1. 保護司制度の現状と課題
日本の犯罪情勢を見ると、安全神話は過去のもので、平成14年には犯罪件数が350万件を超えた。内訳を見ると、報道の影響もあり殺人が増加しているような印象があるが、殺人、放火などの重犯罪は横ばい状態で、自転車盗や自動車盗など、窃盗犯罪が増加している。
ただ、先進諸国との比較では日本の犯罪件数は少なく、殺人事件に限れば、アメリカは人口比で日本の5.5倍、フランス、ドイツは3倍である。また、刑務所人口を比較しても日本は先進国のなかで一番少なく、アメリカの刑務所人口230万人に対し、8万人弱である。このうち毎年3.3万人が出所し、半数は満期出所、半数は仮釈放となっている。仮釈放の出所者には面倒をみる保護司がつき、家族とともに支えられるが、満期出所者は行く場所もなく出所しているのが実態である。こうした実情もあり、犯罪件数の6割が再犯者によるもので、満期出所者の55%、仮出所者でも35%が5年以内に再入所している。
このため、再犯を防止することは重要な課題となっており、現在では「保護観察を強化し、青少年・初犯者の再犯防止」、「民間の更生保護施設に頼らず、国営の自立更生促進センターの設置による刑務所出所者の再犯防止」、「就労支援などのNPO法人設立による無職者の再犯防止」の3本柱で改善更生策に取り組んでいる。
2. 保護司とは
保護司は、犯罪をした人や非行のある少年の立ち直りを地域で支えるボランティアである。社会的信望、熱意と時間的余裕、生活が安定、健康と活動力がその要件で、任期2年、76歳定年となっている。しかし、保護司は他のボランティアと比べ、困難な任務であることや、家族の理解と協力が不可欠であることなどから、最近では「なり手」が少なくなっている。このため、地域ごとに保護司候補者検討協議会を設置し、自治体、PTA、学校などさまざまな人の協力により新たな候補者を探すとともに、保護司の方々に少しでも活動を行いやすくしてもらうため、面接場所の提供や、保護司会での研修等の支援にも取り組んでいる。
<体験談 保護司 小林 邦夫様>
日本の刑事司法制度は交番から始まり、保護司で終ると言われている。我々、保護司は犯罪者を社会に帰すための重要な使命を担っている。保護司の仕事は信頼関係が重要で最初は横を向いて話をしていても信頼関係ができてくれば、徐々にこちらに目を向けて話してくれるようになる。
長年、保護司として忍耐強く対応するうちに、当初の「お世話してあげている」という気持ちが、今は「お世話させていただいている」という気持ちになっている。
<体験談 保護司 高羽 節子様>
私も保護司として事務的な対応とならないよう、信頼関係の構築に心がけている。これまで数多くの対象者を受け持って感じることは、犯罪は悪いことだが、親からの愛情が足りなくても、地域や学校など、社会からのちょっとした愛情を受けていれば、罪を犯さなかったのではないかとの思いがあり、社会の支援はとても大きな意味があるということである。
3. 愛知県更生保護協会
日本の社会には、保護司をはじめ、更生保護女性会、BBS会(青年ボランティアの会)などがあり、再犯防止に向けたさまざまな活動に取り組んでいる。こういった活動に対して、愛知県更生保護協会では、各事業に資金援助し、更生保護活動を支援している。是非とも、一人でも多くの皆さんから、更生保護に対する暖かいご支援をいただきたいと思っている。
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