テーマ:『企業不祥事と監査役』
|
|
3月9日(火) 12時30分〜14時00分
場 所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
参加者:19名 |
スピーカー:
伊東 賢二氏
中部冷熱株式会社 取締役社長
|
社団法人日本監査役協会ケーススタディ委員会が会員会社社長に対して実施したアンケート調査結果等を基に、監査役経験者である私の感想も交えてお話しさせていただく。
1 「企業不祥事防止と監査役との役割」社長アンケート調査結果
多発する不祥事への所感として、企業慣行と社会常識とがズレてきたためとの見方、内部告発で顕在化したためとの見方に賛意を表される社長が多く、また、仮に不祥事が発生した場合、会社トップ自らが先頭に立って説明責任を果たすべきだとの考え方に賛同される社長も多い。ただ、公表されているような不祥事は自社では起こりえないと答えている社長が6割もみえるのは、少し楽観的に過ぎるのではないだろうか。
不祥事の防止策、監査役に期待する役割に関して、監査役の経営監視機能を重視する意見が目立つが、経営トップとしては、まずは取締役会の監督機能を有効ならしめるよう努力するなど、自らが内部統制システムを構築する義務があることを忘れてはならないと思う。また、取締役と監査役との協働を期待したり、経営の妥当性についてまで監査役のチェックを期待するのは、監査役の役割について誤解している結果であると思う。社内情報通報制度に対する評価は比較的低いが、もっと評価されてよいのではないだろうか。
自社で心配している不祥事の種類についてはかなりばらつきが見られるが、経営トップの目の届かないところで発生することを心配する向きが多いように伺える。ただ、他の項目と比べて、この項目については回答を差し控えるとしている比率が有意に高いことが特徴的である。はっきりは言えないがやっぱり心配だということであろうか。
自社の監査役の状況に関する意見では、社長の認識と前年に調査した監査役の認識とで、大きな差がある。社長が思うほど、監査役自身は働きやすい環境にあると思ってはいないし、また働けてもいないと思っているということであろう。
2 企業不祥事の事例分析
ケーススタディ委員会は、最近の企業不祥事を分析して、(1)内部告発や消費者からの指摘により発覚したものが多い、(2)不祥事が明るみになった後の的確な情報公開が非常に重要、(3)経営トップの責任が強く追求される、(4)従前に比べて行政の対応がすばやくなってきているのが特徴的であると報告している。また、企業不祥事を(1)経営トップが関与する不祥事、(2)特定分野・聖域における不祥事、(3)企業文化・風土による不祥事、(4)事故・トラブルの4類型に分けて、内部統制からの検証を行っているが、その内容は経営トップにとっても役立つと思うので、ぜひ参考にしていただきたい。(月刊監査役482号)
3 不祥事防止と監査役
監査役は社長のために働くのではない。その役割は、株主のため、会社の内部統制システムが有効に機能しているかを確認し、問題があれば正させることである。内部統制システムの構築と適切な運用自体は代表取締役をはじめとした取締役サイドの責任である。
日本のコーポレートガバナンス体制は、平成14年度の商法特例法改正以降、委員会等設置会社と既存の監査役を設置する会社の2種類のうちからの選択性となった。どちらが有効かは、今後の制度間競争の結果に委ねられることとなったと言ってよいのであろう。
そういった中、日本監査役協会は「監査役監査基準」を改正し、「内部統制システムの整備状況の監査」を業務監査の中核に据えることとした。また、ケーススタディ委員会は、「不祥事防止・法令遵守のための監査役監査チェックリスト」を作成し、その中では内部統制の構成要素ごとのチェックポイントを示している。これらを一度ご覧いただくと企業経営の一助となると考える。(
http://www.kansa.or.jp/C-01.html
、月刊監査役482号)