【6年3月度 産業懇談会(木曜G)模様】

テーマ: 『 建設業の未来と私 』

  • 日  時:令和6年3月7日(木) 12時00分~14時00分
  • 場  所:若宮の杜 迎賓館 1階 橘の間
  • 参加者:45名

スピーカー:

写真:近藤 純子氏
近藤 純子(こんどう じゅんこ)
株式会社近藤組
取締役社長
写真:北川 尚子氏
北川 尚子(きたがわ しょうこ)
株式会社北川組
取締役社長
写真:伊藤 日香理氏
伊藤 日香理(いとう ひかり)
伊藤建設工業株式会社
常務取締役
写真:中林 直子氏
中林 直子(なかばやし なおこ) [ファシリテーター]
株式会社東海維持管理工業
取締役副社長

 建設業という男性社会で奮闘する4人の女性により、産業懇談会初のトークセッションが行われた。

会社紹介・自己紹介

<中林氏>
 前職は幼稚園の教員で趣味はゴルフである。ゴルフを通じ、知り合った人々は宝物である。2001年に下水道の維持管理に特化したベンチャー企業として創業した。特殊工法の管更生工法を用いた施工実績は中部地区No.1であり、名古屋市の下水道の70%を直している。この工事は耐震工事としてインフラのメンテナンスに寄与している。技術力とフットワークで未来を守るという経営理念のもとに、女性活躍、女性も活躍、全社員総活躍の会社を目指して、様々な取り組みを行っている。
<近藤氏>
 近藤グループは1949年に創業者が刈谷市においてスコップ3丁から創業した建設業の近藤組を母体とするグループであり、2024年10月に75周年を迎える。創業者の「なんでもやってみよう」というチャレンジ精神のもと、多角的な経営を進め、自動車部品事業、環境機器事業、自走式立体駐車場事業、エクステリア事業等を行う近藤工業(株)、リフォーム事業を行う(株)プラスワン、保険事業を行う新日産業(株)、太陽光発電事業を行うエナジーK(株)、土木・建築事業、住宅事業、不動産開発事業等を行う近藤組5社でグループを構成している。それぞれの事業で技術力の向上に注力し、シナジー効果を高める事で、常に「必要とされる企業集団」であり続けることを目指して、「『こころ』を『かたち』に」をスローガンに掲げ、モノづくりを通してお客様に感動を与える付加価値の提供を考えている。お客様に仕事を頼みたいと思っていただけ、協力会社様が一緒に働きたいと思ってくださり、社員が働きたいと感じる、いい会社を目指している。
<北川氏>
 北川組は創業1872年、設立1922年の歴史のある会社である。東山動植物園や名古屋離宮(現・名古屋城)、鶴舞公園の噴水等など主に官庁の仕事を担ってきた。私は6代目として社長に就任し、1年5ヵ月が経つ。8歳と6歳の2人の息子の子育てと仕事に邁進している。
<伊藤氏>
 伊藤建設工業株式会社は電力会社の発展とともに、関連設備の工事を担ってきた。現在、建築、土木、プラントの3部門を持ち、建築部門では、営業所・変電所・火力発電所などの外装・内装・解体等の一式工事を行っている。土木部門については、同設備の地盤改良・構内道路修繕・取水設備保修等の一式工事を行っている。プラント部門は、火力発電所の取水設備保修をメインにポンプやコンプレッサー等のメンテナンスといった大型の回転設備を得意としている。また、作業用の工具なども自社で製作し、納入している。当社は2024年に97年目を迎え、私は4代目になる。

今の仕事・立場になった訳

<伊藤氏>
 大学を卒業し、金融機関の法人部門で融資審査の担当として勤務していた。入社6年目に結婚し、当社の経理担当の定年退職を機に、父から声をかけられた事が入社のきっかけとなった。父は自宅では仕事の話をしなかったので、父の仕事内容が分からず、直近3期分の決算書を通じ、事業内容の理解を深め、入社することとなった。当時はお手伝いのつもりだったが、仕事をしていくうちに、支えていただいた社員の方、取引先の方、協力会社の方の熱い思いに触れ、恩返しをしたいと思い今の立場に就いた。
<近藤氏>
 大学を卒業後、公募の4大卒女性職員の1期生としてトヨタグループの会社に入社し、3年間勤務した後、退職し、近藤家に入った。20年間は3人の子育てをする専業主婦であったが、夫から会社の手伝いを頼まれ、会社に関わる事となった。まもなく、夫が急逝し、夫が一人っ子だったこと、多岐にわたる事業、個人保証が求められる有利子負債などの事情で、会社も私も選択肢がない中、未経験の私が会社を継いだ。以降、多くの方々に支えられ、なんとか会社を続けてきた。日頃の業務は、11ある事業部の事業部長から進捗報告を受けている。また、経営、人事、財務に関わる会議体や、決裁ルートを整備し、それに沿って会議に参加している。お客様へのご挨拶やお詫び事、地鎮祭や竣工式への出席等は、私の重要な役割となっている。
<北川氏>
 北川家は、2人姉妹で、私は次女である。専業主婦の母に育てられ、父がどんな仕事をしているかわからないまま、会社を継ぐとは思わずに自分の好きな仕事をしていた。15年前に父から手伝ってほしいと頼まれ、入社する事となった。会社の隣に実家があったため、幼少期に昼夜を問わず働いてくれている社員を見て、感謝の気持ちしか浮かばなかった。4年程前に親族会議が開かれ、女性の私に会社を継げるのか、という反対の声もあった。私には、社員が他者に貢献することで、会社に入ってよかったと思える人生を過ごしてもらえれば、私の生きてきた意味があるという信念があったため、父に会社を変えてみせると豪語し、1年4か月前に社長に就任した。
<中林氏>
 会社の経理を手伝うというキーワードが出たが、決算状況や事業内容をどう調べたか。
<伊藤氏>
 前職が金融の融資担当ということもあり、決算書を見たり、当時の経理担当者から話を聞いた。また、幼少から社員旅行などで社員との交流はあったので、会社を支えていきたいと感じた。
<北川氏>
 30年前まで決算書をさかのぼり、利益率等を調べた。結果、会社の変遷にも触れることができ、若干衝撃を受けた。
<中林氏>
 近藤さんは大変なご苦労をされたということだが、具体的にどのような困難があったのか、お聞かせいただきたい。
<近藤氏>
 多額の有利子負債があったことが最も大変だったことだと思うが、もちろん返済は既に完了している。そのような状態であっても、社員さん、お取引先様、お客様、地域の方々が力になって下さったおかげで今日がある。これは会社が持っている運のおかげだと感じている。もう一つは、夫が急逝した1年後、労災死亡事故を起こしてしまった。一歩間違えば、人の命を失うことにも繋がる仕事をしている会社を任されたのだと痛感し、死亡災害ゼロを誓い今に至っている。

今、女性の少ない建設業の中で感じること

<北川氏>
 建設業は荒々しい男性社会という印象がぬぐい切れず、女性の入社希望者が減ってきた。働きやすい環境づくりが必要なため、女性が社長であることは重要なことである。
<伊藤氏>
 建設業は3Kのイメージが強い。近年は、全自動の建機や3Dプリンター等の技術開発が進み、女性も働きやすい職場環境になってきたと感じている。しかし、建設現場には男性の職人や管理職が多く、コロナ禍でも現地現物で働いていた。職人は力仕事でもあるため、男性や外国人に頼る事が多いが、施工管理職はマルチタスクが得意な女性ならではの働き方ができると考えている。
<近藤氏>
 建設業や製造業には女性経営者が少ないと感じているが、近年現場には女性が増えている。重労働は男性の方が有利と言われているが、体力的な面を除けば、男性女性を問わず、それぞれが適正に応じて働くことができると考えている。20年以上前、当社では女性の現場監督が活躍していたが、ライフイベントを機に、退職してしまった。現在、ライフイベントに対する仕組みや環境を整えており、今後は女性技術職も働き続けることができるようになると考えている。この制度を活用し事務職の女性は働き続けて下さっており、管理職になっている女性社員もいるので、期待している。女性活躍にこだわることなく、それぞれの個性や適性を活かせるよう、取り組むことが大切と考えている。
<中林氏>
 建設業協会で女性管理者の座談会を開催した時に、女性現場監督から、こんなに頑張っているのにまだ女性活躍といって頑張らなければならないのか、という発言があったことが印象に残っている。女性活躍という言葉の使い方を間違えないようにしなければならない。

今思うこととこれからのこと

<近藤氏>
 現場監督は、自分ではどうにもならない天候に左右されながら、安全第一で、良い品質のものを工期通りに施工して、利益を残さなければならない。近隣に配慮すること、協力会社さんと一体となることも欠かせない。この様な困難を克服して工事を完成し、お客様から感謝の言葉をかけられた時、やりがいを感じる。ひと現場終えるごとに成長していくことができる。このように建設業の現場監督は、人が成長する機会が得やすい、やりがいのある、素晴らしい職業であると思っている。是非、若い方たちにチャレンジしてほしい。そして、いざというときに役に立つ地域のインフラを担う企業であり続けたい。
<北川氏>
 父親と同じ現職に就くことで、父親の偉大さが理解でき、重責を担う立場で背中を預けられるのは父しかいないと思っており、感謝している。今後は仕事を通して人を幸せにし、成長し、人生が素晴らしいと思える会社にしていきたいと常に思っている。
<伊藤氏>
 父と一緒に仕事をすることで、多くのことが見えるようになり、感謝している。結婚・出産・介護など女性には多くのライフイベントがあると言われるが、男性も出産以外は同じである。今後は共働きが増え、出産以外は家庭の仕事もシェアしていくようになる。こうした中、多くの現場を任されても家庭と会社の両立ができるよう、会社として情報共有ができるITツール等の仕組みを作り、いつでも代わりの人が対応できるようにする必要がある。建設業においても、残業時間や休日に関する規制が適用されるようになり、若者は働き方改革やタイムパフォーマンスなどを求めるようになるが、建設業にしかないチームプレーや裁量のある仕事を任されるなどのやりがいを感じられるような会社にしていきたい。
<中林氏>
 これからの「私」については、どう思っているか。
<北川氏>
 社長就任以降、自分の事は考えず、9割が仕事、1割が子育てという配分で活動している。
<伊藤氏>
 父とは、経営者には時間制限がなく、仕事イコール人生になっているという認識を共有している。無論子育ても両立し、自分の頑張る姿が子供の成長につながれば、と考えている。
<近藤氏>
 19年間、四六時中仕事の事だけしか考えてこなかったが、昨年2人の息子が取締役に就任した。これからは若い世代に経営を移行していく準備を進めていきたい。

写真:トークセッションの様子

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【6年3月度 産業懇談会(火曜G)模様】

テーマ: 『 エンジニアと企業の人脈を繋ぐ~Engineering Bridgeの活動 』

  • 日  時:令和6年3月12日(火) 12時00分~14時00分
  • 場  所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
  • 参加者:40名
スピーカー:
植竹 伸二(うえたけ しんじ)
一般社団法人エンジニアリングブリッジ
代表理事
写真:植竹 伸二氏

会社紹介・自己紹介

 当法人の設立の背景には、コロナ禍の影響でエンジニアの交流の場が失われ、刺激を受け成長する場がなくなった事がある。昨今の投資環境はEVシフトを背景に、エンジン設備への設備投資の抑制などの投資マインドに変化が起こっている。企業も目先の仕事に注力をせざるを得ず、付加価値の高い領域へのシフトや人材育成に時間が取ることができず、コモディティ化の波に呑まれるリスクを持っている。人材育成においてもエンジニアの高齢化が進み、若手の育成ができずに熟練者が引退している。このようなエンジニアを取り巻く環境の変化に対し、エンジニアや企業が集いの場を通じ、相互協力、技術力向上や新技術習得に取り組める環境つくりを行い、下町エンジニアと企業の架け橋となる役割をEngineering Bridge(以下EB)は担っている。
 2022年4月に設立し、名古屋駅のJPタワーに事務所があるが、実際はバーチャルオフィスで、自宅を活用している。組織構成は3名の理事と監事1名、アドバイザー1名となっており、皆旧知のエンジニアである。
 私は広島県呉市で生まれた。呉市は造船の街で、戦艦大和や日本発の大型タンカーも建造されており、海上自衛隊の施設も置かれている。大学を卒業するまで広島で育ったが、父親が名古屋に転勤したこともあり、当時の豊田工機株式会社(愛知県刈谷市)に入社した。会社が合併し、株式会社JTEKTとなり、退任後子会社である豊ハイテック株式会社を経て、当法人の設立に至った。好きな言葉は毛利元就の「百万一心」(皆で力を合わせれば、何事も成し得る)である。好きなものはお好み焼き、むさし(広島のおむすび)、味噌煮込みうどんなどの名古屋めし、広島カープである。嫌いなものはカキフライ(加熱したカキ)、赤身の刺身、そして低気圧だ。最近は、楽しむゴルフ、猫2匹をかわいがっている。

EBの活動

 EBの活動には4つの特徴がある。1つ目は、エンジニアや企業の集いの場を提供することで、春と秋に会員企業の中堅エンジニアを中心とした交流の場を提供し、WEBで会員会社や事例の紹介を行っている。2つ目は技術のマッチングサービスを無料で行っていることである。不足している技術、エンジニア、製造先、要素技術、販売商社の紹介や仕事の山谷を応受援できる相手のマッチングを行っている。3つ目は、なんでも相談を無料で実施している。企業からだけでなく、若手エンジニアからの相談も受けており、必要に応じ、コンサルタントの紹介も行っている。4つ目は、情報共有や教育の場として、他の団体の情報や当社独自の研究テーマの成果や情報を有償で提供している。
 会員会社は2024年3月時点で45社、うち18社がエンジニアリング会社、14社が設備製造会社でその他にも多数の企業が参加している。ほとんどがエンジニアを抱える企業である。

エンジニアや企業の集いの場としての活動

 2023年10月に総会を実施し、当社の活動報告を行った後に歓談の場を設け、交流を図った。経営者だけでなく、若いメンバーや商社も参加している。ただし、コンプライアンス上、事業の話はしないようにお願いしている。Webでの会員企業やその会社が保有している技術の紹介も行っている。一社ではできない取り組みを補完するための情報源となっている。

マッチングサービスの無償提供活動

 マッチングを希望する会員会社には、定められたフォーマットに書き込んでもらい、Webで紹介し募集をかけている。なかなかマッチングしないケースもあり、地政学的な理由で、中国生産の部品を日本で生産する企業を探しているケースは難航している。営業活動にも活用されているケースもある。

なんでも相談を無料で提供する活動

 なんでも相談は、会社の役職に制約はなく、誰でもできるようになっている。古い設備の故障対応など多岐にわたる相談へのアドバイスを行っている。提案を採用するかどうかは会員企業にお任せしている。販売戦略へのアドバイスや商社などへの技術用語の解説等も求められることがある。

情報共有や教育の場を提供する活動

 他団体の活動、専門家に関するトピックやレポートなどを掲載したニュースレターを毎月1回発行している。技術的なものに限らず、景気や経済動向などにも触れている。また、EB-StepUpセミナーを独自に開催し、ニーズの高い事例、テーマ研究会の場を提供している。

会員にとっての特徴

 さまざまな分野の企業が参画し、交流ができている。一方で、会員企業同士がコンペティターになる事もある。会員の既得権益を害するような会員勧誘は行わないようにしており、会員会社間の情報の取り扱いには細心の注意を払っている。また、マッチングの意思決定には関与しない。このように信頼できる会員体制を構築している。その他、企業規模に応じた年会費や会員期間に関する規約も分かり易くしている。また、会社単位でなくても、工場、部門単位でも入会できるように門戸を広げている。

最後に

 エンジニア中心の中小企業連合のような会員構成だが、中小企業だからこそ、不足する分野はエンジニアリング以外の分野も多く、DX、電子帳票化や経理システムでの工数削減、人材採用、人手不足の解消が課題となっている。是非、いろいろな分野の企業にご参加をいただきたいと考えている。

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【6年3月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】

テーマ: 『 NTTグループにおけるハイブリッドワークの現状と課題 』

  • 日  時:令和6年3月13日(水) 12時00分~14時00分
  • 場  所:若宮の杜 迎賓館 1階 橘の間
  • 参加者:25名
スピーカー:
有村 和信(ありむら かずのぶ)
NTTコミュニケーションズ株式会社
執行役員 東海支社長
写真:有村 和信氏

NTTコミュニケーションズの紹介

 NTTグループの中で、総合ICTを担当する企業グループ3社(ドコモグループ)のうち、法人のお客様の窓口となる企業が当社であり、データセンターやマネージド・セキュリティをお客様に提供している。他の2社と連携し、お客様のDXをワンストップでサポートできる企業グループになっている。

NTTグループにおける「新たな働き方」の導入について

 ハイブリッドワークとは働く場所を制限しないという点が一番のポイントであり、働く場所をオフィスにするか否かにより、オフィススタンダードやリモートスタンダードに区分され、当社をはじめドコモグループの東海支社はリモートスタンダードに2022年に切り替えている。当社の導入した新たな働き方には、「勤務先は自宅で、上司の承認を受け、サテライトオフィスなどの自宅外での勤務可能」、「ハイブリッドワークを前提に、出社など自宅外への移動は出張扱い」などの特徴が挙げられる。ハイブリットワーク導入の経緯としては、まず2017年東京五輪開催に向けた行政の出勤制限要請に対応し、リモートワーク制度を試行したことに始まる。しかしこれは上手くいかず、その後コロナの感染の拡大を機に、 2020年にハイブリッドワーク制度の導入に至った。同時にジョブ型人事制度を導入し、管理職はすべてジョブ型、一般社員は評価の半分がジョブ型評価となった。ジョブ型の評価は、成長を感じられるということもあり、若手社員のモチベーション向上に繋がった。一方、ジョブ型の目標設定については課題も残っている。

ハイブリッドワーク制度の活用状況

 NTT西日本グループ全体では、6割程度がリモートワークを実施しており、その中でNTTコミュニケーションズは最も高い割合でリモートワークを実施している。ただし、社内システムを使用する業務でリモートワークができない職場もある。東海支社においては、東海地区以外からの異動者のうち約3割は転居をしていない。また、制度の導入を機に、地元に戻り勤務する社員もおり、ワークライフバランスの取れた働き方が進んできた。介護を理由に福岡県に居住しながら、東海支社に勤務する社員は、介護と仕事のバランスがとれ、名古屋への宿泊を伴う出張を併用することで社内外とのコミュニケーションにも問題はなく、高いモチベーションで仕事ができていると話している。リモートワークで業務効率が下がるのではと思われるが、ジョブ型制度の導入により、結果で評価されるため、業務効率を下げることはない。無論、日々悩みながら運用している。

ハイブリッドワーク制度導入後の状況

 当社の働き方に関するアンケート結果によると、ハイブリッドワークにより生産性が上がったと答えた者は約半分、変化がないと答えた者も多数で、概ね向上したのではと考えている。その理由として、「オフィスより集中できる」「周りを気にせずリフレッシュができる」「働く時間に関する自分の裁量(自由度)が増えた」などが挙げられる。一方下がったと答えた人は、「(報連相などの)社内でのコミュニケーションが不足」「(会議室の確保などの制約がないため)打ち合わせ・会議が増えた」などの理由が挙がってきた。生産性という観点では、コロナ禍に比べ、NTTグループ全体で総労働時間が増えている点は問題視されている。この原因は、通勤から解放されたため、仕事の切りをつけられない、上司からの帰宅の声かけがないなどが考えられている。社員の健康を考えたリモートワークの在り方を模索中である。ハイブリッドワークによるコミュニケーションの問題を感じるか、というアンケートでは、問題がないと答えた者は50%に満たないため、課題と感じている。その理由としては、「文字のみで感情がつたわらない」「コミュニケーションのタイミングが分からない」などが挙がっている。

課題等への対応状況

 まずは、社内イントラの充実を図り、情報共有の強化を図っている。組織内、上司部下のコミュニケーション強化に向け、事業計画方針説明会や社員との対話会だけでなく、1on1を重視したコミュニケーションを実施しており、とにかく話を聞く事を徹底している。他にも自分の趣味や実績を記入した社員録や業務でお世話になった人に感謝のポイントを送るアプリケーションなどを活用している。オフィスでは座席をフリーアドレス化したり、個室ブースに設置してツールを拡充している。また、シェアオフィスも活用している。毎朝30分のチームミーティングやチャットを通してコミュニケーションを図ったり、電話で相談に応じたりしながら育児もする女性管理者からは、育児との両立や移動時間等の無駄の排除という点でもハイブリットワークは継続すべき良い制度だと考えている、との意見があった。法人営業の一般社員からは、社内会議で発言しない人に対する工夫や後輩への声かけ、対面でのコミュニケーションの活性化や社内での教育制度の活用など多様な工夫を行っているとの意見があった。上司との目標設定においては、目標がよりシャープなものになり、目的意識も明確になったとのことだ。

最後に

 私自身はリアル(対面)は大切と考えており、社員もそう感じている。リアルとリモートのバランスをいかにとるかが課題である。また、採用においてもリモートワークの導入状況について問われることもあり、引き続き検討していく必要があると考えている。
 ハイブリッドワークを導入して、コミュニケーション、就業状況の把握など様々な課題が見えてきたが、浸透もしてきたので、更なる生産性向上に向けて検討していきたい。
 今後のアクションとしては、社員へのアンケート、レクレーション等を通じた一体感の醸成、対面機会の創出やジョブ型を前提とした目標設定と成果把握を進めていく。
 Z世代の働き方の価値観に関するアンケートでは、働きやすさ(勤務時間や場所)が最も重視されていることが分かった。この傾向は年々強くなっている。
 ハイブリッドワークは導入して終わりではなく、ブラッシュアップや適切な制度の運用が必要である。IT企業という業種だけではなく、若い人は常に働きやすさを意識しており、採用面でもエンゲージメントは企業の課題であり、今後も皆様と学んでいきたい。

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【6年2月度 産業懇談会(水曜第1G)模様】

テーマ: 『 これからの証券ビジネス 』

  • 日  時:令和6年3月27日(水) 12時00分~14時00分
  • 場  所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
  • 参加者:22名
スピーカー:
牧野 克人(まきの かつひと)
東海東京証券株式会社
執行役員
写真:牧野 克人氏

自己紹介

 福井県勝山市出身、1995年当時東海銀行の子会社であった東海証券に入社した。阪神・淡路大震災が発災したこの時期はハイパー円高や金融機関破綻が続発する大変難しい時期であった。入社以降は、個人投資家向け営業、その後労働組合専従、企業金融部、人事部など多様な部署を経験した。秘書室長を務めていた時代には、その当時代表幹事であった石田建昭(当時当社社長)の秘書だったことから中部経済同友会とはご縁があった。その後、当社グループの人事企画部長や中部法人部長を経て、東京企業金融部長としてIPOやスタートアップ、上場企業の資金調達の支援部隊を担当。名古屋に戻り、執行役員として、当地の富裕層の皆様の期待に応えられるよう日々研鑽している。

証券ビジネスを取り巻く環境

 政府の旗振りにより、新NISAの導入や東証のPBRの改善指導による企業価値向上施策、脱炭素、イノベーション、スタートアップ支援などの様々な政策が打ち出され、証券ビジネスへの追い風にもなっている。いい話ばかりではない。高齢化社会や労働人口減少。物価、金融規制、異業種参入による競争の激化、DX化による投資コストの増加など社会環境は大きな転換期でもあり、こうした環境をとらえたビジネス展開は重要である。
 証券ビジネスの収益の中心は、取引の仲介手数料をいただくことであった。近年はネット証券が手数料0に踏み切り収益環境は厳しい状況になっている。こうした状況もあり、証券会社は、相続のサポートや不動産の仲介、m&Aなどのコンサルティング、証券会社が直接資金運用、企業の資本政策として株式、債券発行支援等多様な取組みを強化している。
 株式市場では、日経平均株価は1989年に最高値を記録して以降下がり続け、当時の安倍政権発足を起点に2012年頃から株価は上昇をはじめた。最近ではコロナ禍や国際紛争などにより、株価は下がることもあったが、日銀の大規模金融緩和政策などにより、ショックと言える程の急激な落ち込みはない状態が続いている。今後、金融緩和など政策の見直しが始まってはいるが、日本の株式市場は期待が持てる状況が続くと考えている。
 日本人の金融資産の保有状況を俯瞰してみると、超富裕層や富裕層の方は投資に精通している層であるといえる。一方、準富裕層やアッパーマス層と言われる層にもかなりの金融資産があり、新NISAの導入を機にネット証券等で投資を開始した人もいると考えられるが、投資をしていない人もまだ多く存在しているという分析をしている。当社はこの層の金融資産を投資に向ける戦略を進めている。物価上昇による現金・預金の目減り、高齢者層に偏った金融資産、現役世代の年金財政の逼迫等踏まえ、投資による将来の備えがまだまだ必要であることを訴求していきたい。
 証券ビジネスを過去から未来へ俯瞰すると、過去は営業員との対面型取引中心で上場企業株式、債券への投資が中心であった。現在はネットを介した非対面型取引が普及し、投資対象も不動産、仮想通貨など多様化し投資対象は広がっている。クラウドファンディングなどを活用して非上場企業にも直接投資できるようになってもきている。AIを利用したロボアドバイザーによる自動売買も普及してきた。今後は投資対象がアートや著作権などにも広がり、さらに様々な投資対象が増えるであろう。また、デジタル化がさらに加速すると考えられている。金融業界はAIによる投資の高度化、技術革新を進めており、これらの取り組みが金融機関の優劣をつけるようになってくる。すでに競争環境は証券業界内での闘いから銀行、小売のプラットフォーマーとの闘いに変化しており、さらに教育や医療にも拡大していくのではないかと考えられている。このように見ていくと証券会社不要論もでてくるが、証券会社も独自の多様な分野へのビジネス展開を行っている。

東海東京フィナンシャルホールディングスの概要

 当社は東証プライム上場企業で、時価総額約1500億円の企業である。社員はグループ全体で約3000名、東海東京証券を中核にシンクタンクやネット証券、海外現法、VCも持つ金融グループである。地方銀行と合弁で設立した証券会社も全国にあり、新しい金融の世界を作るべく挑戦を続けている。グループの将来として「異次元への挑戦」をキーワードにDXやGX、地域活性化の分野における存在意義を考えながらビジネスを拡大している。その中の1つに富裕層ビジネスがあり富裕層の方の豊かな生活の実現の支援をするという視点で、将来も期待できるビジネス分野と考えている。当社はこの分野をオルクドールというブランドで、サロンを開設し富裕層の方に会員となっていただくことで特別感を味わっていただくとともに、お客様のビジネスに寄与する機会も提供している。名古屋のサロンは2016年に開業、2019年には東京日本橋にサロンを開設している。2024年2月には東京の青山でスタートアップ支援を目論んだ新たなコンセプトでサロンを開設した。これらの場所から新しいビジネスを生みだし、日本経済の成長の一旦を担うことができればと考えている。

投資の高度化

 証券投資の対象としては、国内外の株式、債券、不動産等いくつかの種類があるが、それらを均等に1年間分散投資したとすると昨年は16%利益が出た。2014年以降の10年間同様に投資した場合2倍になった結果となっている。1点に集中投資するとリスクを伴うため、一定の分散が必要であることが効果的である。これは、ファンドラップという商品でご存知の方も多いと思う。ノーベル経済学賞を受賞した理論でもある「現代ポートフォリオ理論」では、投資商品のリスクとリターンの相関関係から、リスクを抑えるためには複数の資産に分散投資するのが有効と唱えられている、このような理論やデータを用いて私共はお客様に資産運用の提案を行い、投資を実行いただいている。これら取り組みは日本の公的年金の運用を行っているGPIFでも基本的な理論として採用されていることは特筆すべきである。

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【5月度産業懇談会のご案内】

 5月度産業懇談会は、下記のとおり開催いたします。

グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 集合場所
火曜グループ

屬ゆみ子
富田 茂
広井幹康

5月14日(火)
12:00~14:00

『食×ワイン×観光~官民連携による地方創生~』(仮)
長瀬電気工業株式会社 代表取締役 屬ゆみ子氏のご紹介
北海道中富良野町長 小松田 清 氏
※昼食時に北海道ワインをお楽しみいただきます。
※オンラインでご講話いただく予定です。

名古屋観光
ホテル
3階 桂の間

水曜第1グループ

淺井博司
足立 誠
落合 肇

5月15日(水)
12:00~14:00

『人口減少社会における人財戦略~ご出席者の皆様同士の意見交換も交えながら~』(仮)
株式会社ジェイエイシーリクルートメント
東海拠点統括部長兼名古屋支店長 大森 真一 氏

名古屋観光
ホテル
18階 IBUKI

水曜第2グループ

香川裕子
高見祐次
名倉昌孝

5月8日(水)
12:00~14:00

『東海東京証券の取組み』(仮)
東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社
社長 佐藤 昌孝 氏

東海東京証券
オルクドール・サロン
ホール

木曜グループ

河村嘉男
中林直子
吉田憲三

5月16日(木)
12:00~14:00

『リーダーに必要な相手の心を開くすごい話し方』
丸菱工業株式会社 取締役会長 河村嘉男氏のご紹介
フリーアナウンサー/話し方・コミュニケーションコンサルタント
株式会社インスパイア
代表取締役 生田 サリー 氏

名古屋観光
ホテル
3階 桂の間

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【6月度産業懇談会のご案内】

 6月度産業懇談会は、下記のとおり開催いたします。

グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 集合場所
火曜グループ

屬ゆみ子
富田 茂
広井幹康

6月11日(火)
12:00~14:00

『「顧客の創造」から未来を拓く…「アムール・デュ・ショコラ」の取り組みを題材に…』(仮)
株式会社ジェイアール東海高島屋
取締役会長 小林 創 氏

若宮の杜
迎賓館
1階 橘の間

水曜第1グループ

淺井博司
足立 誠
落合 肇

6月19日(水)
12:00~14:00

『高速道路の今とこれから』(仮)
中日本高速道路株式会社
取締役 常務執行役員 近藤 清久 氏

若宮の杜
迎賓館
1階 橘の間

水曜第2グループ

香川裕子
高見祐次
名倉昌孝

6月12日(水)
12:00~14:00

『三菱商事の人材育成・活用ビジョンについて』
三菱商事株式会社中部支社
支社長代理兼総務部長 相澤 基 氏

若宮の杜
迎賓館
1階 橘の間

木曜グループ

河村嘉男
中林直子
吉田憲三

6月6日(木)
12:00~14:00

『リソルでウェルビーイング!』(仮)
リソルライフサポート株式会社
取締役営業統括 名古屋支店長兼大阪支店長 行方 里司 氏

名古屋観光
ホテル
3階 桂の間

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【コラム】

コラム1 【さっかの散歩道】 No.70

長瀬電気工業株式会社
代表取締役 屬 ゆみ子

『 シンガポールの旅 その2 』

写真:マリーナベイサンズ

 前の晩、ホテルのバーで反省会という名のミニ宴会で盛り上がった。出発前、セントレアでの出発式で自己紹介があったのだが、メンバーのうち半分は「よく飲みます!」と自己申告。これは頼もしい!部屋で一人飲みしなくて済むし!とシンガポールナイト第一夜は「男気じゃんけん」で幕を開けた。知らない方のために少しだけ説明をすると、じゃんけんで勝った人が格好つけてお支払いをするというお遊び。一回のオーダー毎に伝票を切り分け、1回戦、2回戦とじゃんけんで支払う人が決まってゆく。バーのお兄さんは、その支払い方法を聞いて「なんか変なことする日本人だな」と思ったことだろう、何せ押しの強い富田さんが日本語で遊びの説明してたし。ところが3回戦も終わるころ、お兄さんもニコニコ顔で「で、この伝票は誰??」と閉店間際の清算にやってきた。

 翌日、「今夜のワインはソービニヨンブラン(白ワイン)とか飲みたいね」と言いながら昼食はアルコール抜き、で痛くなる足をひきずりながら、夕食前の訪問先、「ニューウォータービジネスセンター」に到着する。現地ガイドさんが「ニューオータニ・ニューオータニ」というので何のことかと思った(日程表もちゃんと見てなかった(;^_^A) のはどうやら私だけでなく「ニューウォーターね、なんかホテルの名前連呼してて、一体どこに行くのかと」とバスを降りてみなで失笑した。
 シンガポールの水事情は排水も含めてのリサイクルシステムで、施設内のろ過装置はほぼ日本製。巨大な浄水器と隣国マレーシアからのパイプラインで成り立っている。山がないので土地に保水力がない、でもこの国のことだからそのうち貯水ろ過装置付きの巨大な人工山とか作りそうだ。

写真:ペーパーチキン
名物ペーパーチキン

などと思いながら現地施設の担当者のやや聞き取りにくい英語の説明を、一生懸命訳そうとしてくれたクリエイト・レストランツ・ホールディングスの川井さんに頭が下がる。参加者ほぼ英語がお出来になるので、途中で放棄しても構わなかったのだけれど、センターを後にしたバスの中では、かなりお疲れでぐったりされていた。嗚呼早く、頭の疲れも私の足の痛みも癒えるディナーにしよう!!
 夕食は地元で人気のシンガポール中華。本場の中華より塩味が少なく、日本人は思わず「塩下さい」と言いたくなるかも…おそらく飲み物はビールに紹興酒くらいかなと期待薄だったのだが、なんとテーブルの上にはソービニヨンブランのボトルが!!どこかに<忍び>でも居たのか!と感動していたら、JTBのスタッフさんが近くの酒屋さんで購入してきてくださったのだという。もしかして事務局から「ワインしか飲まないアホがいる」とか聞いたのかしら?それにしても赤、白ワインともセンスの良いセレクトで、お料理とのマリアージュもぴったり。この後一日早くお帰りになる盛田さん乾杯で楽しくお食事を終えた。

写真:ドリンク
1杯目はご当地
シンガポールスリング

 こうなったら一刻も早く裸足になりたい!!バスの中で足をマッサージしながらホテルに到着。今宵もまたバーで男気じゃんけん第2夜の約束をし、昨夜支払いを逃れた私としては何回戦目に財布を開けることになるか…。最終夜なので、飲みが進むにつれ高いワインとかボトルで頼まれたら困るなあ~、とせっかく持ってきたこじゃれたワンピースに着替え、裸足のまま靴を手に持ってバーに行く。
「あ、昨夜の日本人!」興味深そうにサーブするバースタッフ、
「今夜もあのゲーム?」「そうだよー」「OK、伝票分けておくね」
やはり始めの1杯はシンガポールスリングで、と女子二人でまったりしていると遅れてやってきた男性軍もつられてオーダー(これなら安あがり!!じゃんけん勝っちゃうよ~)と心の中で作戦勝ちな風を装うも、コズルイ考えは神様もお見通し。あっさり負ける。世の中平等、人生プラマイゼロの法則なのだ。

 最終日、膝から下はとんでもないことになっていた。この日は観光だからチェックアウト時間までホテルで待機しててもよかったのだけど、植物園に行きたかったので、痛みで踵のつかない右足はつま先立ちのまま何とかお出かけする。各自植物園を回り、そしてマリーナベイ・サンズに移動…「では歩いていきま~す」この足で?この炎天下で?多分人のペースにはついてゆけないし、歩きながらお気楽な会話もできない、だって1km弱あるではないか…。何とかたどり着いたものの、「はい、上がるのに20~30分並びまーす」バスを降りてかれこれ1時間強座れていない(上がるの拒否して下のカフェでお茶したいのだけど)も言えず、何とかスカイパークまでご一緒するが、200mからの眺望は、痛みを忘れるほどの景観でもなく(だって香港のスカイデッキの方が高いし)やっと見つけたベンチに座り込み「あのさ、先に降りたいのだけど?」とお願いし、1階のフロアで裸足になって、大理石の床で足を冷やす~ほんの気休めだけど。(このまま先にタクシーで部屋に戻ろうか…)とも考えたのだが、直後みなさんが降りてきてバスで昼食会場に移動…嗚呼聞きたくないセリフ「歩きまーす」(あと何mよ!!私の足、象になってるんだけど)。そっから先、食事の味も何を話したかも別人格の<私>にお願いし、マーライオン見学に至っては「バスに残ります」で何とか回避してホテルに戻る。
 ホテルに荷物を置いて、財布だけ握りしめ速攻靴屋に駆け込む。普段履き慣れたメーカのサンダルなら、程よいヒールで踵と足首の負担を減らせる。本当は土産以外何の購入予定もなかったのだが、背に腹は代えられない。
 パッキングを済ませサンダルを履いてレイトチェックアウトをする。「もう帰るだけですから、歩きませんから」「ん、この靴なら空港でスキップできるかも」との期待はもろく崩れる。

写真:サンダル
シンデレラサンダル?!

夕食のレストランまではバスを降り、植え込みと駐車場とコンクリートの遊歩道を300m弱歩かなければならず(あ~靴の裏張りもしてないのに!!)、夕食会場でJTBスタッフに「初めてのシンガポールいかがでしたか?」と満面の笑みで聞かれるも「あと2年来なくていいです」と大人げない返事。その後空港にたどり着き「足、大丈夫ですか?」「大丈夫(なわけないだろ!!)」「荷物持ちましょうか?」「平気(杖代わりに押してるのよ、だったら車いす持ってきて!!)」心の声を飲み込んでデヴィ夫人を羨ましく思った。ラウンジでシャンパーニュをしこたま流し込み、あとは寝るだけ。
 ~早く帰ろう!!一刻も早く帰ろう!!

 あれから2カ月、足の腫れは早々に引いたが、いまだに痛みが残る。
 学び、『デヴィ夫人以外は、無理は禁物』
 ともあれ、お世話になりました。深謝。

写真:植物園1
写真:植物園2
写真:植物園3
写真:エビを剥く男性
エビむき兄弟1号2号

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コラム2 【師、曰く】 No.35

妹尾 鷹幸(ペンネーム)
(株式会社構造計画研究所 名古屋支社長 妹尾(せのお) 義之)

ペンネームは、恩師、田坂広志先生の多重人格マネジメント、作家人格の名。心に鳴り響く言葉を今回も一筆。

『 ノブレス・オブリージュ 』

 “noblesse oblige”。19世紀のフランスで、noblesse(貴族)とobliger(義務を負わせる)を複合して出来た言葉。身分の高い者は、それ相応に果たすべき社会的責任と義務があるという、欧米社会の道徳観。

 最近、朝のNHK連続テレビ小説「虎に翼」を、帰宅後に見るのが楽しみだ。昭和初期から戦後にかけて、女性で日本初の弁護士と裁判官になった三淵嘉子さんをモデルにしたドラマ。男尊女卑がまかり通っていた時代、夫から虐待されていた妻が起こした離婚裁判の過程で、妻が母親の形見の返還を夫に求める、別の民事訴訟の回が痛快だった。当時の民法は、妻の財産は夫の管理下ゆえ、取り返すのは困難という、現在では信じられない時代。女性の弁護士資格さえ許されていなかった当時、それでも法律を学ぶ主人公が志を一にする仲間達と裁判を傍聴する。通常なら返還を求める妻の敗訴だが、裁判官が下した判決に、感動した。夫が妻の財産を管理する権利は民法の通りだが、夫婦生活が破綻した中で、不当な思いでその権利を主張することは、「権利の濫用」にあたる。よって、妻の請求を認め、夫に返還を命じるという、当時の常識を覆すものだった。法という「力」を持つこの裁判官が、その力を良識のもと公正に行使したこともまた、ノブレス・オブリージュではないか。まだまだ現実には、「権利の濫用」、「権力の濫用」は無くならない。力を持つ者は、その力を濫用することなく、良識をもって、それを行使することが、力を与えられた者の義務であることを自覚せねばならない。濫用する者に、高貴な香りはない。

 しかし、ノブレス・オブリージュとは、貴族といった身分や、地位や力を持つ者だけに与えられる、気高い矜持なのだろうか。

 師、曰く 『ノブレス・オブリージュ。 この言葉を深く見つめるとき、それが、実は、逆の意味を持っていることに、気がつきます。 「高貴な人が自覚する義務」ではなく、「義務を自覚する人の高貴さ」。 いつか、この言葉が、その意味において使われる時代が、来る。 そして、そのとき、「義務」という言葉は、「使命」という言葉と、同じ響きを持つようになる。』

 まさに、その通りだろう。身分や地位ではなく、私達、一人一人が出来ることを成してゆくことこそが、「使命」に生きる人の誇り高き香りこそが、ノブレス・オブリージュなのだ。私自身も、自分に出来ることが、少しは解ってきたように思える。だから、その出来ることを、少しでも世の中が良くなる為に活かしてゆこうと、行動に移している。できることならばいつの日にか、ノブレス・オブリージュの高貴な香りを、少しは身に纏える人間に成長したい。その為にも、使命を自覚し行動するのみだ。

 修行は続くよ、どこまでも。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

写真:桜
(ラスト・サクラ)

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コラム3 【げんき通信】 No.8

学校法人佑愛学園
愛知医療学院短期大学
リハビリテーション学部理学療法学専攻
講師 臼井 晴信

『 病気にならない秘訣は自律神経にあり 』

 「自律神経」とよく聞くと思いますが、一体何なのでしょうか。
 自律神経とは脳や脊髄と内臓、血管などをつなげる神経です。脳からの命令を臓器などに伝え、臓器からの情報を脳に伝えます。自律神経は血圧の調節など無意識な身体の調節に関わります。身体の中で自動的に起こることのほとんどに自律神経が関わっています。

 運動するときには身体を動かすように働きかけ、休むときには筋肉を休めて食べたものを消化したりするように働きかけます。しかし、自律神経の調子が悪くなると、休むときに身体を動かすような状態にするなど、本来の働きとはちぐはぐの活動をすることがあります。そのような自律神経の変化は病気の発症や進行にも影響します。自律神経の活動が悪くなると、心臓病をはじめ、うつ病、認知症に至るまで様々な病気になりやすくなるのです。

 日々の体調には自律神経の状態を知るヒントがあります。例えば最近汗をかかなくなった、立ちくらみが増えた、お腹の調子が悪い・・などは自律神経の状態が悪い兆候かもしれません。

 さて、自律神経は無意識に働くと言いましたが、実は自分で自律神経に働きかける機能があります。
 それは「呼吸」です。普段は呼吸も自律神経の活動で無意識に行います。しかし、自分で呼吸を止められる様に、実は意識的に調節できます。自分で呼吸を調節することで、間接的に自律神経の活動も変化するのです。
 自律神経は、活動的な時と休む時のメリハリが大事です。座っているのにそわそわするような時は、ゆっくりと呼吸をすることで自律神経の活動も落ち着きます。自律神経が働きすぎかと思ったら、大きくゆっくりと呼吸をしてみて自律神経を休ませましょう。そうすることで自律神経の活動にメリハリがつき、結果的に自律神経の状態は良くなります。
 「動くときは動く。休むときにはしっかり休む」。それが病気の予防には大切です。

イラスト:深呼吸をする男性

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