ローレンシャンスクールは30年前、私の母が始めた学校で、中学受験、大学受験を中心に生徒数を増やし、これまで名古屋校、西名古屋校、桑名校、津校を展開してきた。しかし、教育業界は2006年の大学全入時代(入学希望者総数が入学定員総数を下回る状況)を迎えると、私立大学を中心に推薦入学の割合が高くなり、試験を伴う本試入学の割合が大きく減少した。このため、大手予備校でも倒産が起こり、資格取得学校等への事業転換が図られるようになった。
受験はより早いステージに移り、今では中学受験、そして小学受験にシフトしている。名古屋でも2年前、名古屋で初めて男女共学の私立校、南山大学付属小学校が創設された。これまで、ローレンシャンスクールでも幼児教育をしていたが、南山小学校の開校以来、幼児の生徒数が激増した。受験熱の過熱を目の当たりにして、名古屋のお受験ブームの到来を実感している。
ここで私の留学・職業経験を通して感じた海外の教育・育児事情について幾つか紹介したい。
◆中国
受験熱は高く、上海では有名幼稚園に入園するために、家庭教師を雇い、3,000字もの漢字の勉強をしなければならない。日本では小学校6年生までに、累計3,000字の漢字を勉強するがこれを中国では幼稚園受験で行っており、幼少期から過酷な競争に晒されている。
◆アメリカ
大学など、高等教育のすばらしさは有名であるが、幼稚園レベルでも、有名幼稚園への入学となると願書の取り合いから必死となる。そして、願書に親の経歴・履歴を記入し、書類審査に通過すれば、次に子ども、親が面接を受けて、漸く狭き門の合格となる。その後、親の寄付金で成り立つような特色あるプライベートスクールに進学し、推薦で有名大学(IVYリーグなど)に入り、選ばれたコミュニティーに入っていくといった実態があり、現に、こうした人たちが国を動かしている。
◆イギリス
日本の大学全入時代、ブレア政権は教育投資に盛んで、幼稚園、小学校の教員数を大幅に増やした。しかし、その状況で露呈したのは、園の先生方が、児童たちに仲間になって遊ぶことを個別に教えなければならない程、子供たちの集団でのコミュニケーション能力が低下しているという実態であり、このようなことから教えなければならないことに考えさせられるものがあった。日本も同じで、友達同士で遊ぶ機会が少なく、遊ぶ時でもテレビゲームをしており、友達同士で向き合わなくなった。友達から声をかけられても、向き合うことを知らない子どもたちは、返事をして仲間に入れることが判らず、ここから教えなければならない時代が来るのではないか思う。
◆フランス
フランスでは今、子どもを産む女性が増えている。一人産むごとに育児手当が国から支給され、3歳からは幼稚園が無料となり、男性は60%以上が育児休暇を取得している。企業も35時間労働を提唱し、男女とも子育てに関われる社会システムがフランスには整っている。その一方で、日本社会は男女平等ではなく、福祉も充実していない。加えて、所得格差、長時間労働など、日本の女性が子どもを産み、そして育てられる環境にはない。その結果が日本の出生率(2006年:合計特殊出生率)、1.32人につながっていると思う。
最後に、ローレンシャンスクールでは、働く女性の子育て支援のため、できることを事業計画にした。それは40代以上の大学卒、留学経験者、子育て経験者の知恵とマンパワーを活かし、ナニー(ベビーシッター)の社会的評価と立場を高め、一段、上の立場から子育てを指導し、支援する事業計画である。競争社会のゆくすえという意味では、お母さんたちは子どもの受験に没頭せざるを得ない状況にあり、これはあまりいい精神状態ではなく、日本の社会がいろいろな意味で幸せを感じられるようにしたい。その第一歩がお母さんや、これから子どもを産む可能性のある女性を支援する仕組みを、市民始動で進めることで、企業の方々のご支援とともにモデルケースを構築していきたい。そして、最終的には行政にその仕組みを吸い上げてもらい社会資本として整備してもらいたいと思っている。
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