株式会社リーダーズドメイン代表取締役会長
窪田経営塾塾主
窪田 貞三
〜社員の感度向上のヒント:10〜
『組織を活性化させる社員の育成』
<感度を向上させれば組織を活性化させる社員が生まれる>
* 今回のキーワード=“感謝”
感謝とは、「ありがたいと思うこと(*新明解国語辞典より)」 |
「活性化」とは、「壊す」ことから始まります。ではなにを壊すのか?それは固定観念や悪い意味での知識・経験・プライドといったものです。ナレ・ダレ・ツカレといった活性化を妨げる要素も同様に壊す必要があります。ではどのように壊したら良いのでしょうか?そして、その後どのように活性化へと結びつければ良いのでしょうか?
今回のキーワードは“感謝”です。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇<事例研究> N社(外食業)◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
N社という飲食店チェーンを経営する企業に、Mという社長がいました。M社長は、最近自社の組織が停滞し、業績が下降していることに悩んでいました。大阪万博ごろから急成長してきた外食産業ですが、時代の変化を適切に捉え、顧客の嗜好の変化やライフスタイルの変化に対応できない企業は成り立たなくなってきています。N社も同様、変化への対応を求められているのですが、創業以来N社を支えてきたメンバー達の経営感覚では通用できなくなってきているのが事実でした。もちろん若い社員だから変化に対応できるという簡単なことではありません。N社の問題点は、創業以来経営状態に大きな波はなく順調に経営を行って来たため、問題や課題に対する対応力に弱さがあったのです。そして、社内全体に危機感はなく、今後も現状のように毎日が過ぎていくという感覚が蔓延し、ある意味では「売れて当たり前」「売上げが上がって当たり前」「うちの料理はずっとファンが離れない」などという慢心があったのです。
ある日M社長は氣づきました。創業以来N社の経営理念は“感謝の心”という理念でした。しかし、いつのまにかその理念から離れてしまっていたのです。そのことに氣づいたM社長はN社活性化プロジェクトをスタートさせ、社員全員に「活性化案」を提出させることにしました。その後社員から活性化案が集まりました。内容は大きく二つに分かれ、若い社員達からの案は「新しい業態の開発」「新しい食材の仕入れ」「年功序列制の廃止」などといった案で、ベテラン社員達からの案は「昔からの業態を大切にする」「全員が経営者意識を持つ」「社員達の帰属意識を高める」などといった案でした。M社長は全社員の案に目を通した後に全社員に伝えました。多くの案をいただきありがとう。ただ、私が皆さんに一番考えてもらいたいことは、「理念に戻る」ということです。今後とにかく創業以来の理念を真剣に考えて理念に基づいた行動をしてください。その後皆さんからいただいた案を検討し採用したいと思っています。と。
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M社長は、現状の社員の意識に問題を感じたのですが、その社員たちをリストラするのではなく、もう一度原点から考えさせようとしたのです。 |
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そこには失望以上に、今まで頑張って来てくれた社員たちへの感謝の氣持ちがあったのでしょう。企業経営を行うためには、常に感謝という気持を忘れていけません。N社はその感謝という言葉そのものを理念にしているのにも関わらず、理念から離れた行動をし、結果的に業績を低下させてしまったのです。理念を持ち、額に掲げ、朝礼で唱和しても、その理念自体の本質を理解し行動に移さなければ理念を持つ意味はありません。また、理念自体に感謝の氣持ちを持つことが重要なのです。 |
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