1. 株式会社NTTデータ
現在、社員は単体で約9000名、連結では約36000名にのぼる。業務内容はシステムインテグレーションといわれる、お客様のコンピュータシステムの構築を主な事業としている。我々の事業は楽天やyahooなどのインターネットを通じて行う一般コンシューマー向けとは違い、一般企業や金融機関、官公庁などをお客様とし、システム構築だけでなくIT戦略の立案から保守運用まで、IT関係のサポートをトータルで行っている。
具体的には、一般企業の財務会計、販売管理、生産管理、人事給与などのシステムから、金融機関では、勘定系・情報系システム、全銀システム等の決済システム、公共機関では、中央官庁、自治体、医療機関のシステム構築などを行っている。
2. 企業変革活動のはじまり
NTTデータは、電電公社からNTTになった直後の1988年に分社化し、その後、売上は順調に推移していたものの、2000年頃から成長が横ばいとなった。2004年に中期計画を立てるにあたり更に高い成長を目指すため、(1)お客様満足度No.1を目指す、(2)さまざまな施策を行い更なる成長を目指す、(3)売上高1兆円を目指すという目標を掲げた。しかし、当時の問題点は数字面のみならず内的課題も大きかった。我々の問題意識として、(1)ノウハウの横展開ができていない、(2)社員が抱える自社に対する閉塞感、(3)トラブルが減らない、などがあった。このような状況を打開するため、企業変革活動に取組むことになった。
3. 変革のための具体策
まず、現状を把握するために社員にアンケートをとり、問題点を可視化することから始めた。そして、会社として目指すものを明確にするために、社員から有志を募ってワーキンググループを作り、役員を含めた議論を繰り返した結果、10年後のあるべき姿を「Global IT Innovator」とし、「グローバル化」、「生活者起点」、「ワークスタイルイノベーション」をビジョンとして掲げた。同時に、「社会的責任と顧客志向」「自発性」「挑戦、スピード」「チームワーク」などを行動ガイドラインとして明確にした。その後、ビジョンを浸透させるために管理職を対象にしたセッションや、幹部と現場との対話会などの活動を繰り返した。このような地道な浸透活動とは別に、目に見える成果がなければ継続性が保てないということで、再度社員有志を募り、行動改革ワーキンググループとして、ビジョンを実現する具体策を検討した。
4. 社内SNS(ソーシャルネットワーキングシステム)
ワーキンググループでの検討結果の一つとして、「セクショナリズムを排して、仲間の知恵と力を合せる」ことを目的とする社内SNS(「Nexti」)の導入が提案された。Nextiは社員有志のボランティアで運営されているが、現在ではグループ会社にも広がり、約10,000人が登録している。その1割は週に1回は利用しており、1日100件ほどの投稿が寄せられている。Nextiの導入により、思っていることを自由にネットに書き込むことで、普段、顔を合わせない社員間でも情報交換やコミュニケーションが容易となり、自分の担当以外のところが何をやっているのか、他の社員がどんなことを思っているのかが判るようになった。結果として社員が組織や役割を越えて助け合い、強制せずとも情報が流通する風通しの良い社風作りに役立っている。
5. 企業変革活動が目指すもの
当初は電電公社で主に全国的、公共的なオンラインシステムを中心とした事業を始め、次に、大規模開発が得意なシステムインテグレーターとして金融機関、官公庁、企業のシステム開発を生業としてきた。しかし、オープン化、インターネット、オフショア開発、クラウドコンピューティングなどの技術進歩、グローバル化でITサービス業界は大きな変革期を迎えている。生き残るためには、自分達の思考や行動パターン、企業風土を変えなくてはならない。それができなければ、このような激しい環境変化についてはいけない。我々は、新たな企業文化を作るため、社員一人ひとり、職場・組織単位で意識を変え、組織の壁を越えて連携しつつ、それぞれが自律的な行動をするための行動改革に努力している。 |