テーマ:『わさびの本質を求めて』
日 時: 11月22日(火)12時30分〜14時00分
場 所: 名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者: 24名 |
スピーカー:
小林 一光(こばやし いっこう)氏
金印株式会社 代表取締役社長
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1 金印わさびの歴史
昭和4年、父元次が青果を扱う小林商店を開いたことが始まり。翌5年、生わさびの卸商に転業し、昭和8年に粉わさびの研究、製造に着手した。昭和27年に法人組織化し株式会社を設立、そして43年に業界初の純粋品「金印粉わさび」の開発に成功した。その後も新商品の開発を進め、昭和48年には超低温の中で加工することで業界初の生タイプ加工わさびを発売した。平成5年には、食品産業で最高の賞といえる農林水産大臣賞を受賞、企業は時代の要請に応える必要があるとの考えから、平成14年にISO-9001:2000の認証を取得、HACCPの適合証明も取得した。また近年、全国のさまざまな大学との共同研究を行い、わさびの健康成分「わさびスルフィニル」を独自の製法で抽出することに成功し、世界初のわさびの健康食品を誕生させるなど、商品を拡大してきている。
2 わさびの種類
わさびには本わさび(図1)と西洋わさび(図2)がある。本わさびは日本原産で、古くから渓流など(の流水中)に自生していた。本わさびは栽培方法によって、沢わさびと畑わさびに呼び分けられる。立派なわさびになるにはおよそ2年半を要す。日本国内の主要産地は、静岡県、長野県、岩手県、島根県など。当社は平成14年に本わさびの新品種「みつき」を開発した。その特徴は、香り・辛味が高い、 色が鮮やかで明るい緑色、収量が多い、畑栽培にも適する、わさびスルフィニルが多いなど。西洋わさびは、ヨーロッパ南東部原産の植物で、ホースラディッシュとも呼ばれ、 西洋料理ではローストビーフの付け合わせなどに使われている。日本では、明治以降に帰化植物になった。 国内で栽培しているのは当社だけで、網走地区の畑で栽培している。辛味成分は本わさびと同じ成分で、本わさびの約1.5倍の辛さがある。当社が開発した新系統の「白宝」は、西洋わさび特有の大根臭が少ないため、本わさびとブレンドしても本わさびの香りを損なうことなく、香り、辛味を兼ね揃えた生おろしわさびを提供することができる。
3 環境への取組み
収穫した西洋わさびには、葉、細根や泥がついている。従来これを残さとして廃棄処分していたが、当社では微生物の研究により、これらを発酵させて植物栽培用の堆肥に100%リサイクルすることに成功した。レッドアンデス(皮が赤いじゃがいも)などおいしい野菜作りに使用しているが、これを使った作物は、病気に強く、味も良くなる。
4 本わさびを食す
本わさびは、すりおろして1〜3分で香り・辛味のピークに達し、美味しく感じるのはその後10分程度。辛味成分は揮発性が高いため、 どんどん揮発してしまう。加工わさび製品の常温品は、食品添加物などが使用されており保存性はある。当社は、わさびの自然の風味そのものを大事にしており、「旬薬味」など鮮度を極力落とさない超低音製法により加工し、冷凍パックした製品を開発した。宅配の冷凍便ができたおかげで、我々の時代が来たと思っている。
5 わさびの機能性
民間伝承による利用法として、抗菌効果(カビ、大腸菌などの制菌・抗菌作用)、消毒、内服薬(食欲増進、健胃薬など)、外用薬(リューマチ、水虫など)。また新しく解明された機能として、解毒作用(解毒代謝酵素誘導作用)、抗がん作用(がん転移、発がん抑制)、抗酸化作用(活性酸素消去)、血液サラサラ効果(血小板凝縮阻害)がある。本わさび機能性成分「わさびスルフィニル」は、ブロッコリーなどよりも高い解毒作用を示す。わさび葉エキスは、コラーゲン生成促進、ダイエット効果などがある。これらの特長を生かして、2004年10月に健康食品「スルフィーK」、2005年11月には化粧品「サンスルフィー」を発売した。サンスルフィーは、わさび葉エキス配合、ナノバブル製法、防腐剤・香料・着色料無添加などの特長をもつ。
6 海外への展開と今後の取組み
当社では、1980年代からアメリカ市場へ進出しわさびの特性や正統な食べ方をPRし、生おろしわさびや小袋タイプの製品などを提供してきた。輸出先としては、南北アメリカ大陸から、アジア、オセアニア地域、そして現在は食文化の高いヨーロッパへと着実に市場を拡大してきている。特にヨーロッパでは、積極的な展示会への出展、現地料理店での実演、現地栽培指導なども行なっている。
今後当社としては、天恩(太陽)、地恩(緑・水)、人恩(人の和)、自然の恵みに感謝し、人類の健康づくりと世界の食文化の向上に貢献していきたい。そのため、本わさびの本質を大事にして、いかにうまく食していただくか(生鮮香辛料=本物志向、安全安心、美味しさ)を追求し、機能性を生かした良い商品(健康食品=内面の美容・健康、化粧品=外面の美容・健康)を提供していく。
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