【5年11月度 産業懇談会(火曜G)模様】

テーマ: 『 Create fan & fun ~10年先のヴィジョンに向けての人材育成を考える 』

  • 日  時:令和5年11月7日(火) 12時00分~14時00分
  • 場  所:名古屋観光ホテル 3階 桂の間
  • 参加者:32名

スピーカー:

写真:筧 惠理氏
筧 惠理(かけひ えり)
株式会社Beスタッフィング
代表取締役
写真:山下 聖主氏
山下 聖主(やました きよかづ)
株式会社Beスタッフィング
マネージャー

自己紹介・会社紹介(筧氏)

 一宮市に生まれ、引っ込み思案な幼少期であった。高校1年生の夏休みにアメリカに短期留学し、これを機に英語を勉強するようになり、ボストンの女子大学に入学した。しかし、1年で父親に呼び戻され、英会話の講師をして過ごした。22歳で上京し、添乗員となり、年間160日程度海外に添乗し、約40ヶ国に行った。その後、名古屋営業所の開設を命じられ、一人で立ち上げた。ここで、営業の仕事を学び、旅行会社に飛び込み営業をした。なかなか仕事が取れず、友人の勧めもあり、青経塾に入塾し、そこで学んだことを社内に展開し、団結力の強い組織を作り上げた。その結果、優秀な添乗員を集めることができ、5年目で80名の添乗員が在籍する名古屋で2番目の添乗員派遣会社となった。その後、2年間ブラジルに渡り、帰国後、元の会社に戻ってからは大阪で事務派遣の事業を立ち上げた。2022年に名古屋に戻り、一部上場企業の子会社で派遣事業をはじめる事となった。300名を派遣する規模にまでなったところでリーマンショックの影響を受け、規模を縮小して再スタートを切った。2010年に介護ホールディングスで派遣事業を立ち上げた後、2012年に派遣会社としてBeスタッフィングを設立した。女性が多く、懇親会や社員旅行などに子どもと一緒に参加できるのも当社の特徴である。
 40代の頃は登山とマラソンを趣味としていたが、年齢の経過とともにロードバイクに移った。第九のステージにも立っている。現在は公私とも充実した毎日を送っている。
 当社の現在の事業内容は中部の企業を中心にオーダーメイドの企業研修、EAP(社員のメンタルカウンセリング)、人事コンサルティング、組織診断を行っており、創業当初の人材派遣業務は行っていない。近年はハラスメント研修の依頼が増えている。7名の社員と約30名の講師・カウンセラーで売上を堅調に伸ばしており、1億円を目指している。
 新たな経営理念「ファンを共に創る~Create fan & fun」は何かあれば当社に相談したいというファンをつくるために何をすればいいか、カウンセラー・講師陣と共に考え築いていくという意味と楽しい研修を提供したいという意味を込めている。今後も経営理念に基づき、更に事業を拡大していきたいと思っている。

Beスタッフィングの研修について(山下氏)

 名古屋大学大学院航空宇宙工学科を卒業し、三菱重工業で航空機の品質管理・監査を経験した後、岐阜のアパレル系ベンチャーに勤務し、筧氏と出会い本年3月に当社に入社した。現在はコンプライアンス、ロジカルシンキング、PDCAなどの講師を担当している。
 今回は将来求められる人物像や10年先に活躍できる人材育成について、Aiを活用するスキル、新たな発想を生み出すスキル、ヒューマンスキルを基に考えていきたい。
 経済産業省が出している未来人材ビジョンにおける求められる能力は56項目挙げられている。この項目のうち、特に必要とされる項目は2050年までに大きく変化するとされており、米国の経済学者ロバート・カッツ氏によると「テクニカルスキル(専門知識・技術)」「ヒューマンスキル(やり抜く力=GRIT)」「概念化スキル(発想力・思考法)」が将来求められる重要な要素となる。
 テクニカルスキルの事例として、AIを使いこなす力(プロンプトエンジニアリング)について説明したい。AIはプロンプトと呼ばれる指示に基づいて文章や画像を生成する。このプロンプトによって、AIの働きが変わる。AIに役割、制限、前提を与えなければ良い結果は得られない。生成AIを効果的に使うために必要な能力である。
 概念化スキルの事例として、新しいサービスを考える時に過去の成功事例にとらわれてしまうと、上手く行かないことが多い。既存のやり方に拘らず、本質的に考えて新しい価値を創造できる能力が重要である。粘着力の弱い接着剤をポストイットに活用するなど解釈の仕方(思考方法)で行動が変わるのである。
 ヒューマンスキルは人間的なスキルで、やり抜く力(GRIT)であり、情熱、粘り強さ、謙虚さから成立し、この能力が高いと才能やスキル以上に成功する人材が育成されると期待されている。GRITの要素には、楽観思考と成長思考がある。楽観思考は、否定をするのではなく、逆風を肯定的な視点でとらえる思考である。成長思考は、才能やスキルがあるから成功するのではなく、努力すれば成功する余地があると考える思考である。GRITを伸ばすためには、「興味」、「練習」、「目的」の3つの要素が重要である。すなわち、興味を持ったことを、目的をもって、練習することが成長と成功の鍵なのである。GRITを測定するためにはGRITスケールというツールがあるので活用して欲しい。それぞれの要素についてご紹介する。興味は「実体験型」「知識獲得型」「驚き発見型」「思考活性型」の4つに層別され、それぞれの興味が繋がり、思考を活性化させ新たなものを生み出している。練習は、何かあった時に癖付けをしていく習慣であり、If-thenプランニングと言われる方法が用いられる。やめたい習慣がある場合には、代替If-thenプランニングが有効である。目的はイソップ童話のレンガ職人の話に代表されるように、作業、役割、目的の順で同じレンガ積みであっても、意識によってやりがいの感じ方が異なる。GRITはすぐに伸ばせるものではなく、継続的に取り組むことが重要であり、自社においては風土づくりに加えて、研修や社外活動を積極的に取り入れる事で加速する。
 これらを踏まえて10年先の人材育成について、考えていきたい。この10年の間に仕事の場面で重視されることは変わってきた。10年前はトップダウンや前例踏襲型であったが、VUCAの時代の現在はコンプライアンスや対話が求められるようになった。10年後は人間らしく働くこと、すなわち楽しさが重視されるようになるだろう。この楽しさを得るためには、先に述べた興味、練習、目的が重要である。新入社員の意識の変化も大きく変わり、一人の人間として認められ、楽しく働くという視点が重視されるようになった。この変化を踏まえ、将来求められる人材を育てるために、ジョブクラフティング(興味の醸成)、フィードバック(練習の継続)、社外活動の体験(目的の発見)が必要となる。
 10年先のVISION達成に向けて、どのような人材の育成が必要となるか、皆さんが抱える課題があれば、是非当社にご相談いただきたい。

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【5年11月度 産業懇談会(水曜第2G)模様】

テーマ: 『 名前だけの社長、どん底からの20年の歴史 』

  • 日  時:令和5年11月8日(水) 12時00分~14時00分
  • 場  所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
  • 参加者:18名
スピーカー:
今津 智弘(いまづ ともひろ)
株式会社イークリエイト
代表取締役
写真:今津 智弘氏

会社紹介

 当社は資本金20百万円の企業で、パート社員まで含めると97名の従業員が在籍しており、久屋大通の近くに事務所を構えている。ITエンジニアの派遣事業とWebサイトの制作事業を中心に、太陽光発電事業、子ども向けの事業も手掛けており、企業主導型保育事業(保育園)や体操教室を展開している。当社の仕事として3つの事業部(太陽光発電事業を除く)をご紹介する。インターネットサービス事業部では、地元の大手企業向けのWebサイトを利用した業務やブランディング、マーケティング支援、外国人向けの翻訳アプリサービスなどを行っている。ICTサービス事業部では、客先のニーズに応じたシステム開発支援とともに今後必要となる新たなシステムの導入ができるよう業務を進めている。知育事業部では2021年3月に「みるきーほいくえん」を開園した。一軒家をリフォームした園では、0~2歳児を対象に定員10名のきめ細やかな保育を行っている。また、フランチャイズでネイス体操教室を県内に展開しており、本年で6店舗に拡大し、子どものココロとカラダの成長を支援している。

名前だけの社長が今に至るまでの20年の歩み

 私は現在46歳で、妻と6歳の娘がおり、お酒とカラオケが好きである。24歳までメジャーデビューを目指し、バンド活動に明け暮れていたが、夢は叶わず。就職活動もしていなかったため、伯父が設立したIT会社に就職をした。そこで、NTTデータのメンバーとして病院の電子カルテを導入するSEとして働くこととなった。同社には、私を仲間として受け入れ、居場所を作っていただいた。大変感謝しており、私がいてよかったと周りの人に思っていただけるよう、全力で仕事をした。次第に頼まれごとが増え、懸命に仕事をこなし、レベルも上がった。今でもNTTデータのメンバーからは戦友と呼ばれ、大変助けられている。この経験が、当社の経営理念「わたしたちに関わるすべての方たちをSMILE に。そしてわたしたち自身もSMILEに。」に繋がっている。今でも頼まれ事は当たり前ではないと思い、ありがたい(有難い)と考え、仕事をしている。
 その後、26歳の時に伯父から会社をやってみないかと声を掛けられた。伯父がやっていた失業者向けのプログラミング教室の卒業生の働き先の社長として同年代の私が適任と伯父が思ったのだ。これに対し、私は何も考えずに了解し、全て伯父に任せきりで会社の名前も手続きも何もせず26歳の2003年12 月24 日イークリエイトを資本金100万円で設立した。
 その後も会社のことには無関心で、病院のSE として現場の仕事を頑張っていたが、給料が振り込まれてこなくなった。この時はどのような仕組みで給料が入ってくるのか理解をしていなかったのである。また、伯父の会社の教室を卒業した素人の社員をどんどん採用したが、仕事が増える事もないので、赤字状態になった。次第に個人補償の借金が増えていった。そこで、伯父と共通の知り合いである社長に相談したところ、「お前が悪い。だって社長だろ。」と言われた。名前だけの社長だと思っていたので、意味がわからなかったが、これを機に勉強しようと思い30歳で経営者として勉強していくことを決意し、愛知中小企業家同友会に入会した。ここで学び、経営理念を作ったが一向に業績は上がらなかった。
 2007年以降、資金繰り、営業、現場の仕事、中小企業家同友会での勉強をフル回転で対応したが、一向に業績は上がらなかった。父に500万円借りて、850万円に増資をしたが、資金繰りのために借りた500万円が翌日に消えてしまった。自信も自己肯定感もなくなり、どん底の状態で、次第に自分自身は空っぽの状態となり、周りの方から教えを乞うとういマインドとなった。すると、人生の転機が訪れる。2010年11月(33歳)に1000人規模のフォーラムに参加した。そこでできた友人から彼の会社をV字回復させたという榎本計介氏を紹介してもらい、4月から始まる榎本氏のセミナーに参加することにしていた。しかし、その前に倒産の危機が来てしまった。榎本氏に相談したところ「5万円だけもってこい」と連絡が入り、「自己破産のうまいやり方を教える」とのことであったが、自己破産したら、会社が倒産し、社員が露頭に迷ってしまうので、受け入れられなかった。そこで考えたのは家賃などの支払いの延滞や停止である。各所に頭を下げて出て行くお金を減らしたが、それでも十分ではなかった。そこで社員全員を集め、雇用を絶対守る事を前提に、給与を一律カットさせて欲しいと頭を下げたところ、快く受け入れてくれた。その結果、関係する方の様々な助けもあり、創業8年目の2011年になんとか初の黒字を達成した。
 2012年に榎本氏流のMBAの卒業論文(自伝による振り返り)を書いたときに、これまでの自分の行動は教師だった両親への遅れてきた反抗期によるという事、しかしその反面、真面目にコツコツやっている人を応援したい、絶対に雇用を守ると言った思いは両親(教師)と同じであることにも気付いた。また、榎本氏から「いまちゃんの会社は、頑張って売上を上げている人の売上を社長が搾取して、売上が上がっていない人に渡す構図」、「頑張って売上を上げている人は報われない会社」と言われ、「雇用を創り続け、全社員がプロフェッショナルになる(どこに行っても活躍できる人材を創出する)」ことをビジョンにし、「利益を出すこと」にコミットをするに至った。これ以降自分の意識も変わり、会社は利益も出し続けるようになった。
 2013年、榎本氏のご縁で知り合った、大池運送という老舗の運送会社の社長から2000万円を貸すとの連絡があった。当時は利益が出ているとはいえ、まだ資金状況は苦しかった。それを知る社長の「健全な状態で経営をせよ」という想いからの厚意で、ほぼ永年のかたちで借り受けた。おかげで資金繰りに苦慮することなく事業に集中できるようになった。その後派遣業法の改正などもあり、借入金を資本金にし、大池運送の子会社となった。大池運送の社長の顔に泥を塗る事が絶対にできないので、きちんと利益を出した。2019年、大池運送がホールディングス化するにあたり、大池運送の300人のドライバーが、派遣業である当社に移籍する必要が出てきた。通常なら選択権のない子会社だが、社長からの打診を受けて業態も違うドライバーの300人の雇用を守る事が困難と判断し、資本金を買い戻し、独立企業となった。
 2020年新型コロナウイルスのまん延により、エンジニア派遣の売上が30%低下し、大変厳しい経営状態になったが、この現象は予想済みだったので、会社の経営方針を生存対策に切り替えて、なんとか乗り越えた。その中で、保育園の運営をやらないかと知り合いから話をいただき、即答した。その結果、先の「みるきーほいくえん」を開業する事となった。2021年に事業再構築補助金の存在を知り、予てから「カラダとココロをつくる」という経営方針に共感していたネイス体操教室の愛知県での開業を決意し2店舗分の補助金が採択た。その後、矢継ぎ早に開校しており、生徒数も増え利益も出しており、やってよかったと感じている。

最後に

 コロナの中で、腸内環境を整えたり、全力のラジオ体操やマインドフルネスをするなど、多様なココロとカラダづくりを実施し、エネルギーを蓄えた。 この20年を振り返るとマインドが大切であるということに気づくことができ、その様な環境に身を置けていたことが分かった。また、当たり前の事はなく、全てがありがたい(有難い)ということも再認識できた。最近は父にも感謝し、積極的にお墓参りをしている。
 今後とも、「いまちゃん」と呼んで、会社とともにご愛顧いただきたい。

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【産業懇談会「代表幹事講話」ならびに「新年合同懇親会」のご案内】

 毎年恒例の産業懇談会4グループ新年合同懇親会を、下記の通り開催いたしますのでご案内申し上げます。
 本年は、天野源之筆頭代表幹事からご講話をいただきます。また、年の初めに、産業懇談会メンバーの皆様に親睦を深めていただきたく、あわせて新年合同懇親会を開催いたします。
 是非とも多数ご出席くださいますようお願い申し上げます。

日時
令和6年1月25日(木) 17:30~20:30
17:30~18:40 天野筆頭代表幹事のご講話
19:00~20:30 新年合同懇親会(着席ビュッフェ)
場所
名古屋マリオットアソシアホテル Tel:052-584-1111
講演会:16階 タワーズボールルームⅠ
懇親会:16階 タワーズボールルームⅢ
講話演題
『経営雑感 “中堅企業の生き残り”』
懇親会費
15,000円(開催後、請求させていただきます。)
※講演会のみご出席の場合は会費不要です。
ご案内先
代表幹事および産業懇談会会員の皆様
その他
お申し込みは1月12日(金)までに会員専用ページよりご登録をお願いいたします。お申し込み後1月22日(月)までにお取り消しのお申し出なくご欠席の場合は、会費を申し受けますので悪しからずご了承ください。
本件連絡先
中部経済同友会事務局 担当:山本・廣瀬・藤原
Tel:052-221-8901 E-mail:cace-seminar@cace.jp

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【2月度産業懇談会のご案内】

 2月度産業懇談会は、下記のとおり開催いたします。
 定員は引き続き、先着40名を目安に運営します。
 何卒、ご理解・ご協力賜りますようよろしくお願い申し上げます。

グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 集合場所
火曜グループ

富田 茂
広井幹康
深田正雄

2月20日(火)
12:00~14:00

『企業メンタルケア リーダーのメンタルケアの必要性』
株式会社GUTS PLUS 代表取締役
心理相談室こころの保健室 メンタルケア心理士
中村 琴姫 氏

名古屋観光
ホテル
3階 桂の間

水曜第1グループ

淺井博司
足立 誠
落合 肇

2月21日(水)
12:00~14:00

『コーヒーの基礎知識と美味しい淹れ方』
ニューライトサービス株式会社 代表取締役 淺井博司氏のご紹介
UCCコーヒープロフェッショナル株式会社
名古屋支店 支店長 矢野 貴士 氏

名古屋観光
ホテル
3階 桂の間

水曜第2グループ

大倉偉作
香川裕子
高見祐次

2月14日(水)
12:00~14:00

『最新の採用市場動向』(仮)
パーソルテンプスタッフ株式会社
執行役員本部長 中部営業本部 鈴木 博之 氏

若宮の杜
迎賓館
1階 橘の間

木曜グループ

河村嘉男
中林直子
吉田憲三

2月1日(木)
12:00~14:00

『エネルギーと安全保障』
双日株式会社
中部地区管掌兼名古屋支店長 片岡 昇 氏

名古屋観光
ホテル
3階 桂の間

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【コラム】

コラム1 【さっかの散歩道】 No.66

長瀬電気工業株式会社
代表取締役 屬 ゆみ子

『 電線、ありません… 』

 10年に一度の寒波がやってきた。明日から年内最後の北海道だというのに、旭川~富良野には大雪警報が出ている。レンタカーで千歳空港から向かうにしても旭川から向かうにしても峠を越えなければならないので、電車で移動して、現地はタクシーチャーターかな…と思っていたら、耳寄り情報が聞こえて来たー新千歳空港からスキーバスが出ていて、富良野のスキー場まで直行しているーこれは渡りに船。乗り換えの面倒もないので早速申し込んだ、のだが、道内の国道では、ホワイトアウトと事故であちこち散発的に立ち往生が起こっているらしい。ま、そうなったら電車に乗り換えるとして、寒波の間隙を縫って現地入りをすることにしよう。
 寒波が来たら、とにかくひきこもるのが鉄則だ。事前に食料を買い込んで、できるだけお出かけはしない。もう一つ、停電に備えること。着雪や暴風雨で電線が切れてしまったら、家の中に居ても一気に厳冬の山小屋に取り残される状態になる。煮炊き用のカセットコンロ、ろうそくなどの間接照明は必需品だ。通常インフラ復旧まで2日から長くて1週間以内なのだが、この冬は、皆さんお気を付けください。

写真:電線

 電線がありません!!!

 電材商社は血眼になって電線を探している。そもそもこの8月くらいから雲行きが怪しくなってきていた。九州と北海道の大型半導体工場建設と、万博用に大量の電線が囲い込みにあっていて、動力、高圧用の電線から品薄になりつつあり、来年夏まで工事の予定がびっちり入っていた弊社は、とりあえず必要な分だけでも確保と走り回っていたのだが、ついに底をつき始め、それこそ建屋用の細い電線ですら見当たらなくなり、電材屋の倉庫は空っぽ、日本各地の電設工事会社から「電線ありませんか??」の問い合わせがひっきりなしだという。すでに中小零細の下請け会社の倒産、一人親方の廃業なども増え始めたという。この状況を国は把握しているのだろうかと思い、とりあえず、中小企業庁と経産省にメールをした。中小企業庁の反応は意外に早く、すぐ経産省と問題共有をするとの返事。そうこうしているうちに、電線工業会からのお知らせ
「最近品薄なので、必要以上に発注しないで」
なんとお門違いな発言。必要だから、明日の工事に必要だから発注している。余力でもって工事を回している大手さんと、我々中小では仕事のサイクルが違うのだ。その後の発表では
「納期が決まらないので受注ストップします、増産体制に入るので電線の余剰が出る6月ころまでオーダーしないで」
 正気でそんなこと言っているのだろうか?電線がなければ工事ができない、工事が出来なければ収入がない。6カ月も我慢できる設備屋がどれほどあるのというのか?早々に補助金、救済金などの手当てを打たないと、コロナ借り入れの返済も相まって、年明けあっという間に国内から電気設備業者が半減するだろう。
 こんな状態でもし大きな災害が起きたら、その復旧に必要な電材と人手の確保が困難になるのではないだろうか?そんな危機感をぬぐえない私が、単なる心配性で済めばいいのだが…。
 以前にもお話したのだが、電気は人体に例えるなら血流だ。どんなに血液を作っても、そこに血を流す血管がなければ血は通わない。同様にどんな立派な箱を作っても、そこに電気が流れなければ、ただのオブジェに過ぎない。半導体工場が稼働して、収益を上げる前に目の前の工事屋さんが消えてゆくのは本末転倒ではないだろうか。
 電気設備の職人は工事現場でも扱いがひどく、長老の工事士が建屋現場の新人に「おい!電気屋!」とパシリ扱いされることなど日常茶飯事(最近は減ったようだが)で、そんなこともあって先代は、建屋の仕事を一切断り、工場配線をメインの仕事にしたということも聞いた。一番ひどいエピソードは、翌日使う電材と道具を、現場の隅に準備して帰ったのだが、当日現場に行ってみると、それがコンクリートで固められていたことがあったという。

 この電線騒動は、一般の皆さんには、遠い縁のない話に思われるかもしれないが、近くにある完成間近の注文住宅が何軒かと、竣工近いビルが、電線の入荷待ちで工事がストップしている。これが生産工場の現場で工事待ちになったりしたら、一気に生産性が下がる。末端の血管で起きている血流のストップは、徐々に全身に影響を及ぼすことを懸念するばかりだ。
 こんな話を酒飲み話で友人にしたら「自分たちはどう備えればいいですか?とりあえず延長コードとか買っておいたほうがいいですか?」大爆笑!!!!さすがに延長コードを買っておいても役に立つかどうか…。でも電気が不通になるということは、災害に備えるのと同じこと。災害の対処はまず自助からなので、延長コードは別として、その気持ちは大事。
 明日の飛行機は何とか飛ぶとして、帰りの寒波で足止めに合っても乗り越えられるように、延長コードではなく、携帯のバッテリーを余分に持参しようと思っている。

 今年は自他ともに、心がささくれることもありましたが、なんとか年の瀬を迎えることができました。会友の皆様との心温まる交流に感謝しつつ、皆様には、よいお年をお迎えになりますよう!!

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コラム2 【師、曰く】 No.31

妹尾 鷹幸(ペンネーム)
(株式会社構造計画研究所 名古屋支社長 妹尾(せのお) 義之)

ペンネームは、恩師、田坂広志先生の多重人格マネジメント、作家人格の名。心に鳴り響く言葉を今回も一筆。

『 はい、ありがとう、すみません 』

 「はい」「ありがとう」「すみません」、愛のことばで ひと づくり

 心と体をすこやかに、笑顔で働き いえ づくり

 海と空を美しく、みんなの力で まち づくり

 これは、蒲郡市民憲章(三つの誓い)である。先月、東三河懇話会の東三河産学官サロンに参加し、有難いご縁を頂き二次会にお誘い頂いたのだが、蒲郡市民は、幼少にこの市民憲章を学校で摺り込まれ、多くの市民がこの市民憲章を暗唱できると言う。私は、昨年8月より、蒲郡の地に根を下ろすようになって間もなく、この市民憲章を知った。冒頭の一節から、なんと素晴らしい市民憲章かと感動した。知らず知らず覚えていたので、「私も暗唱できますよ」と言うと、数人の市政の方々と一緒に唱えることになった。皆さんの揃った声と同じく、すらすらと暗唱できた。これには、市政の方々も驚かれたようだった。

 田坂先生は、折に触れて、成長するためには「素直さ」が大切だと、日々の「感謝」と「全託」が最も大切な祈りであると、言われていた。感謝は言うまでもないが、全託とは、大いなるものに全てを託すという思いである。自分自身の望みや願いといったことではなく、目的に向かって邁進し尽力し全身全霊を賭していても、最後は大いなるものに全てを委ね託すという「謙虚さ」のことである。謙虚さとは、謝罪の言葉だけではないが、誤った時に「すみません」と素直に自らの非を認める気持ちも、謙虚さから生まれるものである。だからこそ、「はい」「ありがとう」「すみません」という、素直さと、感謝と、謙虚さを、冒頭に掲げた「愛のことば」に、心打たれたわけである。そして、愛のことばこそ、人を創る大切なものだと思う。

 2番目のフレーズも、私の心を射た。心と体をすこやかには、私自身が20年間で100号を執筆した健幸新聞 Coffee Break に掲げたテーマだ。ちなみに、健康は身体の健やかさを意味するが、心の健やかさも込めて、私は「健幸」という言葉にしている。感謝と謙虚さの全託のなか幸福を感じ、「笑顔」で働くことは、大切なことだと心底思う。そして、3番目のフレーズ、海と山と空の自然に恵まれた蒲郡、その美しい町をみんなの力で創っていく、まさにこれからの連携や協力の時代に相応しいではないかと、これまた心底思うのである。この蒲郡市民憲章は、私の蒲郡愛をさらに深くするものだったのである。

 今年一年も、感謝と全託の修行を続けてきた。来る2024年も、「はい、ありがとう、すみません」の「素直、感謝、謙虚」をもって、一年を大切に過ごしたいと思っている。  修行は続くよ、どこまでも。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

写真:三河大島
(蒲郡の竹島と三河大島)

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コラム3 【げんき通信】 No.4

学校法人佑愛学園
愛知医療学院短期大学
リハビリテーション学科理学療法学専攻
助教 濵田 光佑

『 「座りっぱなし」は寿命を縮める? 』

 近年、「座りっぱなし」が健康に与える影響については予防医療、公衆衛生的側面から多く指摘されています。厚生労働省は日本人の平日の座位時間が世界20か国の中で一番長く、1日7時間程度とされています。これは20か国の平均より約1時間程度も長い時間となっています。それでは座位時間が長くなると身体にどの様な影響が出るのでしょうか。複数の研究では、肥満、糖尿病、心疾患、脳卒中、がん、うつ病の発症との関係性や認知機能低下と多岐に渡る健康状態への影響が指摘されています。そして、なんと日中の座位時間が2時間増えると死亡リスクが15%増加することが明らかになっています(T Koyama et al,2021)。
 ところで、「座りっぱなし」の何が健康状況を悪化させるのでしょうか。その主要な要因とされていることは、座位を長時間継続することによる下半身の筋活動の低下です。全身の中でも総量が多い下半身の筋活動が減少することで、全身の血流循環が滞り、代謝機能の低下に繋がるとされています。
 それでは、私たちはどの様な対策をすればいいのでしょうか。もちろん、一番に挙げられる対策としては、椅子に座る時間を1分でも減らし、下半身の筋を活動させることです。よく提案されているように習慣化している通勤等の行為を見直し、少しだけでも歩く時間を増やすことなどはもちろん有効です。そして、一度に長時間の座位を取ることを控えたらどうでしょう。作業に集中すると時間はあっという間に過ぎてしまいますが、20~30分に一回は立ち上がり、歩くことが推奨されます。もし余裕があれば、より下半身の筋活動が促進される片足立ちやスクワットなどを取り入れることも有効です。
 この記事を読まれた皆様、早速ですがその椅子から立ち上がって、少しだけ外の空気を吸いに散歩してみてはいかがでしょうか。

イラスト:ハイキングする男女

-学校法人佑愛学園は2024(令和6)年4月、愛知医療学院大学を開学いたします。-

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