【5年9月度 産業懇談会(水曜第1G)模様】

テーマ: 『 ニッチトップ企業・表示灯のビジネスモデル~その現状と将来~ 』

  • 日  時:令和5年9月20日(水) 12時00分~14時00分
  • 場  所:名古屋観光ホテル 伊吹の間
  • 参加者:13名
スピーカー:
徳毛 孝裕(とくも たかひろ)
表示灯株式会社
取締役社長
写真:徳毛 孝裕氏

自己紹介

 私は、1966年生まれ、広島県福山市の出身である。徳毛姓は全国に500名程度といわれ、広島県に多い姓である。大学入学前の仲間と「予備校研究会」を立ち上げ、受験参考書に関する書籍を出版した。1990年大学卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)に入社、NTTの分割によりNTTコミュニケーションズに移り、ニューヨークにも勤務した。2005年にはNTTドコモに異動、NTTグループの締めくくりはNTTドコモ東海支社である。2020年8月に縁あって表示灯株式会社に入社し、現在に至る。旅行が趣味であり、コロナ前は年に1回は海外旅行に出かけていた。

表示灯とは

 当社の主力事業は主要な駅周辺に掲示されている広告を伴う周辺地図である。バス停への設置からはじまり、現会長の吉田大士氏と副会長の栗本肇氏が創業した会社である。鉄道の駅への参入は、1967年の名鉄上飯田駅に始まる。地図に掲載されている広告が事業収入となっており、少しずつ事業を拡大してきた。
 不負(ふまけ)という社訓が創業者により示された。これに続いて、「逃げないこと、あきらめないこと、これは根気であり、それは努力である」という言葉が続く。この精神は、創業者がホッケーのゴールキーパーをしており、ゴールキーパーが逃げないで諦めずゴールを守れば、負けることはなく、得点すれば最後は勝つという信念によるものである。勝つことにこだわるのではなく、負けない事で勝ちを得る事に主眼を置いたものだ。
 創業当初は地図・広告は手書きであったが、今はコンピューターを活用し、製作されている。印刷したものを後ろから照らすものが多く、オフィスには印刷設備が整っている。現在では、デジタルサイネージを使うものも増えてきている。
 地道な活動を積み重ねコロナ禍の前に過去最高益を出したことも好機となり、東京証券取引所第2部へ上場し、私もイベントで鐘を鳴らすことができた。当初は3,000円を超える株価をつけたが、次第にコロナの影響を受け、現在は1,400円台後半で推移している。引き続き努力を重ね、上場当時の株価に引き上げていきたいと考えている。
 当社は1967年の2月に創立され、現在は従業員500名弱の会社となっており、東京と名古屋に本社を置き、全国の主要都市に支社・支店を置き、各地で事業を営んでいる。端的に言えば広告代理店であるが、先に述べたように普通の広告代理店とは事業モデルが異なっていることがニッチトップと言われる所以である。
 当社の強みは3点ある。1つは強固な顧客基盤であり、多くのお客様がスポンサーとなっている。全国で7万件ものお客様が当社と長いお付き合いをいただいている。次に自社完結の生産・開発体制があげられ、迅速な保証体制など責任持った対応ができる。3点目は、公共性の高い独自モデルである。皆さんに感謝される事業を営みたいという創業者の意思が今のビジネスモデルを形成している。
 地図がベースになっているため、当社は事業を社会インフラの一部と捉えている。色覚障がいの方でも見やすいデザインや避難場所などできるだけ公益性の高いものを表示できるよう自治体と連携した地図を作成している。
 当社は3つの柱で事業を展開している。まずはこれまで説明してきた地図に広告を掲載する当社の主要事業であるナビタ事業である。大きな広告ではなく小さな広告を並べる連合広告を扱うものが多く、広告単価を下げ、多くの方が広告掲載をできるようにしている。2点目はアド・プロモーション事業で、これは一般の広告事業と同じである。競争が激しい事業ではあるが、お客様のニーズに応えられるよう対応している。3つ目が、屋内外の案内看板や場所の表示などを手掛けるサイン事業である。
 代表的なナビタ事業のビジネスモデル(ナビタスキーム)を紹介したい。駅や自治体などのロケーションオーナーは本来自費で案内表示を作成する必要がある。これを表示灯の費用を使って案内表示をすることにより、ロケーションオーナーにメリットが発生する。案内表示には協賛スポンサーを募集する。協賛スポンサーは少額で案内表示に広告を掲載することができ、地図にも併記されることから立ち止まって閲覧される機会も多く高い広告効果が期待できる。また、広告だけではなく地域貢献の観点から参加する企業もある。結果として、当社、ロケーションオーナー、スポンサー、利用者のそれぞれにメリットが生じ、ニッチトップと呼ばれるビジネスモデルが成立している。これは創業時からのビジネスモデルであり、駅や自治体だけではなく、神社仏閣等にも採用されている。また、アナログ的なビジネスの印象を持たれるかも知れないが、360°画像やバーチャル動画などデジタルの活用も始めている。

表示灯の現在

 現在、株価の水準はPBRが1を下回っており、PBRを1に近づけるべく、利益の向上をはじめとする企業努力を積み重ねている。直近で、PBRは0.96程度になってきており、目標の達成と維持を目指している。今年度の第1四半期の決算では、ナビタ事業を中心に少しずつ経営が上向いてきており、この動きを崩すことなく事業を進めていきたい。
 今後の事業の成長に向けて、先ずは皆さんに当社の事業を知っていただくために、コーポレートサイトをフルリニューアルした。
 また、社内活性化のために、全社表彰式を3年ぶりに再開し、全国で活躍した社員を表彰し、お祝いしている。飛び込み営業が基本となる営業社員の苦労をねぎらう目的もある。
 病院や市役所などで利用される番号案内事業を西菱電機株式会社より譲り受け、当社のビジネスサイズの拡大を図った。また、展示会にも出展し、広く知っていただく活動も展開している。緊急時に避難所へ円滑に案内するナビアラート事業も開始しており、4つ目の事業となるよう進めている。多言語で免税店の案内をするウェブサイトにもクーポン等をつけ、インバウンドの購買意欲向上に貢献している。また、CSR・ESG活動にも力を入れている。

表示灯の将来

 これまでのビジネスはリアルが主体であったが、今後いかにデジタル・バーチャルなビジネスに舵を切るかが、課題である。単にバーチャルにするのではなく、全国4,000か所もあるナビタを活用しながら、リアルを強みにしたビジネスを展開していきたい。デジタルマップとの使い分けも明確にし、利用者やロケーションオーナーへのナビタの活用の促進も進めていく。7万件のスポンサーの方へ新たなサービスを提案し、ビジネスの拡大を図っていく。ナビタの掲載料は安価であるとともに、社会的信頼も得ることができるという点は是非知っていただきたい。地域密着型であるため、地元の中小企業が主要顧客であるが、サイン事業を通じ、規模の大きなお客様とのビジネスも進めている。既存事業をベースに新事業を創出するとともに、M&Aなどを実施し、成長を図っていく事も検討している。
 人を財産と捉え、賃上げや働き方改革、女性活躍等の人材マネジメントを通じたモチベーション向上も図っていく。
 社長室にはタイムカプセルが2014年より設置されている。当時の幹部が当社のありたい姿をカプセルに入れ、100周年に開封することになっている。100年先に当社が成長し、タイムカプセルが開けられるような企業になっていきたい。社長就任時に幹部とも、その様に意識を合わせた。

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【産業懇談会4グループ合同懇親会模様】

  • 日  時:令和5年10月4日(水) 17時30分~20時00分
  • 場  所:名古屋観光ホテル 3階 那古の間
  • 参加者:75名
  • 公演者:室内楽集団レーベインムジーク(代表 桑野郁子様)

 今年度の産業懇談会 4グループ合同懇親会は水曜第1グループの企画で、室内楽集団レーベインムジークの皆様をお招き、「室内楽演奏会」を開催した。
 河村世話人代表の開会挨拶、足立世話人による公演者の紹介に続いて、ピアノ、バイオリンの二重奏「チャルダッシュ」により演奏会の幕が開けた。今回の演目はピアノ三重奏による名作映画「サウンド・オブ・ミュージック」「ニュー・シネマ・パラダイス」の名曲メドレー、今回の為に特別にアレンジいただいた弦楽四重奏による懐かしのヒットメドレー(「高原列車は行く」「鉄腕アトム」「すみれの花咲く頃」他)、メンデルスゾーンの弦楽八重奏曲1楽章と4楽章といった非常にバラエティに富んだもので、我々のために特別にご準備いただいた。会場全体を活かした迫力のある演出や優しくも力強い演奏に参加者一同魅了された。アンコールでは、10月6日にイタリアへ出発する海外視察団にプッチーニ作の歌劇トゥーランドットより「誰も寝てはならぬ」が贈られた。最後に、天野代表幹事、宮﨑代表幹事より花束贈呈が行われ、演奏会が終了した。
 その後の夕食懇親会は、4年ぶりに着席ビュッフェで、奏者を交えて多くの会員が交流できた楽しいひと時となった。

写真:桑野郁子氏
代表 桑野郁子様
写真:楽団員が「誰も寝てはならぬ」を演奏している様子
全員揃っての「誰も寝てはならぬ」圧巻でした
写真:楽団員と天野代表幹事、宮﨑代表幹事
レーベインムジークの皆さんと天野代表幹事、宮﨑代表幹事

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【新会員自己紹介】

写真:赤塚 裕章氏
火曜グループ
赤塚 裕章(あかつか ひろあき)
株式会社帝国データバンク名古屋支店
支店長

【帝国データバンク名古屋支店】
〒450-0002 名古屋市中村区名駅5-17-10
URL:https://www.tdb.co.jp

 10月1日付けで着任いたしました帝国データバンク名古屋支店長の赤塚裕章と申します。これまで長岡、堺、郡山、東京西、大宮と転任し名古屋支店は6支店目となります。中部エリアの皆様のお役に立てますよう、精進して参りますので、歴代支店長同様、ご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

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【12月度産業懇談会のご案内】

 12月は下記の通り「忘年会」を開催し、懇親を深めます。ぜひともご出席ください。

グループ名 世話人 開催日時 会場
火曜グループ

富田 茂
広井幹康
深田正雄

12月12日(火)
18:30~20:00

料亭蔦茂
Tel:052-241-3666
名古屋市中区栄3-12-32
(先着34名)

水曜第1グループ

淺井博司
足立 誠
落合 肇

12月20日(水)
18:00~20:00

加賀屋 名古屋店
Tel:052-589-9550
名古屋市中村区名駅1-1-4 JRセントラルタワーズ13階
(先着25名)

水曜第2グループ

大倉偉作
香川裕子
高見祐次

12月13日(水)
18:00~20:00

ホテルオークラレストラン「桃花林」
(ホテルオークライベントスクエア名古屋 光の間)
Tel:052-201-3201
名古屋市東区東桜1-14-25 テレピア14階
(先着40名)

木曜グループ

河村嘉男
中林直子
吉田憲三

12月7日(木)
18:00~20:00

札幌かに本家 栄中央店
Tel:052-263-1161
名古屋市中区栄3-8-28
(先着40名)

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【産業懇談会「代表幹事講話」ならびに「新年合同懇親会」のご案内】

 毎年恒例の産業懇談会4グループ新年合同懇親会を、下記の通り開催いたしますのでご案内申し上げます。
 本年は、天野源之筆頭代表幹事からご講話をいただきます。また、年の初めに、産業懇談会メンバーの皆様に親睦を深めていただきたく、あわせて新年合同懇親会を開催いたします。
 是非とも多数ご出席くださいますようお願い申し上げます。

日時
令和6年1月25日(木) 17:30~20:30
17:30~18:40 天野筆頭代表幹事のご講話
19:00~20:30 新年合同懇親会(着席ビュッフェ)
場所
名古屋マリオットアソシアホテル Tel:052-584-1111
講演会:16階 タワーズボールルームⅠ
懇親会:16階 タワーズボールルームⅢ
講話演題
『経営雑感 “中堅企業の生き残り”』
懇親会費
15,000円(開催後、請求させていただきます。)
※講演会のみご出席の場合は会費不要です。
ご案内先
代表幹事および産業懇談会会員の皆様
その他
お申し込みは1月12日(金)までに会員専用ページよりご登録をお願いいたします。お申し込み後1月22日(月)までにお取り消しのお申し出なくご欠席の場合は、会費を申し受けますので悪しからずご了承ください。
本件連絡先
中部経済同友会事務局 担当:山本・廣瀬・藤原
Tel:052-221-8901 E-mail:cace-seminar@cace.jp

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【コラム】

コラム1 【さっかの散歩道】 No.65

長瀬電気工業株式会社
代表取締役 屬 ゆみ子

『 瀬戸内縦断 』

 11月2日、毎年恒例の多治見ワインフェスタが、2週遅れの18日開催になったので、西日本経済同友会の合同懇談会に出席することにした。開催会場は徳島県、地図上では大した距離ではないのだけれど、公共交通機関での移動だと、意外に悩ましい場所にある。
 飛行機も飛んでないし、中部から参加される皆さんはどうするのかと事務局に尋ねるも「皆さん岡山経由で、電車移動です」とのこと。所要時間は4時間越え。どう見ても、淡路島を突っ切ったほうが早いので、新神戸でレンタカーを借りることにした。名古屋から運転時間を入れても2時間半くらいだろうか。途中の道の駅でお土産も購入できるし一石二鳥の島渡りコースだ。

 当日は快晴。新神戸を9時半にレンタカーで出発するも、予想外だったのは連休前の木曜日で、神戸市内は朝のラッシュ、高速に乗るまでにかなりの時間を要した。

写真:橋
明石海峡大橋

そのうえETCカードを持っていかなかったので、クレジットカードを使うつもりだったのだが、阪神高速道路の入り口で「すんまへん、クレジットカードは使えませんのや、現金でお願いしますぅ」と言われ、慌ててカバンから財布を引っ張り出す。ま日本中いろんなローカルルールはありますよ、まずは明石海峡大橋目指してツーリングと行きましょう。
 阪神高速を降りて本四国高速に入り、トンネルを抜けると、いきなり目の前に美しいつり橋が現れる。明石海峡大橋だ。ワイヤーが規則正しく青空に向かって続いている。この景色を見ただけで「電車で行かなくてよかった」とかなりのお得気分だ。ここから淡路島~鳴門海峡大橋までの高速道路は、速度制限が100km/hの上、交通量が少ないのでかなり走りやすい。途中の淡路ハイウェイオアシスは帰りに寄るとして、ノンストップで徳島まで走ることにする。天気は上々、車の中は11月とは思えない暑さでクーラー全開。四国に入って高速を降り、残り10キロ強を3回曲がったら、ホテルに到着した。近場でランチを済ませ、徒歩で会場まで向かう。

 基調講演は、徳島の神山町に開設された神山学園の理事長、大南信也さんの、神山町おこしの軌跡についてお話をいただいた。人の輪、熱意の輪が広まって、また新たな人を呼び、町が活性化し、学校ができる。新しい土地で新しいことを始めるには乗り越えなければならないハードルがいくつもあって、それは未知の大地で畑をすると決めた私の現状にもリンクする。最後は人力、それはわかっているけれど、地元で始めた大南さんですらのご苦労、きっとよそ者の私はその何十倍ものハードルが、これから先に待ち構えているのだろうな。
 講演が終わって、懇親会までの間に、大南さんと直接お話することが出来たので、「気長に行くしかないですね」というと、「時間ではありませんよ、継続する熱量です」とのお返事。まさにその気力、これから先も持ち続けられるかどうか…南の島で北の島のことを思い返していた。

写真:中部メンバー
中部メンバー、夜景で乾杯

 懇親会は一転、楽しい雰囲気の中、お待ちかねの本場阿波踊りが始まる。我が中部のお祭り男、横田さんは早速踊りの輪に乱入。あまりに楽しそうなので、「写真撮ったら送ってください!」とお願いしたら「撮るには撮りましたが、公開はできません」って、どんな写真だったのか気になるところ。今度忘年会でこっそり見せてもらうことにしよう。
 懇親会場にはワインの用意もあって、皆さん気を使ってくださって、テーブルには白ワインのボトルがキープされていた。カリフォルニアのシャルドネで、甘いし濃いしだったけど、それでも皆さんで何本開けた?その勢いで二次会はホテルのバーで打ち上げ。
 旅の解放感もあって、名古屋ではなかなかお話しできない皆さんとも盛り上がり~でも女性一人では花がないので来年は女性の参加大募集~楽しい一日を過ごすことができた。

 翌日、昼までには新神戸に戻りたいので、早めの朝食をとる。昨日のランチもそうだったが、どうも四国のサラダにはキャベツの千切りが定番のよう、昨今サラダと言えばレタス系かブロッコリーが多いのだが、土地柄があって面白い。などと思いながら昨日チェックしていた道の駅「くるくる鳴門」の9時オープンに直行する。

写真:くるくる鳴門
くるくる鳴門は朝から行列
写真:鳴門海峡大橋1
朝の鳴門海峡大橋
写真:明石海峡大橋2
淡路ハイウェイオアシスから明石海峡大橋

 ひととおり土産を買いこんで、新神戸へと車を走らせる、と反対車線は早くも渋滞が始まっている。~そうか今日は連休初日祭日だ、一日ずれていたら私もこの渋滞に巻き込まれていたかも!!と淡路島で軽く休憩を入れ、あまりの温かさで春霞に煙るかのような明石海峡大橋をパチリ、一路新神戸へ。
 片道およそ100kmの一泊旅。来年の西日本合同は松山(また四国!)だそうだが、松山なら飛行機が飛んでいるし、空港も近いし、ワインバーも何件か知ってるし、次回は二日酔いでも帰れそう。
 同友会での旅はまだ2回目だけれど、海外視察も含めスケジュールが許せば参加してゆきたいと思っている、差し当たって2月のシンガポール!!

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コラム2 【師、曰く】 No.30

妹尾 鷹幸(ペンネーム)
(株式会社構造計画研究所 名古屋支社長 妹尾(せのお) 義之)

ペンネームは、恩師、田坂広志先生の多重人格マネジメント、作家人格の名。心に鳴り響く言葉を今回も一筆。

『 デュアルモード社会 』

 2023年も暮れに差し掛かり、2020年1月に始まった新型コロナウィルスが、5月に2類(新型インフルエンザ等感染症相当)から5類となり、半年が経った。3年以上続いた新型コロナパンデミックは、ようやく終息し、元の日常が戻った。コロナ前と大きく違うのは、Web会議のオンラインミーティングが定着したことだ。以前なら全員集合も、今ではハイブリッドで場所を問わず参加し易くなった。クラウド活用やDX活用の仕事も、コロナ禍が逆に追い風になって伸びた。工場のライン組み換え等、出張できず現地に行けずとも、工場空間をクラウドにデジタル化し設計できるデジタル空間ソリューションは、コロナ禍で急速に伸びた。新型コロナという禍が、まさに「禍転じて福となす」となった。コロナという禍を経て、社会がまた一歩前進した。

 ただ、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」になっていないだろうか?田坂先生は、2016年の講義の折から、人類が絶滅するリスクが最も高い禍は、世界大戦でも放射能汚染でもなく、新種のウィルスによるパンデミックだと言われていた。慧眼だろう。強毒性とまではいかない新型コロナでさえ、人の移動や接触は激減、飲食、交通、旅行に限らず、多くの業種が大打撃を受けた。仕事ができず、多くの会社や自営業者も破綻に追い込まれた。日常を取り戻したとはいえ、そのことを忘れてはいけないだろう。先生は、次なるパンデミックに備え、『デュアルモード社会』 をつくらねばならないと提言されている。

 師、曰く『「デュアルモード社会」とは、車の快適な走行を楽しむ「スポーツモード」と、燃費を抑える「エコモード」の2つ(デュアル)のモードの如く、経済効率重視の「経済モード」と、パンデミック時の健康安全優先の「安全モード」の社会のこと。』

 わかり易い例では、飲食業のデュアルモードでは、平時は来店での飲食だが、パンデミック時はテイクアウトにシフトする業態に。学校や会社などは、平時は通学通勤だが、パンデミック時はオンラインによる体制に。他にも、まだまだ多くのことが出来る筈だ。他の業種も含め、検討の必要があるだろう。長く経営に携わられた方がおっしゃられていた。平時に浮かれ、効率性一辺倒では非常時に慌てることになる。BCPの大切さを気づかせてくれたのがコロナだと。松下幸之助は「ダム経営」で激変吸収することを提唱していたと。コロナ禍では、病院がパンクした。医師も看護師もエッセンシャルワーカーも、皆、不足した。ほとんど不眠不休のなか、高い志と強い意志をもって働き続けてくださった。その自己犠牲に甘んじてはいけないだろう。コロナ禍で、仕事ができなくなった方々、人手不足で猫の手も借りたかった方々、そのマッチングや教育訓練の仕組みが、絶対に必要となる。異業種同士の協力、連携も必要となる。このような課題を、異業種間で自由に議論できる貴重な場が、まさに経済同友会では…と思ったりする今日この頃。私も、喉元過ぎて熱さを忘れないよう、自分に出来ることを考えてゆこうと思う。修行は続くよ、どこまでも。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

写真:クリスマスツリー
(2023年JPタワーのXmasツリー)

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コラム3 【げんき通信】 No.3

学校法人佑愛学園
愛知医療学院短期大学
リハビリテーション学科作業療法学専攻
講師 清水 一輝

『 ストレスを減らすために必要な3つの感覚 』

 「健康生成論」という言葉をご存知ですか?健康生成論は、1979年に提唱された理論です。一般的な医療のイメージは「どうしたら病気が治るのか」という考えであり、これは「疾病生成論」という理論です。健康生成論はそれとは異なり、「どうすれば健康になれるのか」を考える理論と言われています。
 健康生成論において、健康のために大切とされているのが、首尾一貫感覚(sense of coherence:以下、SOC)と言われる感覚です。今回は、SOCの3つの感覚、1.把握可能感、2.処理可能感、3.有意味感について紹介します。

  1. 把握可能感
    自分の置かれている状況を理解し、予測が可能であるとみなす感覚です。具体例としては、「明日は友人とランチに行き、明後日は買い物に行く」ということを分かる感覚です。「明日何が起こるかわからない」状況を想像してみてください、とてもストレスを感じるはずです。
  2. 処理可能感
    困難な状況になっても、それを解決できると思える感覚です。具体例としては、「友人とトラブルが起きたけどなんとか解決できる」と思える感覚です。問題に直面した時に「自分には何もできない」と感じると不安が強くなってしまいますよね。
  3. 有意味感
    今行っていることが自分にとって意味があり、価値があると思える感覚です。具体例としては、「やりたくない仕事だけどこの経験は今後の役に立つ」と思える感覚です。嫌なことがあった時「こんなことしていても意味がない」と考えると気分も落ち込んでしまいます。

 この3つの感覚を持っていると、病気などのリスクが減り健康になれるという報告もあります。皆さんも自分にとってストレスを感じる場面が起きた時などに、SOCの3つの感覚を意識してみると良いかもしれません。

イラスト:深呼吸をする女性

-学校法人佑愛学園は2024(令和6)年4月、愛知医療学院大学を開学いたします。-

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