テーマ: 『東海地区ベンチャー企業の失敗事例、成功事例
〜なぜ大手企業が地方発のベンチャー企業に注目するのか』
日 時:20年9月10日(水) 12時00分〜14時00分
場 所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者:22名 |
スピーカー:
村 徳康(たかむら のりやす)氏
セレンディップ・コンサルティング株式会社 代表取締役 公認会計士
國立 英治(こくりゅう えいじ)氏
セレンディップ・コンサルティング株式会社 主任コンサルタント
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●最近の企業環境
最近の統計では、ベンチャー企業は起業後3年の間に90%近くが淘汰され、3年間持ちこたえれば何とか存続する可能性が高い。一方起業家の傾向を日、米、英、独で比較をすると、日本、アメリカ、ドイツでは圧倒的に二世が多いが、イギリスではサラリーマンの息子が多い。学歴を見てみると日本は大卒、高卒が多いが、アメリカでは大学院卒やMBA取得者が多く高学歴になっている。起業家に必要な能力として、日本では判断力、先見力の次に、忍耐力、強運などを重要な能力と考えているのに対し、欧米では統率力、説得力を重視している。また、起業の動機としては、日本は、人生への挑戦、社会的存在感、などを重視しているのに対し、欧米では、家族の幸福、が多くなっている。東海3県の開業廃業率は全国平均より低くなっている。その理由は、この地域の製造業が成功していること。そして中小企業の技術を大企業が抱込んでいる結果として、中小企業も安定していることが考えられる。2000年以降全国で1,259社が上場したが、そのうち東海3県は77社と、上場する会社が少ない傾向がある。新規上場を増やして当地区を元気にしていきたい。上場した時の売上げが100億円以上の企業は全国で2割程度だが、東海地方では半分を超えている。全国の企業は「売上100億円を目標として」上場するが、東海地方では「売上100億円を達成したから」上場するという風土がある。また、ベンチャー側の特徴として大企業からのスピンアウトが少ない。支援側の特徴としては東海地区のマスコミは新しい会社を紹介する番組などが少なくベンチャー企業に注目していないように見受けられる。
●中小・ベンチャー企業と大手企業のアライアンス成功事例
まず名古屋のベンチャー企業で大手企業と直接アライアンスが次々に成功したベンリー・ベンチャーの事例を紹介したい。株式会社JBRの経営理念は「困っている人を助ける」ことであり、経営方針は110番・119番以外のすべての困りごとを解決する組織作りに挑戦することであった。その創業の理由は、バイクがガス欠で止まり困った経験からバイクのロードサービスがあると良いと思い、調査したところ、事業性があるのを確信し、9年前に起業した。現在は、生活救急車サービスへと変化し、住宅・店舗の緊急トラブルからハウスケアサービスなど多様なサービスを全国で24時間、365日行っている。一番凄かったのは全国の店を回って、24時間365日サービスするよう交渉して提携したことである。その結果、旭硝子、SECOM、INAXなどの大手企業と提携し、互いのブランドを活用している。次に、株式会社INBプランニングは元々ゴム練り事業であったが、名古屋大学との産・学連携をきっかけにマテリアル・リサイクルに参入し、愛知県から事業可能性A評価を受け、経済産業省から「エコタウン事業」の認定を受けるところまで成長した。ITベンチャーの株式会社シフトが開発したカラー・バーコードは長距離・複数個を一括認識し、画像全体のわずか0.6%、QRコードの500分の1以下での認識が可能となった。その使用例としては、(株)学書との連携による学習塾の登下校お知らせシステムがある。次に「通信と放送」の融合例として"アドコム"インサイド戦略の成功を紹介したい。静岡の株式会社アドバンス・コミュニケーションズは大画面でもインターネットの画像がきれいに映る超小型のセット・トップ・ボックス(STB)を開発し、大手TVメーカーに採用されている。事業成功の特徴は、自己依存、自己管理、自己責任、自己評価、他社支援出来ることである。起業家が成功する条件として早稲田大学の松田先生は9つのポイントを挙げ、アントレプレナーセンターの福島先生は11のポイントを挙げたが、私がもっとも共感する部分はビジョン、夢といったポイントである。人材派遣会社だった株式会社AIMの社長は、エンジンを作るという夢を持ち、ルマンに挑戦し、今や名古屋から世界に羽ばたいている。
● 失敗する企業家
1,000社以上のベンチャーと接した結果、「成功に法則なし、失敗に法則あり」と考えている。出来ない人には特徴がある。不況はピンチかというと、起業家は皆、不況は千載一遇のチャンスと考える。出来ない人は「不況だから」、「首相が悪い」と他人に責任転嫁する。不況期でも同じ業種で必ず成長している企業がある。また、見ず知らずの第三者に会うのに、5人介せば会えるという実験結果が示す様に、人脈がないことを出来ない理由にする人は、単に努力不足のだけである。一方で、売り上げが上がらない起業家の特徴としては、異業種交流会が好き、名刺を沢山集めるのが好き、講演会が好き、代理店やFCを作るのが好きといったことがある。売上3億円止まりの起業家の特徴としては、ビジネスモデルが好き、いつも資金繰りに奔走している、メモをとらない、直近の経常利益を答えられない、1週間経っても変わらないといったことである。売上げ10億円を超えられない起業家の特徴は、営業への執着心の弱さ、コスト管理の甘さ、技術の過信、リーダーシップの欠如に分類することが出来た。
● 私たちの目標
財務を通じてお役に立ちたいと思っている。具体的には公認会計士を緊急CFOとして派遣し、財務面から海外上場、M&A、IPOなどの支援を行い、中小・VBの役に立ちたいと考えている。資金も投じて自らもリスクを取ろうと、国などからの11億円のファンドを投資している。10年後に10億円を貯めて、売上げ"0"のベンチャー企業に投資し、一緒に世界に通じる企業に育てていくのが夢である。その為に上場を果たした企業に間接的なエンジェルになって頂きたいとお願いしている。私たちは優れた技術力・サービス・コンテンツを持つ東海地方の未上場中小・VBと、経営資源を持つ大企業、中堅企業との架け橋となり、そのビジネス・マッチングやパブリシティを通じて東海地区経済の活性化に貢献していきたい。
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