コラム2 【師、曰く】 No.10
妹尾 鷹幸(ペンネーム)
(株式会社構造計画研究所 名古屋支社長 妹尾(せのお) 義之)
ペンネームは、恩師、田坂広志先生の多重人格マネジメントの応用、作家人格の名。心に鳴り響く言葉を、今回も一筆。
『 螺旋的発展 』
田坂講義の柱の一つに、弁証法の哲学がある。哲学者ヘーゲルの弁証法そのものというより、その根底に流れる洞察について。物事の進歩・発展は、あたかも螺旋階段を登るように起こる。「事物の螺旋的発展」がそれである。
ITで急速に進歩・発展するネット社会の現代、オークション(競り)や逆オークション(指値)といった、古い時代のビジネスモデルが復活し、オンライン学習では、江戸時代の寺子屋的学びが復活している、と。古く懐かしいものが、新たな価値を伴って、復活してくる。新規事業を志すリーダーや経営者などMBAを学ぶ我々は、そこに重要なヒントが秘められていると、目から鱗のような驚きをもって聴き入った。
これは、ヘーゲルが語った「螺旋的発展」。あたかもかつての状況に戻ったように見えても、実は一つ高い処に登っている。まるで螺旋階段を登るように。上から見れば一周して元の位置に戻っていても、横から見れば一段高みに登っている。それが、これからの社会で、我々がしばしば目撃する出来事だと。
螺旋的発展、それはITやビジネスに限ったことではないと、信じたい。原始、石と棍棒で争った人類は、歴史を重ね、刀や剣で、弓矢や鉄砲で、爆弾やミサイルで、そして核兵器や生物兵器を手にするまでになった。戦争と平和は際限なく繰り返されてきた。石と棍棒では相手を殺めるに過ぎなかった力を、今は遥かに凌駕し、人類そのものを殺めるまでに発展してしまった。原始時代のメンタリティのままであれば、既に人類は滅んでいただろう。しかし、法や政治、哲学や倫理、人の精神もまた進化して、一段一段高い処に登ってきたのだと信じる。
世界は、人々は、試されているのかもしれない。世界中に蔓延したコロナ禍に続き、たった一人の意思決定権者によって、一つの国への侵攻が行われてしまう。人類史上に刻まれる史実。一つの過ちは、やがてバタフライエフェクトによって、人類は過去と同じ過ちを繰り返してしまうかもしれない。それは螺旋階段を何段も下がる、いや、落下するに等しい。原始、人が殺められるのは相対する者だけだが、現代はたった一人の意思決定が何億人もの命を殺められるからだ。しかし、高い志、称賛される勇気もまた、数多く目にする。たった一人の勇気ある行動が、バタフライエフェクトで多くの共感を呼び、世界を変えることに繋がる。世界はきっと螺旋的発展を遂げる。そう信じて、修行を続けてゆきたい。
修行は続くよ、どこまでも。最後までお読み頂き、ありがとうございました。
(名古屋城の桜)
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