■会社概要
太陽工業は、大型膜面構造物のリーディングカンパニーとして、巨大ドームやスタジアム、各種商業施設などで、様々なニーズに対応した空間づくりを行っている。経営理念は「膜の無限の可能性を引き出し、お客様に感動と快適な環境をお届けします」。
「膜」といっても何のことかと思われるかもしれないが、膜には(1)光を通す、(2)大面積を覆う、(3)ものを包む、(4)柔らかい、(5)軽いという大きな5つの特性がある。それを様々なものに加工して社会に届けていくのが当社の事業だ。「膜」という字は、月(生物)、日(太陽)、草・大地(自然)という要素から成り立っている。膜が、太陽と自然、自然と生物、太陽と生物をつなぐ「媒(なかだち)」の役目を果たすことを目指し、本日の演題とさせていただいた。世界の様々なものの間に入り、自然と共生して、人の生活の中心になる空間を創っていきたいと考えている。
■太陽工業の歴史
1922年に創業、当初はテント・シートなどの物品販売から始まり、キャンプテント、プール、雨合羽などの資材を扱っていた。ダイハツ ミゼットの幌を手掛けたことが、太陽工業の発展の第一歩となった。1965年頃から様々なチャレンジを始め、木下大サーカスの移動式テントや、植村直己氏のエベレスト登頂の際には超大型ベースキャンプテントなども手掛けた。その他にも、テントでつくる魚のデパート、布製の海中重油タンク、砂漠にテントで山脈をつくり雨を降らすなど、実験段階で失敗したものがほとんどだが、お客様の要望に絶えず応えようとしてきた遊び心のある会社だ。こうした取り組みが実り、1970年の大阪万博では9割のテントを受注している。特にアメリカ館は日本初のエアドームとして有名だが、その他にも色々なパビリオンを手掛けた。
1988年、万博での経験を生かし、東京ドームに膜(A種膜)を提供。これは、膜面構造物が恒久建築にも使えることを証明した大きな転換点となった。それまでの仮設建築ではないことから、当然、技術面でも多くの課題があったものの、一番の壁は法律だった。計画から認可を取得するまでに15年を要し、竹中工務店、日建設計とともに何百回と役所に通ったと聞いている。東京ドーム用の膜(A種膜)を加工する工場が無かったことから、東京ドームを作るためだけに、10億円の投資をして新工場を設立している。東京ドーム以降の具体的計画が存在しないなかで、このプロジェクトは社運をかけたビッグプロジェクトだと認識しリスクテイクした当時の経営層の英断だった。結果として、豊田スタジアムや東京スタジアム、埼玉スタジアムなどの多くのスタジム案件につながっている。
■主要事業について
太陽工業では大きく分けて、建築、産業、土木、物流の4事業で成り立っている。
膜は意外と丈夫で、アメリカで40年以上使われているものもあり、ちょっとした鉄板よりも長持ちする。また軽いので免震構造にしなくても十分に地震にも強い。テントはだんだん汚れてくるという印象があるかもしれないが、TOTOとの共同開発の光触媒を使うことで、汚れを酸化分解して洗い流し、白さを保つことができる。また涼しいというメリットもある。当地での膜構造の導入事例では、ららぽーと名古屋みなとアクルスや、イオンモール名古屋みなと、木曽三川公園138タワーパーク等が挙げられる。
震災では多くの施設で天井材が落下して、多くの被害が発生したが、膜であれば軽く、落下物を受け止める事もできる。そのため当社が手掛ける膜天井による内装が注目されており、G7伊勢志摩サミットや、学校・体育館など多くの公共施設でも採用して頂いている。
私が長年担当してきた産業分野では、「テント倉庫」と呼ばれるものを扱っている。テントというと仮設のイメージがあるが、空調を入れることで温度管理が必要な食品等も納められる。また最近では、膜材の良さである採光性に加えて防犯性を高めるために外装に鋼板を使用したハイブリッドフレックスという製品も提供している。ハイブリッドフレックスを産業用途から商業用に発展させるべく、大阪本社の横にモデルルームを設置しているので近くにお越しの際にはお立ち寄り頂きたい。
土木分野では、タコムという合成繊維の布製型枠の内部にモルタルを注入することで、一定厚のコンクリートを形成する布製型枠コンクリートマットや、シルトスクリーンという海洋工事での汚濁防止膜を展開している。また災害・緊急用の分野ではマク・クイックシェルターというエアテントを展開している。従来2〜3人で組み立てていたテントを、エアーで膨らませるだけでテントとして使用できるという製品だ。
物流分野では、タイコン、俗にトンバッグと呼ばれる繰り返し使えるコンテナバッグを製造しており、全国8か所の拠点でメンテナンスも引き受けている。ワンウェイ使用のコンテナバッグは東日本大震災の際、原発事故で発生した汚染土の運搬・仮保管でも使用された。その他、耐ウイルス性を持つ高機能素材を使用した防疫バッグなど種類も多彩だ。
これらの分野のほかに、膜の「白さ」を活かしたプロジェクションマッピング投影や、建築物のファサ―ドなど意匠・内装分野に、トランポリンのように遊べる「ふわふわドーム」で遊具分野に進出。これまで培った技術を基に新分野に挑戦し続けている
太陽工業は、施主様、建設会社様、設計事務所様、コンサルタント会社様、その全てのお客様のベストパートナーを目指し今後も頑張りたい。