産業懇談会【メールマガジン 産懇宅配便】 第208号 2019.9.30発行

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令和元年9月度(第208号) 目次
【元年7月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】 7月10日(水) 12時00分〜14時00分
【元年8月度 4グループ合同懇親ゴルフ会模様】 8月3日(土) 7時00分スタート
【新会員自己紹介】
齋藤 孝一氏

ミッドランド税理士法人 代表社員理事長

田中 敏晶氏

NTT都市開発株式会社 東海支店長

【産業懇談会4グループ合同懇親会】
【11月度産業懇談会のご案内】
【コラム】
コラム1 【さっかの散歩道】 No.15
コラム2 【「ほん」のひとこと】 No.131
【お知らせ】
【元年7月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】

テーマ: 『 技術革新が導くデジタル社会の将来展望
                  NTT DATA Technology Foresight 2019 』


日  時:令和元年7月10日(水) 12時00分〜14時00分
場  所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
参加者:38名
スピーカー:

写真:小端 進氏

前田 栄次(まえだ えいじ)
株式会社NTTデータ東海
取締役社長

写真:伊藤 和彦氏

神田 主税(かんだ ちから)
株式会社NTTデータ
技術革新統括本部 技術開発本部
シニアエキスパート


<前田栄次氏 ご挨拶>
■NTTデータ・NTTデータ東海の紹介
 NTTデータはNTTグループの中でソフトウェア分野を担っている。売上はNTTグループ全体で約11兆円のうち、約2兆1千億円をNTTデータが占める。従業員数ではグループ全体で約30万人、その内約12万人がNTTデータ所属だ。NTTデータでは、お客様の関心が高まっている領域(DIGITAL DRIVERS)と、テクノロジー(DIGITAL FOCUS AREA)をうまく重ね合わせることで、ビジネスを創出していきたいと考えている。
 NTTデータには、日本全国に地域を担うグループ会社が9社存在し、NTTデータ東海は東海4県(三重、岐阜、愛知、静岡)をカバーする。デジタル化の進展は、テクノロジーの進化に限らず、若年層が購買に与える影響、社会構造の変化等が相俟ってもたらされている。NTTデータ東海はこの分野で、IoTへの取り組みの支援や、クラウドサービスの提供、RPAと呼ばれる業務改革ソリューションの提供、SAPなどのグローバルソリューションの提供を通じたグローバル経営支援に取り組む。今後、特に重要になるのは新たな価値の提供だ。お客様自身がビジネスを変革することに、グループの総力を結集して支援していきたい。

<神田主税氏 講話>
■テクノロジーがもたらす急速な変化とデジタル化
 テクノロジーが世の中を変えた事例は歴史上にも数多いが、その一つの例が自動車だろう。100年前、自動車が急速に普及したことは、産業構造を含めた大きな変化をもたらした。最近の事例では、iPhoneにより電車の中の風景は大きく変化している。かつては電車内で新聞を広げる姿が見られたが、今ではほとんどの人がスマホを見ている。自動車は世界で10億台が製造されるまで110年を要したが、iPhoneはわずか9年で10億台を販売した。変化のスピードは加速している。
 NTTデータでは、「デジタル化」とは色々なものにセンサーが埋め込まることであらゆるものがセンシングされ、大量のデータが生みだされ、それがAIを使って高度に処理されることで、様々なものが制御できるようになることだと考えている。そしてこれを制御する人たちが勝者となっていく。それを象徴的に現しているのがインターブランド社が調査しているグローバルブランドランキングだ。2000年には1位に君臨していたコカコーラを抜き、所謂GAFAの様な企業が大幅にブランド価値を上げた。テクノロジーの進化は加速し、ビジネス環境もそれに伴い日々変化する。技術の変化をForesight(予見)することが必要だ。NTTデータでは毎年1月にトレンドを抽出し、3〜10年後の間に大きな影響を与える将来変化を予見、NTT Data Technology Foresightという名前で発表している。2012年に始まり、当時はクラウドやビッグデータ等があがっていた。2019年で注目している分野は8つ、それを簡単にまとめれば、AI分野、人を中心とした技術の深化、ITインフラという部分で量子コンピューターの活用、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)といった仮想空間だ。本日は、その中からAI分野とVR・ARについてお話をする。

■AIに何ができるのか
 AIとは何か。例えば柴犬、チワワ等の様々な犬の写真データから、犬種を判別するようなAIを作成することができる。数千件から数万件の様々な犬の写真データをAIに学習させることで、未知の画像でも犬種をAIに判断させることが可能となる。機械学習とも言われるこのようなAIのモデルにより、画像識別においては、4年位前にAIが人間の目の精度を越えたと言われる。音声認識についても同様だ。今では個人の農家が、クラウドで提供されているAIのフレームワークを活用して、キュウリをAIで自動判別するシステムを作り上げる時代になっている。
 一方、AIには学習が必要で、その精度を向上させるには数万件の学習用のデータが必要なことが課題とされてきた。しかし、それも最近では解決されつつある。深層強化学習という手法では、例えば、将棋、囲碁等でいえば、基本的ルールだけを教えて、AI同士が対決することで学習させる。Googleでは同じ仕組みを応用、データセンターで空調管理にAIの深層強化学習を活用することで、消費電力の40%削減に成功している。また学習用データをAIが作るという手法もある。例えば、商品棚の状態を画像識別で認識するには、何パターンもの棚の状態を画像として用意することが必要だが、一つのAIが画像を自動で生成し、それを使って別のAIが学習をする。弊社の事例では、AIが苦手とする雪道等の環境下での車両認識においてGAN(敵対的生成ネットワーク)による人工的な学習用データを活用、精度を向上させている。

■進化するAI、問われる倫理
 AI技術の塊である自動運転サービスがカリフォルニア州で商用化され、画像診断技術が医師のサポートに使われ始めている。しかし、特化型と呼ばれるAIが実用化される一方で、様々な状況を判断する汎用型AIと言われるものは、まだまだ研究レベルにある。例えば、ビールを取ってとAIに言っても、倉庫に保存されたビールと冷蔵庫で冷やされたビールの区別はつかない。一方で人間にビールを取ってと言えば、冷蔵庫で冷えたビールを取ってくる。こういった常識、人間が蓄積で記憶したものをAIに学習させることが課題になっている。これに対するアプローチの一つが、身体性AIと呼ばれるものだ。実社会を模した3D仮想環境内でAIに学習をさせる試みで、実現すれば、汎用型・自律型AIやヒト型ロボットに大きく近づく。ロボットが自律的に動くことで、人間の代わりができる場面は増える。
 AIはどんどん賢くなっている。1分間の音声データからその人の声を複製し、あたかも感情をこめて話しているように再生する技術が生まれ、音声データから合成動画を生成することも可能となった。技術の悪用が懸念され、世界各地でAI倫理の議論が活発化している。先日のG20でも「人間中心のAI社会原則」声明が出され、各社はAI倫理を気にしながら開発を進めている。AIバイアスと呼ばれる問題もある。学習するデータによって偏ったAIが生まれるという問題だ。アメリカの再犯予測のプログラムでは、過去のデータにおいて、黒人の再犯率が高かったことから、黒人に対する厳しい判断が下される問題が発生した。データとして正しくても、倫理的に問題がある判断が下されることの無いよう、AI開発者には注意が求められる。

■VR(仮想現実)・AR(拡張現実)の進化
 VRは既にエンターテイメントの分野では様々な事で使われ、様々な機器が発売されている。ビジネスでは、VRを使った遠隔会議支援の試みが広がっている。当社でも取り組んでおり、VR機器を使用することで、世界中に離れた人が仮想空間上に一同に集まり、資料を共有しながら会議をすることもできる。議事録も同時に自動生成され、自動翻訳機能も実装されている。既に様々な会社から引き合いを頂いている。完全に視覚をCGで「つくる」VRに対し、ARは現実とCGを「まぜる」ものだ。機器を通してみることで、現実空間上に色々なものを重ねて見ることができる。AR機器として、有名な所ではマイクロソフトのホロレンズがあるが、最近ではスマホにもAR機能が搭載されている。
 スペーシャルコンピューティング(空間コンピューティング)といって、コンピューターのもたらすメリットを、ディスプレイという限られた枠、人をとりまく空間で自由に利用する技術に注目が集まっている。メガネ上にAR機器が融合すれば、自然な形でARが利用できる。コンタクトの中にARの機能を搭載する研究も進んでいる。精度の飛躍的な向上により、ビジネスを含めた、様々な場面での活用が進む。マイクロソフトのメガネ型機器・ホロレンズは、現場作業者支援での活用が想定されている。作業内容をARで指示・指導することで、作業習得に活用が可能だと考えられる。また、トヨタ自動車ではホロレンズが、塗装の膜厚検査に活用されている。

■3つのRがもたらす未来
 リアルな位置情報(Real-Scale)、現実のものと見まがう程のリアルさ(Photo Real)、リアルタイム(Real-Time)で現実空間に仮想空間が融合し、現実世界か仮想空間かが分からない世界が来るのではないか。これからは仮想空間に入ることが容易になる。今後、それを体験する人が増えることで、未来を想像できる人が増える。仮想空間が身近なものになり、それが様々なビジネスを生み出すのではないだろうか。

 VRやARの活用事例について、動画を交えながら非常に丁寧にご説明を頂きました!


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【元年8月度 4グループ合同懇親ゴルフ会模様】

日  時:令和元年8月3日(土) 7時00分スタート
場  所:木曽駒高原カントリークラブ
天  候:晴れ(木曽福島)
参加者:27名

 8月3日、毎年恒例の4グループ合同懇親ゴルフ会が木曽駒高原カントリークラブで開催された。今年で33回目となったゴルフコンペには、嶋尾代表幹事、盛田代表幹事、新美特別幹事、河村世話人代表、片桐世話人代表、大倉世話人、富田世話人を含め、計27名の産懇メンバーが参加された。
 前夜は雷雨に見舞われたが、翌朝はすっかり快晴。厳しい日差しであったものの、時折吹き込む高原の涼風に癒されながら、それぞれ腕を競い合いプレーした。
 プレー終了後の懇親会では、お待ちかねの表彰式が開催され、各賞受賞者が発表された。
激戦を制し優勝を果たしたのは、日本ゼネラルフード(株) 副社長の一泉知由氏。準優勝は雪印メグミルク(株) 中部統括支店長の山本幸弘氏、3位は名新パイピング(株) 常務の永井研吾氏であった。それぞれ代表幹事から提供された賞品が授与され、賑やかな歓談が続いた。
 また当日お誕生日を迎えられた盛田代表幹事へサプライズイベントが行われ、記念のバースデーハット(帽子)をお贈りするなど、大いに盛り上がった。

優勝 :一泉 知由氏(日本ゼネラルフード(株) 取締役副社長)
2位 :山本 幸弘氏(雪印メグミルク(株) 中部統括支店長)
3位 :永井 研吾氏(名新パイピング(株) 常務取締役)

都心の喧騒から離れた高原の地で、産懇ならではの大変和やかな懇親ゴルフとなった。

写真1

当日、お誕生日だった盛田代表幹事。おめでとうございます!!


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【新会員自己紹介】

写真:齋藤 孝一氏
火曜グループ

齋藤 孝一(さいとう こういち)
ミッドランド税理士法人
代表社員理事長

【ミッドランド税理士法人】
〒450-6421 名古屋市中村区名駅3-28-12 大名古屋ビルヂング21階
TEL:052-261-6815 FAX:052-433-1308
URL:https://www.mac-g.co.jp

 ミッドランド税理士法人の齋藤孝一と申します。
 この度、産業懇親会火曜グループに参加させていただくことになりました。よろしくお願い申し上げます。

 名称の「ミッドランド」は、英語のMIDLANDすなわち「中部地方」を意味する言葉です。
 目指すのは地元である中部地方の中堅中小企業を支援し中部経済の活性化に貢献することです。延いては日本全国の活性化に繋げようという「地域貢献」「社会貢献」の理念を根底に持っています。
 私たちはお客様の経営・財産を守り、より豊かな人生を創造するお手伝いをしていきたいと考えています。何卒ご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

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写真:田中 敏晶氏
火曜グループ

田中 敏晶(たなか としあき)
NTT都市開発株式会社
東海支店長

【NTT都市開発株式会社】
〒460-0004 名古屋市東区1-13-8 アーバンネット布地ビル2階
TEL:052-684-5100
URL:https://www.nttud.co.jp/

 NTT都市開発の田中と申します。
 7/1付で加藤祐一の後任として着任しました。どうぞよろしくお願い致します。

 私自身は鹿児島生まれであり、名古屋勤務は今回が初めてとなります。
 微力ながら、当社がこれまでの不動産事業で培った経験・ノウハウと、NTTグループのもつ多様なリソースを活用し、豊かなコミュニティや文化を創造する、個性豊かで活力ある名古屋の街づくりをサポートしてまいりたいと思います。
 皆様方のご指導、ご鞭撻を何卒よろしくお願い申し上げます。

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産業懇談会4グループ合同懇親会

 10月は恒例の4グループ合同懇親会を以下の通り開催いたします。
 今回は火曜グループの企画により、マジックショーを開催します。

 産業懇談会活動を広く知っていただくため、中部経済同友会すべての会員の皆様へご案内しております。また、ご家族・ご友人の皆様のご参加も可能です。
 お誘い合わせのうえ、ぜひ多数のご出席をいただきますようお願いいたします。

Masic Bar
日時 令和元年10月30日(水)
(スケジュール)
17:30〜20:00
17:00 受付開始
17:30 開会
17:30〜18:00 ステージパフォーマンス
18:30〜20:00 懇親パーティー(着席ビュッフェ)    
場所 ホテルナゴヤキャッスル 2階 天守の間
公演内容 マジックショー
名古屋市栄にあるマジックバー「手品師」より、海外コンテストで受賞経験もあるマジシャンの皆様にお越しいただき、迫力あるステージパフォーマンスと、テーブルマジックを目の前でご披露いただきます。
対象 中部経済同友会会員(ご家族・ご友人の方もご出席可能です)
会費 お一人 12,000円(後日請求させていただきます)
備考 お申し込みはお送りしているFAX用紙で10月11日(金)までにお申込願います。
お申込後のキャンセルは、10月24日(木)までにお願いいたします。
それ以降のお取り消しは会費を申し受けますのでご了承願います。

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11月度産業懇談会のご案内
グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 集合場所
火曜グループ

富田 茂
広井幹康
深田正雄

11月6日(水)
12:00〜14:30

『御園座 講演会・見学会』
(定員50名程度。超過した場合は火曜グループ優先とします)

名古屋観光
ホテル
2階
曙の間

水曜第1グループ

淺井博司
足立 誠
落合 肇

11月27日(水)
12:00〜14:00

『海外進出企業と相手国との紛争の実態
           ―投資仲裁事例を題材に― 』
名古屋大学大学院国際開発研究科 准教授
国際投資紛争解決センター 調停人(※) 石川 知子氏
(※)2017年に同センターの理事会議長を兼務する世界銀行総裁が指名した10名の調停人の一人

名古屋観光
ホテル
18階
伊吹の間
水曜第2グループ

片桐清志
大倉偉作
高見祐次

11月13日(水)
12:00〜14:00

『膜や 〜私たちは世界の媒(なかだち)になる〜』
太陽工業株式会社
名古屋支店長 奥村 学氏

名古屋観光
ホテル
18階
伊吹の間
木曜グループ

河村嘉男
倉藤金助
吉田憲三

11月7日(木)
12:00〜14:00

『リース会社の現状と今後』
三菱UFJリース株式会社
常務執行役員 三井 博史氏

名古屋観光
ホテル
18階
伊吹の間

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【コラム】

コラム1 【さっかの散歩道】 No.15
コラム【さっかの散歩道】

長瀬電気工業株式会社
代表取締役 屬 ゆみ子

『 晩夏 』

 夏の終わりの夕暮れ時は、何故か夏祭りの匂いがする。きっとあちこちで町内会主催の盆踊りとかが開催され、露店には焼きそばやら金魚すくいやらかき氷やらが並び、老若男女で賑わっていることだろう。愚問だが、皆さんは現在お住いの町内会の盆踊り大会に参加されたことはあるだろうか?実は私自身、この町内の盆踊りには、一度も参加したことがなく、ましてやどこが会場なのかも知らない。記憶をたどってみると、最後に行ったのは、7〜8年前の郡上踊りだろうか。その前になると高校生時代まで記憶を辿ることになる。同級生の住むそれぞれの町の盆踊りをめぐる、道場破りならぬ「盆踊り破り」をして楽しんでいた。

 4〜50年前の盆踊りといえば、大きな櫓の上に太鼓が置かれ、町内の婦人部の方々がお揃いの浴衣姿で輪の中に入って皆さんに踊り方指導をし、かかる音楽といえば、郡上踊り、炭坑節、大名古屋音頭など往年の盆踊りナンバーというのが定番で、露店もいわゆる「的屋」のちょい悪お兄ちゃんたちが、子供や、若いお姉さんたちをからかいながら荒稼ぎをしていた。そんな露天に突然「かき氷」が出現したのは小学生の頃だったろうか。露店で冷たいものといえばラムネしか無かった時代に、突然のかき氷!子供心にときめいて並んで買ったのをよく覚えている。かき氷と言っても当時のものはクラッシュアイスのちょっと細かい版、かかるシロップも着色料たっぷりで、舌を真っ赤にして食べたものだ。なんて話を、30代の社員に話していると「炭坑節ってなんっすか?」と聞かれた。彼らが子供の頃の盆踊りナンバーは、すでにポピュラーなものに変わり、「踊るポンポコりん(ちびまる子ちゃん)」など子供アニメ曲が中心になっていて、かき氷も進化を遂げ、フワフワでフルーツシロップがたんまりかかっていたそうだ。姫リンゴの甘酸っぱさが後を引くリンゴ飴も姿を消し、細長いドーナツみたいな「チュロス」が人気だったとか。最近では盆踊り自体の開催方法も様々で、無線で参加者のイヤホンに音楽が流れる「無音盆踊り」(音がうるさいと近隣の苦情を受けての苦肉の策)やら、その一方で「盆踊りフェス」として、DJが櫓に乗るなんていうのもあるらしい。良いか悪いかは別として、形は変われど、盆踊りが無くならないのは素晴らしいことだ。やはり日本人には祭り好きの血が流れているのだろう。

写真:名古屋をどり  で、盆踊りに行かない代わりに、今年は例年より早く8月末に公演された西川流の「名古屋をどり」に参加させていただいた。以前の予告通り、第3部の長唄の雛壇に全日登壇。1部2部は従来通り踊り中心だが、第3部はこれまでの伝統的な日舞とは趣が変わり、家元が趣向を凝らして演出し、タップあり、三々七拍子ありで、例えるなら日舞ミュージカルのような仕上がりだった。同日開催だった「ど真ん中祭り」の出演者も、開演前に前説よろしくパフォーマンスを披露し、とにもかくにも賑々しく、キャストの数がやたら多いので、舞台袖も楽屋もどこかの文化祭のような様相だった。
 私が出演させていただいたのは、一般参加が可能な長唄で、7月から週一回のペースでお稽古が始まった。稽古初日に渡された演目「俄か獅子」の譜面は、初めて目にする「三味線スコア」。どう読んだら良いのか?さっぱり分からないので、とりあえず聞きながら、頭の中で洋楽の譜面に転写しようと試みたのだが、無駄なことだった。音の揺らぎや独特の変拍子は、5線譜には書けない、一音でも半音でもない節、一拍が何拍子の表なのか裏なのか…。いい加減諦めて耳で完全コピーすることにした。のだが、今度は音域の問題、オペラは基本ファルセット(裏声)で歌うのだが、長唄の音域低音部を地声で歌うと、高音域で思いっきり喉に負担がかかる。かといって最初からファルセットで歌うと、周りの皆さんと周波数が違うので、まるでバックコーラスのようになってしまう(長唄バックコーラスって、想像できます?)。 写真:長唄チーム 長唄チーム 初日は河村市長も参加
トホホなお稽古を重ねつつ、喜寿で見事なお声を披露された小島康敬さんに頭が下がる思いで、誤魔化し誤魔化し、なんとか皆さんの邪魔にならないよう調整するのに一苦労した。そうやって何とか迎えた初日、参加した市長から「この歌はどえりゃ〜色っぽい歌だがや」と言われ、その時初めて歌詞の内容を見返すという有様。口語調に訳すと「吉原で、ド派手な祭りしてるけど、人目を忍んで裏通りのラブホテルで逢引なんて、本気にさせてどーすんのよ」てな感じ。楽日までの4日間、こんな例えは怒られるかもしれないが、演目よろしく「俄か長唄同好会」メンバーと過ごした楽しい学芸会だった。

 数日後クリーニング店から浴衣がごっそり戻って来た。今年は着ることもないかと思っていたが、本番の楽屋入りには重宝した。一枚一枚ビニール袋から取り出して桐の衣装箱にしまい込む。この頃は、旅館の浴衣くらいしか着る機会もなかったが、片付けながら、随分前、漫才師の故内海好江師匠と伊豆の温泉にご一緒した時の事を思い出した。湯上りに自前の浴衣で博多帯を小粋に締めてらした。「師匠、カッコいいですね!」といったら「真似するには半世紀早いわよ」と笑ってらした。そうそう、あの時大浴場で泳いでいるのを師匠に見つかって「何してんの!このはねっ返り!」って叱られた(笑)。あれから30年、半世紀にはまだ20年あるけれど、そろそろ自前の浴衣など持って、粋な旅をしてみようかと思っている。

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コラム2 【「ほん」のひとこと】 No.131
コラム【「ほん」のひとこと】

株式会社 正文館書店 取締役会長
谷口正明

『 「通貨」の正体 』
浜矩子著・集英社新書

 「経済分析というものの永遠のテーマだと言っていい」通貨とは何かを、興味深いエピソードを随所にちりばめながら、とても分かりやすく解き明かしていく著作です。たとえば第一章「バラと通貨はどう違う?」では、「名前ってなに? バラと呼んでいる花を別の名前にしてみても美しい香りはそのまま」という『ロミオとジュリエット』の一節を引き、通貨の正体に迫ります。
 ビットコインをはじめとする「仮想通貨」や「合成通貨」のユーロ、「電子マネー」などについても理解が深まることでしょう。

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【お知らせ】

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