テーマ:『アンデスから宇宙へ 』
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日 時: 9月8日(水) 12時30分〜14時00分分
場 所:名古屋ヒルトンホテル 9階 ことぶきの間
参加者: 23名
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スピーカー:
水野 範和(みずの のりかず)氏
名古屋大学大学院理学研究科 助手
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1 天文学とは
「天文学は世の中の役に立つのか?」とよく聞かれる。私たちは「宇宙の謎を解明したい!」という純粋な探究心から研究を続けているが、基礎物理学の多くはその起源を天文学に持っており、その研究成果は私たちの日常生活を支えている。決して無駄な研究をしている訳ではないことを始めに申し上げておきたい。
2 「宇宙の果て」とは
最近の天文学の関心事は、銀河および星(恒星)の誕生過程にある。それを解明することが、天文学の究極の目的である「宇宙の謎」を解く鍵となっている。
先日、宇宙の年齢は「137億年±2億年」と判断された。これはWMAP(電波望遠鏡を搭載した人工衛星)が捉えた電波を分析した成果である。このときの電波の分布図は宇宙が生まれて38万年経った頃のもので、現在私たちが観測可能な「宇宙の果ての姿」だといえる。
3 「なんてん」とは
「なんてん」は、約10年前、地球の南半球を天体観測するために名古屋大学敷地内に設置していた電波天文台を南米チリのアンデス山脈に移設したものである。その際、中部財界の方々からご支援をいただき、今もその感謝の念を忘れてはいない。
何故、日本から遠い南米チリに設置したのかというと、気象条件や利便性等、天体観測に適した地域は、実は地球上に3箇所しかなく、そのうち南半球にあるのがチリであったからである。
私たちはこの天文台で銀河系(天の川銀河)とマゼラン星雲に点在する暗黒星雲(星の誕生のもとであるチリやガスの集合体)を主な研究対象として日夜観測を続けている。
4 世界で一番宇宙に近い場所「アタカマ高地」 −「NANTEN2」から「ALMA」へ−
現在、「なんてん」を北に約600km離れたアタカマ高地に移設する作業を進めている。これは「なんてん」によるミリ波観測の研究成果を踏まえ、より高いレベルであるサブミリ波による観測が必要となったためである。これを「NANTEN2」プロジェクトと呼んでいる。このプロジェクトに必要なアンテナは世界最高水準の成型技術が要求され、かつ建設地が海抜5000mという過酷な場所であるが、現在その建設に全力で取り組んでいる。
一方、同じアタカマ高地を舞台に日・米・欧連携ビッグプロジェクトとして「ALMA」が進められている。これはハッブル宇宙望遠鏡の約10倍高い解像度を有し、日本も約250億円の巨費を投じて進めている。とはいうものの「ALMA」での研究活動は各国の研究目的や成果に基づいて観測時間が割り当てられるので、「NANTEN2」で大きな研究成果を出し、「ALMA」を存分に活用できるようにしていきたい。