コラム1 【保健師からの健康だより】 No.84
株式会社 スズケン
保健師 鳥巣 妃佳里
『 みんな頑張ってますよ! 』
このたびの東日本大地震により被災された方をはじめ関係者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。そしてこの大惨事によりお亡くなりになられたご家族の皆様のご冥福をお祈り申し上げます。
人は毎日たくさんのこと(ストレッサー)に出会いながら生活をしています。頑張って取り組んでみたり、時にはちょっと休憩を取ってみたり(ストレス対処)しながらバランスをとっていくものですが、それができなくなったとき人は心身の健康を損ないます。ストレスとはストレッサーによる刺激を受けている状態のことを言いますが、ストレスにも良いものと悪いものがあり、どちらになるかはその人の受け止め方によってかわります。ストレス学説を提唱したカナダの生理学者ハンス・セリエ博士は「ストレスは人生のスパイスである」とも言っています。
ある看護学生の小児科実習のときの話です。学生はAちゃんという4歳の女の子を受け持ちました。Aちゃんはほぼ毎日、痛い検査や辛い治療を頑張っています。ある朝、担当の医師が採血をしにきました。先生もお母さんも看護師もみんなが「Aちゃんが元気になるための大切な検査だよ。ちょっとだけチクッとするけど頑張ろうね」といいます。Aちゃんは目にいっぱい涙をためながら両手を握り締めて踏ん張り、採血をしました。そして「ガンバってる!! ガンバってるぅ!!」と大きな声で言いました。
私は今回の地震報道を見るたび、Aちゃんの言葉を思い出します。そして「みんな頑張ってますよ!」と言いたくなります。緊急事態ですから生きるためにしなければならないことはたくさんありますし、今はみんなが必死に頑張らなければならないときです。ただ「みんな同じ」「いまは当然のこと」「頑張って」と言われるだけでは悪いストレスにしかならず、バランスを崩してしまいます。
だから周りに気になる人がいたとき、またはすこし落ち着いてきたときでいいので、その人たちに自分がどれだけ頑張ってきたかを話させてあげてほしいなと思います。そして皆さんも聴いてもらえる相手を見つけてお話ししてください。
【聴くときのポイント】
- 相手の話を遮ったり、こちらから話題をかえることはしない
- 相手が気持ちよく話ができるように相づちを打ち、話を促す
- アドバイスや自分の考えを言うこと、励ますことはしない
日本観測史上初という大地震がおこりました。日本中、世界中の人たちが関心を持ち、支援を申し出たり応援メッセージを届けてくれていますね。そしてひとりひとりが自分にできることは何かを考えて、実践しています。被災された方はもちろんのこと、多くの人がそれぞれの立場でいまの自分にできることを必死に頑張っています。だからこそ自信を持って大きな声で「頑張ってますよ!」と伝え合いましょう。
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