参加者から活発な質問や意見交換がなされ、意義深いものとなった。
1.事業の再生 ― 任意整理・民事再生・会社更生法
昨今の経済状況下、「民事再生法の適用を申請」「会社更生法の手続きを申請」などの倒産に関わる記事をよく目にする。企業業績が悪化し経営が行き詰まる企業にとって、事業継続するための再生手続きには、「任意整理」「民事再生」「会社更生法」がある。
「任意整理」は裁判所を使わず、弁護士等により直接債権者と話し合い、今後の返済額や返済方法を決めるもので、債権者の理解があれば、費用が少なくて済む方法である。
しかし、債権者に難しいものがいたり、スポンサー企業が、民事再生等して債務免除を得ることを条件に事業譲渡を受けるという考え方であれば、裁判所での法的な手続きをとることになる。
「民事再生」は会社更生法と違って経営者をかえる必要はないものであるが、自主再建をするのは困難を伴う。なぜなら、仕入先は信用がなくなった再生債務者に対し、仕入れ代金の前払いを要求したりするし、債務を免除してもらっても債務免除益に多額の税金が課せられてしまうからである。債務免除益に税金を課す税制自体に問題があるのではないかと思わざるを得ない。債務免除益に課される税金を回避するために、弁護士は知恵を絞ることになる。
2.債権者の立場
得意先が民事再生など法的手続きをとった場合どうするかについては、やれることがあればやり、主張できることがあればするというスタンスで臨んでいただきたい。所有権留保しているものは引き上げることができる。債務を有していれば相殺することもできる。商事留置権が活躍することもある。
3.過払い金返還請求
今年6月には、出資法や貸金業法の改正によりグレーゾーン金利はなくなっていく。新聞などでは消費者金融に対する過払い金返還請求が高止まりであるかのように報道されているが、実感と異なる。過払い金返還請求は急速に終息していくと思われる。利息制限法の金利は15%・18%・20%であるが、これでも高金利であるので、銀行などがかなり前から消費者金融を手がけているのである。なお、過払い金返還請求ができる人は長年地道に支払ってきた人で、安易に自己破産するのではなく、真面目なタイプの人が多い。過払い金返還請求権の消滅時効は10年なので、完済してから10年経っていなければ過払い金返還請求ができる。過払い金が戻ってきて自己破産しなくて済んだ人もたくさんいる。
4.最近のトピックス ― 裁判員制度、刑事事件
裁判員制度は、さまざまな問題点があるので、今後見直しが必要である。一般の方々には、逮捕勾留された中での取調べが、いかに過酷なものであるかを少しでも理解していただきたい。
犯罪を犯したと疑われた人を弁護できるのは、弁護士だけである。弁護士は憲法上、被疑者や被告人を弁護すべき職責を負っている職業だ。しかし、強制力は何も手のうちにない。国家権力をバックにし、身柄を拘束でき捜索差押もできる検察官と対等に戦うことは極めて困難である。冤罪は過去のものではない。鹿児島の選挙違反事件、強姦事件、痴漢事件などがある。国税局と連携をとった捜査もよく見られ、いつ何時あなたがターゲットになるかもしれない。
5.質疑応答、意見など
Q:取引先が倒産してから慌てるのでなく、予防策を講じておくべきである。どんな予防策を講じればよいか。
A:契約する時や注文を受ける時に、所有権留保特約や相殺特約をつけることができないか検討してほしい。また、取引量が多量になる場合や手形をジャンプしてほしいと頼まれた時に連帯保証人をつけてもらうという方法もある。
さらに、その取引先の経営状態が危うくなっていないかを見るには、噂が出たときノーアポイントで突然に会社訪問することも対策となる。ベテラン従業員の退職、不可解な電話応対が聞こえるなどは危険な兆候である。このように企業における与信管理は実際に会社の状況を自分の目で確かめることも重要である。
その他のQ:契約書に貼る印紙代を節約するために契約書を作成していないが、トラブルになった時どうなるかetc… |