テーマ:『
住宅業界での非常識からの発想
』
1 はじめに
ミサワホームは「住宅業界では非常識的な発想」を事業化することで業績を伸ばしてきた会社である。今回は、その「非常識」の一端をご紹介したい。
2 ミサワの「非常識」
(1) 第一の非常識「軸組を使用しない」
住宅は、土台、柱、梁を組み合わせて組み上げる「軸組工法」が一般的である。ところが、ミサワホームでは創業者・三澤千代治氏が発案した「接着工法」により、あらかじめ工場等で作られた木製パネルを接着剤で一体化していく。この工法により出来上がった建築物は「モノコック構造」となり、大変頑丈となる。モノコック構造は自動車や飛行機でも採用されている近代的な構造である。
(2) 第二の非常識「極寒の自然・南極大陸に家を建てる」
南極大陸は、極寒期には−50℃にもなり、風速毎秒50mものブリザードが一日中吹き荒れる非常に厳しい自然環境である。しかも昭和基地には大工等を連れて行くわけにいかないので、越冬隊員だけで建てなければならない。この極めて厳しい条件をミサワホームは見事に克服し、昭和基地のほとんどの建物を担当するに至っている。
(3) 第三の非常識「家を固定しない」
土台に固定しない家を開発したところ、常にバルコニーが太陽の方角に向く家(つまり一日一回転する家)を可能とした。ただし、残念ながら市販には至らなかった。
(4) 第四の非常識「家の寿命は『100年』」・第五の非常識「木は腐らない」
木造の家は、建築木材が腐朽することもあり、30〜40年に一度建て替えることが普通であるが、ミサワホームは「100年間」立て替える必要のない住宅を市販している。
というのも、建築木材を「含水率」が15%となるまで十分に乾燥させ、腐朽菌が発生しない状態で使用しているためである。これは、奈良・法隆寺に1300年以上前の建物がそのまま残していることと全く同じ理屈である。
(5) 第六の非常識「端木も使用する」
ミサワホームは端木を粉砕し、超微細な繊維レベルにしたものを、接着剤等で固めて建築部材として使用している。そのため、木材資源を無駄なく使用することができ、地球環境にやさしい家となっている。
(6) 第七の非常識「ペットボトルで家を建てる」・第八の非常識「家で発電する」
更なる地球環境への配慮として、ペット樹脂を部材に積極的に使用したり、太陽光電池を屋根の形状に沿って設置し、昼間使用しない電気を電力会社に売電できるシステムを導入している。
(7) 第九の非常識「燃えない木造建築を作る」
木造建築の最大の欠点は「火災に弱い」と考えられているが、モノコック構造は気密性に優れているため、火災時も燃えるために必要な酸素を外部から補給されず、自然鎮火することが多い。
(8)第十の非常識「苦情から逃げない」
建築・住宅業界には「売り逃げ・建て逃げ」ということがあった。しかし、私たちは苦情を解決することで新たな方向性を見出してきている。そのため、営業社員の名刺には自宅の電話番号を記載させ、いつでも対応できる体制を整えている。これは創業者・三澤千代治氏の重要な経験に基づくものである。
3 終わりに
今回は全ての「非常識」をご紹介することができなかったが、ミサワホームは数多くの住宅業界での「非常識」を克服し、ビジネスチャンスとしている。今後もこのチャレンジ精神を持ち続けていく。