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 今後も産業懇談会の活動の様子を楽しくお届けしてまいりますので、ご愛読いただきますようお願いいたします。

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【4年5月度 産業懇談会(火曜G)模様】

テーマ: 『 再生可能エネルギー熱や未利用熱を利用したヒートポンプによるカーボンニュートラルやSDGsに向けた取り組み 』

  • 日  時:令和4年5月10日(火) 12時30分~14時30分
  • 場  所:名古屋観光ホテル 桂の間
  • 参加者:21名
スピーカー:
柴 芳郎(しば よしろう)
ゼネラルヒートポンプ工業株式会社
代表取締役
写真:柴 芳郎氏

会社紹介

 当社は、1984年に私の父が創業したヒートポンプ専業メーカーで、2016年に私が3代目として社長に就任した。事業内容は、地中熱対応水冷式・空水冷式ヒートポンプ冷暖房給湯機の製造や、排熱回収型ヒートポンプ冷暖房給湯機の製造等を行っている。納入実績は2021年に1,000件を達成した。様々な業種のお客様に納入をして頂いており、納入事例として、主に「星のや 軽井沢」や「アイシン・エイ・ダブリュ蒲郡工場(現アイシン蒲郡工場)」などがある。今後も末永く当社のヒートポンプをご愛用頂くために、定期点検等の保守サービスにも注力し、また、大学や企業との研究開発や海外展開も積極的に実施している。
 SDGsと当社の事業の関わりは、17の目標の全てにコミットメントし、事業活動による環境貢献は、2030年までに当社製ヒートポンプで、年間でタンカー一隻分の原油削減の実現と、2030年までに、当社製ヒートポンプで名古屋市の17%または東京23区の9%の面積を森林に変えるのと同等な、二酸化炭素排出削減を実現することを掲げた。

再生可能エネルギーの種類について

 再生可能エネルギーは、「電気」と「熱」の2種類あり、「電気」は太陽光や風力、水力、地熱等が有名である。一方で「熱」は、地中熱や太陽熱、温度差エネルギー(工場排熱、温泉排熱、下水道熱、透析排熱等)がある。再生可能エネルギー熱によるエネルギー削減やCO2の排出削減は、日本では補助金制度において省エネでも再エネでもどちらで換算してもよいことになっているようである。課題として、再生可能エネルギー熱は、国民にあまり知られておらず、普及していかなければならない。

ヒートポンプとは

 ヒートポンプは、熱を汲み上げる装置で、ポンプは水を低いところから高いところに汲み上げることが出来るのに対して、ヒートポンプは熱を温度の低いところから高いところに送ることができる。エアコンや冷蔵庫はヒートポンプの一種である。熱を発生させるより、熱を移動させる方が必要なエネルギーが少なくてすむため省エネルギー、省ランニングコストのシステムが構築できる。
 省エネ性を示す指標:COP(Coefficient of Performance、成績係数、エネルギー消費効率)は、消費電力1kW当たりで、どれぐらいの能力(kW)を引き出せるかを数値化したもの。数値が大きいほど省エネ性能が優れており、電気ヒータのCOPは1に対して、ヒートポンプの場合、例えば、冷却のみの利用でCOPは4、加熱のみの利用でCOPは5、冷暖同時利用でCOPが9と、少ない電力消費で、大きな熱エネルギーに転換できる非常に効率の良いシステムである。
 ヒートポンプは、地球上に存在する様々な熱を利用して冷温熱を生成するシステムで、例えば温泉の排湯や工場の産業排熱、地中熱や井水など身近にある未利用熱などを有効利用できる。また、ヒートポンプは燃焼を伴わないため、CO2の排出を抑えて熱エネルギーを作り出すことが可能である。再生可能エネルギー熱を利用するヒートポンプは環境に優しく、温暖化対策に大変有効と言える。
 当社で扱うヒートポンプの再生可能エネルギー熱は様々であるが、主に地中熱を利用している。なぜ地中熱が良いのか?ポンプと同様に、ヒートポンプは温度差が大きいと、動力が大きくなり、能力が低下してしまう。一方で、地中熱は温度が一定(名古屋は約19度)のため、利用側の温度と熱源の温度差が小さいため、動力も小さくすむため省エネになる。従って、地中熱を利用すると、空気を利用するエアコン等よりも効率の良い冷暖房ヒートポンプシステムが構築できる。また、温泉排湯は年間を通して外気に対して温度が高いため、暖房や給湯が効果的である。地熱と地中熱の違いは、地熱は地熱発電といったマグマの熱を利用して電気のエネルギーを得るのに対し、地中熱は、温度差が一定の地中(深さ約10~100メートル)の温度を、ヒートポンプのシステムを利用して熱のエネルギーを得る違いがある。ヒートポンプを再生可能エネルギー電気で動かせば、カーボンニュートラルが実現できるため、持続可能な社会へ貢献できる。
 今後の将来のシステムとして、様々な熱源をパイプラインで集約してヒートポンプが熱をコントロールし、冷暖房設備や給湯といった様々な用途に対して熱の融通ができるようにする「熱源ネットワーク」と、電源ネットワークとの連携が期待される。

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【4年5月度 産業懇談会(木曜G)模様】

テーマ①: 『 双日株式会社 海外工業団地事業における“脱炭素”に向けた取組 』
テーマ②: 『 双日ツーリスト株式会社 貴社に最適な海外危機管理サービスに関するご提案 』

  • 日  時:令和4年5月12日(木) 12時30分~14時30分
  • 場  所:名古屋観光ホテル 桂の間
  • 参加者:24名

スピーカー:

写真:高桑 政治氏
高桑 政治(たかくわ まさはる)
双日株式会社
中部地区管掌兼名古屋支店長
写真:上原 敦氏
上原 敦(うえはら あつし)
双日株式会社
エネルギー・産業インフラ事業部担当部長
写真:若月 秀彦氏
若月 秀彦(わかつき ひでひこ)
双日ツーリスト株式会社
ソリューション営業部長

自己紹介(高桑氏)

 1957年生まれで愛知県岩倉市出身。当時から海外志向が強く総合商社で働きたいと考えており、大学卒業後は日商岩井に入社した。LNGビジネス事業に従事しインドネシア駐在を経験。2002年には、住友商事と弊社で共同設立したエルエヌジージャパン(株)に転籍し、2017年からは双日へ復帰し現在に至る。42年の勤務の内、約半分が中部で勤務している。

海外工業団地ビジネスとは

 1996年にビジネスとしてスタートさせ、ベトナム、インドネシア、インド、フィリピン、タイの5カ国、11拠点で事業を展開し、総企業誘致数は300社を超えた。工業団地に日本人駐在員を派遣し、海外進出先の情報提供や会社設立、操業準備、操業後のトラブル(法律改正やコロナ対策等)まで対応を行っている。大都市圏や港とのアクセスのしやすさ、インフラの安定供給の部分で質の高い工業団地の開発・運営を行う。

【インドネシア デルタマス・シティ】
 ジャカルタ近郊にあり港や周辺工業団地からアクセスしやすい立地にある。デルタマス・シティ内に総合病院や日本人学校があり、サービスアパートから専用通路で通学が可能。2024年にはAEON MALLが開業する予定である。入居企業150社の内、日系企業は82社が進出している。
【インド Sojitz - Motherson Industrial Park】
 チェンナイに工業団地を開発し、2019年に販売を開始した。2022年には新型コロナの水際対策が緩和され、インドへの投資を考える企業の視察が増えた。インフラ設備や造成済み区画を用意しており、近隣の工業集積エリアにアクセスしやすく、洪水のリスクもない。
【ベトナム ロンドウック工業団地】
 ホーチミン市や港からアクセスしやすく、洪水のリスクもないエリア。ハローワークのような人材サービスセンターを設置し、工業団地内企業のスタッフやワーカーの求人情報を一括管理している。また、KDDIによる光ファイバーを敷設し、団地内のITサポートセンターからすぐにサポートできる体制を整備した。また、相互の情報共有のために、工業団地内の企業同士が意見交換を行う仕組みも構築した。

 その他フィリピンのLISP IV・HEIPやタイのサハ工業団地で販売代理を展開している。

脱炭素に関する取り組みと工業団地での展開

 昨年のCOP26において温室効果ガスの各国の削減目標が発表され、タイ・ベトナム・インドでは2050年、インドネシアでは2060年にカーボンニュートラルの達成が求められることになった。当社では工業団地のCO2削減の対応策として、次の7つの取組を準備および実施している。

  1. 温室効果ガス(GHG)排出量の可視化
     温室効果ガスの排出量をサプライチェーン全体でモニタリングし、国際基準によって排出量を算定し、レポートするサービス。
  2. ベトナムでの圧縮天然ガス(CNG)供給事業
     石油よりもCO2排出量が少ない天然ガスは、揚げ地である港周辺のみしかガスパイプラインが設置されていない。そこで、タンクローリーにCNGを充填し工業団地に運び、工業団地内に敷設したガスパイプラインを通して利用できる仕組みを構築した。
  3. ESCO事業
     当社が企業に対して照明や空調などの省エネ機器による対策の提案を行い、当社が省エネ機器を購入し、コスト削減できた分をお互いにシェアするサービス。
  4. 屋根置き太陽光発電事業
     ベトナムやインドネシアで展開しており、ベトナムでは、現地で設立したSOL Energy社が太陽光発電設備を購入して、顧客の工場の屋根に設置し、発電した電力を顧客が利用できる仕組みとなる。初期費用やメンテナンス費用が不要で、電気料金も削減できる。一方デメリットは、20年の長期契約が必要となる。
  5. 蓄電池・EMS(Energy Management System)
     工業団地内の電気系統に蓄電池を導入し、昼間の電力の余剰分を蓄電池に貯めて、夜間に利用する仕組み。大規模停電時の非常用電源や単価の安い時の電気を蓄電池に貯める事ができる。
  6. DPPA(Direct Power Purchase Agreement)
     遠隔地のメガソーラーと電力の供給契約を結び、みなしでメガソーラーの電力を購入して、電力を供給する仕組みである。各国で法整備中のため、今後スキームが決まってくる。
  7. カーボンクレジット
     当社がカーボンクレジットを供給するサプライヤーからクレジットを調達し、顧客に提供する仕組み。

 上記のまとめとして、カーボンニュートラルを達成するためには、まず現在のCO2排出量を把握し、省エネ対策や再エネを利用し削減すること。そして、残ったCO2排出量分はカーボンクレジットを調達して相殺してカーボンニュートラルを実現する。今後はこのようなカーボンニュートラル対応型の工業団地のビジネスを展開していきたい。

海外危機管理サービスについて(双日ツーリスト株式会社)

 コロナ禍により、海外業務渡航の一連のサービスを再構築し、予約から帰国後までの新たなトータルサポートパッケージを提供し、利便性の向上に努めている。特に危機管理サービスでは、重大有事と各国の地域インシデントに分けて対応している。重大インシデントは、24時間情報をモニタリングし、重大事項が起きた場合は、30分以内にメールで連絡する。GPSを搭載したルーターを渡航者に渡しているため、常時位置情報を入手し安否確認ができる仕組みになっている。2022年3月から需要が増えつつあり、名古屋オフィスがあるため気軽に相談して頂きたい。

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【4年5月度 産業懇談会(水曜第1G)模様】

テーマ: 『 「法隆寺金堂壁画模写展示館」見学会 』

  • 日  時:令和4年5月18日(水) 12時30分~15時30分
  • 場  所:愛知県立芸術大学
  • 参加者:11名

スピーカー:

写真:戸山 俊樹氏
戸山 俊樹(とやま としき)
愛知県立芸術大学
学長
写真:倉地 久氏
倉地 久(くらち ひさし)
愛知県立芸術大学
副学長
写真:岡田 眞治氏
岡田 眞治(おかだ しんじ)
愛知県立芸術大学
美術科 日本画専攻 教授

愛知県立芸術大学とは

 愛知県立芸術大学(以下「愛知芸大」という。)、1966年に設置され今年で56年目を迎える大学で、開学以来中部の芸術文化の担い手となるべく教育に努力を重ね、多くの作家を育ててきた。2007年に愛知県公立大学法人として法人化に伴い、愛知県立大学と愛知県立看護大学は統合し、愛知県立大学の中に看護学部を新設、愛知芸大はそのまま維持された。学生数は、美術学部は1学年定員が95名、音楽学部が100名の1学年約200名、全体で約800名となり、大学院などを含めても約1000人の大学である。少子化にも関わらず、受験者数は横ばいの状態が続いている。美術学部は定員が少ないこともあり、毎年倍率が平均して約8倍で、人気の高い学部となっている。
 また、「愛知芸大」は、企業や学校との社会連携にも積極的に取り組んでいる。例えば、他大学と協定を結び共同研究の実施や、学校や企業、団体との連携にも力を注ぐ。加えて社会貢献として、企業への演奏派遣や、お寺などにある作品の修復や模写を行っている。
 最近では、野外ステージ観覧席整備の資金を募集するためクラウドファンディングを立ち上げた。野外ステージでの演奏会に多くのお客様をお迎えしたいので、皆様のご協力をお願いしたい。

模写事業について

 「愛知芸大」では、1974年より多くの国宝絵画の模写制作を行ってきた。模写制作には、優れた古典絵画の表現及び技法を研究・修得し継承していく人材育成の狙いがある。また、現在の状態をそのまま書き写す現状模写の手法は、劣化が危惧される作品の保存の観点から長期間公開が難しい文化財の代わりに模写作品を展示することで、貴重な作品を間近で見ることができ、教育普及の意義がある。文化財が火災やカビ等でなくなってしまう可能性もあるため、使命感を持って模写事業を今後も続けていきたい。
 現在は、徳川美術館に収蔵されている「長篠・長久手合戦図屏風」の想定復元模写に取り組んでいる。
 模写の実績として、日本の仏画で最高の仏画と呼ばれている「京都国立博物館所蔵 国宝 釈迦金棺出現図」、「教王護国寺所蔵 国宝 両界曼荼羅図(伝真言院曼荼羅) 胎蔵界」、「高野山金剛峯寺所蔵 国宝 仏涅槃図」などの模写がある。これらは平安時代に作られた日本人の色彩感覚が研ぎ澄まされた一番美しい仏画と言える。
 また、「神護寺所蔵 国宝 伝源頼朝像」の模写では、一見すると黒一色のようにみえる頼朝の袍では、よくみると同色の輪無唐草文様が浮かび上がる綾地の織文様が表現されており、目を凝らせば凝らすほど文様の繊細な美しさを目で楽しむことができる。
 文化財の模写によって、文化的遺産として多くの人の目にふれて文化財への関心が高まり地域文化の向上に役立つことや、制作途中でも広報を通じて地域住民への広く情報を公開し、模写事業を足がかりに、「愛知芸大」の活動への理解を深める機会にしていきたい。

法隆寺金堂壁画模写について

 法隆寺金堂壁画模写展示館は、「愛知芸大」で一番見所のある施設の1つ。法隆寺金堂壁画は奈良時代前期に制作されたが、本物は1949年の火災で焼損してしまった。現在は1968年に描かれた模写が取り付けられている。しかし、法隆寺では間近で見学することができないため、「愛知芸大」の法隆寺金堂壁画模写展示館のみが唯一展示館形式で全図の模写を展示しており、歴史的な文化財の美を身近に体感することができる。
 法隆寺金堂壁画は、大壁4面、小壁8面の計12面から構成されている。「愛知芸大」はこの全てを1974年から1987年の14年の歳月をかけて現状模写を完成させた。この制作の予算は、学内の予算とは別に愛知県の予算を頂いて制作をしていたが、現在では学内予算で実施している状況である。このような貴重な取り組みを県民の皆様に知ってもらいたい。引き続きお力添えを頂きたい。

写真:見学会の様子1

写真:見学会の様子2

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【4年5月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】

テーマ: 『 日本のドローン産業をめぐる最新動向 』

  • 日  時:令和4年5月25日(水) 12時30分~14時30分
  • 場  所:若宮の杜 迎賓館
  • 参加者:24名
スピーカー:
舘 良太(たち りょうた)
有限会社 舘 専務取締役
一般社団法人国際無人航空機協議会 代表理事
写真:舘 良太氏

「国際無人航空機協議会」の設立の経緯

 家業はアルバムの制作会社を営んでおり、ドローンと関わっていなかった。しかし、ある企業の役員の方とご縁があり、今後の写真撮影はドローンの時代が到来するというお話を聞き、その後アメリカのパイロット資格を持った人と知り合ったことがきっかけで、ドローンの管理団体を設立することになった。
 2019年に設立した国際無人航空機協議会は、自動車学校のようなドローンスクールを傘下に抱え、ドローン免許取得の講習を行っている。現在ドローンは中国製が約85%を占め、セキュリティの部分で不安を抱えており、日本製のセキュリティの高いドローンの開発や操縦者の養成を行い、日本の産業界の発展に貢献しようと取り組んでいる。当協議会に登録している講習団体は、7月には22社になる予定。1社で複数ドローンスクールを持っているところもあるため、スクール数は全体で30校程度になる。
 現在の主な取り組みは、東海大学など大学向けや三重県のドローン消防隊など公共向けのドローン講習の実施や、近代消防社からの依頼により、全国での消防用のドローン講習のテキスト作成を共同で行っている。今後、全国で消防用のドローンを導入して頂いて災害救助に使ってもらいたいと考えている。

ドローンに対する国の最新動向や航空法改正

 TV等でみかけるドローンを用いた荷物の配送は、現行では有人地帯(第三者上空)での目視外飛行は認められておらず、レベル3での実証実験として実施している。2022年12月の法改正によって、有人地帯でのドローン飛行が認められるようになるため、ドローンの落下の危険から飛行の安全を明確にして担保することになる。一方で、利用者の利便性向上のための規制の合理化や簡略化も併せて進んでいる。
 2022年6月に航空法が改正され、これまで200g未満のドローンについては、技能認証という免許に類似した民間資格は不要であったが、改正によって100g以上のドローンは技能認証が原則必要となる。6月20日以降、技能認証取得者が大幅に増加すると予想される。また、ドローンの所有者を識別するためにリモートIDの搭載も必要となる。これは、ドローンの申請者が増えるに従い、年間の事故件数(100~200件程度)が増えてしまったからである。
 そして、2022年12月には、民間資格だった技能認証から国家資格に変わる。免許取得のためには、国の登録を受けた講習機関で学科と実地の講習を受け、国が指定する指定試験機関で身体検査、学科試験、実地試験(講習機関で修了している場合は免除)が予定されている。詳細は7月に国土交通省のHPで発表される予定。
 さらに、既存の許可承認制度の合理化や簡略化を図るために、ドローンの安全基準への適合性について検査する機体認証制度を創設し、国が認めた形式認証を受けた機体については、機体認証の検査の全部又は一部が省略される。機体の安全性を担保しながら機体の認可を促進する狙いがある。

ドローンビジネスの利活用

 中国製のドローンは機種にもよるが約20万円程度で販売している。一方で、同性能の国産ドローンは約140万円と大きな差がある。国産が高価な理由は、人材不足で開発するエンジニアが少なく、海外から優秀なエンジニアを雇っており製作費が高くなっている。日本企業もエンジニア教育が進み今後は安くなっていくのではないか。
 ドローンは航空機や自動車と異なり、未開拓な空域を有効活用することで低コストや低リソースの物流を実現できる。そのため、インプレス総合研究所のデータによれば、ドローンビジネスの国内市場の中心は業務活用であるが、東京オリパラ2020大会によりスポーツ市場などの周辺分野にも波及している。2021年度の予測は2305億円で、2016年の300億円からわずか5年間で約7倍に成長し、2030年には約5300億円になると見込まれる。
 最も活用されている分野は、メディア・空撮分野で、映画やTVドラマなどの商業空撮や報道撮影、スポーツ中継で利用される。次にインフラ維持管理分野。通信や鉄道の施設、ダム、下水道、太陽光パネルの点検等に活用され始めている。これまで人が目視で点検していたことが、ドローンで点検ができるようになる。さらに、人では見えない部分も確認できるため保全の精度も向上する。また、測量(土木測量)や物流(貨物輸送、フードデリバリー)、農林水産業では、農薬散布、圃場センシング(生育状況の確認や病害虫発生推定)や森林調査もできる。その他に警備や防災、保険事故調査等様々な分野で活用されるようになった。加えて、ドローンの周辺サービス市場も拡大が見込まれており、運航管理システムや機体メンテナンス、ドローン損害保険の市場も成長するだろう。
 課題としては、荷物の輸送する場合の積載重量がまだ軽いものしか運べない機体が多いこと、写真の解析度の低さ、騒音による苦情、街中ではプライバシーの問題や墜落やけがのリスクといった安全性の確保が求められている。
 ドローン物流のコストは、まだ他の手法よりも高くなっているが、人口減少に伴い必要不可欠な技術であるため、国としても補助金制度を設けて支援をしている。今後も様々な分野で活用頂けるように取り組みをしていきたい。

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【名古屋いちばん物語】 No.126

テーマ: 『 「住吉の語り部となりたい」 シリーズ第103回 』

料亭つたも 会長・深田正雄

若宮八幡社と若宮まつり

写真:山車

写真:地図
江戸後期の若宮周辺
令和4年5月若宮まつり再興

 令和4年5月15~16日コロナ禍で中止されていた本格的な若宮祭が3年ぶりに門前町の担当で晴天に恵まれ再開されました。16日本祭では山車や神輿が本町通を那古野神社まで曳行、総代会会長・岡谷篤一氏の岡谷鋼機(株)前にてからくり披露「コロナ退散」人形囃子も話題となりました。
 350年余の歴史を誇るイベントの再興で久しぶりに栄ミナミの賑わいが戻りました。前日日曜日の宵祭では午後4時よりキッチンカー大集合、恒例の名物料亭蔦茂のわらび餅も人気で多くの子供たちも加わり境内は1000人近い人出で大賑わい。十数年ぶりに門前町への山車曳行もあり、大須地区に歴史と文化の香りがイッパイとなりました。
 正雄君の小学生時代、若宮祭りは最大の興奮行事!2日間とも学校には行かず(特別休日?)朝から町内のお休み処に集合「子ども獅子」をかぶり、大声で「元気を出してワッショイ!!」と叫びながら近所を乞食獅子で小遣い稼ぎ。夕刻には集めた小銭を握りしめ本町通りのバザー「買いにオイデー」、暗くなると境内の町内テントや夜店で悪童たちと大騒ぎ、イタヅラの最高潮は提灯破りの喧嘩騒動!!懐かしい思い出いっぱいの無礼講でした。
 コロナ疫病で中止が続いた栄ミナミ音楽祭、南大津通り歩行者天国、「どまつり」、栄ミナミ盆踊り@GOGO、コスプレサミット、住吉祭りなどの楽しいイベントの早期・再開が期待されます。

写真:岡谷鋼機前のからくり
岡谷鋼機前のからくり披露
今年は「コロナ退散」祈願
写真:神輿の担ぎ手
那古野神社へ神輿渡行:毎年東海高校同級生が担いでくれます。
73歳でも元気な仲間たち!
若宮の歴史:

<尾張の山車祭り>
 下記HPの「トップページ」→「尾張の山車館」→「名古屋市中区『若宮祭』」よりご覧ください。
https://dashi-matsuri.com/index.html

 江戸時代、社領は現在の3倍ほど、200石の扶持も与えられ歌舞伎小屋・見世物屋台が立ち並び、芸人も多く町衆もお武家さんも分け隔てなく楽しめるチョットした遊興地でもあったようです。
 平成22年名古屋開府四百年と共に遷座400年祭は住吉町がまつり実行委員会を担当し、祭礼では境内にて久田勘鷗能楽師による薪能奉納、10月の名古屋まつりでは市内の山車22両が早朝に若宮に集合本町通りを名古屋城まで渡御など盛大に実施されました。

写真:奉納
平成22年薪能奉納(本殿前境内)
写真:からくり・力持ち披露
住吉町蔦茂前にてからくり・力持ち披露
新しい若宮八幡社:http://www.wakamiya.or.jp/

 6月1日晴天に恵まれご朱印帳を携えた多くのご婦人方が訪れ、山車蔵も解放されマルシェで賑わっておりました。現在の副野均宮司の着任される前は、境内は駐車場として毎日100台以上の利用もあり、大きなパーキングロットの中に本殿があるという寂しい状況でした。運営資金面では駐車場収入で安定するものの風格と威厳に乏しく、若宮会館も老朽化が激しく駐車場の中での婚礼という課題多き状況といえました。

写真:案内板
社務所前の案内板

 現在は「若宮の杜迎賓館」として新築、名古屋観光ホテルに運営委託してオシャレな集いの場となっております。また、平成26年から始めた「鎮守の森緑化計画」で氏子を中心に協力し梅や榊の植樹、そして、保存樹の楠(戦災でも焼け残った)、銀杏、橘、桜、縁結びの連理木など小鳥さえずる憩いの場となってまいりしました。令和3年3月26日には住吉社北に秀吉・家康に仕えた蜂須賀小六にゆかりのある「蜂須賀桜」を徳島より苗木をいただき小生が植樹させていただきました。これから2月に開花する早咲き桜として楽しみになりました。
 今夏は7~8月の縁結び風鈴まつり、毎月1日恒例の「若宮の森マルシェ」、6月30日16:00~大祓式・「夏越の祓い」、7月25日16:30~茅の輪くぐり・赤丸神事にもお気軽にお立ち寄りください。そして、連理稲荷、神御衣神社、針塚、そして、新しく井戸を掘り「水みくじ」など見どころいっぱい、市民の憩いの場としての若宮の散策をお楽しみください。

写真:若宮マルシェ
人気の若宮マルシェ 令和4年6月1日
写真:社務所
社務所・御朱印帳
写真:深田 正雄氏
住吉社前での小生、
後方に蜂須賀桜
写真:水みくじ
本殿前の水みくじ

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【新会員自己紹介】

写真:柴 芳郎氏
火曜グループ
柴 芳郎(しば よしろう)
ゼネラルヒートポンプ工業株式会社
代表取締役

【ゼネラルヒートポンプ工業株式会社】
〒450-0002 名古屋市中村区名駅2-45-14東進名駅ビル7F
URL:https://www.zeneral.co.jp

略歴
1972年10月 北海道旭川市生まれ
2008年3月 名古屋大学大学院工学研究科計算理工学専攻博士後期課程修了 博士(工学)
2015年7月 ゼネラルヒートポンプ工業株式会社代表取締役就任

役職・資格
ゼネラルヒートポンプ工業株式会社 代表取締役
NPO法人地中熱利用促進協会 理事
中部地中熱利用促進協議会 副理事長
NPO法人地中熱&地下水資源活用NET 理事
東北ZEB再エネ熱促進協議会 理事
国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学インダストリアルアドバイザー及び産学官連携客員教授
(国交省)IBEC建築物省エネ基準検討委員会地中熱利用 TG協力委員

名古屋大学大学院工学研究科修了 博士(工学)
エネルギー管理士
一級管工事施工管理技術者
高圧ガス製造保安責任者(第一種冷凍機械)
一級地中熱施工管理技術者

会社紹介
 ゼネラルヒートポンプ工業株式会社は、再生可能エネルギー熱(地中熱・地下水・温泉・空気など)を利用したヒートポンプや排熱(工場排熱、冷房排熱、温泉排熱、下水熱、透析排熱など)で暖房や給湯を行う排熱回収型ヒートポンプを開発しており、設置地域や状況に対応した環境価値の高い製品をご提供いたします。
 再生可能エネルギー熱利用や排熱回収技術により、火を使わないクリーンで安全な空調・給湯システムをヒートポンプで実現し、エネルギー削減、CO2排出量削減による地球環境保全、ランニングコスト低減が可能です。
 当社はSDGsについて17の目標の全てにコミットメントし、事業活動による環境貢献としては次の数値目標を掲げました。2030年までに当社製ヒートポンプで、年間でタンカー一隻分の原油削減の実現と、2030年までに当社製ヒートポンプで名古屋市の17%または東京23区の9%の面積を森林に変えるのと同等な二酸化炭素排出削減を実現します。

趣味
 五十肩で運動不足を痛感して少し真面目にゴルフをやるようになり、ゴルフクラブのフィッティングや新しいゴルフ理論などをWebやYouTubeで研究しておりますが、実践は上手くいかないのがとても面白くやりがいを感じております。家の近くのホタルで有名な相生山で時々妻とウォーキングもしています。
 仮想通貨やそれに関連する技術について最近興味を持つようになり、半分趣味として少しの実践を交えながら将来に思いを馳せています。
 高校及び大学途中まで吹奏楽でトランペットを吹きましたが、才能のなさに絶望した半面音楽への感度が少しだけ増幅し、今では素晴らしい音楽に触れることに喜びを感じています。

好きな言葉
 和而不同(わじふどう)

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写真:春名 孝俊氏
火曜グループ
春名 孝俊(はるな たかとし)
株式会社御幸ビルディング
取締役社長

【株式会社御幸ビルディング】
〒460-0003 名古屋市中区錦3-20-27
URL:http://www.miyuki-re.jp/index.html

 皆様、こんにちは。御幸ビルディングの春名孝俊と申します。
 当社は旧東海銀行系の不動産管理会社4社(御幸ビルディング、八重洲ビルディング、桜橋ビルディング、東神ビルディング)を源流とし、不動産賃貸、建替、再開発などを業とする会社です。現在、20棟ほどのビルを賃貸している他、日本橋一丁目中地区再開発事業への参画や神田小川町交差点で神田御幸ビルの建て替え等を行っております。主要株主は三菱HCキャピタルです。

 私は2年前に当社の社長に就任しましたが、コロナ禍の状況下で活動に制約もあり入会を見合わせておりましたが、状況もようやく落ち着きを見せ始めたこともあり、遅ればせながらこのタイミングで火曜グループのメンバーに加えていただいた次第です。

 私は1982年に旧東海銀行に入社して以来、アメリカでの約20年の勤務を中心として主に国際畑で仕事をしてきました。その後三菱UFJリース(現三菱HCキャピタル)に移り、2年前に当社の社長となりました。

 一番の趣味はワインでありまして、日本ソムリエ協会のワイン・エキスパート・エクセレンスとイギリスに本拠を置くWSETのDIPLOMAという資格等を有しており、レベルアップのためにブラインドテースティングやブドウ栽培、ワイン醸造のお手伝いなどにプライベートな時間を使っています。他にはバイクツーリング、ソロキャンプ、海釣り、ドローンやラジコンヘリの操縦なども趣味としています。これを機にグループの活動に積極的に参加し皆様との交流を深めていければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

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写真:花岡 俊樹氏
水曜第2グループ
花岡 俊樹(はなおか としき)
日本貨物鉄道(JR貨物)株式会社
執行役員 東海支社長

【日本貨物鉄道(JR貨物)株式会社東海支社】
〒460-0003 名古屋市中区錦3-1-1十六銀行名古屋ビル10F
URL:https://www.jrfreight.co.jp/

 JR貨物の花岡俊樹と申します。この度、入会のご承認を頂き、産業懇談会水曜第2グループに参加させていただくことになりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 JR貨物は1987年の国鉄分割民営化で誕生し、正式名称は「日本貨物鉄道株式会社」と言いますが、長いので「JR貨物」でお願いします。
 総物流量で見ると鉄道は小さなシェアですが、貨物鉄道のCO2排出量原単位は営業用トラックの1/13で環境特性に優れており、また、鉄道は1本の列車で大型トラック最大65台分の貨物を運ぶなど幹線物流における効率は高いのと、運ぶコンテナの最小ロットは「12フィート5トン」なので、「大ロットから小ロットまで様々な貨物を貨物駅に集めて大量に運ぶ」という特徴があります。また、最近では貨物駅のアセットを活用して、倉庫や荷捌きと鉄道を組み合わせて生産性を向上させるお取組みのお手伝いもさせていただいております。
 これからも、物流における大きな課題である「生産性の向上」、「脱炭素」をテーマとして、皆様のご指導を頂きながら、地域経済・社会の発展に貢献できるよう取り組んで参ります。
 最後に、私は野球が大好きで、休日は、中学硬式野球を中心に、社会人女子硬式野球、高校野球、草野球に至るまで、野球の審判を「頼まれれば断らない」スタンスで、地域のスポーツ活動のお手伝いをしております。
 どうぞよろしくお願い申し上げます。

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【7月度産業懇談会のご案内】

 7月度水曜第1グループと木曜グループにつきまして、お席に余裕がございますので、全てのグループの皆様にご案内しております。
 また、7月より定員を25名から30名に変更することにいたしました。
 引き続き所属グループの会員を優先にご案内いたします。

 何卒、ご理解・ご協力賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 会合にご参加いただける際は、マスクのご着用・手洗い、積極的なアルコール消毒の励行にご協力ください。発熱の症状がみられるなど体調不良の方は、ご参加をお控えいただきますようお願いいたします。

グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 集合場所
火曜グループ

富田 茂
広井幹康
深田正雄

7月12日(火)
12:30~14:30

『SDGsと食文化の考察』
キャリオ技研株式会社
代表取締役 富田 茂 氏
長瀬電気工業株式会社
代表取締役 屬 ゆみ子 氏
(コメンテーター)
国立大学法人北海道大学
大学院農学研究院 教授 曾根 輝雄 氏

名古屋観光
ホテル
3階 桂の間
*試飲を行いますのでご自身の運転でのご来場はお控えください。

水曜第1グループ

淺井博司
足立 誠
落合 肇

7月20日(水)
12:30~14:30

『パイプのおはなし』(仮題)
株式会社岡島パイプ製作所
取締役社長 岡島 威彦 氏

若宮の杜
迎賓館
1階 橘の間

水曜第2グループ

大倉偉作
香川裕子
高見祐次

7月13日(水)
12:30~14:30

『感動と失望の海外駐在について』
安藤株式会社
取締役社長 安藤 仁志 氏

名古屋観光
ホテル
3階 桂の間

木曜グループ

河村嘉男
中林直子
吉田憲三

7月7日(木)
12:30~14:30

『人材派遣業界の現状と課題』(仮題)
株式会社サンスタッフ
取締役社長 丸山 恭一 氏

名古屋観光
ホテル
3階 桂の間

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【産業懇談会4グループ合同懇親ゴルフ会
のご案内】

 平素は中部経済同友会・産業懇談会の活動にご支援を賜り、誠にありがとうございます。
 恒例となっております4グループ合同の懇親ゴルフ会を下記のとおり開催いたします。

日時
令和4年10月1日(土) 9:00スタート
場所
明智ゴルフ倶楽部かしおゴルフ場
対象者
代表幹事、直前代表幹事、産業懇談会会員
(参加者は会員限りとし、代理出席はお断りさせていただきます)
備考
定員に到達次第、募集を締め切りさせていただきます。
ご参加される方には、別途詳細のご案内を送付いたします。

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【コラム】

コラム1 【さっかの散歩道】 No.48

長瀬電気工業株式会社
代表取締役 屬 ゆみ子

『 勘どころ 』

 6月の会員懇談会をZoomで視聴することになった。当初は会場申し込みだったのだが、急遽北の畑に行かなくてはならなくなり、当日はまさに飛行機に乗る直前だった。

写真:ビールとつまみ
滅多に飲まない小生ビールと
今回のつまみのモズク酢

 早めにセントレアに到着後、空港のルーティンとなっている蕎麦屋に直行し、つまみとお蕎麦で軽く一杯(と言ってもこの後Zoomを正気で見ないといけないのでなめる程度)。フライトは3時過ぎだが、1時半の懇談会スタートまでに接続を済ませておきたかったので、さっさと保安検査を通り抜け、まだ人気のないゲート前のワーキングブースを一つ確保し、Wi-Fiをつないで待機する。会社での視聴と違い、ふと目を外に移せば、滑走路で離着陸する飛行機や、せわしく空港で働く車など意外にリラックスしながら講演時間を過ごすことができる。イヤホンをしていると外界との心理的遮断効果が働いて、無機質に動く空港の景色は、それはそれでかなり自分の世界への埋没体験を促している。
 多分ゲート前には私しかいない。とはいえイヤホン効果は絶大で、なぜか人に見られてはいけないことをしているような気分、例えるなら学生時代、深夜のラジオ番組を、家族にバレないように布団にこもってイヤホンから聞こえるパーソナリティの声に耳をそばだてているようなそんな感覚でもあった。会が進行されるにつれ土方さんのお話も画面を見ずに拝聴していると、心地よい音楽を聴いているような気分になっていた。ところが、「慣れ」というのは時間の長短関係なくやってくるもので、講演終わりの質疑応答の時間、空港ではそろそろゲート周りの椅子に座りきれないほどの乗客が溢れ、搭乗アナウンスも始まっているころ、Zoomからの質問「社長の感性はどうやって磨いたのか?(多分そんな内容でしたよね)」と問われて、しばしの間、アンサー「育ちとカンです」!!のけぞって爆笑してしまったww空港の人だかりのゲート前でww。我に戻って左右を確認。みな気づかないふり?いや、変な人目線も感じる。ま、旅の恥はかき捨てってことで…と、接続を切って搭乗口に並んだ。

 この「育ち」についてはもの心つき始めたころから、答えの出ない難問だった。
 父親は山口県の出身で、母の実家の会社を継いだものの超awayな生活環境にあり、とはいえ私は山口方式で育てられ、就学したものの同級生に溶け込めない何かを感じていた。学年は9クラスあっても経営者の子供はほとんどおらず、もちろん個人事業主の同級生も何人かは見受けられたが、生活習慣や、食生活で理解できない他人の家のことがいくつもあった。 よって「私は変な人なの?」と人とは違うモヤモヤを抱きながら子供時代を送っていた。
 この外的成長環境は、今となっては笑い話だが、当時意味も解らずいじめられていた私にとって、登校拒否やむなしレベルの大問題だ。母は「目立たないようにしていなさい」と言うばかりで頭の悪い私は「透明人間になるにはどうしたらよいのか?」などと真面目に考えたこともあった。子供というのは本当に残酷な生き物だ。
 そんなことも糧になっているのか、北海道という全く縁のなかった土地に行っても、「よそ者上等!!」みたいな気楽さ、というか覚悟はあって、どんな方にも真っすぐ向き合うことを基本としていたし、お陰でたくさんの方たちとの繋がりも出来てきたのだが、そう、「慣れ」とは恐ろしいもので、解せない瞬間がいきなりやってきたりする。それはお互いが、知らないうちに抱えている外的環境からくる内なる地雷を、相手が踏んだ場合だ。今回の北海道でもそんな場面に出くわした。

写真:醸造所
小さいながら大好きなブルゴーニュの
生産者、クロ ド タール

 ワイナリーや醸造家(ワインメーカー)について深く知ったのはフランスに行ってからで、例え自社で葡萄畑をもっていなくても、契約農家との間に細かい取り決めがあり、ワイナリーによってちゃんとコントロールされている。もちろん日本でも大正時代からワイン造りはされていた。但しフランスとの決定的な違いは酒税や醸造免許の関係で、ブドウを作る農家さん、ワインを作る醸造所の住み分けがされている時代が長く続いていた(そのころの苦労は甲州のワイナリーで何度となく耳にしていた)。それが規制緩和もあって、ワインメーカーが直接ブドウを栽培したり、逆に農家さんがワイン造りに参入できるようになり、今や国内のワイナリーが300を超えるまでになっている。新しいワイナリーや、海外で修行をしてきた若手醸造家、また大手のワインメーカーはちゃんとマーケットに乗ってくるワインを作っていて、それは頼もしい限りなのだが、片やこれまでのスタイルをどうしても見直せない作り手さんもある。一生懸命努力して新しい品種に取り組んだりされてはいるのだが、時々「これ、売れるのかなぁ?」というワインに出会ったりする。もちろん一昔前のジュースにアルコール入れましたみたいなお土産ワインは姿を消したが…。思わず口走ってしまった、「売れるのかなぁ?」は、どうやら「地雷」らしい。街で経済活動をしていると、どんなに良いものでも消費者が求めていないものは売れないというのはごく常識なのだが。土方さんも仰ってたっけ、3万円出してもお得だと思える製品を作ったから売れたって。
 ―あ~これで益々よそ者、部外者扱いされるなあ…。と心の中でつぶやくも、一番身近な応援者の皆さんが見守ってくれているし、何より来月にはフランスの生産者とコンタクトをとれそうだし、まずは自分の「勘」を信じて、自分でできることに真っすぐ取り組もうと今一度気を引き締めた。

 7月は山形にある苗木の生産者さんを訪ねて、ブドウの木の基本を一から教えていただくつもりだ。目標は来年5月の初植樹、但し、雹で苗木が痛まなければ。こればっかりは勘どころも当てにはならないか。

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コラム2 【師、曰く】 No.13

妹尾 鷹幸(ペンネーム)
(株式会社構造計画研究所 名古屋支社長 妹尾(せのお) 義之)

 ペンネームは、恩師、田坂広志先生の多重人格マネジメントの応用、作家人格の名。心に鳴り響く言葉を、今回も一筆。

『 Keep Paddling 』

 田坂先生は学生時代、よく山登りをされたそうだ。夏の暑い登山道を延々と重い荷物を背負って、汗まみれになりながら、ひたすら、ただただ一歩一歩を前に進め、登り続けてゆく。登り始める前の麓からは、あれほどはっきり見えた山の頂は、登っている間は木々に視界を阻まれ、頂上の姿など全く見えはしない。いつになったら頂上に辿り着けるのか、先の見えない不安のなかでは、頂は遥か彼方に感じられる。それでも、ただひたすら、歩を進めることを繰り返す。汗まみれの体、重い荷物が肩にずしりと食い込む。永遠にも思える苦しさのなかで、投げ出したくなる気持ちになる。それでも時に、パッと視界が開け、素晴らしい風景が眼下に広がっているのを見る。息を飲むような美しい景色に感動し、ここまで登ってきたのだと感慨深く、それまでの疲れなどすっかり忘れてしまう。そして、しばし心洗われた後、再び気を取り直して、また、一歩一歩、歩を進める。それは、単なる山登りではなく、人生という山の登り方を学んでいたのかもしれないと。

 山だけではない。海の世界でも、同じことを語る人が居る。波乗りの伝説的サーファー、ジェリー・ロペスも、同じことを語っているという。サーファーにとって、一日中、海に居ながら、波に乗っている時間というのは、ほんの数十分だ。それなのに、一日中、素晴らしい波がやってくる「一瞬」を待って、漕ぎ続けている。

 Keep Paddling(漕ぎ続けよ)

 日常の仕事でも、趣味のレッスンでも、体のためのトレーニングでも、何かの目的のために、ひたすら単調な繰り返しを続けることがある。単調な作業の繰り返し、苦しいのに先も見えず、前進しているのかさえ確証が持てず、時に嫌になって投げ出したくなることもある。必ず達成する、必ず成功する保証など無いのだ。それでも、一歩一歩、前に進まねば、山の頂を踏み締めることは出来ない。求めるものに巡り会う保証がなくとも、ひたすら漕ぎ続けねば、素晴らしいビッグウェーブに乗ることは出来ない。たった一瞬の喜びを胸に抱きながら、私達は歩を進め続け、漕ぎ続けているのだ。見えぬ頂を見ながら、来るとも知らぬ波を待ちながら。きっと、地球環境の改善、真に尊重し合える世界、平和を選択できる世界、大いなる志の頂、ビッグウェーブこそ、そうなのだろう。Keep Paddling

 私にとっての頂、ビッグウェーブとは。そして、そこに向かって歩を進めているだろうか、漕ぎ続けているだろうか。修行は続くよ、どこまでも。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

写真:海
(七里ヶ浜)

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コラム3 【「ほん」のひとこと】 No.164

株式会社 正文館書店 取締役会長
谷口正明

『 沖縄50年の憂鬱 新検証・対米返還交渉 』
河原仁志著・光文社新書

 先月5月15日は、沖縄が返還されて50年の日でした。6月23日は昭和20年に沖縄戦が終わった日です。最近私は、自分が沖縄(とアイヌ)について知らなすぎるのではとの思いが強くなってきており、この本を手に取りました。
 「共同通信社の記者時代から沖縄の取材を続けてきた著者は、退社した2019年7月以降、ここ数年に相次いで解禁された日米の機密文書を渉猟し、これまでの返還交渉についての世間の常識や通説と大きく食い違う証言や事実に遭遇し」「この返還交渉こそが、いま私たちが暮らすこの国の在り様や政治の姿、あるいは日米関係の原点であることに気づいた」そうです。
 読後改めて、「薩摩藩の琉球侵攻から始まって、明治政府の琉球処分、そして戦後の本土からの分離と米軍政。いずれも沖縄の人々に原因があるのではなく、本土側の都合で仕掛けられ、安寧な暮らしをひっくり返された歴史」にもっと敏感でなければと痛感しました。

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