テーマ: 『 哲人 中村天風氏と私の経営 』
日 時:20年9月9日(火) 12時00分〜14時00分
場 所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者:20名 |
スピーカー:
九鬼 祥夫(くき よしお)氏
九鬼産業株式会社 取締役会長 |
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1.天風会との出会い
高校時代ヨガに興味を持ち、日本に始めてヨガを伝えた人として中村天風先生を知った。住んでいたところのそばに天風会館があったため入会し、大学時代には青年会の幹事長を務め、呼吸法、体操法等を習得し、手本を見せる程になった。社会人となって一時離れていたが、最近天風会活動を再開し、名古屋支部の研修員を務めている。
2.中村天風先生について
本名を中村三郎と言い、明治九年に生まれた。九州の柳川藩主の流れを汲み、居合いの腕前も天下一品だったそうである。日清、日露戦争で軍事探偵として数々の武勲をあげて帰国したが、30歳にして結核に罹り生死の境を彷徨よった。治療を求めてアメリカ、コロンビア大学で医学を学び、またヨーロッパで哲学、医学も求めたが、これといったものが掴めず、帰国の途中に滞在したカイロで偶然出会ったヨガの大哲人カリアッパ聖者に連れられてインドの山奥に行った。そこで2年半修行し心身ともに回復して帰国した後、大正8年に一人で統一哲医学会を創立し辻説法を始めた。昭和15年に天風会と名を改め、昭和37年に財団法人化した。昭和43年に92歳で死去した。ヨガの教えをベースに、「命の力は心を受け皿にして人間の体に入ってくる。心も体も道具で本当の自分はもっと高いところにある。心にはこ心の、体には体の処方をすれば必ず良くなる」と言っている。
3.天風教義について
天風先生は、人は本来幸せに活きる存在であると言っている。人間は潜在意識と言って、体力、胆力、判断力、断行力、精力、能力の6つの力を持っており、それを十分把握すれば人生を豊かなものにすることが出来る。心と体二つのものが一体となって初めて命が輝く。肉体には体操法、呼吸法などの訓練があるある。心は集中統一をすることが大切である。安定打坐(天風式座禅法)をして心を安らかにする。自分の潜在意識を常に新しく、前向きなものに変えていく。毎晩、寝る前に自分のありたいことを念じて自己暗示を行うことによって気持ちが変わってくる。内省検討、取越し苦労の厳禁、人には常に明るく朗らかな気持ちで接する、正しいことの実行、本心良心に従う、後ろめたいことをしない、明瞭な意識を常に維持する、こういったことは精神衛生上良いことであり、肉体にも良い影響を与える。天風会の教えの一つ、安定打坐には聴覚法と言って、大きなブザーの音を聞いてパチッと切ると、その瞬間の静けさを掴まえて静かな気持ちになることが出来る。
4.経営理念について
私が社長になるまで経営理念が無かったが、三重県中小企業家同友会で勉強している時に作った。そのキーワードは、「尊重しあう・自己実現・勇気・しなやかさ・豊かさ」だが、社会人、人間としてお互いの存在を認め合い、自己実現が出来る、働き甲斐のある会社を目指したかった。また、素直さと謙虚さを大切に、現状に満足せず前に出て何かを変えていこうとする勇気をもって、しなやかにチャレンジする豊かな人間集団を目指したいと思っている。天風会でも勇気をいう言葉を大切にしている。「しなやか」という言葉は柔軟性をもってという意味だが、私が平成11年に経営理念を発表した時にはあまり皆に受け入れられなかった。その人その人のやり方があり、その人の良さを如何に引き出すかが大切という意味を含んでいる。年間100名前後の全社員と面談を3年間続け経営理念の浸透を図った。
5.コーチングについて
2001年にコーチングに出会った。東京でセミナーに出席し3年間のコースを受講しコーチングを学んだ。私の強みの部分だと思っている。コーチは日本語では馬車を意味する。引っ張るものではなく、相手が行きたいところに一緒に行って目標を達成するものである。相手の中にある答えを出せるようにしてあげる。教えるのではないので気づきが大切で、本人がまさかと思った瞬間に本人は動き出す。ティーチング、コーチング、カウンセリングの違いは教える人と学ぶ人の関係ではないということである。コーチングは共に一緒にいくという同レベルの関係である。もう一つの特色は未来を志向である。現状分析をしてどんなリソースがあるかを分析し、それをいつまでにどうするかを計画していくのがコーチングである。人はいつも最善を選択しているという前提に立ち、現在を肯定し、承認した上で相手の言うことを傾聴し、その人の気持ちを引き出すことが大切である。
6.EQについて
感情指数と言われる感情をコントロールする知性がEQである。平成14年に公認プロファイラーの資格を取り、新入社員の研修時にコーチング的なスキルを使いながら話しを進め、今後職場でどんなことをしたら良いか話す。そして3ヵ月後ぐらいにもう一度検証したりしている。中途で入った人にも行っている。EQはコンピューターで言えばOSであり、その上に色んなプログラムが走る。いくら良いプログラムであってもOSが良くなければ走らない。実際にEQ的な切り口で言うと、人の素養は3つの知性と8つの能力に分かれる。知性は、ベースになる部分として、自分自身を捉まえコントロールする心内知性、次に、相手に適切且つ効率的に自分の考えを伝える対人間関係知性、相手の心理状態を把握し自分と相手の間を敏感に察知する状況判断知性である。8つの能力は、心内知性では自己認識力、ストレス共生力、気力創出力。対人関係知性では自己表現力、アサーション、対人関係力。対人判断知性では対人受容力、共感力である。自分の気力が充実しているか、言葉以外の部分がどうか、気さくに裏表無く相手の話しを聞いたり出来るかが最も大切だといわれている。
7.終わりに
天風先生が残した言葉の誦句、人間本質自覚の誦句、運命の誦句、境遇改善の誦句、自己陶冶などを集めた誦句集を肌身離さず必ず持っていろと言われている。昔の武士の刀のようなものである。
*講演の中で、中村天風先生の肉声CDと、「起こることは、すべて最高でございます」、「もしかすると救世主(メシア)」という二つの小話をお聞きしました。
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