産業懇談会「代表幹事のご講話」ならびに「新年合同懇親会」
毎年恒例となった「代表幹事のご講話」ならびに「4グループ合同新年懇親会」を開催した。80名を超える多くの参加者のもと、石川代表幹事から貴重なお話をいただき(下記参照)、その後産業懇談会メンバーの皆様との懇親会を行った。年のはじめに、有意義な講演を伺うとともに一層の親睦を深める大変すばらしい機会となった。
テーマ:『
すすむ「溶解する日本のこころ」の中で
「ものづくり、ひとづくり、こころづくり」を考える』
日 時:19年1月25日(木) 17時30分〜18時30分
場 所:名古屋マリオットアソシアホテル 17階 ルピナスの間
参加者:82名
|
スピーカー:
石川忠司(いしかわ ただし)氏
中部経済同友会 代表幹事
株式会社豊田自動織機 取締役会長
|
|
溶解する日本の負の連鎖とは、企業のリストラ、倒産、採用抑制と非正規社員の採用増の中で、ニート、フリーターが増え、雇用不安、生活不安、所得格差が高まっている。将来に夢を持つという幸せロードがなくなって、夢を持てる人と持てない人という格差も生まれている。家族も3世代同居が減って、核家族化し、一人住まいや、パラサイトシングルという事象が生じている。そして、少子、人口減少、高齢化という一連の現象が、様々な社会問題を引き起こしていると考えられる。こうした負の連鎖の中で、日本はどこに向うのか考えてみたい。
国際競争力を見てみると、ある調査では、日本は一時世界のトップにあったが、バブルが弾けた後に、順位をどんどん落として、2002年には30位まで落ち、ようやく17位まで戻って来たところだ。では、世界のメジャー企業の中で、日本の製造業はどういうポジションにあるのか。業種ごとにみてみると、ガラスでは世界のメジャー6社中3社が日本。同様に鉄鋼で10社中2社。自動車は10社中3社。半導体製造10社中5社。建設機械は6社中2社など。しかし、医薬品は10社中ゼロだ。強い分野と弱い分野がある。地味で頑張っている企業もたくさんあるが、グローバルプレーヤーの中で、各業種ごとに1〜3位に入る企業がどれだけあるのかが重要になるだろう。
日本には1,400兆円の金融資産があるというが、世帯数別でみると、金融資産が全くない世帯が22%を占める。一方で、3,000万円超が10%ほどいて、この10%の人達が全体の45%にあたる630兆円の金融資産を持っている。問題は、この5世帯に1世帯が金融資産を持っていないこと。また1990年頃の貯蓄率は、15%と高かったが、それもどんどん減って、全体の貯蓄率は5%をきった。年収500万円未満の人も10年前に比べて増加しており、1億総中流階級というのは幻想で、ジリジリと2極分化が進行している。
雇用の変化ということでは、正社員とテンポラリー社員の雇用合計は、ここ15年間ほぼ5,000万人であまり変っていないが、その内訳として、テンポラリー社員が大幅に増え、その比率は18%から30%まで高まっている。外国人の雇用もあって、雇用形態がどんどん変化している。そうした状況の中で、日本は活力をどう維持するのか。
人口問題は、2005年の1.28億の人口が2050年には1億人に減る。さらに、質的な問題として、その頃、15才未満の人口は11%、65才以上が36%にもなる。学校の統廃合がどんどん進んで無くなる一方で、病院と老人介護施設が増える。
近年減少が続く出生率は、昨年少し戻して1.29になると言われているが、団塊の世代のジュニア達が生んでいるに過ぎず安閑と出来ない。女性・男性ともに未婚率、非婚率が急激に増え、子どものいない無子率は40%を超える。人を愛し、家庭を作って、子どもを持ち、そしてささやかな夢として家を建てるという当たり前の社会が少なくなってしまった。我々は総人口が1億人になった時に、どういう国にするのかということを考えておく必要がある。
最も申し上げたいことのひとつは、巷間あまり言われないが、「1998年問題」だ。バブルが崩壊し、企業のリストラ・倒産が進んだ1998年以降、自殺者、少年凶悪犯罪、不登校、フリーター、児童虐待などが激増している。このことから、経済の状況が社会問題に大きく関係することが読み取れる。しかし、経済が回復してくれば、再び元の健全な姿に戻ることが出来るのかというと、それは難しいと思う。
高校や大学を出て就職し、職長や係長、課長になって、家庭を作って、家を持つという、「幸せロード」に漏れが出てきて、学校を中退しフリーターになる人達も出てきた。また、「幸せロード」自体を否定する人達も出てきており、高度成熟社会の悩める問題を抱えるようになった。ある調査によれば、将来に希望を持つ子ども達も急減している。一体、誰がこういう社会をもたらしたのか。我々は、次の世代に何を残していくべきかを考えなければいけない。
まず、国の経済が発展し、働くところがあるということが大事だ。一人でも多くの人が働ける、雇用の拡大が出来るような強い企業を作っていくことが必要なのではないか。その中で人の優しさや、人と人の触れ合いのある職場のネットワークを通じて、孤独にさせないということが必要だ。
入社して10年で25%の人、20年で50%の人が入れ替わる。技能の伝承もさることながら、経営理念もどう伝えていくのか。意識してそれを伝えることの出来る人をつくる必要がある。企業だけが成長する、あるいは個人だけが成長することは有り得ない。それを繋ぐのがリーダーの役割だろう。目指すべきリーダーは、「おやじ」である。
「おやじ」のイメージは、誰にも負けない腕と見る目を持ち、怖いが親身になってくれ、背中で育て、見せる。逃げず、流されず、部下の憧れの人である。この「おやじ」づくりを会社の中でやっていかなければならないと思っている。
先日テレビで、老人の犯罪を取り上げていた。一人は、生活保護を受け借金を抱え、生活が苦しくて盗みを働いた老人。これは社会的ネットの不足。一人は、家族から離れて孤独に耐えられず、盗みを犯して、その家族の気にとめてもらおうとする老人だ。孤独をほおっておく社会は、最も怖い。瓦解する今社会の中で、日本人の心、メンタリティーとは何だったのか。何をバックボーンにすべきなのか。人間として何をよりどころにすべきなのか。こうしたことをリーダー含めしっかり考え、みんなで、手を差し伸べ合いながら、こころからリッチになれる世の中に持っていければいいと思っている。
◆「新年合同懇親会」風景
|