テーマ:『 先端材料で世界のトップ企業を目指す』
日 時:19年2月1日(木) 12時00分〜14時00分
場 所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者:34名
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スピーカー:
濱口 裕(はまぐち ひろし)氏
東レ株式会社 名古屋支店長 |
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昭和23年8月大阪生まれ、阪神のファンだ。昭和47年大学卒業後、東レに入社。当初11年間は繊維の営業で女性用ニット生地を販売したり、紳士用のシャツ地を販売した。その後、11年半ほどコンタクトレンズの販売をした。それ以来コンタクトレンズを使用していて、現在も遠近両用のものをつけている。その後、経営企画室に4年半。ここでは長期経営計画、M&Aで韓国企業の買収なども手がけて、会社全体を勉強することができた。さらに宣伝室に2年、広報室に3年間過ごした。その間に担当した東レパンパシフィックテニスは、24年間にわたり当社が主催してきたツアーで、世界の女子テニスツアーの中でグランドスラム大会以外では、最もプレーヤーの認知度が高いと思う。広報では記者に、良い情報、悪い情報をいかに提供するかということが役割で、記者に自社を正しく理解してもらうことが極めて重要だ。メディアに対する情報公開の仕方で記事の書かれ方も異なってくる。それらを経て、TOREXブランドを浸透させるため上海に赴任したが、2年で名古屋に来た。自分の父親も、かつて名古屋に勤務をしたことがあり縁を感じる。
東レの設立は1926年、昨年80周年を迎えた。東レグループ全体で36,000人が働いている。基盤事業の繊維、プラスティック・ケミカルで前期は売上の全体比65%9,000億円強、営業利益は同42%390億円を稼ぎ出すが、情報通信・機器、炭素繊維複合材料の戦略的拡大事業は、売上が全体の20%2,800億円に対し、営業利益は全体の46%430億円に上り、これらが、稼ぐべき事業になっている。環境・エンジニアリング、ライフサイエンスなどの戦略的育成事業は、2010年以降の稼ぎ頭になってもらうべき事業で、売上は全体比15%2,200億円、利益は同12%115億円となっている。
当社は、高分子化学、有機合成化学、バイオテクノロジーをコア技術としているが、そこから生まれる素材をさまざまな分野に提供するというのが役割だと任じている。結果的にいろいろな分野向けに事業を拡大しているが、近年はナノレベルでのコントロールによって、さらにいろいろな事業に取り組めるようになっている。どのような形で提供するか、加工の仕方によっても、いろいろな応用が利くようになっている。
当社の業績は2001年度に大きく落ち込み、この時にプロジェクトNT21を策定して、抜本的な体質強化による守りの経営を行なった。この計画は、1年前倒しで目標を達成、あらたな経営課題としてプロジェクトNT−Uを立ち上げ、今度は事業構造改革に伴う攻めの経営を行なっている。ただ、数字をベースとした計画は作らず、あるべき姿に対して、何をすべきなのかを課題とし、これに取り組むことで、結果的に数字がついてくると考えている。
今中間期では、過去最高の売上7,460億円を達成、営業利益も430億円となった。中でも、炭素繊維複合材料、情報通信材料・機器がこの成長を牽引した。
この炭素繊維複合材料は55%が産業用、22%航空機、23%がスポーツ用途だ。産業用として、自動車材料にも使われ、さらに耐震補強用途にも相当量使われている。パソコンの筐体などもあり、いろんなところで使われている。総需要に対し34%ぐらいのシェアを持っているが、さらに生産能力の増強を図る。航空機では、1982年ぐらいから一部に使われ、安全な航行を保証する部材である1次構造材として使われたのはB777。B787ではそのほとんどに使われる予定だ。情報通信・機器の分野では、携帯電話やカーナビに使用される液晶のカラーフィルター、PDP用材料などの材料のほか、高度な記録材料としてのファイルム、カラーフィルターの製造装置などがある。
環境エンジニアリングにおける機能膜は、用途に向けた膜のバリエーションをいかにもつかということが重要だが、中でも、逆浸透膜は海水を淡水に変えることで、昨今注目されている。工業用水を浄化して、飲料水や原料に使うことは、一般通念としてなかったが、この膜で、工業用水を工場内で生産の原料水や水道水の代わりに使うことができるようになった。
ライフサイエンス事業では、抗がん剤、肝炎に対する医薬のほか、人工腎臓などの医療材、高感度DNAツール、たんぱく質解析ツールなどのバイオツールを展開し、事業拡大を進めたい。さて、基盤事業の繊維事業は、欧米のケミカルジャイアントが繊維事業を撤退した中で、先進国の大企業として類のない糸・生地・製品まで手がける垂直統合型の展開をしている。今後、自動車用途を中心に産業用での拡大を図り、安定した収益を確保していく。プラスチックは、エンジニアリングプラスチックに取り組み、自動車、家電等のニーズに対応する。ポリエステルフィルムは世界6カ国で適地生産、現地供給をしている。
中期経営課題として、2010年近傍に売上1兆8,000億円、営業利益1,500億円を目指すことを考えているが、戦略的拡大事業で収益を拡大し、先端材料比率を向上させる予定だ。設備投資は戦略拡大、育成事業への集中的な投資を行い、研究開発投資についても先端材料に80%を傾斜投資する。2010年近傍の先端材料の売上を2005年度の1.8倍にする予定だ。【1】事業構造革新、【2】海外事業強化、【3】先端材料事業拡大、【4】研究・技術開発力革新、【5】生産技術力革新、【6】コスト革新、【7】営業力革新、【8】コーポレートブランド強化の8つのプロジェクトを推し進めて、2015年には営業利益2,300億円を目指したい。
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