収する装置もある。免震構造とは、建物と基礎の間に取り付けた免震装置により、地震の揺れを伝えにくくすることをいう。免震装置には、積層ゴム免震装置、ベアリングを活用した転がり支承免震装置等がある。95年の阪神淡路大震災以降、免震構造の建物が増加し2008年現在約2,500件、2000年の建築基準法の改正以降、制震構造も増え2008年現在約900件ある。中部圏の免震建物は約400件弱である。また、既設の建物に免震装置を設置して耐震性を確保する方法もある。

4.環境に配慮したマンション計画
 エネルギーの効率化、自然との共生、リユース・リサイクルに配慮し、環境負荷の少ないサスティナブル(持続可能)な建物をめざしている。

5.高機能・高付加価値マンション
 スケルトン・インフィル住宅がある。スケルトンは構造体をいい、インフィルは内装や設備をさす。変わらないものは頑強に、変わるものは柔軟にという考え方で、両者を明確に分離し長期間の使用に耐える住宅をめざしている。また、セキュリティも入口、ロビー、エレベーターホール、各戸玄関の4か所での4タイムズチェックシステムを採用している。

6.マンションの施工システム
 弊社開発の代表的な施工方法であるDOC工法とスクライム工法の2つを説明する。DOC工法は、高品質・高効率をめざして、1日で建物の骨組み(躯体)生産の全ての作業要素を実施する(1サイクル)システム施工法である。メリットは、躯体工期短縮、作業の平準化・省力化、作業の標準化による骨組み(躯体)の精度の確保がある。また、スクライム工法は、主要構造部にほとんど現場打ちのコンクリートを用いず、オールプレキャストコンクリートで施工する工法である。予め製作しておいたコンクリートの部材である柱と梁を現場で組み付けていく工法である。メリットとしては、躯体工期短縮、高品質な骨組み(躯体)生産、現場での作業削減による経済性・施工性の向上がある。

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【名古屋いちばん物語】 No.13

テーマ『 "芸どころ"異聞 』

(株)日比谷総合設備株式会社
加藤 敏

 名古屋開府400年を経て、今なお"芸どころ"の伝統が継承されている。それは江戸中期の宗春時代に興隆した歌舞音曲等の芸能文化がルーツといわれ、能・歌舞伎・浄瑠璃・舞踊・茶華道や琴・三味線・鼓の製作など多彩である。まさに『享元絵巻』や『睦月連理玉椿』の世界である。今でも市民の間で稽古事が盛んなことはその証しである。文化不毛の地と揶揄されたりしたこともあるが、こうした伝統が息づいて、街が"モノの賑わい"だけでなく"ヒトの賑わい"でも栄えることを夢見たい。今回の東日本大震災によって露呈した東京一極集中のエネルギーリスクを軽減するためにもそう願うばかりである。
 さて、今から1世紀ほど前にこの地で2人の男が新しい世界に挑戦していた。1人はヴァイオリンに挑戦した鈴木政吉であり現在の鈴木バイオリン製造(株)の創業者である。政吉は部品の自動加工技術の考案により量産に成功し広く世界に販売した。その頃ヤマハ(株)の創業者である山葉寅楠が浜松でピアノに挑戦していたが、政吉と寅楠は競合を回避するため製作分野を棲み分けたという。政吉の三男慎一はスズキ・メソッドを立上げ若き演奏家の才能教育の道を開いた。慎一がドイツ留学の際に尾張徳川家第19代徳川義親の支援を受けたという逸話もある。そしてもう1人は弦楽器の弓に挑戦した杉藤鍵次郎であり現在の(資)杉藤楽弓社の創業者である。三代目武司の時に鈴木から独立し世界に売り込んだ。いずれも日本一の量産規模を誇っている。
 最近では(株)壱番屋の創業者宗次徳二氏がクラッシック音楽専用の宗次ホールを開設している。すでに年間300回に及ぶコンサートを開催しており、日本有数のホールとして他の追随を許さない。目標の500回も遠い夢ではなさそうである。名古屋ではこのように新しい"芸どころ"の花が咲き誇ってきている。音楽科のある高校や音楽大学が充実しバレエ団も多く活動するなど、街角で稽古姿の子女を見かけることは珍しくない。
 さらに現代のマイスターがいる。弦楽器の製作・販売・修理を手掛ける(株)シャコンヌ社長の窪田博和氏である。大学オーケストラでチェロを演奏した経験を活かし、1976年に個人で弦楽器の修理工房を始め、1982年に現在の会社を設立した。"遺産の保護"と"良い音とニスの解明"を目標とし、世界中の名器のコレクションに心血を注ぎながら、独学で音とニスの研究に没頭し名器の再現を目指している。今では国内に5店舗を展開するなど起業家精神は極めて旺盛であり、個人業が多い手造り製作分野ではトップクラスに躍り出ている。白川公園横の本社の窓からは世界最大級のプラネタリウムが見える。
 窪田氏は弦楽器製作の聖地クレモナ等のオークションに30年に亘って参加し、遺産であるストラディヴァリ等オールド名器を収集してきた。これらの多くは演奏家に貸し出されている。一方、その修理・修復を通じて美しい音の構造とニスの謎に挑戦した。そしてニスの素材である松脂の加熱濃縮方法を究明し6年前にオールドクレモナニスの再現に成功した。特許も取得している。こうして新作楽器の「CHACONNE」(シャコンヌ製ストラディヴァリ)が誕生した。音響専門家の手でストラディヴァリの音に近いことも証明済みである。ストラディヴァリの特徴はホール後方までよく響くといわれる。工房内でストラディヴァリと「CHACONNE」の両方のチェロを弾いてみた。新作楽器も味わいのあるすばらしい響きをしていた。
 製作方法の独自性について尋ねてみた。「表板・裏板等のパーツの強度バランスをとって音を裏板までよく響かせることが大切と考えており、その上で再現したニスを何度も塗っています。これこそ音響理論に基づく正しい楽器作りです。よそは楽器全体の強度とか見た目の美しさを重視しているのではないかと思います」。これまでも多くの人がオールド名器の音の秘密に挑戦してきた。それは今も地球上で続けられている。工房内で実際に音程調整しながら語るその眼差しは10年先を見据えていた。
 ヴァイオリンやチェロ等の「CHACONNE」は恒例のシャコンヌ展示会に出展され高い評価を得ている。また昨年はクレモナの「モンドムジカ」(国際弦楽器見本市)にも出展されパルマ音楽院教授から絶賛されている。来年には教授の率いるアンサンブルにより「CHACONNE」だけの演奏会が日本各地で予定されている。値段も相応とのことであり、徐々に演奏家や愛好家によって演奏され注目を浴びてきている。多くのオールド名器が世界中の富豪の手に渡っている中で、新作楽器がそれと同じ音に近づいたのであれば本当に嬉しいことである。
 北イタリアのミラノ南部に位置するクレモナの地には、16〜18世紀にかけてアマティ・ガルネリ・ストラディヴァリ等弦楽器造りの巨匠が輩出し、今日まで残る多くの名器を製作した。石井高著『秀吉が聴いたヴァイオリン』によると、16世紀後半に天正遣欧少年使節団の一行がクレモナに立寄った際にアマティに会い彼の製作したヴァイオリン等の演奏を聴いているようである。そして彼らが土産品として持ち帰った弦楽器の演奏を聚楽第で聴いた秀吉はその美しい響きに大いに感激したという。時が過ぎ日本で初めてヴァイオリンが製作されたのは文明開化の音を聞いてからである。爾来、人間の声に一番近いといわれる弦楽器は、人生の喜びや哀しみを歌い、そして勇気や励ましを与えながら歴史の中で鳴り響いている。

工房内の一風景
(写真1)工房内の一風景。ニスを塗る回数で色つやが変化し音は良くなる。
展示会の一コマ
(写真2)展示会の一コマ。多くの楽器・弓に触れて音の比較ができる。
毎年秋冬に全国7都市で順番に開催されている。

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【名古屋いちばん物語】 No.14

テーマ『 「住吉の語り部となりたい」 シリーズ第1回 』

料亭つたも主人
深田正雄

紫川ストーリー

 名古屋開府400年祭をキッカケに生粋のなごや人である「住吉の正雄ちゃん」に尾張名古屋の城下町、町衆の話をとの依頼が多くなりました。特に歴史を勉強しているわけでもなく、郷土についての造詣もなく、苦慮しております。ただ、料亭蔦茂の創業者・明治21年生まれの祖父深田良矩が一人の内孫「まさお」に語り続けた口伝を語り継ぎたくコラムをスタートいたします。
 第一回は「紫川」をテーマにお伝えしたく思います。昭和23年生まれの正雄は蔦茂の筋向いの伝光院にある白川幼稚園に入園しました。そこには紫式部のお墓・五輪の塔があり泉が湧いておりました。住吉一帯は泉に恵まれ川の源流となり、それは、紫川と呼ばれ2万7千年前頃・旧石器時代の竪三蔵遺跡、縄文時代の白川公園遺跡・紫川遺跡が流れに沿ってありました。
 海抜11.5mの台地にある料亭蔦茂には現在3本の井戸があり、深さ33尺(10m)に木曽の伏流水が豊富に流れております。開府400年を迎える清洲越えで町衆が住むために徳川家康に命じられた豊臣恩顧の大名は碁盤割のブロックに25本前後の井戸を掘り庶民の生活用水としていたようです。現在も当店ではこの井水で中庭の鯉は溌剌と育ち、生け花はいつまでも元気、調理用としても活躍しております。この3本の井戸も誰が掘ったかわかりせんが、きっと名古屋築城と時を同じにしておると祖父は申しておりました。
 源流は蔦茂界隈、標高差4m、流域1.5kmの紫川は、住吉から西に現在の商工会議所南を流れ(白川公園遺跡)伏見通りを南下して若宮通りを西に洲崎神社の南から堀川に暗渠として現在も流れております。洲崎神社南、現在の大須1丁目花園町は旭廓と呼ばれ江戸時代から遊女800人を超える遊廓街で、大正時代に中村に移転したとのこと(祖父談)。
 祖父たちは女性と遊びに行くことを紫川に行く、そして、良い連れ合いができたときは「紫川にはまる」といっておりました。おじいちゃんは随分、「はまった?」ようでございます。
 明治時代となり、汚水がどす黒くなり紫川がきれいになって欲しい願いを込めて白川と呼ばれるようになったとの口伝でございます。
 科学館と商工会議所の間の筋は江戸中期から花屋町と呼ばれ、紫川の新鮮なパワー水を基に多くの花卉商人が軒を並べ、南寺町に墓参に行く庶民の憩いの場であったようでもあります。

 おじいちゃんから聞いた「二つの紫にまつわる悲しい伝説」が水問題研究所のHPに紹介されています。
 http://www5.ocn.ne.jp/~suiken/dnst/murasaki/murasaki.html

 むかし、名古屋がまだ一面の林で、小さな村が点々としていた頃のある春のことです。
 仕事を終えた村人が、川のほとりまでくると、山道を疲れきった様子で歩いてくる旅の女の姿がありました。
 「もうし、このあたりに泉はないでしょうか。」
 大木の根元からこんこん湧きでる美しい泉を指すと、旅の女は何度も喉をうるおしました。そして村人にたのんで、泉のほとりに小さな小屋を建ててもらい、大木の根元に石を積み重ねた「五輪塔」を建ててもらいました。
 村人は旅の女に思い切って尋ねました。
 「あなたは、いったいどこのお方でございますか。」
 「今まで身分をかくしてすみません。実は京都で、紫式部様というりっぱなお方にお仕えしていた越後というものでございます。式部様がお亡くなりになったので、悲しさのあまり故郷へ帰る途中でしたが、泉があまりに清らかなので、ここで式部様をおとむらいしようとお墓までお願いしたのでございます。」
 村人の思ったとおり、女は都の人でした。
 やがて越後は髪をおろし、尼になりました。
 それから三年間、毎日お花を供えてお経を上げました。
 ある日、村人が墓の前に来ると、一通の手紙がありました。
 「長い間お世話になりました。三年のおつとめが終わったので、式部様のおそばに参ります。」
 村人は、川下の藻にかかった越後の墨染めの衣を見つけました。そして越後のなきがらを式部の墓の傍らに埋めて、厚く葬ってやりました。
 時が経ち、村人はその川を「紫川」、泉を「紫の泉」と呼ぶようになりました。江戸時代後期になると、「昔越後が身を投げて、浮いたり沈み浮いたり沈み、紫川に身を投げた、身を投げた」と唄われていました。
 伝光院は、現在、名東区に移転しています。寺にあった五輪塔も一緒に移っておりました。

以上、引用

地図:
紫川

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【新会員自己紹介】

伊藤 彰彦氏
水曜第2グループ

伊藤 彰彦(いとう あきひこ)
東海旅客鉄道株式会社 秘書部長

【東海旅客鉄道株式会社】
〒450-6101 名古屋市中村区名駅1-1-4
TEL:052-564-2355 FAX:052-587-1394
URL:http://jr-central.co.jp

 東海旅客鉄道株式会社(JR東海)の伊藤でございます。このたび、産業懇談会水曜第2グループに参加させていただくことになりました。宜しくお願いします。
 伊勢湾台風で水に浸かった愛知県西部の旧海部郡(現愛西市)に生まれ、高校まで当地でスクスクと育ちました。その後、関西、東京と移り住み、平成11年に名古屋へ戻ってまいりました。
 当社は、日本の大動脈輸送を担う東海道新幹線と東海地域の在来線網を一体的に維持発展させることを社会的使命とし、超電導リニアによる東海道新幹線バイパスはその使命を長期的かつ安定的に果たし続けるために計画しています。東日本大震災から少しでも早く立ち直ることをしっかりと支える意味でも、安全で安定的な輸送を守りつつ、二重系化となるリニアを着実に進めていかなければならない、と思いを新たにしています。
 産業懇談会では、様々な業種の方々の多様なご意見を拝聴させていただけるものと大いに期待しております。若輩者ではありますが、何とぞご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いします。

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吉田 治伸氏
水曜第1グループ

吉田 治伸(よしだ はるのぶ)
コニックス株式会社 代表取締役社長

【コニックス株式会社】
〒453-0801 名古屋市中村区4-6-22
TEL:052-451-3838 FAX:052-452-2549
URL:http//www.conyx.co.jp

 コニックス株式会社の吉田治伸と申します。前任の当社会長吉田銑三の後をうけ、産業懇親会水曜第1グループに参加させていただくこととなりました。
 どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
 当社は、総合ビルメンテナンス業であります。清掃、警備、設備管理、人材派遣、各種請負業務でパートさんを含め、2,000名を少し超える人間が常時、愛知、岐阜、三重、東京でコニックスの制服を着て、いろいろな建物のお手伝いをしております。(関連会社の北陸のアイビックスまで入れれば約5,000人)
 16年前、婿として当社に入社し、3K(きけん、汚い、きつい)で給料安くて、高齢者が多い、当業界に戸惑いましたが、こんな業種でも「ヒマラヤほどのやりがいがある」と「楽しそう」に行う、「笑顔」で行う、「元気」に行う、を励行したら、本当に「やりがい」のある、定着の良い会社になりました。是非、皆さまのビルのお手伝いさせていただけたらと思います。
 名城小、丸の内中と名古屋のど真ん中で育ち、現在は中村区の会社と一度も名古屋を離れずに生きてきました。この地域への愛情と貢献したい気持ちは人一倍あるつもりです。どうぞ、よろしく、ご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。

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【5月度産業懇談会開催日程】

火曜グループと水曜第1グループの場所は、名古屋観光ホテルです。
グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 場所
火曜グループ
各務芳樹
深田正雄
5月10日 (火)
12:00〜14:00

ジェイアールセントラルビル(株)
常勤監査役 今村 元氏
「名古屋駅の今昔」

18階
伊吹の間
水曜第1グループ 飯田芳宏
落合 肇
5月18日(水)
12:00〜14:00
(株)ベネッセコーポレーション名古屋支社
支社長 日高照夫氏
「弊社業務の紹介及び子どもを取り巻く教育環境の変化」

18階
伊吹の間
水曜第2グループ 片桐清志
見祐次
5月11日(水)
12:00〜14:30

NTT西日本視察会
−家まるごとデジタル化の紹介と、新たなワークスタイルの提案−

ローズコートホテル
3階 アプローズ
中区大須4丁目9-60
木曜グループ 河村嘉男
倉藤金助
5月12日(木)
12:00〜15:30
※第2木曜の開催となりますので、ご注意下さい
ドコモ名古屋ビル視察会
−NTTドコモ施設見学とモバイルの最新技術の紹介−

豆家茶寮Blossa
東区東桜1-1-10
アーバンネット名古屋ビル ブロッサ B1

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【6月度産業懇談会開催日程】
水曜第1グループ以外は、名古屋観光ホテルです。
グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 場所
火曜グループ
各務芳樹
深田正雄
6月7日 (火)
12:00〜14:00

明治電機工業(株) 取締役社長 安井善宏氏
「ロボカップJr.と少年少女発明クラブ設立の経緯」

18階
伊吹の間
水曜第1グループ 飯田芳宏
落合 肇
6月21日(火)
11:30〜14:00
※第3火曜の開催となりますので、ご注意下さい
名古屋市科学館視察会
※ご参加の方には詳細案内をお送りします。
※恐れ入りますが、プラネタリウム座席数の都合上、定員を先着30名様までとさせていただきます。

名古屋商工会議所ビル 2階 名商グリル
水曜第2グループ 片桐清志
見祐次
6月8日(水)
12:00〜14:00

徳倉建設(株) 取締役執行役員営業本部長 郡司哲夫氏
「友愛を世界に!工事を通じて国際貢献・文化交流〜アフリカ・中南米で道路・学校・病院を造る」

18階
伊吹の間
木曜グループ 河村嘉男
倉藤金助
6月16日(木)
12:00〜15:30
リニア・鉄道館視察会
※ご参加の方には詳細案内をお送りします。
※後日、実費を精算させていただきます。

18階
伊吹の間

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【お知らせ】

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【コラム】

コラム1 【保健師からの健康だより】 No.85
花ちゃんからの健康だより

株式会社 スズケン
保健師 鳥巣 妃佳里

『 いいお酒で健康と活力を 』

  新年度を迎え、街中でフレッシュマンを多く見かけるようになりましたね。期待と不安を胸に新しい環境に飛び出していく彼らは、キラキラと輝いてみえます。皆様の会社でも新入社員を迎え入れ、ますます活気づいていることと思います。そして春は歓送迎会、親睦会などのシーズンです。おいしいお酒をいただきながら交流を深めるのはいいことですが、徒然草に「(酒は)百薬の長とはいへど、万の病は酒よりこそ起これ。」とあるように、適量なら身体に良いお酒も、適量を超えると健康を害する毒になります。

 アルコールが身体に及ぼす影響は、摂取した純アルコール量によって大きく変わります。性別、体格、体質にもよりますが、一般にアルコール摂取の適量は、一日あたり純アルコールにして20g程度です。目安としては、ビール中瓶1本(500ml)、日本酒1合(180ml)、ワイン1/4本(180ml)、焼酎は25度だと0.6合(110ml)、20度だと1合になります(全部を合わせた量ではありません)。

 アルコールは適量を飲酒した場合、以下のようなメリットがあります。

  1. 全身の血液循環が良くなり、消化液の分泌が増して食欲が増進する
  2. HDLコレステロールを増やし、LDLコレステロールを減らし、血管を拡張するため脳・心血管系疾患の発症率をさげる
  3. 大脳辺縁系が麻痺し、理性の抑制がとれて喜怒哀楽の感情がでやすくなり、解放感がある
  4. 副交感神経が活発化し、緊張がほぐれリラックスするため周囲の人とのコミュニケーションが円滑になる

 しかし過度の飲酒(一日あたり純アルコール量で60g以上)になるとメリットはなくなり、以下のデメリットがおこります。

  1. 消化管の粘膜が障害され、食欲低下、消化管潰瘍、がんなどを引き起こす
  2. 高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を引き起こし、脳・心血管系疾患の発症率が高まる
  3. アルコール性の肝障害(肝炎、脂肪肝、肝硬変)、膵炎を引き起こす
  4. アルコール依存症、うつ病、自殺のリスクが高まる
  5. 脳が萎縮し、認知症の危険性が高まる

 おいしいお酒を毒にするか薬にするかは、自分次第です。以下の10か条を守って、職場にも身体にもいいお酒を楽しみましょう。

適正飲酒の10か条 (社団法人 アルコール健康医学会協会)

  1. 談笑し 楽しく飲むのが基本です
  2. 食べながら 適量範囲でゆっくりと
  3. 強い酒 薄めて飲むのがオススメです
  4. つくろうよ 週に二日は休肝日
  5. やめようよ きりなく長い飲み続け
  6. 許さない 他人(ひと)への無理強い・イッキ飲み
  7. アルコール 薬と一緒は危険です
  8. 飲まないで 妊娠中と授乳期は
  9. 飲酒後の運動・入浴 要注意
  10. 肝臓など 定期検査を忘れずに

いいお酒をたしなみ、健康と明日への活力を養いましょう!

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コラム2 【「ほん」のひとこと】 No.30
コラム【理念経営物語】

株式会社 正文館書店 取締役会長
谷口正明

『 田辺聖子の古典まんだら 上・下 』
田辺聖子著・新潮社

 「『古典って、ほんとうにおもしろいの?』……そんな人たちに、これなら間違いありません!と自信をもっておすすめできるのが本書である」
 「田辺マジックにかかると、古典の登場人物たちが、いっきに身近な存在となり、生き生きとした表情を見せはじめる」
 高校で教師をしていたときに生徒たちからなぜ古典を学ぶのかと質問されて「おもしろいからよ」と答えた歌人の俵万智が、この本の帯に書いたのが上の言葉です。
 『古事記』から江戸文学まで、わが国の古典文学を楽しく紹介した入門書です。最初の章『古事記』を読んで、次々に生まれてくる神々の紹介の手際のよさに舌を巻いてから、もう一章読んでから寝ようとページを繰るうちに、一気に読んでしまいました。読後には、どの古典から手を着けようかと迷う、贅沢なひとときを味わうことができました。
 著者の、「古典って深くておもしろい、大好き」という想いがひしひしと伝わってくる好著です。

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コラム3 【苗字随想】 No.107
コラム【理念経営物語】

片桐清志

」と苗字

 先月号では名古屋市科学館にオープンした世界最大のプラネタリウムに因んで「天」をテーマに取り上げた。今月もその続きで宇宙の「宇」に注目してみたい。
 「宇」で始まる苗字の種類は「天」の186種よりもはるかに多い324種が見つかった。日常生活では「宇宙」以外ほとんどお目にかからない字であるにも拘わらず、苗字の種類がこんなに多いのも珍しい。「宇」が持つ雄大さが好まれたこともあるだろうが、「宇」が単音で字画も少ないことから草書体がひらがなの「う」の元字になったり、漢字の部首名「うかんむり」の由来になったりしたため、身近な存在として広く親しまれたこともありそうだ。一字姓の「宇」さんも居て、そのままウとお呼びする。
 苗字ランキング(佐久間 英)でも「宇」姓は結構メジャーだ。トップは宇田川(ウタガワ・ウダガワ・ウダカワ)の255位で、宇野(ウノ)の412位、宇佐美(ウサミ)の592位、宇田(ウダ)の920位、宇都宮(ウツノミヤ)の998位の5姓が堂々の1000番内だ。宇佐見(ウサミ)の1639位、宇山(ウヤマ)の1728位、宇井(ウイ)の1732位、宇津木(ウツキ・ウツギ・ウヅキ)の1934位も2000番内だ。宇治(ウジ)の2142位、宇賀(ウガ)の2519位も3000番内に登場する。
 ユニークな苗字では宇仁(ウニ)、宇利(ウリ)、宇古(ウコ)、宇呂(ウロ)、宇和(ウワ)、宇喜(ウキ)、宇須(ウス)、宇土(ウド)、宇夫(ウブ)、宇恵(ウエ)、宇智(ウチ)、宇曾(ウソ)、宇根(ウネ)、宇麻(ウマ)、宇母(ウモ)、宇良(ウラ)、宇留(ウル)、宇尾(ウオ)、宇口(ウグチ)、宇津呂(ウツロ)などがある。
 宇佐(ウサ)はローマ字表記ではUSAになる。宇名(ウナ)も宇姓の代表みたいだ。驚いたことに宇宙(ウチュウ)も見つかった。宇宙関係のイベントに招待すればサプライズ間違いなしだ。

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【平成23年4月号編集後記】

 第24回全国経済同友会セミナーが、九州新幹線の全線開通したばかりの福岡で4月14日開催された。当初は「アジア時代を活きる!」をテーマに14日・15日の両日の予定だったが、3月11日に起こった東日本大震災のためテーマを「緊急日本復興会議」に変更し、日程も一日に短縮しての開催となった。未曾有の大災害からわずか1ヶ月後の開催となったが、前回を上回る1019名の参加が関心の高さと復興支援の意気込みを物語っている。プログラムも基調講演では大前研一氏の「震災復興とこれからの日本」が、その後の「日本復興パネルディスカッション」では岩手・仙台・福島の経済同友会の代表も参加して現地からの被災状況報告に基づき熱心に議論された。会議の最後に異例とも言える「緊急復興アピール」と義援金の贈呈報告がなされた。
 基調講演では「この苦難を今後の復興にどう生かすか」という視点から「過去と訣別して21世紀ビジョン」の実現を目指せとの示唆が、パネルディスカッションでは「阪神淡路大震災」の復旧・復興時の教訓の活用、広域災害に対する支援のあり方、自治体の役割と道州制構想、経済復興と地場産業、財源問題等の幅広いテーマで具体的に議論され、「緊急復興アピール」に集約された。
 震災直後は被災規模の甚大さと電力問題のため各種イベントの中止・自粛が相次いだが、過度の自粛は経済の停滞を生み復興の力を失いかねない。心情的にはやむを得ない部分もあるが、現時点では「がんばろう日本」が合言葉だ。復興には経済の活力が不可欠だ。経済人の使命としても生産活動・経済活動を一刻も早く正常化することが急務だ。被災地の生活インフラの復旧も急ピッチで進んでいる。息長い支援の仕組みもいろんな分野で生まれつつある。戦後日本の復興はアジア各国の成長のお手本になっている。日本中が知恵を絞れば今度は「災害に強い街づくり」のお手本ができるはずだ。

 さて中部経済同友会の新体制がスタートした。滝筆頭代表幹事が掲げるテーマは「Create CHUBU/Challenge NAGOYA」だ。「環境」「観光」「感応」の3KAN(環・観・感)に焦点を当てた中部地域の活性化を目指している。当地域が持つ「強さとしなやかさ」を基に、「自信と誇り」を取り戻し、「自身のできることを見極め、具現化しよう」と呼びかけている。試練を乗り越える決意をもって今年度の活動に取り組みたい。

 産業懇談会にも早速、新会員2名をお迎えすることができた。本年度も交流の輪が広がる企画を世話人としても心がける所存だ。楽しみにしていただきたい。

(片桐)