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『地上デジタル放送について』
日 時:19年11月21日(水) 12時00分〜14時00分
場 所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者:38名
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スピーカー:マスプロ電工株式会社
取締役社長 瀬尾 英重(せお ひでしげ)氏
常務取締役 牧野 与志雄(まきの よしお)氏
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【瀬尾英重氏】
マスプロという社名は「マスター・オブ・プロダクション」の略で、ここには創業者の「ものづくりのトップでありたい」という想いが込められている。更に、マスプロアンテナではなくマスプロ電工としているのにも、「単なるアンテナ屋ではなく、電気工事から一式やっていく。」という強い想いがある。お蔭様で当社は業界トップシェアを誇り、日本のアンテナの40%強は当社製である。アンテナ以外にもCATV会社が使う放送機器などを扱い、また社名の通り電気工事も行っている。また最近では、セキュリティ機器の分野にも新たに参入した。当社は全国45箇所の営業所で500名を超える営業マンが活躍しており、こうしたきめ細かい営業網を有することがトップシェアに繋がったと判断している。また、当社は最近注目されているファブレス企業でもあり、自社で組み立て工場などは一切持っていない。本社工場では製品の最終調整とプロ向けの放送機器を製造するのみで、一般機器は全て協力工場に委託している。近年は海外生産が増えており、全生産の40%強を中国、台湾、タイ、スリランカといった国々の協力工場が生産する。我々は150名を超える技術屋集団を有し、高周波に関する技術では大変自信を持っている。技術革新が大変なスピードで進んでいるが、当社の持つ技術力で皆様の様々なご要望にお応えしていきたい。
【牧野与志雄氏】
●テレビ放送をデジタル化する理由
地上テレビ放送をデジタル化する理由は、以下の3点が挙げられる。
(1)高度情報インフラの整備
これは、総務省が2004年に打ち出した「殆どの家庭に普及しているテレビを情報通信サービスの端末機器として利用し、誰もがいつでもどこでも情報通信技術の恩恵を受けられるような社会を実現する」という国の未来戦略プロジェクト(u-JAPAN構想)に基づく。
(2)電波の有効利用
現在のテレビ放送は、VHF帯の1〜12チャンネルとUHF帯の13〜62チャンネルが使用されている。この内、この地域であれば名古屋テレビ塔から発信されているVHF帯をテレビ放送の帯域から外し、UHF帯の方にも圧縮をかけて、これによって浮いた分の周波数帯波を、今後増えてくると予想される様々な放送、通信、特に携帯電話や無線を使った事業などに有効利用しようというものである。
(3)世界的なデジタル化の流れ
既に20ヶ国以上でデジタル放送化が進んでおり、中でも、日本、韓国、オーストラリア、アメリカ、カナダの5ヶ国はハイビジョン放送を採用している。また、今後、注目すべき国は大変な人口と受信世帯数を有する中国とブラジルである。特にブラジルでは日本方式の採用を決めており、多くの日本企業が積極的に進出を検討している。
●デジタル化のスケジュールと進行状況
日本では、2011年7月24日までにアナログ放送は終了することが決まっている。地上デジタル放送は2003年12月から始まっていて、かれこれ4年が経過しているが、依然として普及には課題を残している。総務省の発表では2010年中に現在日本でアナログテレビ放送が受信できているエリアの99.5%はカバーしたいとしているが、この数字からも分かる通り、100%は現実的に厳しいと考えられている。残りの0.5%については、衛星放送やインターネットを利用した補完措置も検討されているが、いずれも容易には進まないと予想される。しかし、いずれはテレビ放送も衛星放送やインターネットと融合される時代がくると予想され、将来、国民の生活を一変させるような大きな変化が訪れる可能性もある。
●地上デジタル放送の特徴
地上デジタル放送には、以下に挙げる8つの特徴がある。
(1)高画質であること。デジタル放送では解像度が従来の2倍以上になって、よりきめ細かい映像が再現できるようになった。
(2)ゴースト(電波の反射によって画像が二重、三重に映る現象のこと)のないクリアな映像が楽しめること。このため、アナログテレビでもデジタルチューナーを使ってデジタル放送を受信すれば、これまで以上にクリアな映像が再現できる。
(3)専用のアンプやスピーカーを設置すると5.1chサラウンドのまるで映画館にいるような臨場感のある音を再現できること。
(4)電子番組表の機能を持つこと。テレビ画面上に1週間分の番組表が表示され、DVDレコーダーと連動して番組の録画予約をボタン操作ひとつで行うことができる。
(5)データ放送を受信できること。テレビ番組と合わせてお住まいの地域の天気予報やニュース、交通渋滞といった情報を無料で得ることができる。
(6)携帯端末向けワンセグ放送。デジタル放送というのは周波数を圧縮してひとつのチャンネルを13にセグメントして、それぞれにデジタル信号を送っている。ワンセグというのは、その1/13チャンネルを利用した携帯電話向け地上デジタル放送のことである。最近では、地下街や地下鉄の中でも放送が受信できるようにインフラ整備することも検討されており、これによって将来は災害時の緊急放送などへの活用が期待されている。
(7)スポーツ中継が延長になった場合などでも定時番組を遅らせることなくどちらでも同時に視聴できること。
(8)字幕放送や解説放送、更には音声速度を変えられるサービスが可能となること。
●地上デジタル放送を視聴するには
地上デジタル放送を視聴するには、それぞれ以下のようにご対応いただきたい。
(1)個別アンテナで受信する場合(一般のご家庭)
まず、受信環境をチェックしていただきたい。お住まいの地域の受信環境は、デジタル放送推進協会(Dpa)のHP(http://www.dpa.or.jp/)で確認することができる。受信環境が整っていれば、アンテナとデジタルテレビかデジタルチューナーのいずれかがあれば地上デジタル放送を視聴することができる。
(2)ケーブルテレビで受信する場合
局によってはデジタルテレビにそのまま配線を接続するだけで受信できる場合もあるが、専用チューナーが必要になる場合もあるため、ご加入のケーブルテレビ局に受信方法をご確認いただきたい。
(3)共同アンテナで受信する場合(アパート、マンションなどの集合住宅)
個別で受信する場合と同様であるが、アンテナの設置が必要な場合は、アパートの管理組合などと相談していただく必要がある。
(4)受信障害対策で設けられた共同受信施設を利用している場合
これまでの共同受信施設はあくまでアナログ放送の受信障害に対応した施設であるため、現在と同様のサポートが得られるかは定かでない。アナログ放送では受信障害があっても、デジタル放送で問題なく受信できるようなケースは、個別でアンテナを設置する必要も出てくるので、共同受信施設を管理する電力会社などに直接お問合せしていただきたい。
●普及動向
地上デジタル放送は、今年末までには現在アナログ放送が受信できるエリアの92%が受信可能となる予定である。しかし、全国に普及しているテレビの台数は1億1千万台程度と言われており、1世帯辺りでは2.3台という計算になる。電子情報技術産業協会(JEITA)によると、今年9月までにデジタルチューナーなどを含む全てのデジタル放送受信機器は、累計で2,600万台が出荷されたということである。しかし、現在普及しているテレビが1億1千万台とすると、未だ8,500万台のアナログテレビが全国に存在することになる。総務省では来年の北京オリンピック開催までには約半数の世帯が受信機器を揃えるという青写真を描いていて、それに向けて色々なキャンペーンなどを行っているが、果たしてあと3年で全てデジタル化できるかが最大の課題である。1台は買い換えたとしても、寝室や書斎、子供部屋などにあるテレビはまだアナログテレビで十分というご家庭も多いだろう。こうしたアナログテレビもデジタルチューナーさえあれば引き続き利用ができる。当社も手のひらサイズの安価なデジタルチューナーを取り揃えているので、今のエコ時代に合わせて、アナログテレビもできるだけ長く使っていただきたい。 |