1. 色は人に影響を与える
人間の五感、すなわち、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の各感覚の中でも視覚は87%を占めており、外界から受けとる情報の割合は、視覚によるところが圧倒的である。1960年代に米国大統領選挙に出馬したケネディ元大統領は、「自分に似合う色」の衣服に身を包み、自身の顔や雰囲気をより好印象に見せることに成功し、視覚的効果を発揮させ、大統領選に勝利した。現在では、企業における色彩戦略が活発に行われており、金融関係では、信頼を感じさせる色を、外食産業では食欲を刺激して集客に繋げる色をコーポレートカラーに使用している。また、店舗では、より商品価値を高めるために照明効果を利用したり、オフィスでも室内の色彩環境を工夫することで、売上やモチベーション向上に繋げている。正に、色彩を制することは、人の心を掴むことであり、選挙や商売、受験、更には恋愛でも勝利に繋がるのである。
2. 不思議な色彩のチカラ 〜色の心理効果〜
色彩には、温度や重量、位置感覚に加え、興奮と沈静効果などの心理効果がある。例えば、赤や赤橙、黄橙、黄色などの暖色系の色を使用した部屋は実際の温度よりも暖かく感じ、青緑や緑青、青、青紫などの寒色系の色を使用した部屋は涼しく感じるものである。加えて、高明度(白など)の色のスーツケースは実際よりも軽く感じ、低明度(黒など)の色のスーツケースは重く感じる。進出色の自動車は実際の距離よりも近く感じ、後退色の自動車は遠く感じてしまうことで、事故の確率が高いとも言われている。
また、単色はネガティブ、ポジティブの双方のイメージを持っており、例えば、赤は、勇気や情熱、元気などのポジティブイメージと、危険や禁止、攻撃などのネガティブイメージを持つ。黒は、強い、高級感、洗練などのイメージとともに、不安や絶望、恐怖などといったイメージを併せ持っている。
3. パーソナルカラー
人には個人の好みとは別に、自身に似合うパーソナルカラーが存在する。これを認識し、身に付けることで、表情がイキイキと見える。相手に信頼感を与える。異性に好感を与える。やる気をアピールするなどの効果がある。自身のパーソナルカラーを知る場合には、まず、肌や目、髪の色で分類される色味度(アンダートーン)を認識する必要がある。アンダートーンのなかにはイエローとブルーの2つのアンダートーンがあり、イエローのなかでは、ソフトで華やかなSPRING、ハードで落ち着きのあるAUTUMNに分けられる。一方、ブルーでは、ソフトで落ち着きのあるSUMMER、ハードで華やかなWINTERの2つに分けられる。SPRINGに分類される人は、明るい鮮やかな色が似合い、くすんだ色は元気なく見えてしまう。AUTUMNに分類される人は、深くてシックな色が似合うが、鮮やかな原色は浮いてしまう可能性が高い。SUMMERに分類される人は、淡い色が似合うが、黄味のある色や鮮やか過ぎる色は顔色を悪く見せてしまう。WINTERに分類される人はコントラストの強い色が似合う反面、淡い色はぼやけた印象になってしまう。色は人に与える影響力や心理的効果が高い。このようにして、自身のパーソナルカラーを認識し、自己表現を楽しんでみたらいかがだろうか。
4. カラーユニバーサルデザイン
日本国内の先天的な色弱者は、320万人以上といわれており、その割合は男性では20人に1人(5%)、女性では500人に1人(0.2%)となっている。世界的に見れば2億人を超える人々が先天的な色弱者とされている。現在、色を使い情報を伝えるケースが10年前と比較して非常に多くなっているものの、一般の色覚の人の見え方だけを考慮して設計されている場合が多く、色弱者が情報を読み取れず、不便を感じ、暮らしにくい思いを抱いているケースが多くなっている。そこで、配色を工夫することにより全ての人に美しく感じられるデザインでありながら、情報を正確に伝えることを目的としたカラーユニバーサルデザインが重要視されている。公共物の事例では、地下鉄の路線図には、路線を色で区別すると同時に、文字併記や模様を付けることで識別性を高めている。このような流れを受け、弊社では印刷分野における、色弱者にも分かりやすい推奨色や配色を集めた「ユニバーサルデザイン推奨配色セット」を提案している。
現在弊社では公共施設でのカラーユニバーサルデザイン等の色彩提案を展開しております。皆様の企業でお役に立てることがあれば是非お申し付け下さい。
052-951-9381 DIC(株)総務 岡
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