テーマ: 『 株式会社ポッカコーポレーション 名古屋工場見学 』
今回、木曜グループは前水曜第二グループ世話人であり株式会社ポッカコーポレーション 創業者最高顧問の谷田利景氏並びに、現水曜第二グループ世話人の内藤由冶会長のご好意により、名古屋工場を見学させていただいた。一行は、工場直行の参加者を除き、商工会議所ビル前に11時30分に集合し、バスで出発した。 移動も順調で予定通り12時15分に工場に到着し、写真撮影を行った後、2階の会議室を借りて昼食を摂った。 食後、午後一時に開会し、木曜グループ代表の河村 嘉男世話人の挨拶、一 昌美(いち まさみ)生産本部名古屋工場長のスケジュール説明の後、谷田創業者最高顧問からご挨拶を頂戴した。
谷田創業者最高顧問:この工場は私が40年前に一番最初に作った小さな工場を、継ぎ足し、継ぎ足して段々と広げ、今では流通センターまであって一応形はできているが、能率の悪い工場である。新しい工場を作られれば良いが巨額の投資が必要になるのでこのまま暫くやっていく。レモンから始め、1972年に缶コーヒーを一番最初に私が開発した。名神高速を車で通行中に簡単に飲める缶コーヒーがあると良いなと思いついたのである。そして、これからは高速道路の時代がやってくるが、24時間365日休み無くオープンしている高速道路で人手を掛けて販売していては大変だ。自動販売機なら年 365日、暑くても寒くても働き、ボーナスや、残業手当を要求しないので、高速道路で販売を伸ばすには最適だと考えた。しかし、日本にはまだ自動販売機は無かった。アメリカでもコカコーラの瓶の自動販売機がPXにあったぐらいである。更に、自動販売機でコーヒーを夏は冷やして、冬はホットにして販売することを思いついて1973年に開発に成功した。ホットにするのは世界には無くて日本だけである。ホットのままで1ヶ月自販機に入れておいても大丈夫、腐らないというのは世界にはない。未だに日本だけである。しかし、特許を取るのを忘れたのは大失敗だった。今ではコカコーラより缶コーヒーの方が売れているが、こんなになるとは夢にも思わなかった。この工場はお見せするような工場ではないが、そのような苦労をしてやってきたところは分かっていただけると思う。
続いて、自販機本部チーフ財津俊哉氏の挨拶と10分ほどのビデオの後、一工場長から工場概況をお聞きした。
一工場長: 商品構成を大きく分けると、コーヒー、レモン、スープ、ゼリー商品、業務用商品の五つである。コーヒー生産の特徴の一つは、焙煎工場を自社で持っていることである。豊田工場で豆を焙煎、粉砕して名古屋工場、群馬工場に送り抽出している。二つ目は完全脱酸素製法を行っていることである。品質を劣化させるものに酸素があり、酸素が入っていると酸化現象によって大変味が落ちる。そこで窒素ガスを使い、各調合工程で全て酸素を取り出してその後調合して充填を行っている。三つ目がフレッシュ・ナチュラル・アロマ製法である。ポッカの抽出方法も基本的には皆様が家庭で行う方法と全く同じである。ドリップの時に非常に良い香りがしますが、それは生産工程からすると香りのロスと言える。それを何とか留めることは出来ないかと言うことで考案したのがフレッシュ・ナチュラル・アロマ製法である。蒸気を使い、脱酸素アロマ成分を分流冷却して抽出を行っている。工場は名古屋工場、豊田工場、群馬工場と、スープを作っている福田食品工業の工場が静岡県磐田市にある。現在、名古屋工場には食品が3ライン、飲料が6ライン、合わせて9つの生産ラインがある。生産体制は基本的には2シフトで行っているが、食品は冬の商品で、秋口から生産がタイトになってくる。逆に炭酸飲料は3月ぐらいから生産が上がる。生産設備としては、最初に、120ラインと呼んでいるコーヒーの高速ラインがあって、毎分1,200缶を生産している。アロマックスコーヒ−の生産もこのラインで行っている。2番目のラインはココア、お茶缶などを作っている。3番目のラインはポッカレモンのラインである。年中2シフトで稼働している安定したラインである。その次がキレートレモンを作っている炭酸のラインで、3月から8月まで非常に忙しいラインである。次に70mlのミニボトルのラインがある。スープのラインは3つある。スープは最初スティックから始めたが、具を沢山入れられるようにカップも作った。最後が業務用レモンのラインで、ホテルのレモンティーなどに使われている。これは、毎分1,550個生産出来る最速のラインである。群馬工場には大きな高速ラインが3ライン入っていて、毎分1,300個生産できるコーヒー関係のライン、ペットボトルのライン、キレートレモン、ジェリー関係などを作っている兼用ラインとなっているが、基本的にはバッチが非常に大きい大量生産工場である。海外は現在シンガポール、マレーシア、中国の3拠点に工場がある。どの工場にも缶のラインがあるが、シンガポールにはペットボトル、マレーシアでは紙のテトラパック、中国ではペットボトルと焼き菓子ラインがある。
次にTPMの話しをしたい。一般的には「Total Productive Maintenance」の略で、主に生産システムにおける生産性向上活動を意味するが、ポッカではこれを「Total Pokka Management」と置き換え、営業部門や管理部門、研究開発部門も含めた全社活動と位置づけて活動を展開している。ポッカのTPMでは、各部門の「あるべき姿」と「現状」との差をロスと捉え、そのロスを埋めるべく、日々活動を展開している。そのために、自主保全、計画保全、品質保全、という三本柱を三位一体で行っている。自分たちが使っている機械は自分たちで保全していこうという自主保全が非常に重要である。しかし、自分たちで行う保全には限度があるため、生産技術部が中心になり計画保全で機械を導入するところから計画を立ててやっている。
続いて調達グループの内田氏から調達関係のお話をお聞きした。
内田氏:原料、資材の高等により残念ながらポッカ製品も一部値上げせざるをえない状況になったが、コーヒー、レモンは値上げしていない。実際のところ、コーヒー豆の相場も右肩上がりで、今年は昨年に比べ20%アップしている。そんな中で弊社がどのように対応しているかというと、買い付けのタイミングを調整したり、豆の種類を変えたりしている。通常、5、6種類の豆を使っているが、どの豆を使うことによって価格を抑えることが出来るか、あるいはどの豆をどうブレンドすることによって味を保つことが出来るかといった、小刻みな調整で価格を抑える努力をしている。技術的には豊田工場の焙煎技術の向上によって、抽出率などの生産性を上げてコストアップを抑える努力をしている。レモンに関しては昨年までそれほど大きな価格上昇は無かったが、昨年の天候不順によって40〜50%の減産が起こり、価格が50%〜100%高騰した。研究所の独自技術開発によって価格を抑えたり、新しい原料ソースを開発することによって対応している。また、生産国との共同技術開発によって少しでも安く、少しでも良い原料を購入出来るよう努力している。コーンについては、前年比150%の価格高騰となったが、従来 北半球から買っていたものを南半球などの新しい産地からの比率を上げるなどの対応を行っている。
お二方のお話を伺った後、見学会参加の一行は高速缶コーヒーライン、ポッカレモンラインを見学させていただいた。生産された大量の缶コーヒーが、もの凄いスピードで澱み無くライン上を流れていく様は圧巻であった。また、「如何に味を守りつつ殺菌をするかが大事」という説明にポッカさんの味、品質を大事にする姿勢が大変よく理解できた。見学の後、会議室に戻り質疑応答の時間を持ったが、参加者からは、蓋の製法・取り付け方、殺菌技術、使用されている水、「ポッカ」という社名の理由、など多岐にわたった質問がされ、時間が足らないほどであった。最後に河村世話人、谷田創業者最高顧問からご挨拶をいただいて、一行は株式会社ポッカコーポレーション名古屋工場を後にした。
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