■JERAについて
JERAは中部電力と東京電力の燃料・火力部門を統合した国内最大の発電事業者である。社名には日本を代表するエネルギー企業として、Japan「J」と、新しいエネルギー「E」の時代「ERA」を創りあげていくという思いが込められている。
中部電力は2020年4月に送配電事業会社「中部電力パワーグリッド」と販売事業会社「中部電力ミライズ」に分社化されたが、燃料・火力発電事業は2015年4月のJERA設立から順次統合範囲を拡大し、2019年4月に全ての事業を継承し統合を完了した。
JERAのバリューチェーンは川上の燃料調達からトレーディング、輸送、貯蔵、発電、販売と川下までを網羅している。国内の火力発電所は26ヶ所(発電容量7000万kW)、海外では10ヵ国以上で25件(出資持分発電容量910万kW)のプロジェクト案件を押し進めている。特にLNG(液化天然ガス)の取扱規模は約3600万トンと日本で使用されるLNGの44%を供給し、世界でも最大規模の取扱量となっている。
日本には2020年7月現在で893社の発電事業者が存在するが、JERAは日本全体の発電設備容量の1/4、火力発電の1/2を保有。これは日本全体で使用される電気の1/3を創出する規模となる。
■再生可能エネルギー増加による電力需要の状況
電気は貯めておくことができないため、消費電力と発電電力を常に同じにする必要がある。発電電力と消費電力をリアルタイムで合わせる「同時同量」が崩れると周波数と電圧が変化し停電が起こる。近年では2018年9月に発生した北海道の大規模地震において震源地に近い北海道最大の苫東厚真火力発電所が停止し、需給バランス「同時同量」が崩れ、北海道全体の停電(ブラックアウト)を引き起こした。
日本で消費される年間電力量は、1950年頃は数百億kWであったが、近年は1兆kW程度だ。主要電源は水力⇒石炭⇒原子力・LNG⇒石炭と推移し、東日本大震災後は原子力が停止し、LNG・石炭⇒再生可能エネルギーへと時代の変遷に伴い変化している。現在の構成比はLNG35%、石炭30%、水力、石油、再生可能エネルギーがそれぞれ10%程度、残りが原子力である。資源をもたない我が国として、ベストミックスを図っている結果だ。
2012年7月に地球温暖化対策やエネルギー源確保、環境汚染への対処から再生可能エネルギーの普及と価格低減を目的にFIT制度(固定価格買取制度)が開始された。これは再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス)で発電した電気を電気事業者が一定期間、固定価格で買い取る制度であるが、買取費用は再生可能エネルギー発電促進賦課金として消費者が負担するものである。現在はkW当り約3円の負担となっている。
再生可能エネルギーの導入量は2014年度の980万kWをピークに近年は年間600万kWで推移している。導入量の8〜9割以上が太陽光となっているが、近年は太陽光の買取価格が下がった事により、風力発電の接続申込みが急増している。都道府県別の事業認定をみると、愛知県は全国で6位、特に家庭用の太陽光発電は全国1位となっている。
中部エリアの太陽光、風力の連携量は2019年末時点で908万kWである。中部エリアの太陽光発電はこの4年間で約300kW増加しており、昼夜間、天気による発電量の振れ幅が一段と大きくなっている。受給のバランスは火力発電で調整するわけだが、火力発電は稼働を急に停止することができない。太陽光発電により電力の余剰が発生しても、すぐに対処することは難しく、需給バランスの調整は困難を極めている。
■エネルギー基本計画
日本のエネルギー基本計画は「エネルギー自給率改善」「電力コスト引き下げ」「温室効果ガス排出削減」を目的としている。2030年度の電源構成政府案は「石油3%」「石炭26%」「LNG27%」「原子力20〜22%」「再生エネルギー22〜24%」程度に加え、「省エネ17%」を合わせて総発電電力量10,650億kWとなっている。
日本のエネルギー政策は安全性(Safety)を前提に、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)を考慮した「3E+S」を基本的視点としている。
世界の電源構成比をみると化石燃料が約65%を占め、そのうちの約40%が石炭火力だ。主要先進国では石炭火力の比率を下げて再生可能エネルギー比率を上げる方針を出しており、日本も2030年度までに非効率石炭火力をフェードアウトすると表明している。JERAは2019年4月に公表した環境目標の1つとして「非効率な石炭火力のフェードアウトの検討」を挙げている。(非効率石炭火力は石炭火力15%のうち2%)
菅首相は2050年までに温室効果ガスの排出を「ゼロ」にすると表明したが、JERAはそれに先だって「ゼロエミッション2050」のロードマップを公表している。内容は火力発電における「非効率石炭火力の停廃止」「アンモニア混焼」「水素混焼」と、再生可能エネルギーにおける「洋上風力の開発促進」「蓄電池の導入支援」である。大変チャレンジングな目標であり、実現には高いハードルがあるものの、世界最高水準のエネルギーの安定的供給をめざし、持続可能で豊かな社会に貢献すべく取り組んでいきたい。