<前田栄次氏 ご挨拶>
■NTTデータ・NTTデータ東海の紹介
NTTデータはNTTグループの中でソフトウェア分野を担っている。売上はNTTグループ全体で約11兆円のうち、約2兆1千億円をNTTデータが占める。従業員数ではグループ全体で約30万人、その内約12万人がNTTデータ所属だ。NTTデータでは、お客様の関心が高まっている領域(DIGITAL DRIVERS)と、テクノロジー(DIGITAL FOCUS AREA)をうまく重ね合わせることで、ビジネスを創出していきたいと考えている。
NTTデータには、日本全国に地域を担うグループ会社が9社存在し、NTTデータ東海は東海4県(三重、岐阜、愛知、静岡)をカバーする。デジタル化の進展は、テクノロジーの進化に限らず、若年層が購買に与える影響、社会構造の変化等が相俟ってもたらされている。NTTデータ東海はこの分野で、IoTへの取り組みの支援や、クラウドサービスの提供、RPAと呼ばれる業務改革ソリューションの提供、SAPなどのグローバルソリューションの提供を通じたグローバル経営支援に取り組む。今後、特に重要になるのは新たな価値の提供だ。お客様自身がビジネスを変革することに、グループの総力を結集して支援していきたい。
<神田主税氏 講話>
■テクノロジーがもたらす急速な変化とデジタル化
テクノロジーが世の中を変えた事例は歴史上にも数多いが、その一つの例が自動車だろう。100年前、自動車が急速に普及したことは、産業構造を含めた大きな変化をもたらした。最近の事例では、iPhoneにより電車の中の風景は大きく変化している。かつては電車内で新聞を広げる姿が見られたが、今ではほとんどの人がスマホを見ている。自動車は世界で10億台が製造されるまで110年を要したが、iPhoneはわずか9年で10億台を販売した。変化のスピードは加速している。
NTTデータでは、「デジタル化」とは色々なものにセンサーが埋め込まることであらゆるものがセンシングされ、大量のデータが生みだされ、それがAIを使って高度に処理されることで、様々なものが制御できるようになることだと考えている。そしてこれを制御する人たちが勝者となっていく。それを象徴的に現しているのがインターブランド社が調査しているグローバルブランドランキングだ。2000年には1位に君臨していたコカコーラを抜き、所謂GAFAの様な企業が大幅にブランド価値を上げた。テクノロジーの進化は加速し、ビジネス環境もそれに伴い日々変化する。技術の変化をForesight(予見)することが必要だ。NTTデータでは毎年1月にトレンドを抽出し、3〜10年後の間に大きな影響を与える将来変化を予見、NTT Data Technology Foresightという名前で発表している。2012年に始まり、当時はクラウドやビッグデータ等があがっていた。2019年で注目している分野は8つ、それを簡単にまとめれば、AI分野、人を中心とした技術の深化、ITインフラという部分で量子コンピューターの活用、VR(仮想現実)・AR(拡張現実)といった仮想空間だ。本日は、その中からAI分野とVR・ARについてお話をする。
■AIに何ができるのか
AIとは何か。例えば柴犬、チワワ等の様々な犬の写真データから、犬種を判別するようなAIを作成することができる。数千件から数万件の様々な犬の写真データをAIに学習させることで、未知の画像でも犬種をAIに判断させることが可能となる。機械学習とも言われるこのようなAIのモデルにより、画像識別においては、4年位前にAIが人間の目の精度を越えたと言われる。音声認識についても同様だ。今では個人の農家が、クラウドで提供されているAIのフレームワークを活用して、キュウリをAIで自動判別するシステムを作り上げる時代になっている。
一方、AIには学習が必要で、その精度を向上させるには数万件の学習用のデータが必要なことが課題とされてきた。しかし、それも最近では解決されつつある。深層強化学習という手法では、例えば、将棋、囲碁等でいえば、基本的ルールだけを教えて、AI同士が対決することで学習させる。Googleでは同じ仕組みを応用、データセンターで空調管理にAIの深層強化学習を活用することで、消費電力の40%削減に成功している。また学習用データをAIが作るという手法もある。例えば、商品棚の状態を画像識別で認識するには、何パターンもの棚の状態を画像として用意することが必要だが、一つのAIが画像を自動で生成し、それを使って別のAIが学習をする。弊社の事例では、AIが苦手とする雪道等の環境下での車両認識においてGAN(敵対的生成ネットワーク)による人工的な学習用データを活用、精度を向上させている。
■進化するAI、問われる倫理
AI技術の塊である自動運転サービスがカリフォルニア州で商用化され、画像診断技術が医師のサポートに使われ始めている。しかし、特化型と呼ばれるAIが実用化される一方で、様々な状況を判断する汎用型AIと言われるものは、まだまだ研究レベルにある。例えば、ビールを取ってとAIに言っても、倉庫に保存されたビールと冷蔵庫で冷やされたビールの区別はつかない。一方で人間にビールを取ってと言えば、冷蔵庫で冷えたビールを取ってくる。こういった常識、人間が蓄積で記憶したものをAIに学習させることが課題になっている。これに対するアプローチの一つが、身体性AIと呼ばれるものだ。実社会を模した3D仮想環境内でAIに学習をさせる試みで、実現すれば、汎用型・自律型AIやヒト型ロボットに大きく近づく。ロボットが自律的に動くことで、人間の代わりができる場面は増える。
AIはどんどん賢くなっている。1分間の音声データからその人の声を複製し、あたかも感情をこめて話しているように再生する技術が生まれ、音声データから合成動画を生成することも可能となった。技術の悪用が懸念され、世界各地でAI倫理の議論が活発化している。先日のG20でも「人間中心のAI社会原則」声明が出され、各社はAI倫理を気にしながら開発を進めている。AIバイアスと呼ばれる問題もある。学習するデータによって偏ったAIが生まれるという問題だ。アメリカの再犯予測のプログラムでは、過去のデータにおいて、黒人の再犯率が高かったことから、黒人に対する厳しい判断が下される問題が発生した。データとして正しくても、倫理的に問題がある判断が下されることの無いよう、AI開発者には注意が求められる。
■VR(仮想現実)・AR(拡張現実)の進化
VRは既にエンターテイメントの分野では様々な事で使われ、様々な機器が発売されている。ビジネスでは、VRを使った遠隔会議支援の試みが広がっている。当社でも取り組んでおり、VR機器を使用することで、世界中に離れた人が仮想空間上に一同に集まり、資料を共有しながら会議をすることもできる。議事録も同時に自動生成され、自動翻訳機能も実装されている。既に様々な会社から引き合いを頂いている。完全に視覚をCGで「つくる」VRに対し、ARは現実とCGを「まぜる」ものだ。機器を通してみることで、現実空間上に色々なものを重ねて見ることができる。AR機器として、有名な所ではマイクロソフトのホロレンズがあるが、最近ではスマホにもAR機能が搭載されている。
スペーシャルコンピューティング(空間コンピューティング)といって、コンピューターのもたらすメリットを、ディスプレイという限られた枠、人をとりまく空間で自由に利用する技術に注目が集まっている。メガネ上にAR機器が融合すれば、自然な形でARが利用できる。コンタクトの中にARの機能を搭載する研究も進んでいる。精度の飛躍的な向上により、ビジネスを含めた、様々な場面での活用が進む。マイクロソフトのメガネ型機器・ホロレンズは、現場作業者支援での活用が想定されている。作業内容をARで指示・指導することで、作業習得に活用が可能だと考えられる。また、トヨタ自動車ではホロレンズが、塗装の膜厚検査に活用されている。
■3つのRがもたらす未来
リアルな位置情報(Real-Scale)、現実のものと見まがう程のリアルさ(Photo Real)、リアルタイム(Real-Time)で現実空間に仮想空間が融合し、現実世界か仮想空間かが分からない世界が来るのではないか。これからは仮想空間に入ることが容易になる。今後、それを体験する人が増えることで、未来を想像できる人が増える。仮想空間が身近なものになり、それが様々なビジネスを生み出すのではないだろうか。
VRやARの活用事例について、動画を交えながら非常に丁寧にご説明を頂きました!