【代表幹事年頭所感】
新春を迎えて

年始にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は、同友会活動に多大なるご理解とご協力を賜り、心より御礼申し上げます。
昨年は元日に能登半島地震が発生し、前途多難な一年の幕開けとなりました。被災地は、9月に大水害にも見舞われ、依然復興の目途が立たない状況が続いております。被災された方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興の実現を祈念いたします。
さて、世界に目を向けますとロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとパレスチナ間の紛争は解決の糸口が見えず、台湾海峡における緊張も続き、国際平和と安全保障から目が離せない一年となりました。また、多くの国々で、リーダーや議会の構成を決める「選挙イヤー」となり、国際情勢に影響を及ぼす国々の体制が決まった年でもあり、日本の経営者には今後の国際情勢の変化への柔軟な対応が求められています。
一方、日本では石破新内閣の誕生の直後に総選挙が実施され、少数与党による新政権運営が始まりました。デフレからの脱却が現実となりつつあり、安定的な実質賃金の上昇に向けた官民一体の取り組みを推進していく必要がある中、与野党連携した速やかな政策実行が期待されております。
スポーツ界では、ロサンゼルス・ドジャースに移籍した大谷翔平選手が、ナショナルリーグMVPを受賞し、パリ五輪においては海外開催大会としては過去最多の45個のメダルを日本選手団が獲得する快挙を達成しました。スポーツの力が、国民の一体感を高め、希望をもたらすことを実感した一年でもありました。
こうした中、令和6年度は、「Well-being SDGsの次のゴールに向けて〜多様な人材が活躍でき、成長を実感できる社会・企業の風土づくり〜」をテーマに掲げ、活動を進めてまいりました。2030年以降の新たな国連の目標と言われている「SWGs (Sustainable Well-being Goals)」の到来を見据え、企業が果たすべき役割を考える機会として、産業政策、新規事業政策、起業家支援、スポーツ、医学、教育、地域創生など幅広い分野の講師をお招きし、共に学んでまいりました。私自身、これからの企業経営における「Well-being」の重要性を再認識しております。
引き続き、会員の皆様にとって有意義な情報を提供するとともに、活発な交流の場を創出してまいりたいと存じます。産業懇談会は、会員同士が率直に議論し、交流を深めることができる同友会の土台となる活動であります。引き続き、本年も変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
また、冒頭にも触れました能登半島地震に対する復興支援活動「IPPO IPPO NIPPONプロジェクト」に対し、多大なるご協力をいただきました会員の皆様に、この場をお借りして御礼を申し上げます。
最後になりますが、令和7年が平和で実り多い一年となり、会員の皆様、ご家族、そして従業員の皆様が一人でも多く幸せを実感できる年となることを祈念申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。
【2月度産業懇談会のご案内】
日頃は産業懇談会活動につき多大なるご支援をいただき誠にありがとうございます。
2月度例会を下記の通り開催いたしますので、ご案内申し上げます。各グループ興味深いお話が伺えるものと存じますので、ぜひともご出席くださいますようお願い申し上げます。
グループ名 | 世話人 | 開催日時 | テーマ・スピーカー | 集合場所 |
---|---|---|---|---|
火曜グループ |
屬ゆみ子 |
2月4日(火) |
『警備業の生い立ちとALSOKの目指すもの』 |
名古屋観光 |
水曜第1グループ |
淺井博司 |
2月19日(水) |
視察会「STATION Ai」 |
STATION Ai |
水曜第2グループ |
香川裕子 |
2月12日(水) |
『創業家としての思いと これからの取組み(株式上場と株式の非公開化の中で)』 |
若宮の杜 |
木曜グループ |
河村嘉男 |
2月13日(木) |
視察会「豊田合成記念体育館 ENTRIO」 |
豊田合成 |
【3月度産業懇談会のご案内】
日頃は産業懇談会活動につき多大なるご支援をいただき誠にありがとうございます。
3月度例会を下記の通り開催いたしますので、ご案内申し上げます。各グループ興味深いお話が伺えるものと存じますので、ぜひともご出席くださいますようお願い申し上げます。
グループ名 | 世話人 | 開催日時 | テーマ・スピーカー | 集合場所 |
---|---|---|---|---|
火曜グループ |
屬ゆみ子 |
3月11日(火) |
『ヨコタエンタープライズで実現するDX人材・ITセキュリティ人材へのリスキリング~トレンドマイクロ、シスコシステムズでのキャリア活かし、中部産業会に貢献~』 |
若宮の杜 |
水曜第1グループ |
淺井博司 |
3月19日(水) |
『Return to ZERO |
名古屋観光 |
水曜第2グループ |
香川裕子 |
3月12日(水) |
『インフラの課題解決とペロブスカイト太陽電池』 |
名古屋観光 |
木曜グループ |
河村嘉男 |
3月6日(木) |
すい臓がん早期発見の最前線「尿がんリスク検査マイシグナル」~名大発ベンチャーの挑戦~ |
名古屋観光 |
【コラム】
コラム1 【さっかの散歩道】 No.79
長瀬電気工業株式会社
代表取締役 屬 ゆみ子
『 C'est la France~やっぱフランスよね、その2 』
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
翌日、薄い雲が垂れ込める中、寝起きの頭も、さすがにスウェーデン語から始まるナビの声で運転モードに入る。昨夜は霧と暗闇で一切見えなかったあたりの風景は、それは美しい葡萄畑が広がる丘だ。今日は決まったコースの運転と通訳を少しすればいいので、そんな事件は起こらないだろう。なにせスッピンだから、トラブルがあったとしても子供顔の日本人には全く説得力がない。フランスにいる時はとにかく肝の座った顔を作っておかないと、相手はどんなことでも論破しようとしてくるので、日本人が好きな「かわいい~」とか「おきれいで~」なんて誉め言葉はその辺に捨て置かねばならない。
―余談だが、この旅で一緒になった20代の日本女性が、レストランのサービスの女性がとても美しかったのでフランス語で一言「お奇麗ですね」と声をかけたいが、なんと言えばいいのか?と聞かれたので、思いっきりNGを出した。サービスのプロフェッショナルは見た目を褒めてもらおうなんてこれっぽっちも思ってないし、そんなこと言ったら逆に「あなた、見た目だけで仕事できないわね」ととられかねない。じゃあどう言えばよいのか?というので、「奇麗に見えるのは、彼女の生き方、所作が美しいからなのよ、だからね…」彼女が喜ぶ魔法の言葉を教え、それをつたないフランス語で本人に言うと、彼女から満面の笑みがこぼれた。それ以降私たちのテーブルは最高のディナータイムを楽しむことができた。
午後2時、シャンパーニュでのランチを済ませた後、一路ブルゴーニュを目指す。天気も何とか崩れることなく(小雨はパラついたけど)、フランス縦断の大動脈、高速道路を南に向けてひた走る、ここから目的地のボーヌまではおおよそ350キロ、日本でいうところの名古屋~東京くらいだろうか。途中サービスエリアでスタバのコーヒーマシンでラテを買い込み、夕方6時前にはホテルに到着。心の中で(5つ星ホテルだけど、このスッピン白髪の私に対応してくれるかしら?)とドキドキしつつ、そこはさすがのドアマン。「ようこそマダム、お待ちしていました、荷物と車はお預かりします」ああ!なんと美しく丁寧なフランス語、これから帰るまで、こんなフランス語のシャワーを浴びていられたらこんな楽しいことはない、これから3日間、ブルゴーニュ三昧だっ!※現地の話は前々回をご覧ください
そんなエレガントなフランス語と美味しいワインに包まれた日々はあっという間に過ぎ、最終日は午前中ディジョンでお土産を買って早めに空港で車を返し、今度こそパリで買い物してそのまま夜便で帰国と計画していたのだが、朝目覚めてテレビのニュースを見ると、夜も明けきらぬどこぞの高速道路で火の手が上がり、農夫たちが路上でバーベキューしてるではないか!いったい何事?とよくよくニュースを聞くと、G20でマクロンが、南米及び南部アフリカからの農産物輸入品の関税を段階的に下げるとかなんとか言ったらしく、怒った農民がストライキを始めたというのだ。で、どこの高速道路でブロックしてるの?と不安になる。日本のニュースだと、現状リポートのあとで、通行止めになっている道路情報もちゃんと知らせてくれるのだが(偉いぞ!日本道路交通情報センター!!)フランスはニュース映像からどのあたりなのか推測しなければならない。だって、地図に載るかどうかの小さな村の名前を言われたってそれが一体どの地方なのかも分からない。とりあえずネットニュースを見ても散発的な話ばかりで交通情報は一切出てこない。これがもし空港近くの高速なら、私は車の返却場所を変更しなければいけないし、ともあれ飛行機に乗るまでの交通手段と経路を確保しなければと、コーヒーを一口飲んで、チェックアウトがてらレセプションで詳しい情報を集めてもらうことにした。高速道路ブロックの話をすると「何のこと?」と、まだレセプショニストはストライキのことを知らないようだったが、すぐさまホテルのネットワークで情報収集をしてくれた。「ブロックはフランス西部からパリに向かっているようだけど、これからパリ?」「ディジョン経由で」「ん~、だとしたら早めに。A6(フランスの真ん中を南北に走る主要高速道路)が迂回の車で混み始めるわよ」「OK.ディジョンからA6直でパリに行かず、途中で東回りのA5~A4を乗り継いでみる」「それがいいわ、気を付けてね」こうなると早め早めの行動が基本。友人とディジョンで一緒にするはずだったランチもパスして、彼らと別れ、パリ~空港へと車を走らせる。A6からA5に乗ってしばらくすると雨が降り始める(そっか、パリは大雨って言ってたっけ、これはますます渋滞注意)。パリ方面に向かう車の数が増え始め低速になる、あと数キロでA4への分岐というところで車が止まり始めた。こんなことならディジョンで車を返してTGVに乗り換えた方が良かったかしら…とやきもきしながらA4に入る。予定では3時には空港に着いているはずだったが、時計はすでに4時半。「あーやっぱりパリには行けそうもないか…」とため息をつきながら空港ターミナルに入る。そういえば車借りる時、どこに返すのか聞いたら、「借りたところよ」とか言ってたっけ。レンタカー専用の返却口じゃなくてエージェントの駐車場ってことかな…と不安に駆り立てられながら、4日前に借出したセクションに行くも、そのゾーンには侵入不可となっている。どうやって入っていいのかわからず、またそういう時に限って人がいない。あのレンタカー屋の娘の祟りか!!と来た時同様ターミナルの駐車場をくるくる周回しつつ、(いかん、惑わされては。イライラしたらフランス娘の思うツボ、ここはやっぱり自分の経験値に従おう、全レンタカー会社共通の返却口に行こう)。地下3階の駐車場から地上の周回路に戻り、返却口に乗り付けると、係りのお兄ちゃんが「はいお疲れ、ここにサインして」。荷物を下ろしてあっけなく終了。ちょっと待って、今何時よ?と時計を見ると5時過ぎ…ああ、ホテルのお姉さんが車で食べてと持たせてくれた美味しい焼き立てパンも水も口にせず、8時間。あまりに空しくなってその袋をお兄さんに手渡し「さいなら」と日本語でつぶやいて空港カウンターに向かった。途中レンタカー会社からメールが届く。「無傷の返還でした、追加料金なしの364ユ―ロで料金確定です」そうだ、この件があったんだ。日本に帰ったらすぐ確認しなきゃ、全くフランスってところは!!
後日レンタカー会社の日本営業を通じてクレームを入れたところ「確かに2度のお支払いになってますが、これは多分デポジットではないかと…」「はあ~?多分ってどういうことよ!!カウンターじゃデポジットの”デ“も言わなかったわよ」のすったもんだをフランス人も巻き込んで数日繰り広げ、結局1870ユーロは無事手元に戻りました。その数日のうちに円安がすすんでちょっと得したかな?
C’est la France、毎度毎度旅のやらかし話には事欠かないわぁ~
コラム2 【師、曰く】 No.44
妹尾 鷹幸(ペンネーム)
(株式会社構造計画研究所 名古屋支社長 妹尾(せのお) 義之)
ペンネームは、恩師、田坂広志先生の多重人格マネジメント、作家人格の名。心に鳴り響く言葉を今回も一筆。
『 バタフライエフェクト 』
昨年の能登半島地震、羽田空港事故から一年が経ち、2025年の正月は多くの人には穏やかだっただろう。しかし、世界に目を向ければ、ウクライナとロシアの戦争、イスラエル・パレスチナ紛争、覇権を狙う中国の西側との対立、トランプ大統領が返り咲き、理性・理想を尊重するより感情・本音を顕わにする国になるだろう。誰しも、大量に雪崩れ込む移民によって生活が脅かされれば、排除したくなる。他国のせいで貧しくなれば、締め出したくなる。明日の理想より、今日のパンなのだ。
刀と弓矢で戦っていた時代と違い、一瞬で大量殺戮を可能とし、AIが無機質に確実に殺戮できる、強大な力をもつようになった21世紀を生きる我々は、理性や理想を絶対に失ってはならない。しかし、それが度を越せば、破綻する。例えば、移民を過剰に受け入れ、経済、治安、文化が破綻して生まれるのは、憎悪だ。憎悪による排斥は暴力的だ。資本主義とて、一人勝ちで富を独占し、貧富の格差が生まれれば、憎悪の分断を生み出してしまう。暴力的に対立してしまうだろう。日本という国は、突出した富豪も、独裁的な権力も似つかわしくない国ではないだろうか。平家物語の「諸行無常」「盛者必衰」しかり。従来ネガティブに言われてきた、皆で仲良くという村社会、右に倣えの国民性は、実は自ずと平和をもたらすものだと思う。「和を以て貴しとなす」という名言もある。しかし、分断や覇権で危うい世界に、一体、どうしたら良いのだろう。
田坂先生が1997年に書かれ、2010年に改定再販された『まず、世界観を変えよ 複雑系マネジメント』は、「複雑系」の世界観を経営に活かす内容だが、哲学的で深淵だ。「複雑系」というものを、学問的に追及するのではなく、経営やマネジメントに如何に「活かす」かを語る名著なので、多くの方に薦めたい。
師、曰く『「一回性の知」とは、複雑系の世界では、未来は予測できないことを知る智慧である。未来を予測するな。未来を創造しろ。 (中略) 言葉が世界を創る。未来を語るということは、意志を語り、希望を語り、夢を語ることである。こうして語られた生命力溢れる言葉こそが、力強く未来を創造してゆくのである。』
様々な思想、文化をもった人間の創る世界は「複雑系」だ。複雑系の世界をシミュレーションすれば、その答は一つではない。多様な結果をもたらし、時に悲惨な結末をもたらす。蝶が羽ばたいた微風が、まわりまわって地球の裏側で嵐を巻き起こすように、些細な行動が時に大きな悲劇をもたらしもすれば、時に大いなる救いをもたらすこともある。我々が起こすささやかな行動は、蝶の羽ばたきに過ぎない。しかし、それが時に大いなる救いをもたらすのであれば、我々は信念をもって羽ばたくべきではないか。私は、健康で幸福な人は、他人にも喜びを与えられると信じる。だから、苦手な人にも「健幸」であれと祈る。それがささやかな蝶の羽ばたきに過ぎずとも。修行は続くよ、どこまでも。最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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コラム3 【げんき通信】 No.17
学校法人佑愛学園
愛知医療学院大学
リハビリテーション学部 作業療法学専攻
教授 岩井 和子
『 健康格差ということ 』
超高齢社会に突入したわが国では、平均余命とともに、「健康寿命」という概念への関心が高まり、高齢者の機能低下や生活習慣病等の予防対策が重要視されてきました。しかし、厚生労働省は健康日本21(第二次)において、「地域や社会経済状況の違いによる集団間の健康状態の差」を「健康格差」とし、人々の健康が必ずしも個人的要因のみによるものではない事、疾病や高齢期の機能低下には、社会背景要因(地域、経済、教育歴、職業、社会参加等)があることへの着目を始めています。
これまで、疾病や機能低下の原因を個人的因子と見なし、生活習慣の改善や健診受診の推奨等、個人への働きかけが主な対策となってきました。しかし、こうした個人への働きかけだけでは、十分な個人の行動変容を促すことが難しいことも種々の調査により明らかとなって来ました。居住地域、経済的要因、人的・社会的サポート要因などの社会背景的要因が個人の生物学・心理的因子に影響を与え、結果として発病や機能低下を生じていることが示されて来ています。
近藤らの調査によれば、高齢者の運動機能低下者の人口比、また、IADL(外出、買い物、金銭管理等日常生活能力)機能低下者の人口比は、地域によりかなり格差が生じていること(図1)、また、高齢者の抑うつ状態と経済状況の関係では、低所得高齢者ほどうつ状態の割合が高いなど(図2)、社会経済要因との関連をいくつかの調査で明らかにしています。また、孤食と死亡率(図3)、社会参加が多いほど、認知症発症が少ないなど、人的社会的繋がりとの関連も多く報告されています。国立がん研究センターの調査は、教育歴と死亡因疾病との関連を調査し、教育歴の短いほど死亡率が高いという結果が示されています(図4)。
人々の健康維持には、個人への介入だけでは限界があり、格差是正や社会保障の充実、また人々の繋がりなど社会そのものへの介入の重要性が増しています。 地域づくりへの参加など、住民個々人における活動も健康づくりに貢献できるものと考えます。
〈引用・参考文献〉 近藤克則「健康格差社会への処方箋」 「健康格差社会 第2版」 医学書院

加藤清人「市区町村におけるIADL低下者割合
(前期高齢者に限定)」

谷 友香子「高齢者の孤食と死亡との関連(男女別)」

p11「所得とうつの関係」

推定された教育歴別年齢調整死亡率
(30-79歳、2010-2015年、横軸は人口割合を示す)
https://www.ncc.go.jp/jp/information/
researchtopics/2024/0328/index.html