テーマ:
『日本経済と小泉政権の行方
−激動する政治と経済のトレンドをつかむポイントとは』
|
日 時: 9月28日(火) 12時30分〜14時00分
場 所:
名古屋観光ホテル 18階 オリオンの間
参加者: 23名
|
スピーカー:
塩田 潮(しおた うしお)氏
ノンフィクション作家・評論家
|
1
はじめに −時代認識−
ノンフィクション作家は、「現代とはどういう時代なのか?」ということに強い関心がある。様々な事象が同時並行的に進む渦の中にいる我々には現代を定義することは相当困難であるが、どうしてもやってみたいというのは作家の「性(さが)」であろう。
日本の政治は現在3回目の歴史的転換点にある。1回目は議会が開設されてから政党政治が根付くまで、2回目は敗戦後から55年体制が確立するまで、3回目は自民党が下野し、小選挙区や政党交付金の導入から今日までである。
また、日本経済はバブル崩壊後3回目の景気拡大期にある。その要因は(1)設備、雇用、債務の過剰を解消したことによる民間部門の復活、(2)デジタル特需および中国、アメリカの好景気による下支え、(3)不良債権処理の順調な進展、が考えられる。ただ、小泉改革による景気回復は(3)の金融部門以外にはなく、景気回復と小泉改革を直接結びつけることは困難である。
2
小泉政権の特徴
小泉純一郎氏は、現在の内閣総理大臣として適当か、という極めて素朴かつ本質的な問題がある。
日本は、国際化、情報化、成熟化、少子高齢化という未知の社会に入っており、従来型の政治では立ち行かないという彼の時代認識は正しい。それ故、様々な面で自民党がこれまで行ってきた手法を採用しなかった点も評価できる。ただし、この時代認識を持ちながら、未来に対する政策となると、道路公団改革、年金改革に見られるように腰砕けであり、省庁再編を果たした橋本政権の実績にも及ばない。
では、何故、小泉政権が続いているのか? その理由は、(1)自民党との対決姿勢および自らの挑戦姿勢が国民に人気がある、(2)「運」が良い、(3)政局運営能力が抜群である、という点だと考えられる。特に(3)は当初、弱点だと考えられていただけに思いもかけない「政治力」に戸惑っている人も多かったに違いない。
3
今後の展望
昨日(9/27)、第3次小泉内閣が発足したが、経済財政諮問会議のメンバーとなる閣僚は全員留任となっており、小泉色を強め、「郵政改革シフト」を敷いたといってもよく、その実現のために「腹を括った」と考えてもよいであろう。
郵政改革の行方が最大の注目点である。政府は年内の法案決定および年明けからの通常国会での審議を予定しているが、大きな波乱が起きそうである。特に来年度予算可決後から会期末にかけて、具体的には来年4月から6月までが最大の山場となる。可能性は低いにしても「郵政破れかぶれ解散」もあるかもしれないし、「郵政花道論」のもと小泉首相が退陣することも考えられる。となるとポスト小泉は誰かという話になる。解散のない状況では自民党内から次期首相を選ぶことになるが、従前のやり方を否定し、正しい時代認識を持つ「変人」でなければ、選挙にも勝利できないことがこの数年で証明されてしまった以上、次も「変人」が首相となる。ところが、自民党内に「変人」であると断言できる人材は見当たらず、具体的な名前を挙げられないのが現状である。