テーマ:『 ISO品質システムについて〜経営者&審査員の視点から〜 』
日 時: 9月13日(水) 12時00分〜14時00分
場 所: 名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者: 27名 |
スピーカー:
二宮 敏夫(にのみや としお)氏
日本カーソリューションズ株式会社 名古屋支店長 |
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私とISO品質システムとの関わりは、8年ほど前、NTTの東海設備技術センターに在職中の時、ISOの審査を受けて、審査員にこてんぱんに指導を受けたことに始まる。そこで、奮起して、翌年に審査員補の資格を取得した。
今日は、ISOについて、どういうものかをご紹介したいと思う。
そもそもISOは国際標準化機構のことで、英語的に略すとIOSになるはずだが、ギリシア語の等しいという意味のISOSからISOと呼ぶことになった。ジュネーブに本部が置かれ、日本工業標準調査会(JISC)が代表を派遣している。一般には、イソネジとかフィルムのISO400などの表示で馴染みがある。
国際的な規格は、130年前にメートル法が定められたことから始まるが、1928年に万国規格統一協会ができたことが、ISO設立の引き金になっている。1946年10月14日に、ISOを作ろうという決議がされたことで、10月14日は国際標準化の日となっている。1947年に国際標準化機構が設立され、現在専門委員会は200近く、規格は14,000にのぼる。
JISは良く聞かれると思うが、これは日本の国家規格であって、ISOは国際規格である。規格には地域、団体、社内というそれぞれの規格もある。JISZ9900は、ISO9000をそのまま翻訳して使っている。良い製品を作っていこうという点では同じだが、JISは「もの」の規格、ISOは良いものをつくるための「仕組み」の規格であるという点で異なる。
ISO9000、9001、9004、190011は、これらをコア規格として、どの分野でも共通の規格となっている。自動車産業などのQS9000などは、産業によって、より実践的に使用できるようにしたもので、セクター規格という。
ISOの要求事項は、「〜しなければならない。」と規定されたもので、英語で「shall」と書かれていることから、Shall項目ともいうが、23条項、51分類に記載されている。尚、2000年度版から、5条の「経営者の責任」が大幅に増強された。
ISO9000は一言で言うと、文書化し、実行して、証明しろということだが、【1】品質の方針を定め、【2】品質に関する各人の責任と権限を明確にして、【3】品質を実現するための品質システムと品質マニュアルの形に文書化して、【4】現場が間違いなく品質マニュアル通りに実行していることを【5】記録して証明し、【6】顧客の要求する品質の確保を開示できるようすることが求められている。しかし、これらを、どのようにするのかは企業に任されているので、ここに取り組みの差が生まれてくる。
品質マニュアルは一次文書で憲法のようなものだが、そこには考え方が書かれている。やり方として規定、要領、手順書があり、結果として帳票類がある。
TQCとISOの違いは、TQCがボトムアップ的というのに対して、ISOはトップダウン的ということがある以外に、ISOは品質保証には強いが、品質向上という点で弱い。したがって、TQCで改善しながらISOで楔を打って歯止めをし、スパイラルにアップしていくというのが重要だ。
ISOの登録は、ここ5、6年は、年間6千件ぐらいづつ増えてきていたが、ここ2年ほどは伸びが鈍化。これは個人情報保護法や、情報セキュリティーに企業の目が向いた影響があるのではないかと思う。
また、どのような業種で取得されているかというと3割は建設、2割超は小売、運輸、倉庫、金融、保険などのサービスで、これらの業種で半分以上を占める。
ISO9001での県別登録者は愛知県が約2,800件で全体の6.5%、岐阜、三重はそれぞれ約1,000件、700件で2.3%と1.7%になる。これを全国で事業所がどれだけあるのかという比較でみると、愛知県は5.7%、岐阜1.9%、三重1.5%となるので、それぞれ取得率が上回っていることがわかる。
世界的には、全体で67万件のうち、中国が20%を占める。12年度には4%程度しかシェアがなかった中国が大躍進をしている。日本は大体4、5番目で、アメリカ、ドイツ、イギリスのシェアが下がってきている。
なぜ、今ISOなのかということになるが、一つには社会環境の変化が影響している。今やISO9001を取ることが当たり前の時代となり、親会社が取得しているので子会社もという風潮や、企業イメージが向上する、あるいは顧客が選択する時代になったということもあろう。ISOは5年周期で改定されるが、2000年の改定時に、環境ISOなどとも連動してシステムが使いやすくなったことも挙げられる。ISOの取得によって、企業内部には、仕事が標準化できて、ムリ・ムラ・ムダがなくなったとか、新入社員の社員教育に使えるなどのメリットができた。社内の管理体制としても利用でき、顧客の要求する品質に対する回答ができるようになった、あるいは、クレームの削減に寄与することができたなど利点がでてきた。ISOの担当者からみてもメリットが幾つかあるが、品質システムの構築や維持の監査に時間と稼動を要した、認証取得やそのフォローのために外部研修費がかかった、マニュアル作成のための紙の使用量が増えたというデメリットもよく言われる。このあたりは、知恵を絞りながら改善することが必要だ。
いろいろな業界で、特徴ある取り組みをしているが、自動車業界ではアメリカに輸出するにはQS9000にマッチしないと輸出できないようになっているので、QS9000に対応した仕組みが必要となっている。食品では品質管理システム以外に、監視システムがあり、食品衛生法がこれに対応しているし、そのほかの規格にも対応する必要がある。
経営者の役割として、要求事項をPDCAの切り口で並び替えると、方針・目標を確立する、経営資源を計画し準備する、適切な組織を構築するというPLAN、手本を示して指導する、コメントを示す、責任と権限を明確にし委任するなどのDO、システムが会社にとって有効に機能しているか、目標を達成しているか、方針に従っているかなどのCHECK、そして戦略的計画に組み込む、追加の経営資源に必要なものを備える、組織を再編するなどのACTIONになる。審査員の立場からアドバイスさせていただくと、最近は事務局が予め準備してしまうことも多いが、マネジメントレビューには積極的に関与して、自筆による指示をして欲しい。またISOと改善活動を分離して取り組むのではなく、ISOは改善のツールとして利用して欲しい。そして、折角ISOを取得したら、それをアピールして欲しい。また、審査日程を早めに決定すれば審査手順を組むのに都合が良いし、場合によっては審査員を継続指定出来る。管理責任者には、責任と権限をしっかり与えることが重要だ。内部品質監査はきちんと受審し、社外審査の状況も見て欲しい。事務局は少数でやっていることが多いので、偶には激励も必要だと思う。
日本適合性認定協会(JAB)は日本を代表してISOに対応し、51ある審査登録機関を認定・登録し、審査員評価登録機関、9つの審査員研修機関を認定している。
ISOの品質システムを文書化し、実行し、記録して残し、改善するといったPDCAについて規定を満足しているかどうか、審査をしてもらって、認証取得となるが、一方で、審査機関の選び方は次のようなものがある。まず、親会社が取得していれば、同じ機関を使うのが一般的だ。さらに審査機関によって得意な分野があり、9000と14000の複合審査もあるので、そういうことが可能かどうか。審査員の質、サービス、費用ということも見る必要がある。現在の51機関の中には、認証停止をしているところがあるので注意が要る。
認証までのステップは、13段階ぐらいまであるが推進体制を築いたあたりでキックオフを行うところが多い。審査登録機関を決めるころにコンサルを入れて、スタートしてから1年ぐらいかかる。
対象人数や審査機関によっても異なるが、取得に関わる費用として、200人規模の会社で概ね3〜400万円ほどになる。その後、継続・維持に100万円程度かかる。
審査登録後は、通常年に2回の定期審査を受け、3年に1回の更新審査がある。また、従業員数に応じて、登録審査、定期審査、更新審査に必要な標準的な日数が異なる。
審査員になるには、JABの認定の審査員研修機関の主任審査員養成コースに参加して、試験に合格する必要がある。合格すると審査員補に登録される。これは毎年会費が必要だ。
本職でやる人はさらに、審査登録機関と雇用契約を結んで、企業に対する審査の実績を積み、審査員として合格する必要がある。現在、約1万人ほどの審査員補と、専業としてやっておられる4,000名ほどの審査員・主任審査員がいる。平均的な審査員は年齢60才ぐらいで、品質管理部門などの経験者で、第二の人生としてやっている。審査登録機関の契約社員で一匹狼的な人だ。したがって、優秀な審査員も多数いるが、駄目な審査員もいる。審査員で駄目だと思ったら、審査登録機関へ連絡することも必要だ。
審査員に反論すると合格できないとか、指摘は絶対的だという誤解があるが、企業と審査員は対等で良きパートナーである。したがって、指摘に納得できない場合は、意見をいうべきであるし、反論も問題ない。
認証取得を終えると、日常業務は日常業務と品質システムと分離したり形骸化したりすることがある。また、事務局やトップのリーダーシップが不足する事があるので、マンネリ化対策が必要だ。
世界的には、品質以外にも様々なマネジメントシステムがある。情報セキュリティーは、IEC(国際電気標準会議)とISOとの合同規格を設けている。安全衛生のOHSASやリスク管理、企業の社会的責任は、まだISO化されていない。現在は専門分野化が進んでいるが、これらはいずれ統合されるのではないかと思う。
いずれにせよ、品質システムの仕組みを取り入れることに成功した企業は、将来新しい規格が登場しても乗り切れると思う。
最後に、会社の紹介を少しさせていただく。当社はNTTオートリースと伊藤忠グループのセンチュリーオートリースが合併して発足し、カーリースのほか、全国7,000箇所にのぼる整備工場のネットワークを構築し、災害対策車や、幼稚園の送迎バスのような特殊車両も扱っている。全国に45拠点を有し、給油カードは3万箇所のガソリンスタンドで使用可能だ。顧客には、レンタカーも取り扱っていて安価にお貸しできる。個人向けのマイカーリースでは業界でトップレベルであり、是非、ご利用いただきたい。
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