1.デベロッパーから見た「ナゴヤ」の魅力
ナゴヤは暮らしやすく住みやすい非常に魅力的な街であるにもかかわらず、外から見たイメージはそれほど良くないのが現状ではなかろうか。そのようななか、日本各地で複合的な街づくりを生業としているデベロッパーからみた、現在のナゴヤの姿と将来の街づくりについて話をしたい。
ナゴヤは都市部(栄から半径5`以内)に行政、商業、文化などの都市機能が集積されており、住民や来訪者にとって判りやすいコンパクトな都市構成である。また、交通インフラが非常に発達しているのも特徴であり、東京と大阪の中間に位置し、訪れやすく、出やすい点も魅力の一つである。加えて、当地域にはモノづくり文化や豊かな自然環境、歴史・精神文化の宝庫であり、さまざまなイベントや、食文化、スポーツからサブカルチャーまで、実は非常に数多くの訴求要素や魅力を持った地域なのである。
2.デベロッパーから見た「ナゴヤ」の疑問点
まず、ナゴヤの不思議な弱点として、さまざまな魅力や訴求要素を持っているにもかかわらず、情報発信力が弱いことが挙げられる。街づくりについていえば、日本でも有数の港湾を持った港湾都市の割には、街から海が非常に遠く感じられ、水辺に親しむことが少ない。堀川では改修工事が進められているものの、家族連れやアベックで訪れるところまで発展していないのが現状である。東京の港湾地帯などでは、かつての工場や物流跡地を活用した商業施設や住居の開発が進められているが、ナゴヤでは港湾が産業用として活発に利用されており、産業が好調であるが故に、住民にとって魅力ある水辺の開発を難しくしている。また、ナゴヤの特徴として地下街の発達があげられるが、これも利便性が高い一方で、大規模な植栽ができないなど都市計画のネックになっていることが考えられる。
3.街づくりの将来「都市間競争に向けて」
ナゴヤの都心を語る際に、名駅対栄という図式で語られることが多いが、このような観点で街を考えるのではなく、両者が一緒になってナゴヤの街を魅力的にしていくことを考えるべきであろう。ナゴヤの街を日本国内の他都市のみならず、世界の都市と比べても、優位にするためには、どのような魅力を付加していくのかを考えなくてはならない。そのためには、名駅と栄が担う役割が相違してもいいのではなかろうか。名駅エリアは交通の結節点であり、ナゴヤの玄関口として、また、オフィスビルが林立するビジネス街としての顔を持つ一方、栄は百貨店をはじめとした商業集積に加え、緑化された公園、博物館や美術館などの文化的施設も隣接しており、ショッピングのみならず、芝居や音楽の鑑賞を楽しむなど文化的色彩を持っている。エリア間競争、都市間競争には名駅と栄が、それぞれの特徴を活かし、有機的に結合することが不可欠なのである。
4.ナゴヤを魅力溢れる都市とするために
現在、名駅地区や栄南地区で街づくり協議会が活発な活動を行っている。これらは地元が自ら地域活性化を考え、行政と協力して街を発展させることを目指している。今後は各地域の協議会が手を組み、ナゴヤ全体の街づくりを進めていくべきではなかろうか。
また、インフラコストの抑制や自然保護を含めた低炭素化社会に向けた街づくり、高齢化社会に向けた利便性向上などの観点から、コンパクトシティという考え方がクローズアップされている。今後、環境都市を目指すナゴヤでも市街地を濃密にする一方で、郊外に自然を残すといった、活用すべきは活用し、残すべきものは残すというメリハリをつけた都市開発が望まれる。また、2025年にはリニアが開業し、東京と名古屋は40分で結ばれる。これにより、人の流れが大きく変わり、ナゴヤの街にも大きな影響を与えるであろう。企業内におけるナゴヤ支店の存在意味が薄れたり、住民が魅力ある商品を求めて東京まで買い物に出掛けるなど、ナゴヤから企業や人が離れていく危険性と同時に、東京が近くなることで東京のモノや会社をナゴヤに引き込めるチャンスも生まれる可能性もある。そのチャンスを掴むためには、2025年までに、ナゴヤをみんなが訪れ、働き、学び、住みたいと感じる魅力ある街にするための方策を協議会と住民が議論し、行政を巻き込み、変えるべきところは変えていく取組みが必要であろう。
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