最近、不動産取引について、瑕疵担保に関する紛争が増えてきた。特に、土壌汚染に絡む訴訟では、高額な賠償が認められるなど、新たな事例がでてきている。本日は、瑕疵担保責任に関する法律的な位置づけについて、基本的な事項を紹介したい。
◆瑕疵担保責任の要件と効果
売主の瑕疵担保責任は「売買の目的物件に隠れた瑕疵があった場合に売主が買主に対して負う法的責任」と定義され、無過失責任となっている。この瑕疵とは「通常有すべき品質、性能を欠いていること」である。瑕疵担保責任の効果としては、「損害賠償」と「契約解除」があるが、契約解除は、瑕疵があるため買主が契約の目的を達成できないときに認められる。
本日のテーマにある土壌汚染に関する判例は少なく、必ずしも統一的な考え方が確立されていないのが実情。これは、土壌汚染は人為的なものもあるが、必ずしもそうではない場合があり、その判断が難しく、取引の実情に応じて具体的に判断せざるを得ないことがその理由にある。
土壌汚染については、平成15年2月に土壌汚染対策法が施行されたが、これには売主、買主間の規律については直接規定がない。ただし、所有者等(所有者、管理者又は占有者)が汚染物質除去等の措置命令を受けた場合に措置に要した費用については、汚染原因者に対する請求を認める規定がある。
◆仲介業者の責任
仲介業者の仲介により売買された土地に瑕疵があった場合、直ちに仲介業者の責任とはならない。仲介業者として取引の相手方に対して、仲介契約上必要とされる「注意義務」「調査義務」「説明義務」の違反の有無といった観点から判断される。従って、瑕疵の存在の認識、認識の可能性が焦点となるので、無過失責任ではない。例えば、売買された土地の地中に障害物等が出てきて、買主が多額の費用を要した場合、売主に対する瑕疵担保責任とともに、仲介業者がその事実を認識できたにも関わらず告知しなかった場合は、仲介業者にもその責任を問えることとなる。
◆瑕疵担保責任の買主の権利行使の時効または権利行使期間
瑕疵担保責任は、買主の権利行使期間が比較的短く定められている。一般原則は、民法で「買主が瑕疵を知った時から1年間」と定められているが、それでは知るまでの期間に際限ない場合があるため、民法の消滅時効に基づいて、「または、引渡しのときから10年」と解釈されている。他方、商法には引渡後6か月という短期の規定がある。いずれの場合も、免責特約や責任を負うべき期間・責任を負うべき場合を限定する等の特約も可能である。
これに対し、宅地建物取引業法、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)、消費者契約法では時効、権利行使期間についての特例や特約の制限についての規定がある。
土壌汚染に関して、買主から売主を訴える場合、早期には汚染の実態が判らないといった現実がある。売買契約をして、引渡しを受けて、相当時間が経って、何があるか調査して有害物質が発見されるケースも多い。特に商法で引渡し後6か月に請求することを要するとされている点については、請求期間を過ぎていることがあり、本当に救済されるべき買主に対して、どうやってこの「期間」の壁をクリアさせるか、裁判所でも模索している状況と言える。
不動産取引における瑕疵担保をめぐる紛争については、統一的な観点が必ずしも十分ではなく、裁判になった場合の結果については予測がつきにくい面があるものの、皆さんが土地売買等をする上で、本日の話が少しでもお役に立てればと思っている。
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