今回の産業懇談会視察会は、更生保護法人 岡崎自啓会(岡崎市戸崎町字牛転10番地)を見学した。
一行は、11時00分にバスで商工会議所ビルを出発し、昼食後、更生保護法人岡崎自啓会に到着。はじめに、集会室にて落合世話人のご挨拶の後、更生保護法人岡崎自啓会 理事長 黒河 陽様、名古屋保護観察所 所長 鈴木康之様、愛知県更生保護協会 事務局長 坂井田 学様からもご挨拶をいただいた。自啓会の施設内を視察した後は、集会室に戻り、鈴木様、坂井田様のご講演を拝聴した。
◆更生保護法人 岡崎自啓会
岡崎自啓会は、更生保護事業法に基づき、法務大臣の認可を受け設立された更生保護法人である。更生保護の事業を営む民間団体で、明治34年12月に「愛知慈恵会三河支部」として創立された。昭和15年に「岡崎自啓会」として独立し、昭和25年7月の更生緊急保護法の施行に基づき、12月に更生保護事業として認可された。また、昭和63年には更生保護会設立100周年記念式典において法務大臣賞を受賞した。平成8年4月に更生保護法人に組織変更し、現在に至っている。
現在、岡崎自啓会には収容定員33名に対し、22名(定員の68%)が在所しており、刑務所から仮釈放中(3号観察)の18名と保護観察期間終了後、自立準備中(法定期間は6ヶ月)の4名が共同生活を行っている。そのうち17名は現在、民間企業などで就業中である。
また、同施設では、被保護者に対して、月に一度外部講師を招き、対人・社会適合訓練を行う一方、レクリエーションとしてボーリング大会や餅つき大会等も開催している。
◆施設内視察
今回は、被保護者の居室、食堂、浴室、監察官の宿泊部屋、事務所の5ヶ所を視察した。
まず、居室は一人部屋、二人部屋が用意されており、保護時の面接で本人の経歴、性格等を考慮した上で決定する。居室では扇風機の使用が認められているものの、当日も気温が大変高く、窓を開けて暑さを凌いでいる姿が散見された。
続いて、食堂、その奥の浴室を視察。食事は被保護者の一番の楽しみと言っても過言ではない。夏場は日中の衛生面(食中毒の発生等)を考慮して、昼食以外の2食だけ用意される。食堂の壁面には、被保護者のコラージュ作品が飾られていた。作品はその内容や対象物により、個々人の深層心理を読み取るコラージュ療法によって作成されたものであり、食べ物や女性タレント、自然の風景等、作品にはそれぞれの想いが現れていた。浴室は、一度に3名が入浴できる広さで、基本的に毎日の入浴が可能であり、被保護者にとっては入浴も日々の楽しみの一つとなっている。
施設内には清掃の分担表なども貼られており、共同生活を行いながら、社会復帰を目指す被保護者の生活を垣間見ることができた。
◆ご講演
名古屋保護観察所 所長 鈴木 康之氏 「犯罪と社会」
アメリカでは成人男性90人に1人、年間230万人が刑務所に入所している一方、日本国内の犯罪は平成10年より急増し14年にピークを迎えて以降、漸減しており、成人男性1000人に1人の割合の入所に留まる。しかし、再犯者率が高い為、刑務所収容率が高くなっている。我々にとって重要なことは「罪を犯しても再犯させずに更生させる」ことである。元々、日本は犯罪や更生保護に対する関心が高く、例えば地域社会と交番の連携も密である。保護司制度も整っており、その役割を民間人が担っていることも大きい。今後も、社会全体への幅広い犯罪対策が必要であり、また更生保護・保護司活動へのご理解とご支援も更に深めていただきたいと思っている。
愛知県更生保護協会 事務局長 坂井田 学氏「更生保護事業」
日本には保護司をはじめ、更生保護女性会、BBS会(青年ボランティアの会)などがあり、再犯防止に向け、様々な活動に取り組んでいる。このような活動に対して、愛知県更生保護協会では各事業に資金援助し、更生保護活動の支援を行っている。是非とも、一人でも多くの皆さんから、更生保護に対する温かいご支援をいただきたいと思っている。
今回の更生保護法人 岡崎自啓会の視察会では、「更生保護」の現場を実際に目にすることができ、大変貴重な機会であった。今後は民間の「更生保護」に対する関心・認知度を更に高め、それぞれの立場から支援活動を行っていくことが必要ではないだろうか。視察、ご講演後の質疑応答も活発に行われ、最後に飯田世話人よりご挨拶をいただき、閉会となった。
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