テーマ:『 イマドキの子ども、イマドキの学校、そしてあなたにできること
〜スクールカウンセラーが語るイマドキの子供の現状〜
』
日 時: 11月8日(水) 12時00分〜14時00分
場 所: 名古屋観光ホテル 18階 オリオンの間
参加者: 25名 |
スピーカー:
前田 由紀子(まえだ ゆきこ)氏
愛知県臨床心理士会 常任理事 |
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臨床心理士は1988年に出来た資格で、現在は大学院まで心理学を学び1年間の実技の後、筆記・口述の審査に合格してようやく得られる資格になった。5年ごとに再審査が行われている。愛知県には1,000名ほどいるが、この四半世紀は稼ぐことが出来ない職業だったため、あまり年齢の高い人はおらず、そのうち30代が8割にものぼっている。
スクールカウンセラーは、1995年度に文部省の活用調査事業として予算化されて登場し、2005度には名古屋市内の中学校、2006年度には愛知県内の中学校全校に配置されることとなったが、予算削減で1校あたりに関われる時間が減っている。
当初は、学校にも戸惑いがあって、不登校の子どもを見ることから始まったが、段々、子どもの非行、虐待・被虐待、鬱状態のカウンセリング、軽度発達障害などに対応するようになってきて、最近では鬱が増えてきた先生への対処もするようになってきている。
週4時間しか行くことの出来ない学校では、先生からの相談だけで、子どもにかける時間がなくなってしまうというのが現状だ。
ところで、今の子どもたちというのは、その印象とは大変ほど遠いところにあることをまず知って欲しい。例えば、刑法犯の少年の検挙人員は、この60年間で若干増加する傾向にはあるが、1960年代以降、殺人などを含めた凶悪犯罪は大きく減ってきていて、おとなしくなったというのが実情だ。これは社会構造、すなわち、第二次産業への就業者が第一次産業への就業者を上回り、高校進学率が90%を超えるというような構造の変革にも関係がありそうだ。
本来、子育ては親だけのものではなくて、祖父母や兄弟、従兄弟、叔父叔母という関係の中で行われたものであるのに、経済的に相互扶助が求められた地縁・血縁が弱まり、最近では擬似家族となった会社との繋がりさえ、あまりにも弱まってしまった。したがって、子どもは大人の付き合いをまねることもなくなり、大人の社会が見えなくなってしまった。
ジェンダー意識の変化は、元気な女性を生み出したが、一方で男性を戸惑わせている。
少子化は、子どもに対する接し方も変えてしまって、親にとっては失敗のできない親子関係をもたらし、過保護や、過干渉になっている。親自体が、子どもとの接触の機会がないまま子育てをするため、子育ての思うようにならない事態に大変な戸惑いが生じ、虐待や鬱状態を生み出している。
外食産業の利用は、家事の外注化と同じで、早く・安く・手間もかからない。掃除もせずに済んでしまって、家族の中の自分の位置づけもない。各部屋にテレビがあってチャンネル争いもなく、兄弟ですら駆け引きや、やり取りがない。
こういう社会の変化があって、今、学校では不登校児童が増加している。暴力的なわけでもなく、打たれ弱く、対人関係も少ない。諦めも早い。褒めて育てると、いつか褒められなくなると恐れてしまう。
学校の先生方は概ね頑張っているが、いかんせん人手が足りない。問題のある児童の親は、学校に呼んでも出てこない。その子に関わっていると他に手が回らない。
皆さんには、今更、昔に戻ることは出来ないので、新しい繋がりを作っていただきたい。上下ではないヨコの関係、会社でも新しい繋がりが必要だ。素敵なモデル、格好の良い上司になって欲しい。今の子どもは、知らないだけで、教えれば理解する。まずは大人から歩み寄って欲しい。高齢化は、子どもたちにとって沢山の資源を持っているのと同じだ。説教だけでなく、どうやって、人に対処するかを勉強以上に子どもたちに話してやって欲しい。
最近のいじめの問題は、加害する子どもを黙って見ている子どもたちがいるから、無くならないと思う。いじめられている子に、一人でも声をかける子どもがいれば、それだけで救われて命を落とさずにすむ。人ごととせず、家庭に帰ったら、子どもたちに、そういういじめがないかなど、声を掛けるように話してやって欲しい。
自分自身、地域の誰を知っているか、子どもを守る地域の目を作っていくことが必要だ。 |