第11号 2003.4.30発行

【巻頭寄稿】

ネコと柿の木

名古屋銀行  頭取 加藤千麿

 最近エッセイを書く機会が多くなった。どのように書くか、大いに悩む。特に短文を書くことは難しい。文字数にして1300、1000、800字で、一つの考え方を記述することは至難の業である。文章を作るにはどうすべきか考えてみた。
 まず、標題(タイトル)が勝負だ。魅力があるか。うまそうな匂いがするか。
 次に、起承転結の配分が出来ているか。リズミカルに繋がっているか。読者に一気に読ませる力があるか。
 そして、説明的表現は極力避ける。副詞句は乱用しない。大袈裟な形容は、かえって文章を弱める。
 さらに、語調の基本である「いつ」、「どこで」、「誰が」、「何を」、「どのように」の順に書くことが原則だ。
 最後に、短文は、切れ味鋭く終ること。余韻を残し、次を期待させる文章を作る。

こういう話がある。文章の起承転結をどの節にも、どの一文にも捉えていくことだ。
たとえば、「ネコと柿の木」の題のもとに書くと、
1) 屋根の上にネコがいた(起)
2) どうやって屋根に登ったのか(承)
3) ある日とうとうわかった(転)
4) うらの柿の木から登った(結)
この繰り返しで一文にしていくことになる。

 究極の文章は夏目漱石の「草枕」である。冒頭の一節はリズムといい、すべてが備わったものである。
 山路を登りながら、かう考へた。
 智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。
 住みにくさが高じると、安いところへ引き越したくなる。
 どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。

名古屋銀行ホームページ:http://www.meigin.com/


15年3月度産業懇談会(水曜第2G)模様

1.日 時:3月19日(水) 12時30分〜14時
2.場 所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
3.テーマ:「急速に拡大するVOIP/IP電話の世界」
4.スピーカー:中川 徹氏(NTTコムウェア東海株式会社 取締役社長)
   http://www.nttcom-tokai.co.jp
5.参加者:19名

◇ スピーチ内容

1.NTTコムウェア東海について
 当社はNTTグループの一員である。NTTの通信ソフトウェア本部(通信ネットワーク担当部門)と情報システム本部(コンピュータシステム担当部門)を母体とし、平成9年にNTTコムウェア(株)が設立され、地域に密着した活動をするため、同14年に地域分社したのが当社である。インターネットの普及による本格的なIT社会の到来を迎え、ネットワーク技術とコンピュータ技術を融合させたシステム開発を主な事業としている。
2.IP電話とは?
 IP電話とは、音声をIP(インターネットプロトコル)ネットワークで中継する電話のことで、VOIPと呼ばれる技術を使って実現する。最近、新聞にも毎日のように登場するほど注目が集まっているが、その背景には、電子メールやインターネットの利用急増に伴うデータ通信と音声通信のデータ量の逆転がある(2001年以降はデータ通信が音声通信を上回っており、その差は急速に拡大している)。データ通信の上に音声通信を乗せた方が効率的になってきたということである。
 一般の電話は交換機を中継して音声データを専用の電話網で運んでいるが、IP電話は音声をパケットデータに変換しIP網を通じてデータをやり取りするので、効率の良いデータ通信が可能となる。また、一般の電話で使用している交換機の値段が億単位と非常に高価であるのに対し、IP電話の場合は数百万円程度のルーターと呼ばれる機器を使用するため、初期費用が安く済むことも特長である。

3.IP電話サービスの形態
 IP電話が登場する以前から、インターネットを使った国際電話サービスやパソコン同士での通話サービスは存在していたが、一般のインターネット回線を使用していたため大変品質が悪かった。その後、2001年4月にフュージョンコミュニケーションズ社が、専用IP網によって高品質で安価な長距離電話サービスを提供する事業を始め、2002年になると、ブロードバンド回線の普及とともに直加入型IP電話(NTTを中継せずに電話機から直接IP網につながる方式)が登場してきた。この直加入型IP電話は、ADSLなどのインターネット常時接続環境の中でデータをやり取りするため、同一のISP(インターネットサービスプロバイダー)加入者同士は通話料が無料となる。従って、ISP事業者としては如何に多くのユーザーを獲得するかが課題となっており、事業者間の提携競争も熾烈化している。

4.IP電話の品質
 通話品質がかなり良くなったとは言え一般電話との比較では若干劣るのが現状である。パケット通信のため、自分が話してから相手に聞こえ始めるまでの時間の遅れや通話途中で音が途切れるなどの支障が生じるためだ。総務省が音声品質確保のためガイドラインを作ったが、あくまでも目安であり、ペナルティなどはない。なお、QoS(Quality of Service。データ通信が混雑した時、音声データを優先して運ぶシステム)を採用しているIP電話であれば、品質の劣化は少なくなるので、事業者選択のキーワードとして覚えておかれるとベターである。

5.事業者動向
 IP電話の事業者には大きく分けて(1)基盤のネットワークを使う事業者(OCN、KDDIなど)(2)インターネットのプロバイダー(ニフティ、BIGLOBEなど)(3)アクセス回線の事業者(eアクセスなど)の3つがあるが、BBフォンのようにその全部をカバーしているところもある。多数の事業者が乱立する状況下、安い通話料で果たして採算が取れるのかと言う疑問もあろうが、端的に言えば、個人向けのIP電話サービスはADSL等のインターネット回線を売る際の「付録」的な要素が強く、IP電話自体の採算性は二の次となっている。つまり、自社のインターネットサービスの商品価値を上げるための材料としてIP電話を活用するということである。一方、企業向けの場合はデータ通信の量が個人ユーザーとは比較にならないため、IP電話のみのサービスでも採算が取れるケースが多い。従って、事業者の中には、対象を企業向けのみに絞っているところもある。

 では、一般電話を止めて全ての電話をIP電話にしてしまったらどうか。これは当分無理である。なぜなら、(1)まだ「110」「119」やフリーダイヤルなどのかからない相手がいる (2)IP電話の信頼性にまだ不安が残るため、保険として一般電話を残しておいた方が良い(3)IP電話のみにするとADSL回線の料金がはね上がり、一般電話の基本料金を払うのとほとんど変わらず、今のところ一般電話を解約しても得にならない、等の理由があり、IP電話と加入電話両方の回線を持ち、状況に応じて切り替える併設が一般的であろう。

6.企業内ネットワークへの導入
 昨今の厳しい環境下、企業等においてはあらゆるコストの削減が至上命題となっているが、通信費削減の切り札としてIPネットワークの構築が急速に進みつつある。ちなみに当社(NTTコムウェア全体)の場合、平成11〜12年度で約1万台の電話機を全てIP電話に置き換え、約1億5,000万円/年の通信コストが削減された。市場調査の結果では、37%の企業が内線電話網の仕組みを変えたいとの意向を持っており、その内約半数がIP電話への変更を検討している。アメリカでは既に半数の企業がIP電話にしており、日本でもIP化の流れは今後加速すると考えられる。
 なお、導入の留意点としては、(1)IP化の目的を明確化すること(コスト削減なのか、高機能化なのか等)、(2)PBX(交換機)の更改、ビルの移転など導入チャンスのタイミングを逃さないこと、(3)導入の際の関係部署の意思統一を図ること(「音声」は総務、「通信」は情報システムというような体制の場合、主導権争いで失敗するケースあり)、(4)導入後のサポート体制を考えネットワークに精通している業者を選ぶこと等である。当社はコンピュータシステム、通信ネットワークいずれの分野でもトップレベルと自負している。何かお役に立てることがあればぜひお声をおかけいただきたい。



15年4月度産業懇談会(火曜G)模様

1.日 時:4月8日(火) 12時30分〜14時
2.場 所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
3.テーマ:「アメリカから見た日本とアジア」
4.スピーカー:スティーヴン J.アンダーソン氏(名古屋米国領事館 商務領事)
5.ご紹介者:伊藤義明氏(在日米国商工会議所 中部支部ディレクター)
6.参加者:25名

◇スピーチ内容

1.はじめに
 出身はペンシルベニア州。アメリカ中部にあるオベリン大学で学び、卒業後は、博士号取得のためマサチューセッツ工科大学で政治経済を学んだ。その後、日本、アメリカの大学・研究機関への勤務を経て、5年前に米国商務省に入省。1999年から昨年の7月まで3年間、北京大使館で勤務後、名古屋米国領事館の商務領事となった。北京在任中は主にIT関係の企業を担当し、中国におけるWTOの勉強会も担当していた。本日は自身の経験にもとづき、日本・中国のITビジネスの現状と方向性、また中国におけるWTOの現状等についてお話します。
2.アメリカから見た日本とアジア
 2001年12月、WTOに加盟した中国は急速に成長し、まだまだリスクが高いものの、アメリカの大企業は進出に意欲を示している。一方、日本に対しては、地域戦略のハイテク技術を有する特別な経済大国(いわば先進的市場)というのが一般的な印象である。
 今後、アジア太平洋地域は情報通信産業の発展地域となり、ITハードウェアの生産の中心になっていくことが予測され、境界線のないグローバルな生産システムができてゆくだろう。

3.日本のインターネットビジネスの背景
 90年代はじめ、アメリカではインターネットビジネスのチャンスがたくさんあり、高い成長率を示したのに対し、日本では、インターネットは英語のもの、あるいは教育機関のものという見方が一般的であった。しかし、1995年の阪神大震災の後、政府・大企業の計画により急速なインターネットの成長が始まった。その後、日本で起こったインターネットブームは、ビジネスチャンスになったものの、消費者の興味は「タマゴッチ」や「スクリーンセーバー」レベルのものにしか過ぎなかった。現在も、日本は国際的に見て携帯電話以外のインターネット普及率が決して高くないのが現状である。裏返せば、日本におけるインターネットビジネスは発展途上で、まだまだ成長の可能性を秘めているということである。
4.中国のIT
 中国でのITビジネスを一言で表すと「若さと活発さ」ということになる。中国では、特に携帯電話は生活の中で必需品となり、しかも持つこと自体が「おしゃれ」という風潮がある。また、パソコンもインターネットカフェで使えるようになり、これらを駆使する若い利用者が、中国自体の「市民的な自由化」を促している。携帯電話については、2006年までには約3億人の加入者が見込まれている。「3億」というのはアメリカの人口を上回り、また日本の人口の2倍以上であり、中国市場の巨大さが伺える数字である。

5.中国のWTOの現状
 WTO加盟後の中国に関して現状の問題点を紹介する。一番基本的な問題は地域保護主義。一つの国であるにもかかわらず、経済面では、まるでヨーロッパのように地域毎に国が分かれているような印象がある。次に、商品配達サービスにおける規制などがそれである。例えば、フォルクスワーゲン社が全国レベルではなかなかサービスができないとか、富士ゼロックス社が或る地域ではプリンタだけ、別の地域ではファックスだけといったような限定されたサービスしか許可されない等の規制が存在した。そして、問題を解決するために重要なのがWTO実施のモニターである。各国の大使館、商工会議所が、中国におけるWTO実施を的確にモニタリングすることが肝要ということである。例えば、AT&T、あるいはNTTなどの企業が中国でのビジネスを展開する際、サービス内容に規制がかけられたことが大きな問題になった。また、TRIPS(知的所有権交渉)も大きな問題である。中国ではコンピュータソフトの9割が海賊版であるのが実態であり、今後解決すべき最重要テーマの一つである。

6.日本でのITビジネスチャンス
 日本におけるインターネット普及率が世界的には決して高くないことは前述したが、日本が「スペシャル」な市場であることは疑いの余地がない。市場規模(金額)では依然として世界第2位の地位にあること、3G無線情報サービスや次世代携帯電話といった先進的技術を活用したサービスの普及、ソニーやドコモをはじめとする世界トップランクの企業の存在、世界一の高速インターネットの市場成長などがその理由である。
 しかしながら、現状のみを捉えれば、日本は近年発展の著しい国、例えば韓国に比べ、まだまだ遅れをとっている。高速インターネットの加入者数は比べ物にならないし、インターネット加入者自体の少なさ、E-コマースの普及率がまだまだ低いことなど、日本の遅れはいろいろある。これらを克服して、日本の市場が成長するためのキーワードとして、政府の予算における「business to government」市場がある。また、光ファイバーをはじめとする広帯域高速情報通信設備、コンサルティングやE-ラーニング等のソフト面でのITサービス、PDA等の先端技術製品などの分野でも成長の可能性は大いにある。

7.名古屋米国領事館について
 日本企業向けのサービスについては、ビジネスカウンセリングやアメリカのビジネス情報の提供を行っている。詳細は(http://www.csjapan.doc.gov)をご覧いただきたい。米国企業、製品などの紹介も載っている。
 アンダーソン氏からは、流暢な日本語でたくさんの具体例をお話いただいた。最後に、本日のスピーカーをご紹介いただいた、米国商工会議所の伊藤義明氏からも米国商工会議所(http://www.accj.or.jp/)の活動などについてPRしていただいた。


15年4月度産業懇談会(水曜第1G)模様

1.日 時:4月16日(水) 12時30分〜14時
2.場 所:名古屋観光ホテル 18階 鈴鹿の間
3.テーマ:「キリンビールの商品開発」
4.スピーカー:萩原壽彦氏(キリンビール株式会社名古屋工場 執行役員工場長)
   http://www.kirin.co.jp/
5.参加者:15名

◇スピーチ内容
1.はじめに〜キリンが失敗から学んだこと
 キリンは長い間業界のトップメーカーであった。1976年には63.8%ものシェアを誇ったが、1987年、アサヒが「スーパードライ」を発売してから状況は一変した。キリンのシェアは急激に落ち、一昨年、実に47年振りに首位の座から転落し、2位メーカーになってしまった。「キリンラガー」という強い商品と高いシェアを持っていたことが、逆にお客様やマーケット、流通の変化に対して非常に鈍い反応を示すことになったのであろう。その後、多くの新商品を開発し、飲み方を提案したり、原料や製法の違いをアピールしたり、地域限定や季節限定商品を発売するなどしたが、お客様の心に十分ミートさせるような商品はごく一部であった。本来、「質」を追求すべき商品に、「量」を目指してしまう過ちをおかした、換言すれば、お客様ではなくライバルを見ていたのである。スーパードライ、あるいは他社の商品にどう対抗していくかということばかり考え、激しいシェア争いの中、本来買っていただくお客様を見失っていたことが最大の原因であったと反省している。
 現在の荒蒔社長は、2001年11月に「新キリン宣言」を表明した。会社創立以来、社是として掲げた「品質本位、お客様本位」を全社員に徹底すべく新たにスタートした。これにのっとって昨年つくりだした11種類の新製品は、「極生」「淡麗グリーンラベル」「淡麗アルファ」をはじめ、すべてが話題になった。

2.開発の舞台裏
 「極生」について。発泡酒の比率は年々あがり、昨年はビールと発泡酒を合わせた出荷量の40%近くにまでなった。最初はビールの代用品であったかもしれないが、安さとすっきりした味が好まれている状況を認識し、発泡酒ならではの魅力を持った新商品の開発に着手した。通常の発泡酒より10円安いこの商品は、容器や包装を簡素化し、特売やキャンペーン、テレビ広告をやめた。しかし、結果的にはそれが逆に話題となってマスコミに取り上げられることになり、流通からも高く評価されて「極生方式」という言葉まで生まれた。
 「まろやか酵母」について。家庭では発泡酒がスタンダードで、ビールはプレミアムなもの、という認識が芽生えてきたことを感じ、それならプレミアムなビールを作ってみようと考えた。中身を濾過せず、生きた酵母をそのまま閉じ込めた、ビールありのままの味わいをセールスポイントとし、瓶も小型のワンウェイボトルにして高級感を出した。また、普通のビールと違い、工場出荷後、10℃以下のチルド流通を実現し、賞味期限は普通のビールの9ヶ月間に対して60日とした。
 「淡麗アルファ」について。お客様相談室に寄せられる「プリン体の少ない商品をつくってほしい」という多くの声にお応えしようと開発した、「淡麗」のプリン体90%をカットした発泡酒である。ネーミングは、前向きのイメージを消費者に与えたいと、プラスアルファという言葉を連想させる「アルファ」を採用した。また、先進技術からイメージされる未来感をパッケージに与えるため、缶の色をシルバーメタリックブルーにした。

3.成熟市場の中で商品がヒットしたわけ
 まず「極生」。ヒットのわけは、若手の有名なクリエイターに依頼したデザインの力と、定価販売をしたことであろう。ディスカウント販売を誘発している最大の原因はメーカー側のもっと売りたい、どこでも売りたいという心。「極生」はこの現況を断ち切ろうとした商品である。そのために、我々はディスカウント店で売れなくてもいいという決意をした。結果は、ディスカウンターやスーパーでは売れていないがコンビニでは発売と同時にNO.1ブランドになった。改めて、コンセプトや商品価値を守るには作り手側が意識的に機会損失をする決意が大切だと痛感した。
 次に「淡麗グリーンラベル」と「氷結」。「淡麗グリーンラベル」は「淡麗」の糖質を70%カットした発泡酒、「氷結」はストレート果汁の香味を生かしたチューハイである。ブレイクしたのは、女性の存在を意識したことと、商品のポジショニングに意味があったということだろう。我々の商品は男性的で、ヘビーユーザーをターゲットにしたデザインや広告の品物が良く売れるが、新しい市場を開くため、女性やライトユーザーを意識した商品開発を考え、開発メンバーに女性を加えた。常識や当たり前のことにとらわれず、見方を変えて広い立場で商品をポジショニングしてみることの重要性を認識した。
 そして「まろやか酵母」と「樽生一番搾り」。業界初のチルド流通で、コンビニのセブンイレブンとの提携商品である。キリンビールでは長年、どの販売店に対しても等しく売り込むことが最善の営業方法として定着しており、テスト販売とはいえセブンイレブンだけで売るというのはとんでもないことであった。そのため、このような商品を出すことに対して営業部門から大変な抵抗があったが、お客様視点で考え、何が正しいのかという議論を重ねてこの商品は陽の目をみた。画一的なマーケティングでは消費者の心には届かない。

4.お客様に満足していただくために
 このデフレの時代、価格はどんどん安くなるが、お客様の満足は、けっして価格だけではない。我々が今しなければならないのは、お客様が得る価値をいかにして上げるかということである。238円の「まろやか酵母」も1,240円の「樽生一番絞り」も、従来の商品と比べて約3割前後高い商品だが、それでもお客様に買っていただけるし、売っているところが限られていても買いに来てくださる。提供する価値の大切さについて改めて考えさせられるものであった。これからも、すべての活動をお客様本位で徹底してがんばっていきたい。



15年4月度産業懇談会(水曜第2G)模様

1.日 時:4月9日(金) 12時30分〜14時
2.場 所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
3.テーマ:「東京 丸の内再構築と丸の内ビル」
4.スピーカー:恵良 隆二氏(三菱地所株式会社 ビル開発企画部 副長)
5.ご紹介者:雑賀哲治氏(三菱地所株式会社名古屋支店 支店長)
   http://www.mec.co.jp
6.参加者:16名

◇ スピーチ内容

丸の内の課題
 大手町、丸の内、有楽町からなる、いわゆる「丸の内」地区は、111haに約100棟の建物があり、4,100事業所に24万人が働く街である。うち30棟が当社の所有もしくは関連ビルだ。高度情報化・国際化の進展に伴い、東京の都心自体もオフィスエリアとして国際競争の中でどう生きるかというところにきており、丸ビルの建て替えだけではなく、丸の内の再構築を地域全体として考える必要があった。また丸の内には、オフィス用途の容積率上限1,000%の制約がある。また、建て替えて高度化すると有効率が下がり、使用できる床面積は増やせない(しかし、オフィス用途外(=非業務用途)であれば300%の容積増が緩和措置として認められている)。そうした背景の中で丸ビルの建て替え計画がスタートした。
先駆けとなる丸ビルプロジェクト
 三菱地所にとって丸ビルは、次の時代の先駆けになるプロジェクトである。コンセプトは、「オープン(企業だけでなく大学やベンチャービジネスの拠点もある開かれたビジネスセンターにする)」、「インタラクティブ(様々な価値観の人が交流し、新しい文化やビジネスを生み出す)」、「ネットワーク(人や情報、インフラなどのネットワークを作る)」。
 また、丸の内の街づくりでは「交通の結節点」を拠点ゾーンと位置付けている。その中の「拠点ビル」ともいえる丸ビルには、複合用途をもつマルチテナントのビルとして、賑わいと交流を生み出す役割を持たせる必要があった。そのためには、非業務用途としての割増容積の部分をいかに活用するかが課題となるが、今回の丸ビルでは、対面する平成18年竣工予定の三菱商事の本社ビルと一体的に「複数街区の特定街区(いわば、丸ビルと三菱商事ビルを一つのビルとしてみなす)」として計画し、三菱商事ビルの非業務用途容積のほとんどを丸ビルへ移すことで丸ビルの容積率を1,437%まで増やし、丸ビル内商業施設・交流施設の充実化を可能にした。

コンセンサスの形成
 昭和63年に、地区の地権者からなる大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会を立ち上げた。各種の検討委員会でビル建て替えを含めた街づくりを議論し、平成6年に「街づくり基本協定」を締結した。行政側も、国・東京都・千代田区が同7年以降、相次いで「東京都心のグランドデザイン」や「都市計画マスタープラン」等を発表した。また同8年には協議会と東京都、千代田区、JR東日本が一体となって「街づくり懇談会」を設置、同12年に「まちづくりガイドライン」を策定し、官民を含めた当事者間のコンセンサスを形成していった。こうした丸の内の街づくりの議論と並行して丸ビルの構想を具体化させていった。

丸ビルの概要・特色
 前述の経緯を経て、平成14年8月に竣工、同9月にオープンした新しい丸ビルの概要は高さ180mの37階建て、延べ床面積16万?。特色の一つとして100店舗のショップと40軒のレストランがあるが、丸ビルに商業施設を入れるに当たっては、有楽町から続く丸の内仲通りに丸ビル完成以前からブランドショップなどの路面店を政策的に誘致し、有楽町・丸の内間の回遊性を生み出した上で丸ビルへの集客効果を上げるよう計画した。併せて、1階には30m四方のガラス張りのアトリウムを作り、仲通りの回遊性の起点とした。
 9〜34階まではオフィスゾーンで、テナントは国内・外資系企業から弁護士事務所・クリニックに至るまで多彩である。また、7・8階はインタラクティブゾーンとして、会議や展示会などができる多目的なホールや、ビジネスパーソンの交流の場である「東京21クラブ」(会員制)などを設けた。
 デザイン面では、低層部の壁面や行幸通り側の玄関デザインを旧・丸ビルに近い外観にするなどして、歴史的な継続性を重視し、建て替えても街並が変わらないよう昔のデザインのコンセプトを再現した。なお、今回新しい試みとして、新しい丸ビルらしさを出すために、共有部の空間に7点のアートを入れた。単に芸術作品を置くのではなく、ビルの床や壁などを使って建築と芸術のコラボレーションを実現した。

セキュリティおよび環境への配慮
 「ロングライフビル」というコンセプトで、阪神淡路大震災の1.5倍規模の地震にも耐えられるよう耐震性をアップするなど強固な構造に出来上がっている。環境への配慮としては、氷蓄熱設備、コジェネレーション設備などにより、従来の33%の省エネルギーを実現。低層部の屋根には屋上緑化を施し、レストランの生ごみを豚の飼料にするなどリサイクルにも取り組んでいる。

丸の内のソフト戦略
 ビジネス街として交流の盛んな、インタラクションの活発な街に変えようと考えている。ポイントは三つある。一つはナレッジの集積。既存企業だけでなく法務・会計など知識集約型の専門サービス企業や大学・学会を誘致したり、「丸の内フロンティア」という組織を作り、ベンチャー企業を支援する。二つめはハード環境の整備。光ファイバー網の完備など、IT時代に対応した都市インフラを構築したり、歩道をバリアフリー化するなど、都市空間自体も変える。さらにはソフト環境の充実。テナントのニーズに応えるアウトソーシングサービスを提供したり、働く人々のアフター5や自己啓発に対応するためのコミュニティサイトや、慶応大学との連携による「丸の内シティキャンパス」もオープンした。ハードとソフトの環境を整え、さまざまな活動によって新しい価値、ビジネスを創造していくことを通じて丸の内の魅力をより向上させることを目指している。

今後の街づくり
 今、丸の内では、計16のプロジェクトが動いている。民間の14のプロジェクトで投資額8,000億円、経済波及効果は2兆円。ペニンシュラホテル(平成18年竣工予定)、新丸ビル(平成19年竣工予定)、旧国鉄本社跡地(平成16年竣工予定)、東京駅舎建て替え(平成22年竣工予定)など。東京駅前が一気に変わるということだが、街の持つ固有性や景観的価値を継承しながら次の時代を見据えた再開発を進めている。さらに、大手町の合同庁舎の跡地利用など表面化されていないプロジェクトもある。
 時代の価値観も変わってくるので、街づくりにはまた新しい要素が必要となってくるだろう。街の将来像を固定的に捉えるのではなく、街をかたどるシステムをしっかりと作りながら、その時代時代に応じた議論を進めていくことが重要であろう。
 今後の課題は、官と民の役割分担をどうするか。丸の内にとってエリアマネジメント、エリアとしての魅力をいかに高めるかにかかっている。丸の内の街ブランドが高まることが、結果としてそこに立地するオフィスにとっても価値があるという考えから、当社の中にも「街ブランド室」を作って、また新しく展開をしていこうというところである。

15年4月度産業懇談会(木曜G)模様

1.日 時:4月3日(木) 12時30分〜14時
2.場 所:名古屋観光ホテル 18階 伊吹の間
3.テーマ:「私の歩んできた道」
4.スピーカー:加藤俊夫氏(ダイセー倉庫運輸株式会社 取締役社長)
   http://www.ddaisei.co.jp/
5.参加者:21名

◇スピーチ内容
1.はじめに
 昭和34年、高校卒業後、東陽倉庫(株)へ入社した。入社半年後に出向した東陽荷役運輸?では、上司に「自分が責任をとるから好きなようにやれ」と言われ、全権を委ねられた。多いときは400人を統率する立場になり、労務問題など苦労も多かったが、5年間非常に貴重な経験をした。昭和39年、転勤するにあたっては約200人が集まり、海岸で送別会を開いてくれたことはいい思い出である。そして昭和48年8月末、14年半お世話になった東陽倉庫を退社し、小さな倉庫を借り上げて、小牧へ単身、乗り込んだ。
2.ダイセー倉庫運輸を設立して
 昭和49年2月2日に会社を創立した。今までやってきた中で、2つの出来事が大変印象深い。ひとつは、昭和51年、三井石油化学(株)の当時の物流部長が私の気迫を買ってくださり、取引きが始まったことである。
 もうひとつは、昭和53年のこと。トヨタ生産方式で有名な大野耐一氏が、トヨタ自動車を退社後、豊田合成(株)の会長となられ、購買部長に「工場へ原材料を持ってくる車を半分以下に減らせ」という改善命令が出た。相談を受けた私は「当社を指定倉庫にして、そこに御社宛の荷物を全部一時保管し、当社がまとめて届けることにすれば車の数は3分の1にできる」と提案したところ、採用していただき、結果的に車は4分の1に減らすことができた。我が社が今こうしてあるのは、この2つのお客様のおかげであると、今でも大変感謝をしている。

3.「三方よし」の精神
 我が社は、近江商人の考え方である「売り手よし、買い手よし、世間よし」という「三方よし」がモットー。商売というのはお客様がお困りの部分をどう解決してさしあげるかである。例えば大手が、時間がきたら注文を受けつけないというなら、我々は24時間いつでも受けつけましょうというように、逆の戦法をとっていった。
 当社の配送方式は「Many to one(共同配送便)方式」。たくさんのお客様の荷物を一度物流センターに入れていただき、宛先別に仕分けした上で、同じ宛先の荷物をまとめて配送するやり方である。この方法は、お客様(荷主、納入先双方)にとってコスト・効率の面でメリットが大きく、弊社としても多くの取引をいただけるという、まさに「三方よし」のビジネスであると自負している。

4.合成樹脂・合成ゴムに特化した物流
 昭和63年には、合成樹脂・合成ゴムに特化した物流を宣言した。配送地域は、採算を考えて小牧から150キロ以内と限定した。現在は月に約33,000t、年間約40万tの合成樹脂・ゴムを各ユーザーに運んでおり、おそらく、この分野では我が社が日本一だろう。
 現在の売上比率は合成樹脂・合成ゴムを中心としたケミカルが76%、食品用フィルムが14%、一部輸入のアパレル品が7%。昨年は29期で売上が50億を超えたが、合成樹脂で成功したのは、愛知県にトヨタ自動車があり、東京や大阪と比べて合成樹脂を使う量が莫大に多いからである。しかし、トヨタも海外展開を進めており、生産台数が減れば樹脂も減るため、先行きは楽観できない。特色がなければ生き残れない時代であり、新しく生きる道を探していかなければならない。

5.バイオレットビルの完成
 バブル最中の平成2年、思いきって、30億円をかけてオール紫色に塗った本社事業所のビルを建てた。奇異に感じられるかもしれないが、大変反響を呼び、NHKが「なぜこんな色に塗ったのか」と全国放送をしたいと言ってきた。女子ドライバーを集めようと狙いも当たり、珍しさにひかれたのか、なんと15人ほどの女子ドライバーが集まった。

6.新規事業への取り組み
 昨年8月、三井物産と組んでミネラルウォーターの製造販売、宅配を始めた。我が社でプラントをつくり、水道水をRO膜で通してそこに海洋深層水からとったミネラル分をもう一度ブレンドし、11.3リットル入りのボトルに詰めて販売するというものだが、正直いって採算面では苦戦している。
 もうひとつ、まもなく立ち上げる新規事業が、廃棄発泡スチロールの収集運搬処理事業である。発泡スチロールは、運搬率の悪さのため運賃がかさみ、スーパーなどではその処理に困っているとのこと。そこで、ある薬品をトラックの荷台に積んだタンクに入れ、その中に発泡スチロールを放り込んで溶かして、処理工場で「再生スチロール」にリサイクルしようと考えている。
 生き残っていくことは大変だが、「健康と環境」をテーマに、新規事業に積極的に挑戦していきたい。



月度産業懇談会開催日程<場所は名古屋観光ホテルです>
グループ名 世話人 開催日時 テーマ・スピーカー 場所
火曜グループ 各務芳樹
深田正雄
5月13日(火)
12:00-14:00
東海ゴム(株) 専務取締役 高橋俊行氏
「部品メーカーと中国のコスト力」
18階
伊吹の間
水曜第1グループ 岩部一好
落合 肇
5月21日(水)
12:00-14:00
(株)テクノ菱和名古屋支店 取締役支店長 内山鉄也氏
「クリーンルームと空調の省エネ」
18階
御獄の間
水曜第2グループ 片桐清志
谷田利景
5月14日(水)
12:00-14:00
日本コムシス(株) 執行役員東海支店長 関口明良氏
「ITで広がる世界〜ITの基礎と活用〜」
18階
伊吹の間
木曜グループ 河村嘉男
山本美知子
5月8日(木)
12:00-14:00
(株)エヌ・ティ・ティ ネオメイト名古屋 取締役社長 丹羽大三氏
「ブロードバンドインターネットの活用」
18階
伊吹の間

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【コラム】


〔苗字アラカルト〕 No.11

片桐 清志

魚と苗字

桜のシーズンが終わると新緑が美しい。五月晴れの空に泳ぐ鯉のぼりは端午の節句を告げるこの時期の風物詩だ。今回は鯉に因んで魚と苗字の関係を眺めてみたい。
 鯉で始まる苗字は威勢のよさが買われて15種。残念ながら一字姓の「鯉」さんは見当たらない。鯉幟さんはいないが、「鯉登(コイノボリ)」さんはいる。踊りで有名な「鯉川」や「鯉沼」「鯉江」「鯉村」「鯉淵」さんなどがある。鮎も縁起の良い魚だが苗字にはあまり種類はなく12種。同じく淡水魚の代表の鮒が10種、鱒は4種。
 祝い事の代表格の鯛は12種。食卓に登場する身近なところでは鯖が8種、鯵が7種、鮭が5種、鰯が3種と続く。出世魚の鰤は少なく鮪・鰻とともに2種。
 鮫も強さが評価されてか9種と多い。魚ではないが魚ヘンの漢字では鯨が9種と多いのはやはり巨大さゆえだろう。鰐も8種と多い。日本になじみの薄い生き物が苗字になったのはもしかしたら渡来人「王仁(ワニ)」の派生かも知れない。
 一字姓は鯛・鯖・鯵・鰹・鮪・鰯・鮑(アワビ)・鱸(スズキ)・鱶(フカ)・鰻・鱒鮒・鱒・鮒・鯰など意外と多い。まるで鮨屋に行ったみたいだ。その「鮨」も一字姓にある。もちろん「魚」さんもいて、サカナさんとは呼ばないようだがウオ(またはイオ)さんとお呼びするようだ。鰐・鯨はいるが名古屋おなじみの鯱(シャチ)は残念ながら見当たらなかった。


編集後記
 新しい年度がスタートした。筆頭代表幹事も磯部代表から岡部代表にバトンタッチした。「人をつくり、国をつくる」をテーマに次代を担う人材育成を掲げている。
 4月24日の総会後、一橋大の伊丹教授から今年のテーマについての記念講演を戴いた。グローバルスタンダードよりも「当たり前スタンダード」を、資本主義よりも「人本主義」の経営をとの示唆に富んだ内容であった。また人が育つ3つの条件として「高い志」「大きな仕事の場」「深い思索の場」をあげておられた。肝に銘じたい。
 新年度予算では財政難にも拘わらず、産業懇談会関係の予算は温かいご配慮を頂いた。また事務局のお骨折りでメールマガジンの配布先を増強する活動もしていただいている。こうした期待に応えるよう活動内容の充実と刷新を心がけたい。是非とも読者諸氏のご意見をお願いしたい。
 今月の特別寄稿は加藤特別顧問(第44代代表幹事)から「ネコと柿の木」の一文を頂いた。文章を書くときの心構えをご披露いただいた。編集子の厚かましい注文に快く応じていただき感謝している。例会は今月も興味深いものが揃っている。ご一読願いたい。 (片桐)